- 3
名前:第34話『置いてけぼり』:2010/10/24(日) 01:12:23.54 ID:63t1wahv0
- ピンポーン
( ^ω^)「はいだおー」
从 ゚∀从「うちが出てくる。多分通販で頼んでおいた奴や」
DSを閉じて玄関に向かっていくハインリッヒ。
完全に家に馴染んでいるなー、などと思いながらブーンは煎餅に手を伸ばす。
( ^ω^)「(今日の夕食は何かお〜)」
从 ゚∀从「ブーン、客人や」
( ^ω^)「客…………あっ!」
阿部「よう、久しぶりだな。『騎兵<ライダー>』のマスター」
停戦中とはいえ、居間に入ってきた敵サーヴァント──阿部孝和に思わず身構える。
- 5
名前:第34話『置いてけぼり』:2010/10/24(日) 01:14:09.31 ID:63t1wahv0
- 阿部「そう固くなるな。別にとって食いに来たんじゃない
『狂戦士<バーサーカー>』のマスターはいるか?」
( ^ω^)「ツンなら多分工房にいるはずだお」
阿部「すまないが今すぐ呼んできてくれないか」
从 ゚∀从「ウチが行くわ」
いつになくシリアスな阿部に思うところあったのか、ハインリッヒが立ち上がる。
彼女は出て行き、居間にはブーンと阿部だけが残された。
( ^ω^)「……」
阿部「……」
(;^ω^)「(間がもたないお)」
- 6
名前:第34話『置いてけぼり』:2010/10/24(日) 01:16:02.85 ID:63t1wahv0
- 阿部「……は…」
( ^ω^)「お?」
阿部「『騎兵<ライダー>』はまだ消えたままか?」
( ^ω^)「そうだお」
服の裾をまくりあげ、令呪を明らかにする。
『騎兵<ライダー>』のサーヴァント、クーが姿を消して以降彼の左腕の令呪は薄暗く握った色のままだった。
( ^ω^)「やっぱり魔力を通そうとしても完全に遮断されたままなんだお」
阿部「そうか……令呪が機能しないことで体調に変化はないか?」
( ^ω^)「問題ないお。鬼教官にしごかれてちょっと疲れてるだけだお」
ξ゚听)ξ「誰が鬼教官だって?」
( ^ω^)「はて、何のことやら……」
- 7
名前:第34話『置いてけぼり』:2010/10/24(日) 01:17:44.54 ID:63t1wahv0
ξ゚听)ξ「まぁ、いいわ。久しぶりねセイバー。敵の本丸にひとりで来るなんて、どういう風の吹き回し?」
阿部「俺も今日はゆっくりする予定だったんだが事情が変わってな。単刀直入に聞くが……」
阿部「お前たち、うちのマスターを襲ってないよな?」
( ^ω^)「……え?」
ξ゚听)ξ「は?」
意外すぎる質問に、思わず顔を見合わせる二人。
- 8
名前:第34話『置いてけぼり』:2010/10/24(日) 01:21:22.10 ID:63t1wahv0
( ^ω^)「……意味がわからないお」
ξ゚听)ξ「アヤカの身に何かあったの?」
阿部「夕方、屋敷に戻ると嬢ちゃんが誘拐されていた」
(;^ω^)「!!」
ξ゚听)ξ「……詳しく話して、セイバー」
阿部「知っての通り、現在うちのお嬢ちゃんは魔力生成しすぎて体調不良を起こしている。
増えすぎた魔力を消費するため、俺は最近“とある場所”で魔力を放出しているんだが……」
( ^ω^)「そういえば今日行った時、セイバーいなかったお」
阿部「屋敷に来たのか?」
ξ゚听)ξ「4時くらいにね。アヤカとペニサスさんと一緒にお茶して……
ちょっとあの子の調子がよくなかったから30分くらいでおいとましたわよ」
阿部「ちょうどその後だ。5時過ぎに犯人は屋敷に侵入し、ペニサスの固有結界を力づくで破壊したらしい」
- 9
名前:第34話『置いてけぼり:2010/10/24(日) 01:23:46.51 ID:63t1wahv0
- 阿部「ちょうどその後だ。5時過ぎに犯人は屋敷に侵入し、ペニサスの固有結界を力づくで破壊したらしい」
从 ゚∀从「メイドのねーちゃんのアレか」
3人の中で唯一、その効力を知るハインリッヒが唾を飲み込む。
阿部「ペニサスの異変に気づいてメイド協会が駆けつけた時には、もう犯人もお嬢ちゃんもいなくなっていたらしい」
ξ゚听)ξ「あんた、アヤカのサーヴァントでしょ。何で気づかなかったのよ」
阿部「言い訳じゃないが、あの時お嬢ちゃんは令呪での召還はおろか、念波のひとつすら届かなかった。
どちらかが命の危機に陥っているような場合ならともかく、あちらからの動きがなければ補足は難しい」
- 11
名前:第34話『置いてけぼり:2010/10/24(日) 01:26:09.27 ID:63t1wahv0
( ^ω^)「助けを呼ばないように脅されたのかお……」
从 ゚∀从「あのメイドの結界を打ち砕くほどの奴だ。助けを呼ぶ間もなく無効化された可能性もある。
