63 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:22:35 ID:iN94.SDg0
【第1話:偽りの地平線】
 
 
 窓から射し込む夕日と、携帯電話のランプの色が混じっていた。
 そのせいで、初本は電話がかかってきていることに気づくのが遅れた。
 
 何度かコールされた後に初本は携帯電話を手に取り、発信者をはっきりと確認しないまま応答した。
 
(´・ω・`)「もしもし。あぁ、前田くんか。どうかしたのかい?」
 
 雀卓に置かれた雀牌の中から適当に掴んだ牌は、二筒だった。
 電話の向こうから届く低いトーンの声に意識を向けながら、初本は二筒を右手で弄ぶ。
 
 その手が、突如、ぴたりと止まった。
 
(´・ω・`)「え? ちょっと待ってよ、それは困るよ」
 
 いつの間にか二筒は手から離れ、初本の右手は雀卓を掴んでいた。
 僅かに生じた手汗が馴染んでいく。
 
(´・ω・`)「いや、そんな急に言われても、本当に困るんだよ。どうしても無理なのかい?」
 
 携帯電話を持つ手を左から右に替え、初本は左手の汗を拭った。
 同時に正方形の掛け時計に目をやる。短針が指し示す先は、少しずつ床の方向へと向かっていた。
 
(´・ω・`)「うーん、そうかぁ。まぁ、しょうがないと言えばしょうがない、かぁ。勉強のほうが大事だし」
 
(´・ω・`)「分かった、こっちは何とかするよ。まだ少し時間もあるし」
 
(´・ω・`)「あぁ、前田くんは気にしなくていいよ、全然。頑張ってね」
 
 小さく息を吐いて携帯を閉じた。
 心配をかけまいと気丈な言葉を口にしたものの、初本は内心、焦燥に駆られている。
 前田の代わりを務めてくれそうな人物を頭の中で探してみたが、誰もいないのだ。
69 名前: ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:25:33 ID:iN94.SDg0
 とにかく部員に報告しよう、と初本が思ったところで、部室の扉が開いた。
 
( ^Д^)「あれ? 初本さんだけっすか?」
 
(´・ω・`)「あぁ、他はまだ誰も来てないんだ」
 
 二年生の笑野が鞄を部室の隅に置く。
 その鞄からガムを取り出し、ひとつ口に放り込んだ。
 
( ^Д^)「みんな遅いっすね」
 
(´・ω・`)「椎名と伊藤はもうすぐ来ると思うよ。毒島は図書委員の仕事があるらしくて、ちょっと遅れるみたいだけど」
 
( ^Д^)「そうなんすか。あ、そうそう、ネットで面白い噂聞いて、初本さんに話そうと思ってたんすけど」
 
(´・ω・`)「いや、ちょっと待って。その前に大事な話がある。マズイことになったんだ」
 
( ^Д^)「え?」
 
(´・ω・`)「塾の模試の日と被ってることに気づいてなかったらしくてね、前田くんが県大会に出られなくなった」
 
(;^Д^)「ええええぇぇぇ!?」
 
(*゚ー゚)「どうかしたんですか?」
 
('、`*川「笑野さんが大声なんて、珍しい」
 
 部室の扉の開閉音は、笑野の声にかき消されていた。
 二人が気づかない間に、椎名と伊藤が部室に到着している。
65 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:23:42 ID:iN94.SDg0
(;^Д^)「大変だ! 前田さんが県大会出れなくなっちまったんだよ!」
 
(;゚ー゚)「えー!」
 
('、`;川「え、じゃあウチの高校自体、県大会に出れないじゃないですか」
 
(´・ω・`)「このままだとそうだね、人数が足りてない」
 
 芽院高校の麻雀部は、現在五人しか在籍していない。
 県大会出場にあたって、最低でも選手は五人揃っていなければならないのだ。
 
(;^Д^)「こうなったら伊藤にも出てもらうしか」
 
('、`;川「アタシは無理ですよ。ゼッタイ親にバレますもん」
 
(´・ω・`)「そうだね、麻雀部に所属していることが親御さんに知られたら一大事だ」
 
 麻雀部には五人の部員がいるものの、選手として試合に出られるのは四人だった。
 そのため、帰宅部の前田に協力を仰ぎ、大会に参加するつもりでいたのだ。
 しかし、その予定が突如として崩れ去った。
 
