( ^ω^)が競輪に挑戦するようです
- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお:2008/12/11(木) 19:43:54.93 ID:wB5nWuW/0
- まとめサイト様
http://boonsoldier.web.fc2.com/keirin.htm
- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお:2008/12/11(木) 19:45:44.72 ID:wB5nWuW/0
- 登場人物
( ^ω^) 内藤:陸上の400mで県で一位を取るほどの猛者。怪我により陸上を引退し、津出の弟子となって競輪選手を目指す。
('A`) 毒男:内藤の中学時代の友人で、現競輪選手。なりたてで、実力はまだまだ。
( ^Д^)高良:毒男の師匠
J( 'ー`)し 母親:内藤の母親、ギャンブルが嫌いで競輪を良く思っていない。目下、競輪を目指す内藤とは対立したまま。
(*ノωノ) 風羽:陸上部のマネージャーで内藤の元彼女。すれ違いにより別れる。
(,,゚Д゚) コーチ:大学陸上部のコーチで、レースの度に怒鳴りあげた。内藤と仲違いの上、意思疎通が計れずに終わる。
ミ,,゚Д゚彡 布佐:万夫不当の競輪選手だった。
ξ゚听)ξ 津出:内藤の師匠で、ロードバイクを乗りこなす女性。
(´・ω・`) 所歩:津出と一度決裂しながらも正式な弟子に。群を抜いた実力の持ち主。
( ゚∀゚) 長岡:毒男の尊敬するS級1班の競輪選手。おどけた言葉が多い。
从 ゚∀从 高岡:長岡の弟子で、競輪選手で最高クラスのS級S班の選手。
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお:2008/12/11(木) 19:46:12.99 ID:GptHm4Q3O
- (* ・∀・)
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお:2008/12/11(木) 19:46:26.11 ID:yc/gtoF0O
- 好きだよ、これ、支援
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお:2008/12/11(木) 19:48:57.65 ID:wB5nWuW/0
- 第二十六レース「陸上と指導」
その日も夕刻には一通りの練習を終え、内藤と所歩は最後のダウンとストレッチに取りかかっていた。
二人して柔軟などを行っていると、否が応にも仲間意識は芽生え、育っていかざるを得ない。
特に内藤は誰よりも自身に厳しいつもりであったこそ、それ以上に己に妥協を許さない所歩には敬服にも似た一心を抱いて練習にも励みが出るばかりだ。
だからなおのこと、一緒に競輪学校試験が受けられない事実はなんとも残念であったのだが。
(;^ω^)「さて、とりあえずこれで終了かお……」
(´・ω・`)「そうだね、ちょっと僕は追加でアキレス腱を伸ばしておくよ。
最後のタイムトライアルで、ちょっとつりかけたから心配でね」
(#^ω^)「む……だったら僕も――」
ξ--)ξ「はいはいお疲れお疲れ。
それで内藤、毒男さんが来て今玄関で待っているわよ」
(;^ω^)「mjd? うーん……それじゃ悪いけど、今日も早々に抜けさせて貰うお」
ξ゚听)ξ「どうぞどうぞご自由に、それじゃ所歩、ちょっと片付け手伝いなさいよ」
(´・ω・`)「ああ、ストレッチが終わったらでもいいかい?
筋肉がカチカチでね、入念に行いたいからもう少しだけ時間を頂きたいよ」
ξ゚听)ξ「おっけ、それはあんた次第だから合わせるわよ。
内藤、自分のピストだけはしまっていってね」
( ^ω^)「了解だお」
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお:2008/12/11(木) 19:51:08.58 ID:wB5nWuW/0
- その手でピストを指定場所へと仕舞いこむと、すぐにも競輪場から外へと飛び出した。
すでに時間は18時を過ぎており、三月末で陽が長くなれども暗みを帯びる時間帯だった。
毒男を見つけると二人して軽く挨拶をかわし、手短に件のビデオを手にしたから見ようという旨を伝えられた。
内藤も体が冷える前にと分厚いジャンバーを着こみながら、もう一度簡単にストレッチをしてバイクにまたがる。
('A`)「とりあえず俺ん家に来たら、風呂入るといいさ。
そんでストレッチしながらでもビデオを見よう」
( ^ω^)「そんな、お風呂まで入らせてもらうなんて、お母さんがいると悪いお。
別に僕の家に来てもらっても構わないお?」
('A`)「でもお前って一人暮らしだろ?
ビデオデッキなんてあるのか?」
今の御世代だ、ビデオと呼びながらもDVDを指しているかと思えば、真のビデオのことを指していたとは盲点だ。
内藤は泣く泣く折れるとバイクに跨り、エンジンをかけてロードに乗る毒男と並走して暗い道を走った。
おおよそ十数キロか、二人が家に着くころには完全に陽が落ちており、辺り一帯は外套の無さも相まって非常に暗かった。
バイクのライトを頼りに毒男の家に到着すると、緊張した面持ちで家の中へとお邪魔する。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 19:52:32.76 ID:BX6LcyqjO
- ワックワクのテカテカやでぇwwwwwwwwwwwww
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 19:53:23.66 ID:wB5nWuW/0
- ( ^ω^)「こんばんはー」
「こんばんは、あらあら、あなたが内藤君ね?
毒男がいつもお世話になっています」
(;'A`)「いいから、カーチャンちょっと風呂の準備してくれよ!」
「はいはい」
恥ずかしそうに親を奥に引っ込めさせると、毒男は二階にある自分の部屋へ内藤を案内した。
中に入ると意外や意外、こざっぱりとしており、とても今時の男児の部屋とは思えなかった。
('A`)「いや、競輪学校に入る前に全部片してそのまんまなんだよ。
CDや雑誌は捲ったけれども、他は手つかずだな。
几帳面でもないくせに、いざ段ボールに綺麗にまとまっているとどうも散らかし難くてさw」
これが半年後の自分の部屋になるのだろうかと、内藤はどこか寂しい思いで眺めた。
無駄に広く色の無い部屋、これではまるで実家の内藤の部屋、そのものではないか。
彼が一人暮らしを始めて部屋の主がいなくなったにも拘らず、物置にすら使われずにただ私物だけがまとまって存在する空虚な部屋。
いや、比べるべくもないほど、よっぽど毒男の部屋の方が人の息が感じられる。
ただ一つのことに向かって邁進する人間が唯一安らぎを得られる静寂の寝床と、住人のいない死んだ部屋を比べようなど随分と野暮ったいことをしたものだ。
( ^ω^)(……)
それより何より、あれだけ酷烈な別れ方をした親と今更どんな顔を下げて会えばいいのだろうか、改めてそれを思った。
母を裏切り、父親が違うと暴露された今、家族という繋がりすら危うい。
もう部屋など物置となっていて欲しい、できる事ならばこのまま一生会いたくないと、切実に心が訴えかけてくる。
そのくせ、先の毒男のように恥ずかしがる子供と世話を焼きたがる母親との、ちぐはぐでありながらも魅力的なやり取りに心が揺さぶられてしまうのだ。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 19:55:34.72 ID:xXgwLOaE0
- ショボ相変わらず厳しいなwwwwwwwww
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 19:55:48.72 ID:wB5nWuW/0
- 軽く近況報告をして時間を潰していると、お風呂が沸いたようで、毒男は気遣って内藤に一番風呂を譲ってくれた。
さすがに汗だくのまま浴槽にダイブすることには気が引け、しっかりと体を洗ったのち、湯に浸かって一日の疲労を目一杯流した。
風呂が終わると夕食を馳走になり、ようやく一息つくと、そのビデオに向き合う事となった。
('A`)「それじゃ、再生するぞ?」
( ^ω^)「頼むお」
再生位置を合わせてくれていたのだろう、ビデオを再生すれば、すぐにもKEIRINグランプリの決勝戦が画面に映し出された。
映像ではレース前の「足見せ」と呼ばれる、直前における選手たちの体調や仕掛け方の見せが始まっている。
ここで今回のレースにおける位置取りや隊列が大まかに披露されるのだ。
どうやら布佐と長岡は同じライン(隊列)を組むようだ、これを見て内藤は本当にあの二人が親友なのだなと再認識した。
見た目では些か長岡の方が年上に見えたし、実際資料でも三つ四つ年上だったように思うが、一体どういった経緯で彼らは知りあったのだろうか。
競輪学校では同期のはずだが、歳の差があるという事は長岡は何度か試験に失敗しているのだろうかと、憶測は独り歩きした。
映像を見る限り、出場選手九人は4−3−2の隊列に分かれるようだ、長岡たちのラインは二人しかおらず、人数からして不利な展開が予想される。
それでも布佐が一番人気となっているあたり、彼の実力が飛び抜けているのだとまざまざと感じさせられた。
選手の紹介、そして人気や展開予想についてアナウンスが流れたのち、いよいよレースが始まろうとする。
発射台に構える九人の選手と誘導員、静寂に支配される場内。
そして閃光、鳴り響く音。
いっときの静寂を挟んだ後、場内が一斉に沸いた。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 19:56:38.42 ID:4Ho+dqkCO
- ちょwww競輪とかwwwwwww
テラワクテカスwwwwwwwwwwwwww
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 19:58:12.17 ID:BX6LcyqjO