あるいは……」
ξ゚听)ξ「……助けを呼ぶ事もできないほどに消耗していたか」
( ^ω^)「……」
見舞中のアヤカスフィールを思いおこす。
普段より赤い顔をした彼女は、途中で熱があると途中で部屋に戻ってしまっていた
阿部「本人は臥せっていてもお嬢ちゃんの仕掛けたトラップは十全に動き、ペニサスもいる
屋敷を強襲する力と知識をもっている人間がお前たち以外にいないはず、と高を括っていた」
( ^ω^)「ブーンはそんな事してないお!」
セイバー「わかっている。だからこれは俺達の油断だ」
珍しく口調を荒げる阿部にブーンも押し黙る。
- 12
名前:第34話『置いてけぼり:2010/10/24(日) 01:28:22.86 ID:63t1wahv0
ξ゚听)ξ「……別に本気で私たちを疑いに来たわけじゃないでしょ、セイバー。
教えて、相手の情報。あんたがこれから私たちにしてほしい事全部言いなさい」
阿部「話が早いな、助かる」
懐から封筒を取り出すと、阿部はそれを広げて魅せた。
阿部「ペニサスが持たされていた犯人からのメッセージだ。
本当なら彼女にあって話を聞いてみたいところだが、あいにく現在意識不明の重体でな……」
从 ゚∀从「あのメイドが意識不明……」
阿部「命には別状がないそうだ。現場にかけつけた魔術の心得があるメイドが応急処置を施して入院している。
ついでに魔力の残滓も見てもらったが……どうも特徴的なものは見いだせなかったらしい」
( ^ω^)「……プギャー=ランボルギーニ?」
ξ゚听)ξ「ランボルギーニ……どこかで聞いたことのあるようなないような……」
- 13
名前:第34話『置いてけぼり:2010/10/24(日) 01:31:12.69 ID:63t1wahv0
- 阿部「今回の聖杯戦争に参加していた魔術士だ。従えたサーヴァントは『槍兵<ランサー>』。
お前たちとはじめて会う前日、俺が戦って倒した相手だ」
ξ゚听)ξ「……倒した、って……『槍兵<ランサー>』のサーヴァントを倒したのは」
( ^ω^)「クーだお」
ブーン達はがアヤカスフィールと『剣士<セイバー>』阿部孝和と出会う直前、
「マスターが死亡して消滅した」はずの『槍兵<ランサー>』フェイト・テスタロッサに邂逅している。
相手が消耗していた事もあり、特攻をしかけたランサーがカウンターをくらい、勝負はあっさりと決着。
その現場を見ていた人間はここにいないが、よもやクーが虚偽の報告をしたとは思えなかった。
阿部「説明が足りなかったな。俺と嬢ちゃんは確かに『槍兵<ランサー>』を倒したが、消滅は確認していない。
その後、逃げ出した『槍兵<ランサー>』のマスターを追いかけて、試運転がてら
『ヤマジュンパーフェクト<くそみそテクニック>』をマスター・プギャーにぶちかました」
ξ゚听)ξ「人間相手に宝具ぶちかますとか……」
阿部「殺す気はなかったんだがな……どうも加減がうまくいかなかった」
淡々と話す阿部に少し気後れするが、ブーンは話を聞くことに集中する。
- 14
名前:第34話『置いてけぼり:2010/10/24(日) 01:36:25.46 ID:63t1wahv0
阿部「俺自身確認をとったわけじゃないが、あの管理人(ショボン)がプギャーの死亡を確認している。
お前たちを襲ったランサーはマスター不在だったんだろう? 辻褄があう」
从 ゚∀从「なるほど……」
阿部「可能性としてはふたつ。
ひとつはプギャーが死んだというのがダミーで、生き延びた奴が俺を狙っているというパターン」
ξ゚听)ξ「あると思う?」
阿部「正直、ないだろうな。俺は確かにあいつの“魔術士としての”魔力と確実に奪ったし、
医者ならともかく、聖杯戦争の管理人がデコイに惑わされることもあるまい」
肛門を貫かれて魔力を失ったマスター・プギャーはショボンに発見され、その日のうちに搬送先の病院で死亡。
両手にあった令呪も明け方までには消滅した──という旨の報告を彼らは受けていた。
- 15
名前:第34話『置いてけぼり:2010/10/24(日) 01:38:51.57 ID:63t1wahv0
( ^ω^)「もうひとつの可能性は……」
阿部「俺たちサーヴァントの存在を含め、『聖杯戦争』について詳しく、さらに言うなら今回の戦いの
参加魔術士や参加サーヴァントを把握している第3者が何らかの目的でプギャーの名を語り、誘拐した」
从 ゚∀从「何者か……ね」
ξ゚听)ξ「可能性としてはこれが一番ね。生前、プギャーが親交のある人間に聖杯戦争の情報を漏らしていて、
義憤にあふれた第3者が敵討ちを試みた。あるいは……別の目的のためにアヤカを誘拐した」
( ^ω^)「別の目的……身代金?」
阿部「ないな。脅迫状には何も書いていない」
即答で返された。