(;゚ー゚)「じゃあ、他に出られそうな人を探さないと!」
 
('、`;川「県大会のエントリー締め切りは?」
 
(´・ω・`)「登録自体はもう済ませてある。ただ、大会の三日前の17時まではメンバーの変更が可能なんだ」
 
( ^Д^)「三日前?」
 
('、`;川「って、今日が三日前じゃないですか!」
 
(;゚ー゚)「しかもあと1時間くらいしかないですよ!」
 
(´・ω・`)「うん。これはダメかも分からんね」
70 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:26:38 ID:iN94.SDg0
(;^Д^)「いやいや、諦めるのはまだ早いっす! 麻雀のルールが分かるやつ、誰か一人くらいは!」
 
(´・ω・`)「でも、今週は色んな運動系の部活も大会があるみたいなんだよね」
 
('、`*川「そういや、アタシのクラスに一人だけ麻雀できるやつ居るんですけど、確か今週末は試合があるって言ってました」
 
(´・ω・`)「うん。だから前田くんみたいに帰宅部で麻雀打てる人は凄く貴重だったんだけど」
 
(;゚ー゚)「厳しいですね、かなり」
 
(´・ω・`)「正直お手上げだよ。もう少し時間があれば、何とかなったかもしれないけど」
 
( ^Д^)「いや! ちょっと待ってください!」
 
(´・ω・`)「ん?」
 
( ^Д^)「一か八か、俺がネットで聞いた噂に賭けてみません?」
 
 先ほど笑野が言いかけていたことを、初本は思い出した。
 面白い噂をネットで聞いたという。
 
( ^Д^)「まぁ、かなり不確実な話なんすけど」
 
(´・ω・`)「どういうこと?」
 
( ^Д^)「『ホライゾン』のこと、知ってるっすよね」
 
(*゚ー゚)「あ、聞いたことあります。すっごく強いネットの雀士ですよね」
74 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:27:28 ID:iN94.SDg0
(´・ω・`)「ネット界最強とも言われてるね。僕は対局したことないけど、プロに匹敵するとか」
 
( ^Д^)「その『ホライゾン』が、実はウチの高校にいるらしいんすよ」
 
(´・ω・`)「えっ? うそ、本当に?」
 
 突拍子のない笑野の言葉に、間の抜けた声を返した初本。
 半信半疑だった。
 
(´・ω・`)「知らなかったなぁ、そんな話」
 
( ^Д^)「まぁ、あくまで噂なんすけど」
 
(*゚ー゚)「でも本当だったら凄いですよね! 全国制覇も夢じゃないです!」
 
(´・ω・`)「うーん。ただ、真偽はともかくとして、『ホライゾン』を見つけられるのかどうか」
 
( ^Д^)「問題はそこなんすよねぇ」
 
('、`*川「そこまで麻雀が強いんだったら、とっくにウチに入部してるはずじゃ?」
 
(´・ω・`)「そうだね。でも入部してないってことは、入部したくない理由があるってことだ」
 
(;゚ー゚)「じゃあ、もし奇跡的に『ホライゾン』を見つけられたとしても、大会に参加してもらえないかもしれないってことですよね」
 
(´・ω・`)「うん、そうなるね。もし参加してくれたら、これほど心強いことはないんだけど」
 
( ^Д^)「厳しいかもしれないっすけど、とにかく探してみましょう! 大会の日だけなら参加OKかもしれませんし!」
 
('、`*川「確かに、普段はバイトとかで時間なくて入部できないだけかも」
 
(´・ω・`)「まぁ、ここに居ても進展しないのは確かだね。とりあえず部室から出よう」
76 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:28:33 ID:iN94.SDg0
( ^Д^)「まず図書室に行かないっすか? 毒島にも話したほうがいいでしょうし」
 