- シェーンwwwwwww
アーンドwktk
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 19:58:19.92 ID:wB5nWuW/0
- 同時に九人はピストを走らせる、以前観戦した時のように互いが互いを牽制し合う素振りは無く、
事前に打ち合わせでもしていたのかと思うほど九人それぞれがスムーズに動いては、前から3−4−2のラインを形成した。
布佐と長岡の二人組は、布佐−長岡の順で一番後ろに追いやられている。
初めの一周が終わろうとしたとき、布佐と長岡は前の隊列にじわじわとかぶさっていく。
そのままスピードを上げると、誘導員の後ろにまであがり、最前の3人ラインを押しのけて誘導員の直後に割り込んだ。
これで戦況は先頭から2−3−4となった。
('A`)「順当だな、布佐さんの実力、そして長岡さんの番手技術を考えるならこの位置がいいだろうな」
( ^ω^)「番手は……二番手の選手のことだったかお?」
('A`)「そう、番手って言うのは後ろから抜きにかかってくる人たちから、体を張って先行選手……ここでは前を走っている布佐さんを守るんだ。
先頭は当然風を受けるわけだが、その後ろの選手もボーっと風除けをしているわけじゃない、その身で目の前の選手を守るんだ。
共に闘う仲間でもあるからこそラインは大切であり、ライン同士の戦いもあるからこそ強い選手が勝つとは限らないわけだ」
( ^ω^)「おおー、なるほど」
('A`)「番手っていうのは時には体を張るだけに、高い乗りこなし技術が要求されるわけだ」
ラスト二周を合図されると、全体のスピードが一気に加速しだした。
それでも誰一人として疲弊を見せはしない、安定した走りでスピードだけがぐんぐんと伸びていく。
まだまだ序の口なのだろうが、映像でもそのスピード感は手に汗握るほどだ、確かにこれが競輪の頂上決戦なのだと、内藤はごくりと唾をのんだ。
自転車に乗り始めたからこそ、遠目でも分かる、その突出した乗りこなしにスピード。
競輪を実際に行っている毒男からすれば、この何気ない映像からでもいくつもの小さな揺さぶりや打算が見受けられるのだろう。
そして鐘が鳴る、しかしまだ誰も動かない。
見ている内藤の体こそが疼きだすかのような、もどかしい、それでいて一触即発の危険を孕んだ、掘り返されでもした爆弾のようなスリルが背筋を冷えさせる。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 19:59:48.08 ID:BX6LcyqjO
- 関勝利wwwww
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:00:01.17 ID:xXgwLOaE0
- 文章多すぎわろたwwwwwwwwww
リアルタイムじゃ読むの追いつかねえwwwwwwwwww
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:00:11.88 ID:wB5nWuW/0
- そしてもう一度鐘が鳴り、先導がトラックの内に避け、一周半のせめぎ合いが始まった。
誰もが仲間を信じ、そして誰もが一番を目指してこのレースに挑んでいるのだ、その気迫は生半可なものではない。
先導がいなくなるとともにダッシュを仕掛ける布佐だったが、それよりも早く後ろのラインはスピードを上げていた。
三人のラインが布佐と長岡のラインにかぶさろうとしたが、すぐに長岡が横に動いてそれを遮った。
瞬間、三人組の先頭選手と長岡はその距離を紙一枚と通さないほどに接近した。
前輪と後輪が接触したのではないか、長岡は一瞬車体をぶらし、相手選手は大きく外へとふくれあがる。
(;^ω^)「危ないお!」
三人ラインの残りの二人が更に抜きにかかってくる、しかし長岡はさせるかと、すぐにもまた横に動いて牽制した。
先ほどのかなり危険なプレーを見ているからか、それともラインの先頭を失ったことからか、無謀には出れないと、残った二人は一旦引き下がった。
確認すると長岡は再び布佐の後ろについて、そのまま二人してスピードを上げていく。
しかしバンクに差し掛かると、次にはバンクの大外から四人ラインが駆けて来る。
(;^ω^)「今度は四人ライン……これは不利だお!」
それでも布佐はただひたすらに前だけを見て走っており、そこには長岡との信頼が感じられた。
布佐のスピードは相当なものなのだろう、四人ラインの先頭は全ての力を出し切ったのか、ここで脱落して後方へと流れていってしまう。
代わりに二番手が先頭となった三人ラインで、バンクのカント(斜面)を利用してスピードをつけると、カーブの終わりで仕掛けてくる。
もっとも猛然と逃げる布佐にはじわじわと近付くだけだ、一体そのスピードはどれほどのものなのだろうか、内藤には遠く想像に及ばなかった。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:00:13.18 ID:DetrydGMP
- 競輪とかwwwwwwwwww知らねえwwwwwwwwwでも支援wwwwwwwwwwwww
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:00:16.09 ID:EN9NILbDO
- 競輪きておるwwwwwwwwwwwwwwwww
おkwwwwwwwwww全力でwww支援するwwwwwwwwwwwwww
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:02:24.27 ID:wB5nWuW/0
- それでもラスト一周に差し掛かるころには、三人となったラインはすでに長岡の隣に並びかけていた。
しかしバンクに入る手前で長岡は少し外に膨れ、三人ラインに大外を回らせるようし向けた。
ここまでようやく追い付いたというのに、カーブで大外を回っては不利になると算段したか、仕方なく三人ラインは布佐の後ろに付き、2−3の連なった五人ラインとなって一つ目のバンクを超える。
同時、突然緩急をつけて長岡は布佐に並びかけた。
布佐もここで更に体を前傾とする、すでにずっと先頭で痛烈な風とぶつかってきたのだからその疲労は計り知れない、体は大きく左右にぶれる。
長岡に先に出られたことで二人が並走する形となり、後ろから抜くには大周りをする必要がでたわけだが、それでもここで攻めぬわけにはいくまい。
三人のラインは更に大外から抜きにかかってくる。
早くもラストスパートさながらの全生命力を収斂したペダルの回転だった。
尚そうは問屋が卸さない、長岡はさらに外へ向けて膨れて追い越しを妨害しようとしたが、そうすることで開いた布佐と長岡の間に一人の選手が果敢に攻め入った。
初期の三人ラインだ、先頭が脱落してしまったも、残る二人は後方でしっかりと戦況を見ており、今ここがチャンスだと無理やり光明を開けに差し入ったのだ。
長岡はさせるかと、布佐との間を塞ぐように今度は内へと寄ってみせる。
この二人組は一度長岡から引いている、しかしここは間違いなく試合の転機だ、引いてなるかと、構わず長岡と布佐の間をこじ開けようと割り込んだ。
互いに引かない、引けない。
(;^ω^)「ちょwwこれはあぶな――」
長岡とその選手が強く接触した。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:04:39.74 ID:wB5nWuW/0
- 瞬間互いに磁石のように反発し合い、長岡は大外へと弾かれたが、そこには大外から抜きにかかってきた選手がいる。
またそこで強く衝突するが、互いに無理やり体勢を正して持ちこたえた。
しかし接触相手は真横にいた布佐に見事に衝突した。
二人の距離は近すぎた、間髪入れずの両サイドからの激突に相手選手はなすすべもなく、その車体ごと布佐に体を預けざるをえなかった。
ペダルが絡まって鈍い音が響き、後輪が左右に大きくぶれるとそのまま車体は制御不能となり、二名は絡まりながら派手に落車した。
それだけでは終わらない、地面をスライドした体は後続車の進行場所に当たるのだ、後続の選手が二人、転ぶ選手めがけて正面から衝突した。
(;゚ω゚)「……」
目を背けたいほどに酷い状況だった。
転んだ直後の無防備な人間に向け、60km/hではすまないだろう速度のピストが突撃していくのだ。
寝ころぶ選手の姿はすぐにもカメラからフレームアウトしたが、響く阿鼻叫喚から後ろに続く選手と衝突したのは間違いなさそうだ。
カメラは先頭に焦点を当てており、紙一重落車を避けた長岡ともう二人の選手が映っていた。
逸早く体勢を立て直した長岡がピスト一台ほどのリードを保って先頭におり、最後のバンクに突入した。
そしてそのままの勢いで突き進み、後続は追いつくもあと一歩足らずで長岡に勝利を渡していた。
ゴールの映像とともに、カメラは転んだ選手たちを映し出していた。
大慌てで駆け寄る医療班たち、だらんと体を横たえる選手、その数は4人にも上った。
試合の結果は審議中と表示されるばかりで、まだしばらく発表されそうにはなかった。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:05:10.21 ID:9M2n763KO
- 支援
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:07:16.40 ID:wB5nWuW/0
- ('A`)「どうだ、これが件のレースだよ」
( ^ω^)「……。毒男、毒男はこれをどう思うんだお?」
('A`)「どうって、どうもこうもないさ、長岡さんの勝ちだろ」
ビデオでは、ようやく審議の結果が出たようだ。
今回について、布佐と長岡の間に無理やり割り込んだ選手に危険行為があったとみなされ、長岡選手は別段言い咎められることはないそうだ。
(#^ω^)「ふざけるなお、これが競輪なのかお、こんなものが認められるのかお!
危険なのは誰がどう見ても長岡じゃないかお、分かったお、確かにこいつの乗りこなしはすごいお!