ξ゚听)ξ「仮に私がアヤカを誘拐した魔術士だとして、貴方に求める事があるとしたら……」
ξ゚听)ξ「マスター変更の強制」
しばし考えこむように指をこめかみにあて、ツンはぽつりとつぶやいた。
- 16
名前:第34話『置いてけぼり:2010/10/24(日) 01:43:08.87 ID:63t1wahv0
- 阿部「……やはりそうか」
ξ゚听)ξ「えぇ、他にないわ」
从 ゚∀从「どういう事や?」
ξ゚听)ξ「つまり……」
ξ゚听)ξ「サーヴァントはマスターがいないと十全に戦えないし、万が一勝ち残っても聖杯の恩恵を賜れない。
逆にいえば、召還した魔術士以外がマスターになってたとしても、聖杯を奪い合う上で何も問題もない」
阿部「 「マスター変更に協力しろ。さもなくばアヤカスフィールを殺す」といえば俺に断る術はない、という事だ。
あの屋敷を突破できるだけ実力がある魔術士なら、俺とお嬢ちゃんの拒絶がなければやってできない事はない」
( ^ω^)「なるほど……阿部さんを奪うためにアヤカを誘拐したって事だおね」
阿部「男に誘われるというのは悪くないんだがな……」
笑いながら言う阿部だが、その瞳は笑っていない。
サーヴァント──マスターに従うものとして現界している彼にとって、これは屈辱以外の何者でもないだろう。
- 17
名前:第34話『置いてけぼり:2010/10/24(日) 01:48:48.91 ID:63t1wahv0
- 阿部「俺はここに書かれたとおり、9時にこの場所に向かい、マスターの無事が確認できた瞬間にこいつを殺す。
仮に相手が嬢ちゃんをどこかに隠し、取引するというのなら嬢ちゃんの無事とひきかえにそれに応じよう。
いずれにしても、お前たちには取引後のマスター──お嬢ちゃんの面倒を頼みたい」
ξ゚听)ξ「……なるほど。で、どうするつもりなの。その後」
阿部「簡単だ。敵を撃退できたら俺は自刃する。敵に服従する事になるのなら即座に君に戦いを挑もう。
いずれにしても────今夜、聖杯戦争は完結する」
淡々と言い放った『剣士<セイバー>』のサーヴァントに誰も答えない。
一拍おいて、「そうよね」とツンがつぶやいた。
ξ゚听)ξ「……まぁ、本来ならもっと先にあんたは自殺しておくべきよ」
阿部「言うなぁ」
ずばずばとしたツインテールの魔術士の言い分に肩をすくめる。
阿部「他の連中と違って、とりたて俺が叶えたい望みはない。こっちでも男は十分食ったしな。
俺の今の願いはお嬢ちゃんの健常化。別に騎士でも何でもないが、もうただの相方とは思えんよ」
- 18
名前:第34話『置いてけぼり:2010/10/24(日) 01:52:55.64 ID:63t1wahv0
- ξ゚听)ξ「……先に言っておくと、あたしの願いもそれよ。でも勘違いしないでよね。
アヤカが心配なんじゃなくて、あのバカを治して借りをつくってやりたいだけなんだから」
( ^ω^)「素直じゃないお」
ξ゚听)ξ「ガンド」
( ゜ω゜)「アウチ!」
額を押さえて悶える甥を無視してツンが話を進める。
ξ゚听)ξ「聖杯戦争自体は消化試合だけど、やることはやらないとね。あたしはこれからドクオと一緒にアヤカを探すわ。
屋敷を中心に魔力を辿って、9時5分前には例の場所の近くで待ち構えるように動いておく」
阿部「了解した。俺はラウン寺から逆に橋のほうへ向かおう。例の場所で犯人を待ち受ける。
相手がマスター変更を望んだ場合、お嬢ちゃんの無事を確認してからマスター変更を受けいれる。後は頼んだぞ」
ξ゚听)ξ「オッケー。マスターが変わった瞬間、令呪を使う間もなく犯人を倒してやるわ。
どっちみち魔力のパスは開いておきなさい。探索中に何かあったらこちらから連絡するわ」
- 19
名前:第34話『置いてけぼり:2010/10/24(日) 01:55:18.56 ID:63t1wahv0
从 ゚∀从「……ウチができる事は?」
ξ゚听)ξ「ブーンの面倒をみておいて。今の状態でこの子がひとりで相手に向かっていった場合、
間違いなく殺されるか利用されるだけよ。かといって同行させるわけにもいかないからね」
从 ゚∀从「了解した」
( ^ω^)「…………」
ξ゚听)ξ「ショボンに頼むのは筋違いだし……面倒だけど私達だけでカタつけるわよ」
( ^ω^)「ひとつ……いいかお?」
ξ゚听)ξ「なぁに?」
@ ( ^ω^)「クーはどうなるのかお?」
A ( ^ω^)「ひとり、心当たりがあるお」
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10分たって埋まらなかったら正規ルート
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