(´・ω・`)「あぁ、そうだね。それに、図書室で作業している図書委員に事情を話してみるのもいいかもしれない」
 
(*゚ー゚)「色んな知識を蓄えてる人が居そうだから、麻雀知ってる人も居るかも!」
 
 四人揃って麻雀部の部室を出た。
 波長の短い光が散乱し、廊下の窓からは朱色の光が射し込み始めている。
 
 麻雀部の部室からはかなり離れている図書室へと、足早に四人が向かった。
 廊下の人通りは少ない。帰宅部の生徒は帰宅済みで、部活に入っている生徒は部活動の真っ最中であるためだ。
 
(´・ω・`)(思ったより人が少ない。これは本当に急がないとまずいな)
 
 図書室の前に到着すると、初本は躊躇いなく扉を開けた。
 中は静かで、初本にとっての誤算は、図書委員が全く見当たらないことだった。
 
( ^Д^)「あれ? 誰もいないっすね」
 
(´・ω・`)「うん。毒島まで居ないのはちょっと変だ」
 
('、`*川「入れ違っちゃいましたかね」
 
(*゚ー゚)「電話してみます?」
 
('、`*川「あれ? 毒島の番号知ってんの?」
80 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:31:22 ID:iN94.SDg0
(*゚ー゚)「うん。ちょっと前に交換したんだ」
 
('、`*川「へー。毒島から言ってきたの?」
 
(;゚ー゚)「まさか。同じ麻雀部だし、いざというときに連絡取れたほうがいいよねって、私のほうから言ったの」
 
('、`*川「だよね。女の子に話しかけることもできない毒島が『番号教えて』なんて言えるわけないよね」
 
(;^Д^)「おいおい、あいつの女性恐怖症の話は今はどうでもいいだろ。まぁ連絡してみたほうが良さそうだけど」
 
(´・ω・`)「あれ? ちょっと待って」
 
 図書室へとゆっくり足を踏み入れた四人。
 その先頭に立つ初本が、図書室の隅へと視線を向けた。
 
(´・ω・`)「パソコンの前に、誰か座ってるね」
 
( ^Д^)「あ、本当っすね。見覚えはないっすけど」
 
 四人からは背中しか見えない状態でパソコンの前の椅子に腰掛ける男子生徒。
 どうやら図書室には彼しか居ないようだ、と初本は思った。
 
 そこで不意に、椎名が気づく。
 
(;゚ー゚)「あれ? あのパソコンで表示されてる画面って、もしかして」
 
(;^Д^)「お!? あれって『雀王道』の画面じゃねーか!?」
 
(´・ω・`)「えっ?」
 
 初本が瞠目する。
 そして確かに、パソコンのディスプレイには『雀王道』というネットの麻雀対局サイトが表示されていた。
21 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 00:33:26 ID:iN94.SDg0
(´・ω・`)「本当だね。間違いなく『雀王道』だ」
 
( ^Д^)「『ホライゾン』が最近活動してるのも『雀王道』っすよ!」
 
(*゚ー゚)「え、じゃああの人が『ホライゾン』なんですか!?」
 
( ^Д^)「可能性は高い!」
 
('、`;川「うーん? 待って待って、ちょっと話が上手くいきすぎてるような?」
 
(´・ω・`)「うん。いくらなんでも、こんなに美味しい話あるのかなって気はする。ただの偶然じゃないかな」
 
( ^Д^)「仮にそうだとしても、『雀王道』を見てるってことは、麻雀がプレイできるってことっすよ!」
 
(´・ω・`)「それは確かにそうだ。実力は分かんないけど、ルールが分かってるってだけでも大歓迎だ」
 
 もし本物の『ホライゾン』ならば、麻雀部にとっては大きな助けとなる。
 仮に違っても、決して麻雀が上手いとは言えなかった前田の代わりとしては文句なしだろう。
 初本はそう考えたが、ひとつ、障壁があった。
 
(´・ω・`)「ただ、学校のパソコンで『雀王道』にアクセスするくらいの麻雀好きなら、普通は麻雀部に入りそうなもんだけど」
 
('、`*川「さっきも懸念してたことですよね」
 
( ^Д^)「うーん。あいつの名前が分かれば、勝手に大会の登録しちゃっても良さそうなんすけど」
 
(*゚ー゚)「でも、あの人も週末に予定があったりしたら、もうアウトですよね」
 
(´・ω・`)「そうだね。それにできれば、あんまり強引なことはしたくないな」

22 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 00:37:06 ID:iN94.SDg0
('、`*川「って言っても、締め切りまであと30分くらいしかないですよ。説得してる時間あります?」
 