でもそれで相手を転ばせて、自分は転ばずに優勝してヒーローだなんて都合よすぎるんじゃないかお!」
これで何を納得しろというのか、これでどうして長岡という男を憧憬できるのか。
確かに彼の言ったとおり、ぶつかりそうになって逃げに回れば同じラインが迷惑を被る、それは分かったがそれとこれは話が違う。
相手を誘導して罠にはめるのか、相手を誑かして勝利さえもぎ取ればいいというのか、だから努力は無駄だというのであれば笑わせてくれる。
(#^ω^)「こんなものが競輪の最高峰だなんて、スポーツなんてものじゃない、やっぱりただのギャンブルじゃないかお!?
僕はギャンブルでも正面向かって競輪は素晴らしいと言えるようになりたかったのに、それがなんだお、こんなじゃトーチャンを馬鹿になんてできないじゃないかお!
結局カーチャンが正しかったのなら、対立してまで僕がこうやって頑張っているのはまったく馬鹿な行為じゃないかお!?」
(;'A`)「……内藤、もしかしてお前、親の了承を得ていないのか……?」
(;^ω^)「あお、お……」
居たたまれぬ悔しさが押し込めてきたせいで、つい口から漏れたのはギャンブルに塗れた父、そして母のことだった。
しかし内藤と親との悶着をくみ取ってくれたか、毒男は強く詮索はしなかった。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:08:41.63 ID:EN9NILbDO
- 支援するうぇwwwwwwwwwww
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:09:32.32 ID:wB5nWuW/0
- ('A`)「あー、俺なんかが何言えるか分からないがさ、このレースにはその後があるんだ」
口をつぐんだ内藤に、毒男はゆっくりと声を出した。
('A`)「日本一決定戦だけに競輪界でも幾度と紛議されたわけだが、判定は当然覆りはしないさ。
しかしながら、当の長岡選手は今ではほとんど試合に出ていない……それもこれに密接に関係していてな。
実は、この事故が原因で布佐選手は競輪を引退したんだよ」
瞬間、横から頭を殴られでもしたかのような強烈な痛みが、内藤の脳裏を駆け巡った。
文句は数多とあるが、それでも先のレースや現在を見れば布佐と長岡が信頼し合っている仲であることは分かろうものだ。
あの二人にこんな過去があると分かれば、途端、まるであの二人の関係がよそよそしいものとすら映るから不思議だ。
(;^ω^)「え……え、そんな……」
('A`)「物議は醸した、しかしそれでもこれが競輪なんだよ、スポーツで審議に文句言うようじゃ話にならん。
これが卑怯だというなら内藤、やっぱりお前の考えはまだ甘いよ。
師匠が言っていたよ、長岡選手は本当に強い、転ぶことも厭わずに攻めてくるのは一緒に走っていても恐怖だって」
(;^ω^)「でも、自分が転ばずに相手を転ばすなんて……」
('A`)「長岡選手が転んだことがないのは、ただ乗りこなしと状況判断能力がいいからだ、それ以外に理由があるか?
師匠のために転びながら妨害する選手だっている、聖職者がやっているんじゃないんだ、スポーツだなんて聞こえがいい、歴とした戦いなんだよ競輪は。
これだけは言っておく、長岡選手は強いよ、ビデオの年でいえば日本で一番強い」
毒男の目つきにあてられ、内藤はとうとう黙り込んでしまった。
何かと長岡を否定したかった浅はかな気持ちが見透かされたのだ。
どこかで長岡を信じていたなど随分と都合のいい話だ、長岡に裏切られたと分かってからそれを口にするようでは自己防衛に過ぎない。
そうだ、内藤は結局のところ彼を否定し続けたかったにすぎないのだ。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:09:37.55 ID:xXgwLOaE0
- みそしるwwwww
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:09:55.69 ID:jqoql9a0O
- うはwwwシwエwンwタwww
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:10:51.15 ID:pavH/Dp8O
- キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
支援
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:11:33.82 ID:g2hfB8qwO
- wwwwwwwwwwwwwwwwしwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwえwwwwwwwwwwwwwwww
wwwwwwwwwwwwwwwwwwんwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:11:34.85 ID:wB5nWuW/0
- ('A`)「競輪選手は文句を言いながらもみなが納得しているさ、あのレースはすべてにおいて、長岡選手でなければできない勝ち方だったから。
そして認めているというのに、長岡選手は布佐選手への懺悔として、以来レースでは無理な行為をしなくなったんだ。
当然成績は芳しくないし、そんな走りでは長岡選手の良さは微塵と出ていない、試合への斡旋回数もぐんと減ったさ」
(;^ω^)「……だからかお、だから長岡選手は引退するのかお!?
誰もが納得しているのに、自分自身が納得できないという理由だけで引退するのかお!?」
('A`)「理由までは知らないよ、だが、それ以外に理由があるか?」
内藤は体の奥底から沸き上がる何かを感じた。
それが何かと問われれば、憤慨という表現がもっとも的確であろう。
試合で負けて。
そして否定するだけの内藤を嘲笑うかのような精美な理由を携えて、長岡は競輪界を去ろうというのだ。
内藤など、陸上では怪我と同時にコーチを酷く恨んだものだ。
何も知らずに全てをコーチのせいだと押し付けていたが、長岡と布佐は違ったのだ。
そう、長岡と出会った時も誰かと似ていると思ったがなるほど、コーチと似ていたからこそこうも素直に受け入れられず否定し続けてしまったのだろう。
彼は真意を隠し、薄汚い言葉を並べるんだ。
( ゚∀゚)『分かっただろう、どれだけ努力しても転んだら終わるのが競輪なんだよ』
転んだ事のない男が吐いたこの言葉、その真意と覚悟。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:12:00.60 ID:Nm7yz17lO
- 支援
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:12:18.58 ID:xXgwLOaE0
- 長岡かっけぇwwwwwwwwwwwww
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:12:49.81 ID:vsZ3MigX0
- 長岡そんな過去があったのか支援
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:13:52.49 ID:wB5nWuW/0
- ( ゚∀゚)『こんな回りくどいレースをせずとも、ここで俺がお前を押したならどうなるだろう?
乗り慣れていないお前は派手に転んで、勝負は決まるんだよ』
( ゚∀゚)『なんだ、納得いかないのか?』
( ゚∀゚)『だったら競輪を止めろ』
なんだ、偉そうに言いながらも最も納得していないのは彼ではないか。
だから競輪を止めるというのか。
(#^ω^)「……毒男、ありがとうだお、今ようやく長岡選手の言わんとしていることが分かったお。
同時に激しくムカついているお。
僕に嫌われながら競輪界を去ろうとしているその性根が、心底気にくわないお!」
内藤は口をへの字に曲げて、やりきれぬ憤りに地団太を踏んだ。
長岡は嫌われたままで勝負に勝ち逃げしようとしたのだ。
母子家庭の内藤へ、まるで父親のように、「いつか言わんとしている事が分かるだろう」などと汚い言葉を残し悪者のまま逃げようというのだ。
絶対に許せないと、理屈を抜きにした感情がほとばしった。
今なら分かる、どうして長岡があれほど大勢の弟子を連れているかを。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:14:09.29 ID:yMth6yD90
- 此処で判明する長岡の真意wwwwwwwwwwやべえwwwwwwwww
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:16:09.12 ID:wB5nWuW/0
- ( ^ω^)「毒男、ありがとうだお、本当に感謝しているお。
そして……すまないお、カーチャンのこと騙していて……」
('A`)「気にすんな、俺もお前にじゃないけど、別件で嘘ついていたところあってさ。
こと嘘つきに関してはもう口うるさく言えないんだわw」
( ^ω^)「?」
師匠との一件を内藤が知るわけもない、毒男は自嘲気味に笑ってみせた。
('A`)「まぁいいよ、でも今回のことを俺に少しでも感謝して貰えるなら、母親にだけはやっぱり納得ずくでこの道に入ってきて欲しい。
あとの判断はお前に任せるよ」
そう言って毒男はバツが悪そうに笑って見せた。
内藤は確信した、数年来にして最高の親友がここにいたという事に。
出会いから関わりに至るまで全ては偶然だった、それでも競輪に感謝したくなるような、大切な出会いだった。
( ^ω^)「毒男、ありがとうだお」
内藤はどれだけ感謝してもし足りないと、深々と頭を下げて見せた。
毒男をほとほと困りながらも、嬉しそうに笑った。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:18:58.64 ID:wB5nWuW/0
- 次の日、内藤は夜が明けたばかりの肌寒さの中、ロードバイクにまたがって国道を走っていた。