(´・ω・`)「うーん、微妙だね。メンバー変更の申し込みの手間を考えると、実際にはあと十五分ぐらいだし」
 
(;^Д^)「名前と土日の予定だけ確認して、こっそりやっちゃいましょうよ。終わってからみんなで土下座っす」
 
(´・ω・`)「ただ、そんなの理由なくいきなり聞いたら変だし」
 
( ^Д^)「じゃあ、こうしましょう!」
 
(´・ω・`)「?」
 
( ^Д^)「椎名! 出番だ!」
 
(;゚ー゚)「え!? なんで私!?」
 
 時計の針は既に16時35分を指している。
 時間的な余裕は、ほとんどなくなってきていた。
 
( ^Д^)「逆ナンパ作戦だ! 『土日一緒に遊ぼう』って誘うんだ!」
 
(;゚ー゚)「えー!!」
 
('、`*川「おぉ、なるほど。それなら名前と土日の予定がスムーズに確認できますね」
 
( ^Д^)「モデルをやってる椎名が誘えば楽勝だろ! 誘いに乗らない男はいない!」
 
(;゚ー゚)「いや、どうなんでしょう? 普通にたくさん居るんじゃないかなぁ」
 
(´・ω・`)「作戦としては良いかもしれないけど、さ。椎名は、そういうのが一番イヤなんじゃないの?」
 
(;^Д^)「あっ! そ、そうか」
24 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 00:38:59 ID:iN94.SDg0
 幼い頃から多くの雑誌でモデルを務めてきたとあって、椎名の顔とスタイルは学校内でも群を抜いている。
 確かに笑野が言うように、誘いに乗らない男はいない、と初本も考えていた。
 
 ただ、入部の経緯と椎名の心情を考えれば、作戦に頷くことはできない。
 それが部長として、親心にも近い思いを持って、初本が感じたことだった。
 
 しかし椎名は、初本が予想しなかった言葉を口にする。
 
(*゚ー゚)「初本さん、大丈夫です。やってみます」
 
(´・ω・`)「えっ?」
 
(;^Д^)「いいのか?」
 
(*゚ー゚)「はい。それくらいは平気ですから」
 
(´・ω・`)「無理しなくてもいいんだよ、椎名」
 
(*゚ー゚)「いつも優しくしてくれるみんなへの恩を、これで少しでも返せるなら、そのことのほうが嬉しいです」
 
 椎名の頬の赤らみは、夕日を受けて一層深まっていた。
 
(;゚ー゚)「それに『モデル』に関しては普段から笑野さんが散々イジってますよね」
 
(;^Д^)「まぁ、そうだけど」
 
(*゚ー゚)「あれでだいぶ慣れた感じもしますし、大丈夫です!」
 
(´・ω・`)「よし。椎名がここまで覚悟してくれてるなら、思い切ってやっちゃおう」
 
('、`*川「おぉ!」
26 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 00:41:20 ID:iN94.SDg0
(´・ω・`)「まぁ、結果的には彼を騙すことになるわけだから、あとで全力で謝ろう」
 
(;^Д^)「そうっすね、土下座っす」
 
(;゚ー゚)「むしろ私の誘いに乗ってくれるかどうかが心配です」
 
(´・ω・`)「そこは大丈夫だと思うよ、さすがに」
 
(;゚ー゚)「だといいんですけど、うーん」
 
(´・ω・`)「もうほとんど時間がない。悪いけど、急いで行ってくれ、椎名」
 
(*゚ー゚)「はい!」
 
 一度大きく息を吸い、ゆっくり吐いてから歩き出した椎名。
 パソコンの前に座る人物へ、少しずつ近づいていく。
 
 近づくにつれ、椎名はとあることに気づいた。
 先ほどから、ディスプレイに全く動きがないのだ。
 どうやらパソコンがフリーズしてしまったらしい。
 
(;゚ー゚)(んー? 気にしなくていいかな?)
 