前日に毒男の家から帰ってすぐ、内藤は津出に電話をかけていた。
( ^ω^)『津出師匠かお、確か明日は昼からタイムトライアルだったかお?』
ξ゚听)ξ『そうよ、1000mの感覚を体に刻みこまないとね。
そのために、限界まで出し切ってもらうから覚悟しなさいよ?』
(;^ω^)『おっおっ……だったらお願いがあるお』
ξ゚听)ξ『お願い?』
そうして内藤は午前中にロードバイクのフリーライドを設けて貰い、隣県の競輪場を目指してバイクを走らせている最中なのだ。
距離は50kmほどか、しかし途中およそ20km地点に、経由先がある。
経由先に到着すると、活気溢れる声がそこここから耳に飛び込んできた。
内藤は居心地の悪さを感じながら、そしてどんな顔をすればいいのだろうかと悩みながら、大学の敷居内へと足を踏み入れた。
退学をしてから三ヶ月あまり、たったそれだけであったが、余所者という意識は体中に刻みつけられており居辛さが纏わりついた。
もっとも今すぐにもここから逃げたい感情が沸き出るのに関しては退学したからだけでないことは百も承知しているだろうが。
校門を抜けてすぐのメインストレートを直進し、突き当たった先に陸上のグラウンドはある。
遠くから一瞥しただけでも、陸上部員が盛んに練習しているのが見て取れた。
それだけにも関わらず、すでに互いが別世界にいるのだと、なんとなしに思い知らされた。
近くまでおずおずと歩くもグラウンドの中に入るのはとうとう憚られ、脇でぼうと練習風景を眺めていた。
遠目にも確認したが、今グラウンドにコーチと風羽の姿はない、その事に感情はあべこべにも安堵した。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:20:08.04 ID:BX6LcyqjO
- りんりんりんなーごや競輪wwwwww
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:21:46.19 ID:wB5nWuW/0
- すると怪我をしているのだろうか、周辺をゆっくりジョギングしているメンバーが内藤に気付き、細々とした声で挨拶をしてみせた。
無視するわけにもいかず挨拶を返すと、逃げ道はないのだと悟り、コーチを呼んできて欲しい旨を伝えた。
慌てて部室に駆け込んだメンバーだったが、出てきたのはコーチではなく主将だった。
怪我明けの直後、コーチとの諍いで一悶着おこした時に、迷惑をかけた筆頭だ。
後ろめたさも相まって思わず顔のこわばる内藤だったが、やってきた主将も相当に緊張の色が濃かった。
「内藤先輩、お久しぶりです」
あまりに引きつった笑顔にバツの悪そうな表情が痛々しく、内藤は以前の自身の責任にまた呵責された。
こと主将には随分と大きな迷惑をかけたものだ、内藤こそバツの悪そうな顔をしながら、それでも笑顔を絶やさずに声をかけた。
(;^ω^)「久しぶりだお、以前は本当に迷惑をかけた、すまなかったお」
その言葉に安堵したか、主将は口元をほころばせた。
「全然大丈夫ですから、それよりも大学を止められたそうで、気になっていました。
もう陸上は……やはり、止められたのですか?」
( ^ω^)「そうだお、でもまた機会があればやりたくなるかもしれないし、その時にはよろしく頼むお」
「ええ、いつでも来てください、待っています。
いいえ、ついでにこれから一緒に運動していきませんか?」
あまりに優しい言葉をかけられて、内藤は涙腺が緩みそうになった。
陸上では常に一匹狼だっただけに、こういった気を使い合うやり取りというものが皆無だったのだ。
今こうして集団の上に立つ者の気遣いと器量に直面し、以前の自分勝手を心から謝罪したいと思えた。
今の自分が世間へ認められ浸透していくことが感じられ、何かにつけて感謝したい思いに駆られた。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:23:48.60 ID:wB5nWuW/0
- ( ^ω^)「せっかくのお誘いだけど、今日はちょっとこの後の予定が詰まっていて……この借りはまた近いうちに返上するお。
それよりも、コーチはいるかお?」
「はい、ちょっと待って下さい」
するとまた部室へと戻っていった。
元よりコーチは部室内にいたのだろう、それでも再衝突を懸念し、あえて主将が出てきてくれたのだ。
誰もが嫌がる損役をかってでてきた主将の気遣いに、今の内藤は少しくらい報恩できただろうか。
小さく吐息をついた。
今は謝罪と恩返しをするべき時なのだろう。
その相手の一人に今の主将を入れることができた喜び、そして心からの安堵だった。
部室から出てきたコーチに嫌がる顔は一つとしてなく、主将を練習へいくように促すと、一人で堂々と内藤の方へ歩み寄ってきた。
(,,゚Д゚)「おう、久しぶりだな。
わざわざこんな所まで足を運んでもらってすまんな、まぁちょっと飲み物でも飲んで話そうや」
今までの決意はなんだったのか、反省と懺悔を幾度と心で繰り返したはずなのに、いざ会ってしまうと引け目からか、素直に返事をすることすらできなかった。
無言でコーチの後を付いて行き、言われるがままに自販機でスポーツドリンクを買ってもらい、受け取ると近くのベンチに腰かけた。
ペットボトルを少しずつ何回も口につけながら、僅かな時間を稼いでいた。
そんな内藤の心情はお見通しだろうか、コーチはずっと黙っていながらも、内藤がペットボトルに蓋をするタイミングを見計らってゆっくりと話しかける。
(,,゚Д゚)「いい自転車に乗ってるじゃないか、体つきも陸上やってた頃よりがっしりしているな。
怪我はもういいのか?」
( ^ω^)「……」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:26:04.22 ID:wB5nWuW/0
- 瞬間、怪我を思い出したことによる強烈な不安が蘇ったこともあり、またしても返答ができなかった。
心配してねぎらいの言葉をくれる人に向かって感謝も表わせない、あまりにもどかしく苦しいばかりの心境だった。
それでもコーチは内藤の感情を汲み取っては、ゆっくりと話した。
(,,゚Д゚)「本当にすまなかったな、俺もあの後猛省したんだ。
駄目だよな、生徒に向かって子供みたいに躍起に意地を張っているなんて、本当コーチ失格だよ。
あの時、俺もどうかしてた、嫌がる内藤に無理やり200mに出場させたのだから」
( ^ω^)「いいえ」
まるで感情のこもっていない声しか出ず、また内藤は苦しんだ。
自分が悪いことが明白だからこそ素直になれないというちぐはぐな感情は、どうして今日ここに来てしまったのだろうと極疑を招くほどだった。
(,,゚Д゚)「否定してくれるな、あればっかりは本当に俺が悪かった。
内藤がどこか200mを毛嫌いしているのは分かっていたんだよ、なのに俺は結果的に出させてしまった……本当馬鹿だよ。
そんなこと言いながら今もこうしてのほほんとコーチしているんだ、なんていうか、すまんとしか俺も言えないよな」
( ^ω^)「もういいですお、あの件は本当に僕が……いえ、互いが悪かった、それでお相子にするのが一番だお。
ただその後、コーチがせっかく歩み寄ってきてくれた時に僕が突っぱねたから、その件を謝りに来たんですお。
コーチの思いであったり、考えであったり、本当に今になってようやく僕にも分かりましたお、すみませんでした」
ようやく出た謝罪の言葉に、内藤は達成感のあまり脱力しきって涙を流しそうなほど込み上げるものを感じた。
とうとう謝ることができた、素直になれた。
一つ大人になれたのだと、過去の罪をまた一つ払拭できたのだという最高の嬉しさがあった。
コーチが許してくれるとは限らなかったが、これまでのやり取りからして、何よりもそれだけ内藤のことを分かってくれるコーチだ、答えは聞くまでもない。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:28:07.21 ID:wB5nWuW/0
- 顔を上げた内藤に向かい、コーチは頭をかきながら悔しそうな顔をしていた。
(;゚Д゚)「あー、なんだお前に謝られちゃどうしようもないじゃないか……参ったな……。
お前とようやく心が通じ合えたんだって思うと顔が笑いそうになってしまって仕方ないわ、あー、笑っちゃいかんだろおれ」
そういいながらも、緩みそうになる口元を必死に我慢してる顔は滑稽なだけだ。
自然と内藤の顔にも笑顔が張り付いた。
( ^ω^)「コーチ、今さら手遅れだけど、今までありがとうございましたお、ただそれが言いたかったんですお。
新たな道へと進む前に、こうしてけじめをつけたかったんですお」
(,,゚Д゚)「そうか、本当嬉しいよ、あー駄目だ歳食うと涙もろくなっちまう、あー……くそ。
それでなんだ、陸上に戻ってきたのかと思えば……新しい道だって?」
( ^ω^)「競輪です、二週間後には競輪学校への入学試験があって、その前に何としても来ようと思ったんだお。
コーチとの蟠りを残したままでは、とても新しい道へ進めなどしませんお。
全ての過去を清算してから、僕の第二の人生の門出はしたかったんですお」
先ほども「どこか200mを毛嫌いしている」と言っていたか、次は「陸上に戻ってきたのかと思った」などとコーチは内藤に気を使ってか、何も知らぬ素振りをしていた。
競輪を目指していることを知らぬわけではないだろうのに、それをこの期に及んで隠そうとするのだからまた侮れない。
だからこそ内藤はコーチが何も知らないものとして競輪を目指すに至る過程を一から話した。
競輪選手というその響きからやはりギャンブルを連想したのだろう、心配そうな目を向けたりと些細な演技を欠かさなかったが、内藤の話をしっかりと聞いて同調してくれた。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:28:47.58 ID:mCELCeUQ0
- 初遭遇ktkr
全力で支援
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:29:25.19 ID:jqoql9a0O
- 支援しるwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:30:03.78 ID:wB5nWuW/0
- ゆうに半時間は語り合っただろうか、互いのしこりは完全に払拭され、良き信頼者同士として打ち解けあっていた。
しかし内藤には昼からの予定がある、長居はできないと、名残惜しくも重い腰を上げた。
(,,゚Д゚)「そうか、用事があるなら仕方ないか……またいつでも来てくれよ、俺が助けられることなら何でも手を貸すからよ。
いや、ぜひ頼ってきてくれ、待っているからな!」
( ^ω^)「よろしくお願いしますおコーチ、絶対に近いうちに顔を見せますから、次は一緒に食事したいお。
あ、あと最後になりましたけれど……」
内藤はここで息を吸うと勿体付けて、そして最後まで競輪について知らん顔を通したコーチの鼻を明かしてやろうと、最高の笑顔とともにこう言った。
( ^ω^)「コーチ、あの時津出師匠に助言いただけ、ありがとうございましたお。
きっとあれがなければ僕は今日こうやってここに来ることもなかったし、競輪という道も断念していたに違いないお」
以前、内藤が津出に隠れて練習していた時に電話で師匠に警告をしてくれたのだ、コーチが内藤の事情を知らぬ訳はあるまい。
してやったりと、しめしめ顔に悪戯笑顔を貼り付ける内藤だったが、一方のコーチはまだ状況が理解できていないか、眉間にしわを寄せるだけだった。
そして首をかしげた。
(,,゚Д゚)「内藤、助言だなんて俺には心当たりがないんだが……」
( ^ω^)「もういいですお、分かっていますお。
コーチが津出師匠に電話してくれたんだお?」
(;゚Д゚)「いや、そもそも津出って誰のことかさっぱりなんだが……」
内藤がずっと勘違いしていた自分に気付いたのは、この時ようやくだった。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:33:54.94 ID:wB5nWuW/0
- 内藤はコーチと別れると、そのままロードバイクを更に30km走らせた。
町中を縫うように走り抜けねばならず、長い信号に車と接触しそうなほど狭い道路もあったりで思うようにスピードは出せず、結局目的地に着いたのは一時間半以上後だった。
いつも練習している海岸通りなどがいかに走りやすい場所であったことか、一時間余りで到着するかと思っていたが、とんだ誤算だ。
目的地である競輪場へ到着するころには、約束相手が首を長くして待っていた。
ξ#゚听)ξ「内藤……ようやくお出ましね、師匠を待たせるとはいい度胸じゃないの」
県境、厳密には県を跨いだ場所に位置する競輪場、内藤が毒男と初めて競輪を見に来たのがここだ。
内藤たちが普段使っている競輪場よりも施設自体が大きく、隣接する野球場のためもあって駐車場は雄大だった。
(;^ω^)「申し訳ないお、ちょっと公道を甘く見ていたお……。
所歩も、わざわざ僕のピストに乗ってきてくれて感謝だお」
((*´・ω・`))「ふっ……ふふっ、いやぁいいさ構わないよいつでも僕に任せてくれよ。
津出とのツーリングを非常に満喫させて貰ったよ、もう興奮から今晩は寝れんかもしれないね……ふ、ふふ」
(;^ω^)(うっわ、また何か変なキャラクタが発病してるお……)
ξ#--)ξ(つーか女性として見られずそんなことを言われるのは非常に不快この上ないわ……!)
津出が不機嫌なのももっともだ、およそ50kmもの道のりを、フォームをジロジロと眺められながら走るなどとても気分良いものではない。
相手が毛嫌いしている所歩であれば殊更だ。
気味の悪いベロリと舐めるような視線を想像しては、蟻走感から無数に鳥肌が粟立った。
内藤は津出に謝罪し、所歩からピストを受け取ると、代わりにロードを預けた。
そして赤いピストを手に「おしっ」と気合いを入れ直した。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:36:03.00 ID:wB5nWuW/0
- ξ゚听)ξ「内藤、今さらかもしれないけれど……何する気よ、あんた?」
わざわざ50kmも離れた競輪場に来て、しかも所歩にピストまで持って来させたのだ。
その真意は聞かずとも知れていた。
( ^ω^)「当然この競輪場の長、長岡選手にリベンジだお!」
その言葉を待っていたと津出はクスリと笑みを漏らし、所歩も……いや、今の彼は少し置いておこう。
ピストともに場内へと入れば、そこには何十人もの生徒が切磋琢磨し合っていた。
その中で声を張り上げる一人の男。
(#゚∀゚)「ほらほら、なにやってんだだらしねぇ、もういい、止めちまえ!
そんなへたれた走りを他の奴らにまでうつされたんじゃかなわねぇ!」
(;・∀・)「はぁ、はぁ……すんません……」
(#゚∀゚)「もういいよ、お前の午前練は終わりだ、とっととあがれ。
お前は所歩の負けて以来、めちゃくちゃだらしなくなったな。
もっとやれるヤツかと思っていたが見込み違いらしい、腑抜けって言葉がぴったりじゃねーか」
(;-∀-)「……ほんとうすみません」
きつく言われ、悔しさに歯を食いしばりながらとぼとぼと足を進める茂羅だったが、客人に気付いて顔を上げ、次に声を上げた。
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:38:07.49 ID:wB5nWuW/0
- (;・∀・)「おまえたち……」
( ゚∀゚)「なんだ……っと、今度はそちらからお出ましか?」
長岡は今しがたまで強く尖らせていた口元を緩め、いつものふざけた笑いに変貌した。
まるで歓迎するかのように両手を広げて見せると、彼自ら内藤の前へと歩み寄る。
( ゚∀゚)「どうしたよ、何の用だ?」
(#^ω^)「道場破りに来たお!」
内藤も負けじと歩み出し、二人は対面した。
(#^ω^)「僕と勝負しろお、負けたら今日一日、この競輪場を僕たちが貸し切るお!」
挑発する内藤に対し、長岡は派手に笑った。
( ゚∀゚)「確かお前たちの競輪場は今日が試合で使えないなんてことはなかっただろ、なのにどうしたんだよ。
なーにそんなに意気込んでんだ、そうか、追い出されたのか?w」
(#^ω^)「逆だお、ふざけたお前を競輪界から追い出しに来たんだお。
以前にそっちの喧嘩は買ってやったんだから、断る道理はないお」
( ゚∀゚)「ああ、そうか一緒に走ろうってのか、ちょうど練習も一段落ついたしいいぜいいぜ、追い出せるもんなら追い出してみろや。
茂羅、ちょっとピストを貸してくれ。
お前はもういい、ロードで疲労抜きしてろ、昼から練習もあるから覚悟しておけよ」
(;・∀・)「あ、……はい」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:39:28.67 ID:wB5nWuW/0
- 長岡は弟子に持って来させたヘルメットをかぶると、適当に見つくろったシューズを履いてベルトでペダルに強く固定した。
そして内藤に向かってこう提案してみせる。
( ゚∀゚)「俺はここを賭ける、負けたならこの競輪場は自由に使うがいいさ。
だが、だったらお前は何を賭けてくれるんだ?」
(#^ω^)「僕が負けたら所歩をやるお!」
(;´・ω・`)「うぉい!」
( ゚∀゚)「いいだろう、交渉成立だ」
不敵に笑む長岡に対し、内藤はその目つきを寸分とも和らげずに勇み立っていた。
(#^ω^)(絶対に……ぶっつぶすおッ!)
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:41:28.67 ID:wB5nWuW/0
- 以上で第二十六レース終了です。
十一が九中に投下するといっておいておよそ一ヶ月のスパンが空く始末、申し訳なかったです。
終わりも違いので、早い目に投下していけるといいのですが……。
何かありましたらお願いします。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:45:14.77 ID:9M2n763KO
- 乙
初遭遇
他になんか作者の作品ある?
あるなら読んでみたい
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:45:25.08 ID:hFe8Na0BO
- >>49
十一月中かな?
乙乙乙乙乙乙
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:47:15.23 ID:wB5nWuW/0
- 第二十七レース「長岡と布佐」
季節を間違えたのではないかと思うほど、その日は照り返しが厳しく、こと競輪場内は熱気も相まって蒸し風呂のようだった。
周囲を高々と取り囲む観客席が風を通さず、植物であるまいにトラックは太陽をひたすらふんだんに吸収していた。
絶好の勝負日和であろう、暑さにもかかわらず内藤は興奮から体が震えるのを感じた。
( ゚∀゚)「大丈夫か、怖いのか?」
発射台に構えながら、試合寸前にまでおどけて見せる長岡だったが、内藤は微笑もせずに真っ直ぐな目だけを向けた。
( ^ω^)「今しがた……ちょうどここに来る前に、昔の僕と昔の長岡選手にケリをつけてきたお。
この状況で恐れる要素があるなら、ぜひご教授いただきたいものだお」
( ゚∀゚)「昔の俺……?」
( ^ω^)「他人の空似だお」
言うと同時に興味を失いでもしたかのように、内藤はその目を正面に向けた。
明鏡止水、完全な集中状態に置かれた体はもう寸分とも震えることはなかった。
そんな彼を見て、やはり長岡は笑みを止めることはできなかった。
どうしてだろうか、集中する気もやる気も起きずに、ただ『本気で戦おうとする相手』を小馬鹿にでもするかのように無駄に落ち着き払っていた。
そんな場違いさが笑みを誘発するのだろう、集中もそぞろにピストに構える。
並ぶ二人の前で、所歩が片腕を上げ、電子ピストルを構えた。
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:47:32.09 ID:BX6LcyqjO
- 乙!