 理由のない不安に駆られつつ、時間がないことを即座に思い出して、椎名は手を伸ばす。
 そして、男子生徒の肩に触れた。
 
 振り向いた顔は、柔和な笑みを浮かべていた。
 
(*゚ー゚)「あの、初めまして」
 
( ^ω^)「お?」
 
 優しげな声を聞いて、椎名は安堵を覚える。
 初対面の相手を威嚇するような人ではない、と判断できたためだ。

28 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 00:43:57 ID:iN94.SDg0
( ^ω^)「どうかしましたかお?」
 
(*゚ー゚)「えっと、突然ですみません」
 
( ^ω^)「?」
 
(*゚ー゚)「あの、今度の土日って、予定空いてますか?」
 
 椎名は、自分の声が微かに震えていることに気づいた。
 自分から誰かに誘いの言葉をかけたことなど、今までの人生で一度もなかったためだ。
 
(;^ω^)「お? なんでそんなことを聞くんですお?」
 
(*゚ー゚)「その、よかったら、どこか一緒に遊びに行きませんか?」
 
(;^ω^)「おっ!?」
 
(*゚ー゚)「私、予定が空いてて。もし予定がなければ、私と一緒に、どうですか?」
 
 まず、この時点で椎名にとっての幸運が一つあった。
 彼が顔写真入りの生徒証を、キーボードの横に置いていたのだ。
 そこには名前もはっきりと記されている。
 
 内藤文和。
 椎名と同学年の、一年生だった。
 
(*゚ー゚)(あとは土日の予定さえ分かれば!)
 
 名前の確認よりは容易い。
 ただ、同時に椎名は嫌な予感も感じ取っていた。
 それは、話しかける前に懸念したことでもあった。

29 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 00:46:20 ID:iN94.SDg0
(;^ω^)「なんでですお? 唐突すぎて訳分かんないですお」
 
(;゚ー゚)「そんなに深い理由はないの。何となくっていうか」
 
(;^ω^)「もっと他にたくさん人がいるはずですお。僕じゃなくてもいいはずですお」
 
(;゚ー゚)(意外と用心深い人だ!)
 
 誘いに乗ってくれるかどうか、分からない。
 笑野が最初に提案した時点から、椎名はそう思っていた。
 初本と笑野は心配していなかったが、椎名の懸念した事態が起きてしまっている。
 
(;゚ー゚)「ダ、ダメかな? なんか予定ある?」
 
(;^ω^)「予定はありませんお。でも、なんだか凄く怪しいですお」
 
(*゚ー゚)「!!」
 
 人生で初めて『怪しい』と言われたことも、椎名は気にならなかった。
 土日の予定はない。内藤ははっきりとそう言ったのだ。
 
(*゚ー゚)「予定ないんだね! 良かった!」
 
(;^ω^)「で、でも」
 
(*゚ー゚)「ありがとう! 後でまた戻ってくるから、ちょっとだけ待ってて!」
 
 椎名はすぐ内藤に背中を向けて駆け出した。
 その椎名の表情を見ただけで、他の三人が成功を確信する。
31 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 00:49:10 ID:iN94.SDg0
(*゚ー゚)「内藤くんです! フルネームは、内藤文和!」
 
(´・ω・`)「漢字は!?」
 
(*゚ー゚)「内藤は普通の『内藤』で、『文学』の文に、『天和』の和です! 一年生です!」
 
(´・ω・`)「よし! 内藤くんには悪いけど、無理やり登録してくるよ!」
 
(*゚ー゚)「はい! お願いします!」
 
 大急ぎで部室で向かう初本の背中を、三人が見送る。
 椎名が安堵の息を吐いた。
 
( ^Д^)「よくやってくれた! さすがだな!」
 
(;゚ー゚)「乗ってきませんでしたけどね! 全然!」
 
('、`;川「え、マジ? 断られたの?」
 
(;゚ー゚)「はっきりと断られたわけじゃないんだけどね、すっごく怪しまれた」
 
(;^Д^)「うーん、さすがに唐突すぎたか」
 
(;゚ー゚)「いや、単純にそこまでの女じゃないってことです」
 
(;^Д^)「いやーそれはないだろ。このレベルの女の子に靡かないやつは男じゃねーよ」
 
('、`*川「アタシが男だったら問答無用でいかがわしい場所に連れ込みますね」
 
( ^Д^)「だよなー」
 
(;゚ー゚)「内藤くんもそういう感じだったら良かったんですけどね」
34 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 00:51:43 ID:iN94.SDg0
( ^Д^)「とにかくメンバーは確保できた。一安心だな」
 