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:48:37.18 ID:wB5nWuW/0
- ( ゚∀゚)(昔の、俺か……)
長岡はなお全く集中できず、それどころかつい懐古してしまう始末だ。
昔の自分、ふとそう言われても、性格などはすべてぼやけており、鮮烈に脳裏に浮かぶことなど殆どなかった。
バイクに熱心に打ち込んではいたがそれがすべてとも思っていなかったし、かといってその他の道を目指していたわけでもない。
今の自分とどこが違うのか、明確な違いを述べることはできなかった。
確実に違う事だけは分かっていたが、やはり、決定的な違いが何であるかは自分でも分からなかった。
長岡が溜息を吐くと同時、破裂音が響き渡り、スタートの合図が鳴った。
はっと現実に引き戻された長岡は名残り惜しく思いながらも気持ちをレースに向け、ぐっと発車台からピストを発進させた。
特に気合を入れたわけでもなく、のんびりとした発車ではあったが、隣の内藤とほぼ同等のスピードによるスタートだった。
なるほど、内藤もサボっていたようではないらしい、といってもまだまだ荒削りのスタートではあったが、いっぱしの滑らかさは手にしたようだ。
今回はどのように戦おうか、長岡が悩む必要はなかった。
内藤は風除けにされることを承知で、そのままピストを強くこいで前進していく。
遅れてなるかと長岡もそれに続き、内藤の背後にぴったりとくっついた。
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:50:26.72 ID:9M2n763KO
- なんと27話
支援
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:51:03.04 ID:yc/gtoF0O
- すげ、2話かw支援
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:51:33.83 ID:wB5nWuW/0
- ( ゚∀゚)(何のつもりだ……?)
太陽が強く照りつけており風は立ち止まっている分には感じないがスピードを出せば勝手に生まれるものだ、風除けの絶大な効果は顕在する。
現役競輪選手である長岡に、風除けに使われて勝てると思っているわけではあるまい、だというのに内藤は自ら迷うことなく前へと進んだのだ。
訝しげに思いながらも、そこから何をされようとも負ける気はさらさらない、長岡は引き離されぬようしっかりと追従した。
前回よりも内藤のスピードは速い、風が吹いていないことを考えても、なかなかにハイペースだった。
( ゚∀゚)(持たないだろ、一体どこまでこの無茶を続ける気だこいつは……?)
一周が終わってもまだ内藤は平気そうだったが、そこから突如襲いかかってくる乳酸により一気に足の感覚が失われる。
鈍くなった太ももはまるでゴム毬のようで、どれだけ力を込めても力を吸収しつくしてしまい、ペダルにまで力が届かないかのようだった。
酸素をかき込んだ瞬間に足が崩れ落ちるのではないかと思うほどに、筋肉はキリキリと悲鳴を上げていた。
(;゚ω゚)「くおっ……!」
途端ガクッと落ちそうになる速度を立て直そうととするが、距離はまだ半分を通過した程度だ。
先の長さが無意識に無茶をせき止め、内藤はゆっくりと減速していった。
肩がぶれ出した彼に気付くと、長岡はチャンスとばかりにすぐに彼の隣に並びかける。
( ゚∀゚)「どうしたよ、早いな、もう終わりか?」
(;゚ω゚)「いや、まだだお……」
体が辛くとも、呼吸を荒げようとも、まだ内藤はこぎ続けた。
以前のように情けない走りではない、減速しながらも、しっかりと車体を前へ前へと動かした。
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:53:37.69 ID:wB5nWuW/0
- ( ゚∀゚)(ほーう、なるほどな……)
以前よりも速く長く走ってみせる、それだけなのだ。
以前の自分は本当の力を出し切れていなかったと主張したいだけなのだろう、本当の自分はもっとできるのだと見せたいのだろう。
本当の力を見せれば認めてもらえるに違いない、そんな風に思って挑んできたのだろう。
正に単細胞、小学生でもできそうな模範解答だと、長岡はほくそ笑んだ。
( ゚∀゚)「内藤、正直どうだ、辛いだろう、もう止めたいだろう?」
(;゚ω゚)「……。辛いお、でも、まだ、いくお……!」
( ゚∀゚)「もういいよ、どう考えてもお前が俺に勝てないのは明白だろう、いい加減休ませて……やろうか?」
長岡がバー(ハンドル)から片手を離し、内藤の方へと翳した。
そして車体を近付けていく。
しかし、内藤は寸分たりとも引かなかった。
(;゚ω゚)「やってみろお」
( ゚∀゚)「この前俺が言ったこと気にしてんのか?
痩せ我慢すんなよ、本当は怖いんだろ?」
(#゚ω゚)「怖いお、それでも、やれるもんならやってみろって言ってんだお!」
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:55:51.07 ID:g2hfB8qwO
- wwwwwwwwwwwwwwwwwしwwwえwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwんwwwwwwwwwwww
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:57:16.63 ID:9M2n763KO
- しえん
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:58:24.65 ID:wB5nWuW/0
- 挑発的に、どすの利いた声に長岡は一瞬体を強張らせた。
内藤はすべてを知っているのだ。
長岡が言いたかったことは、転ぶことを厭わずに努力を続けられる者こそが競輪を目指すべきだということ。
そして長岡こそが捨てるべき立派なスポーツマンシップを携えているということを。
(#゚ω゚)「そっちから来ないなら、こっちから行ってやるお!」
逆に内藤から長岡の方へと幅寄せしだした。
内藤が乗り慣れていないのは明白だ、そしてぶつかることを恐れているのも小刻みに震える前輪を見ればよく分かる。
そうでなくともすでに減速気味の全力走行なのだ、そんな状態で接触しようものなら体勢を立て直すことすらできずに酷い落車をするのは目に見えている。
そう、このままでは内藤は、間違いなく転ぶ。
内藤と長岡が僅かに接触した瞬間、長岡は恐怖から体を引き離した。
瞬間止まる足、瞬間跳ねあがろうとする車体、普通であれば間違いなく転ぶだろう程に長岡はその体が傾いた。
必死に車体を立て直すが、一瞬にしての激しい減速は避けきれない。
先にカーブへと入った内藤を前方に見据えながら、減速しながら大きく膨れ、大外からカーブへと侵入することとなる。
(;゚∀゚)(くそが、やられた……!!)
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:59:18.10 ID:IvNyjCcyO
- お、ついに投下か!
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 20:59:38.77 ID:wB5nWuW/0
- (#゚ω゚)「……フーッ、フーッ!!」
僅かに肘が相手と触れた瞬間、ビクッとバー(ハンドル)が動いただけで内藤は転ぶ自分が鮮明に連想させられ、一瞬の恐怖に呼吸すら忘れた。
次いで何事もなかった安堵に、大きく息を吐きながら呼吸とペースを落ち着ける。
一度大きく減速するも、すぐに体を持ち直して少しでもと速度を上げにかかった。
そう、内藤は完全に見抜いていたのだ、長岡が他人を故意に転ばせられないという事を。
内藤が転ぶことを懸念し、身を引くことを。
(;゚∀゚)(クソ、このヤロゥ……クソ、クソォ……!!)
そうだった、ずっとそうだった。
あの日、旧友の夢を奪い去ってしまったあの日より、長岡こそが誰よりも接触を恐れていたのだ。
それ以来『競輪』ができなくなってしまったのだ。
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:02:00.53 ID:wB5nWuW/0
- 長岡と布佐は互いに幼い頃より頻繁に大会に出場していたが、界隈の大会に出場する子供といえば数は少なく、睦まじい仲になるのは必然ともいえた。
二人が会話をし、互いの家を行き来したり共に練習をするまでの仲になったのは、長岡は中学三年生で布佐は小学五年生の頃だった。
当時こそ長岡の方が速く兄貴分であったが、布佐は中学に才能を開花させ、すぐにも二人は勝負をしてもトントンな最高の好敵手になった。
二人のライバル意識はすさまじく、長岡は布佐と一緒に競輪学校へと行くがために、大学を卒業して欲しいという親の願いを聞き入れたほどだ。
四年の歳の差は、競輪学校への同時入学とともに消え去った。
年齢の関係がない、同じ土俵での勝負に二人はより気持ち昂らせ切磋琢磨し合ったことは言うまでもないだろう。
常に二人は良い戦いをしたが、実際のところ勝敗でいけば布佐の方が勝っていた。
だからこそ劣等感ゆえに長岡は練習に励んだし、そのくせなんだかんだだと言っても年上という事もあってか、布佐の面倒もよく見てやっていた。
そこには『友情』などと一言では表せる事の出来ない、様々な感情が含意されていた。
熱意や負けん気は当然、嫉妬や劣等感など負の感情も交錯していたが、それ以上にライバルという事を無視した相手への期待感や羨望、そして競合感。
表面上は互いの勝ち負けを気にしながら、いつか二人して競輪世界に新しい風を吹き込もうと、一度も言葉にせずとも共有し合っていた夢だった。
KEIRINグランプリは、そのスタート地点だったのだ。
そこで友を蹴落として、スタート地点に一人で立ったのが、長岡なのだ。
言い訳など無い、ただ一人の親友の人生を殺したのだ、そして自分だけが夢のスタートに立ってしまったのだ。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:05:30.13 ID:wB5nWuW/0
- 共に走る相手のいない二人三脚など成立しない。
二人で共に抱いた夢、「二人して競輪界に新しい風を吹き込もう」という夢、それが自分の手によって消え去った瞬間だった。
その時の無気力さ、虚空な心は人生の価値がなくなった、まるで自殺する寸前の人間の心境と酷似していたことだろう。
長岡は誰に告げることもなく走ることから遠のいていったし、布佐もショックからそれに関しては何も言えなかった。
日本一は確実だと、競輪の歴史に名を残すとまで謳われただけに、布佐がどれほどショックを受けたことだろう。
他人を気遣う余裕などありはしないのは当然だろう、誰もそれを責めることはできない。
今となっては布佐も反省している、あの時「俺の分も頑張って走ってくれ」と一言でも声をかければ、まだ違う未来となっていた可能性があるのだ。
それでもその一言がとうとう言えず、時が経過して言った結果、二人は仲睦まじいままにして当時のことについては一度も触れることができない、
虚構の友情というママゴトを演じ続けることとなってしまったのだ。
それからだった、長岡は弟子に口酸っぱくして「転ぶことを厭うな」と言うようになったのは。
長岡自身心の整理はついていない、普通であれば「絶対に転ぶな」と言うべきなのかもしれないが、人とはどうして巧妙で理解できぬように作られているものだ。
まるで自分の懺悔でもあるかのように、そして他人を転ばすことを恐れる自身に諭すかのように、長岡はひたすらに固執していた。
試合に出なくなったのも件が原因だった。
弟子が出る試合に励みとして出場するくらいで、試合回数は激減した。
残る時間はひたすらに弟子の育成に気を使った。
布佐を失わせてしまった懺悔としてできることは、彼を超える選手を育てあげ、新しい風を作ることだった。
(;゚∀゚)(くそ、負けらんねぇ……なんで負けなきゃなんねーんだよ、なんで……ぶつかられて、ふざけんなってんだくそぉ……!)
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:07:54.78 ID:BX6LcyqjO
- ほいほいwktk
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:08:09.23 ID:yc/gtoF0O
- ショボにしろ長岡にしろ、読み進めるとムカつく奴がいなくなっていくな。
本当に面白いわ。
支援
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:08:12.17 ID:wB5nWuW/0
- 从#゚∀从「師匠ッ! 何やってんだ、頑張れーっ!!」
(;゚∀゚)(……!)
そんな長岡にとって、最も心を安定させられたのが、高岡の存在であった。
師弟関係を結ぶ前より才能の塊であったが、長岡が試合に出なくなって以来、想いに応えるかのように一気に才能が開花したのだ。
きっと分かっていたのだろう、長岡が布佐を超える人材を求めていることに。
師匠の期待にこたえるために、高岡は忠実に、完璧に成長を見せたのだ。
从#゚∀从「師匠ー!!」
「何やってんすか、負けたら承知しないっすよ!」
「そんな情けない師匠見たくないっす!」
「ほら、そろそろ本気を見せてくださいッ!」
(;゚∀゚)(お前ら……くそ、ここで負けてちゃ、確かにもう見せられる顔がねーよッ!)
(;^ω^)(長岡選手……)
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:10:59.54 ID:wB5nWuW/0
- 津出がコーチと内藤の仲たがいを知った時に言っていた、教え子に非難されていないなら、それは人望ある最高のコーチであるのではないかと。
まさにそれだった、口が悪く、へそ曲がりな性格ではあったが、確かに長岡は弟子たちから絶大な信頼を得ていた。
なぜだろうか、内藤は嬉しさに口元を緩め、疲労が僅かに抜けていくのを感じた。
悪役か、それもいい。
内藤はスピードを落とさぬよう、必死にピストをこいで逃げの態勢に入った。
距離はゆうに数十メートルは離れているだろう後方で、長岡はじわじわと距離を詰めていく。
限界まで上げきった太股は膨れ上がった筋肉に内から圧迫され、今にも表面がひび割れて砕けてしまいそうだった。
脚のあらゆる場所が疲労から限界を訴えてくる、それでは駄目だと力を入れられる個所を探すが、どこもかしこも力を入れられることを断固として拒んだ。
仕方なく腕に力を入れる、それだけでもまだ神経が生きていることが分かった。
体ばかりが前へ行こうとする、過剰に前傾になってスカスカの足を必死に回しているだろう自分を客観的に想像すれば、ひどく滑稽だった。
それでも体勢を崩した途端体が止まってしまう恐怖に襲われ、『楽』から『苦』へと向かって必死に逃げた。
今足を止めてしまえばどれだけ楽であろうか、どれだけ幸せであろうか。
内藤の隣に長岡がいよいよ、並びかけた。
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:13:03.47 ID:wB5nWuW/0
- (;゚∀゚)(くそったれ、なんでこんなクソおっそいペースで必死になんなきゃなんねーんだ、ざけんなっ!)
内藤に抗う気力は残っていないかに見えた、しかし並びかけるも抜き去れない必死の長岡を見てしまっては、素直に諦めきれない。
走り終えて足がボロボロに砕け散ってしまったもいい、だから今ここで、あと一歩、あと一息、たった一秒粘るだけの力をくれ。
(;゚ω゚)(おおおおおお、無呼吸だお、魂よ抜け出るなあああああ!)
出刃包丁を勢いよく振り下ろしでもされたかのような、激しい膝への熱と衝撃。
痛み以外の感覚は無く、その下にはただ鉛がぶら下がってでもいるような、新手の拷問のような厳しさが限界の体と心を荒々しく摩耗した。
限界を表わす砂時計の最後の数粒が、スローに落ちていくようなイメージが頭に沸いた。
ピストにおける1000mタイムトライアルでは、比喩でなく百分の一秒を競うシビアなものである。
それだけでも分かるだろう、1000mにおいて百分の一秒はそれほどに大きなものであり、
カーブを少し大回りでもすればそのロスは窺い知れない、大外など回ってみろ、普通であればその差など埋められることはできやしない。
ゆうに十メートルを超越した差がうまれていた、更に無茶な減速をしてしまっていたが、さすがに長岡はトップ競輪選手だ。
内藤がずっと風除けをしていたこともあるのだろう、絶望的なほどの差を、限界まで出し切る事ですべて埋め尽くしてしまった。
初心者対現役選手、設けられた膨大なハンデ。
互いにとってなんと無様な戦いだろう。
二人は最後のカーブを曲がり切り、ラスト50mの直線に並列に突入した。
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:14:45.80 ID:HweWCmfP0
- しえん
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:15:13.22 ID:wB5nWuW/0
-
ξ#゚听)ξ「内藤ー、ぶった切れーッ!!」
从#゚∀从「師匠ー、ぶっ潰せーッ!!」
激しいペース変動からか、所歩と戦ったときのように綺麗に全力を出し切って酸欠になりそうにはなく、頭は冴えていた。
冴えているからこそ抱えきれないほどの疲労を細かに感じ取っては、鮮明な意識にも拘らず体に力が入らない、よりもどかしい走りだった。
神経はまだまだ走れるように感じるというのに、体ばかりが限界を超えていた。
二人してそんなもどかしいつまらない走りをしているのだ、スピード感も何もない、あるのは必至で不細工な走りと表情だけだ。
(;゚ω゚)(こいつにだけは負けたくない……!!)(゚∀゚;)
だからこそ、互いに自分がゴールする瞬間と相手がゴールする瞬間をコマ送りのように、スローに見ることができた。
ほぼ同時だったにもかかわらず、どちらが先にゴールしたかが分かるほどに二人の神経は尖りきっていた。
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:17:21.90 ID:A+SiZ/LlO
- 来てたのか!
wktk支援
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:17:25.58 ID:wB5nWuW/0
- 二人はゴールするとすぐにもピストを止め、クリップバンドを外して固定したシューズを脱ぐと、そのままピストを降りてごろんと寝転んだ。
なまじか鮮明な意識が疲労を感じて息苦しさに拍車をかける、足は小刻みに震えており、しばらくはとても立ち上がれそうにはなかった。
(;゚ω゚)「あ゙あ゙ーーーッ!!」(゚∀゚;)
(#゚∀゚)「くそったれ、なんで最後の最後で粘るんだよ、初心者のくせに限界まで追い込むすべ知ってんなっての!」
(#^ω^)「なんであそこから追いつけるんだお、カーブの時点でとっとと諦めろっていうんだお!」
駄々をこねる子供のように、仰向けで地面を叩きながら喚いた。
「自分の走りの情けなさ」などどうでもいいのだ、「相手がすごかった」のだ。
この勝負がここまで白熱してしまったのは「己が情けない」のではない、「相手が強かった」ただそれだけなんだ。
(#゚∀゚)「くそったれ、約束は約束だ、いいさ自由に競輪場を使え!
その代わり今日だけだぞ!」
(#^ω^)「何言ってんだお、情けはいらねーお、とっとと所歩を持っていけお!」
(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:19:33.51 ID:wB5nWuW/0
- (#゚∀゚)「……なんだ、こっちこそ情けはいらねーぞ、俺は見た、間違いなくお前がコンマ一秒早く、ゴールを跨いでいたよ。
あー、こんな事言わすんじゃねぇよ!」
(#^ω^)「こっちの台詞だお、お前たった一刹那早く僕よりも先にゴールしたからって調子のんなお!
間違いなく見たお、お前の方が速かったお!」
周囲から観戦していた者達には同時ゴールに見えた、真実を知っているのはこの場では内藤と長岡の二人だけだ。
しかし二人は相手の勝ちを断固として譲らない。
本当はどっちが勝っていたか、真実は二人共に分かっていたが、片方がそれを黙ってしまえば証明する術はどこにも無かった。
(#^ω^)「くそ、同着かお……あれで勝たなきゃどうやって勝てって言うんだお……」
(#゚∀゚)「あー、なんで初心者と、しかもあんなスローペースで同着になんなきゃいけねーんだよ、自信失うじゃねーか!」
本当の勝者と敗者、嘘つきと正直者。
それらは二人だけが胸に秘めることだ、他人が知るのは野暮だろう。
やっとのことで呼吸が整うと、二人は上半身を起して汗をぬぐい、座ったまま話した。
(;゚∀゚)「内藤、このリベンジは絶対に果たすからな、覚えておけよ。
次こそはケッチョンケッチョンにしてやらあ」
(;^ω^)「こっちの台詞だお、次の勝負はいつにするお?」
(;゚∀゚)「次は……そうだな」
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:20:03.82 ID:xDcmH1DR0
- 所歩wwww
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:21:32.23 ID:wB5nWuW/0
- 長岡はこぶしを内藤に向けたかと思うと、親指だけを下にした。
( ゚∀゚)「日本一決定の舞台、KEIRINグランプリで待ってる」
本当にムカつくヤツだお、内藤は小声で漏らしながらも口端が上がるのをおさえきれなかった。
お返しにと、長岡に向かって親指を下げた。
( ^ω^)「絶対に行ってやるお、上り詰めてやるお。
だから……引退なんてするんじゃないお?」
( ゚∀゚)「ああぁ? 当ったり前だろ、誰が引退なんかするかっての。
ちょっとここ数年は調子悪くてご無沙汰してるが、もう一回KEIRINグランプリに返り咲いてやらぁ。
十年は待ってやるよ、しかも頂上でな」
从 ゚∀从「師匠、残念ながら頂点には俺が立つんで、二番手でお願いします」
(´・ω・`)「キミこそ発言がとても残念だね、僕がいる以上、どうやら君の師匠は三番手になりそうだ」
从#゚∀从「どういう意味だよ、言ってみろオイコラ……」
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:23:23.09 ID:wB5nWuW/0
- 競輪は国内でプロ選手が最も多いスポーツと言われている、その中の選ばれし九名だけが権利を手に入れられるKEIRINグランプリ。
世界最高額の賞金のかかった公的賭博であり、王者を賭けた最高峰の戦いは、まだまだ内藤にとっては語るも馬鹿にされるような話ではあるが。
頂点へ返り咲く者。
頂点を目指す者。
頂点を手中に捉える者。
そして、まだ基礎すら出来上っていない者。
今その場においては、すべてが平等であり、皆が皆、好敵手であり戦友であったのだ。
長岡はグッと空を仰いだ。
( -∀-)(高岡、所歩、そして内藤……こいつら全員超えて、俺は再び頂点に立ってやるよ。
布佐、お前の分まで風をおこしてやる、お前がいなくても俺は一人でやってやるよ。
だから……頼むから、俺を応援してくれよな……)
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:23:39.15 ID:BX6LcyqjO
- wktk
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:25:56.60 ID:L0eiQAHC0
- wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
wwwwwwwwwwww
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:27:18.05 ID:wB5nWuW/0
-
その後、内藤たちは長岡やその弟子と一緒に昼食をし、別れを告げる頃には皆がそれぞれ打ち解けあっていた。
内藤は長岡の弟子数人と試験を共に頑張ろうと約束し、現役選手数人と試合で会おうと約束し、長岡と頂点の決戦で再戦を約束した。
そして正午を超えて14時、午後練習を始める長岡たちと別れ、三人は帰路に着くことにした。
ξ゚听)ξ「所歩、あんたは帰ってから本格的に練習始めるんだから、覚悟しときなさいよ?」
(´・ω・`)「それは承知さ、試験もとりあえずは気にしなくてもいいからね、言われずとも毎日しっかりと追い込むつもりだよ。
さて、と……それで内藤、君はロードとピスト、どっちに乗って帰る気だい?
それによって僕の手段が変わるものでね、結構厳しい登り坂もあるからロードをお勧めするけれど」
( ^ω^)「お言葉に甘えてロードに乗るおw
所歩は僕のピストに乗って帰ってもらえるかお、まだちょっと行くところがあるんだお。
ツン、借り物のロードバイクだけれど、長岡選手にお願いしてここの競輪場に預けていってもいいかお?」
ξ゚听)ξ「預けるって、あんたどうするの?」
( ^ω^)「明日には取りに来るお、でも向かうところが田んぼ道だからロードバイクは厳しいお……
とりあえずは電車でこれから実家に帰って、カーチャンと話ししようと思っているんだお」
ξ#゚−゚)ξ「そう……分かったわ。
でもあんた、明日の練習はどうする気よ、今日は簡単な練習になっちゃったし、明日は厳しくいこうと思っていたのに……
まぁいいわ、休みを入れたいなら好きにすればいいじゃない」
口先を尖らせて、納得していない様をありありと出しながら突っぱねる津出はすぐにも帰ろうとして見せたが、内藤は慌てて呼び止めた。
彼は渋りながら、おずおずと声を出す。
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:29:01.77 ID:wB5nWuW/0
- (;^ω^)「それで……ちょっと、聞いて欲しいことがあるんだお。
たぶん驚くかもしれないお、でも驚かずに聞いて欲しいお。
気のせいかと思っていたけれど、さっき試合していてやっぱりもしかしてだなんて……」
ξ#゚听)ξ「あー、そういう中途半端なの止めてちょうだい。
わけわかんないわよ、それで何なの、さっさと言いなさい」
(;^ω^)「おっお……その……ここ数日の話だから、別に隠していたわけじゃないんだお。
はじめは疲れているのかと思ったし、そんな気になるほどじゃなかったんだお……」
ξ#゚听)ξ「ほら、早く言いなさい」
内藤は感情が高ぶり、悔しさをにじませた表情からは涙を落とすのではないかというほどだった。
内藤の感情の高まりように覚悟して身構える津出を、彼の言葉が貫いた。
(; ω )「実は足が……膝が、痛いんだお。
憶測だお、あくまで僕の考えだけれど……怪我が、再発したかもしれないお……昔の怪我が……」
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:29:02.18 ID:XSmVNDV+O
- 支援支援
http://imepita.jp/20081211/772340
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:29:24.96 ID:yc/gtoF0O
- やっぱ面白いな支援
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:31:11.06 ID:wB5nWuW/0
- これで第二十七レースは終了です。
今日はここまでです、お付き合いありがとうございました。
何かありましたらお願いします。
とりあえず返答をば。
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:32:10.09 ID:jqoql9a0O
- 乙wwww
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:33:57.81 ID:BX6LcyqjO
- 乙www
今日投下できた>>1はラッキーだなwwww
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:34:42.53 ID:9M2n763KO
- 乙
さっきと同じだが作者の他の作品なんかある?
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:36:34.94 ID:yc/gtoF0O
- お疲れさん。
聞きたいのは次回投下の予定だけだw
内容は文句の付けようがない。
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:38:49.26 ID:wB5nWuW/0
- >>50
>>88
なぜか九割がたばれているのですが、他にも結構作品数だけはあります。
酉なしで投下しておりますので、嬉しいですが伏せさせていただきます、すみません。
>>51
なんという凡ミス……改めまして。
十一月中にもう一度投下すると公言してせずにで申し訳なかったです。
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:39:27.15 ID:ANnYTPKY0
- 乙カレー! 毎回楽しみにしてるよ!
- 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:41:22.93 ID:wB5nWuW/0
- >>89
とりあえず今年中には終わらせるつもりでしたが難しいかもです……
一応今年中に、次の投下で終わらせようかなと思っています。
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:44:09.58 ID:9M2n763KO
- >>90
わかりました。
ある意味予想通りですwww
今後も楽しみにしてます
- 94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:48:21.45 ID:yc/gtoF0O
- >>92
次で一気に三話?
まあ、急がずじっくりでいいもの仕上げてください。
正直、終わるのは残念なんで。
いつまでも待ってます。
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:48:44.90 ID:wB5nWuW/0
- 沢山の支援に乙、そして>>83さん絵をありがとうございました。
いつになるか分かりませんが、また次も時間ありましたらよろしくお願いします。
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:49:55.83 ID:3sY4Mjrd0
- >>83
かっけーけど誰だろうw
- 97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:56:41.47 ID:XSmVNDV+O
- >>96ジョルジュなイメージ
- 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:56:48.28 ID:HpHzWqvzO
- 乙
もうラストとは淋しいな
- 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 21:57:00.64 ID:A+SiZ/LlO
- 乙!!最高に面白い。
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 22:32:53.63 ID:5IfL4N4IO
- 乙!
ツン可愛いよツン
- 101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 22:57:24.29 ID:/euQtXhuO
- 初遭遇!
よむほ
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 23:16:43.31 ID:6Z5dij/uO
- 乙
やっぱ面白いわ。
- 103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 23:38:44.50 ID:hO6ZxjreO
- よむほ
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 23:40:29.61 ID:deOLFSNAO
- 久しぶりに見つけた
これから読むけど乙
- 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/11(木) 23:59:47.04 ID:TDh+dRU2O
- 今読み終えた
やっぱ面白いわ。
次回もwktkするぜ!
全部
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