(;゚ー゚)「後は全力で謝って、なんとか試合会場に来てもらわないと、ですね」
 
 数分後、息を切らせた初本が図書室に戻ってきた。
 膝に手をつきながら呼吸を整えたあと、右手の握り拳から親指だけを突き出す。
 
(´・ω・`)「何とか間に合ったよ。ぎりぎりだった」
 
( ^Д^)「良かった、良かった。これで大会に出れるっすね」
 
(´・ω・`)「椎名、本当にありがとう。君のおかげだ」
 
(*゚ー゚)「お役に立てて良かったです。残念ながらモデルとしての武器は役に立たなかったですけど」
 
(´・ω・`)「あれ、そうなのかい? まぁとにかく良かった」
 
('、`*川「じゃあ、早速みんなで謝りに行きましょう」
 
(´・ω・`)「そうだね。謝って、何とか大会に参加してもらおう」
 
 図書室の奥では、怪訝そうな顔を浮かべた内藤が椅子に座っていた。
 ディスプレイは暗くなっている。電源を落としたようだ、と初本は思った。
 
(´・ω・`)「内藤くん、だよね」
 
(;^ω^)「そうですお」
 
(´・ω・`)「すまない、と先に謝らせてほしい。それからひとつ、聞かせてほしい」
 
(;^ω^)「?」
 
(´・ω・`)「君は『ホライゾン』かい?」
36 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 00:54:42 ID:iN94.SDg0
 その言葉を聞いても、内藤の表情は変わらなかった。
 ごまかしているわけではなさそうだ、というのが初本の率直な感想だった。
 
(´・ω・`)「『ホライゾン』ではないみたいだね」
 
(;^ω^)「何のことか、全然分からないですお」
 
( ^Д^)「え、『ホライゾン』自体を知らねーのか? ネット界じゃ最強だぞ」
 
(;^ω^)「最強? 何が最強なんですお?」
 
( ^Д^)「何がって、そりゃ麻雀に決まってるだろ」
 
(;^ω^)「お? 麻雀?」
 
 麻雀部の四人全員が、嫌な予感に包まれた。
 まさか、という思いだった。
 
(´・ω・`)「もしかして、麻雀、知らない?」
 
(;^ω^)「えっと、僕は麻雀は打てないですお」
 
(;^Д^)「はぁ!?」
 
 笑野の大声に驚く内藤。
 当惑している内藤に、再び初本はすまないと声を掛ける。
 
(´・ω・`)「一つ、教えてほしい。さっきパソコンで麻雀サイトにアクセスしていたけど、あれは何故だい?」
 
( ^Д^)「そうだよ。麻雀知らないんだったら『雀王道』にアクセスする理由なんてないだろ?」
 
( ^ω^)「あれは、僕がアクセスしたんじゃないですお」
 
(*゚ー゚)「どういうこと?」
38 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 00:56:48 ID:iN94.SDg0
 平静を装いながら、初本は内藤の言葉に耳を傾ける。
 実際には、様々な不安が心の中で渦巻いていた。
 
( ^ω^)「僕は授業が終わったあと、中央のテーブルで寝てたんですお。そりゃもうぐっすり」
 
( ^ω^)「でも、パソコンのファンの音が徐々にうるさくなってるのに気づいて、目が覚めたんですお」
 
(;^Д^)「テーブルからパソコンって遠くね? 耳いいな、お前」
 
( ^ω^)「で、パソコンのほうを見たら、あの画面でフリーズしてたんですお」
 
(*゚ー゚)「あっ、確かにフリーズしてた」
 
( ^ω^)「誰かが放置していったみたいなんですお。それで、フリーズから復帰しないかどうか見てたんですお」
 
('、`*川「復帰したの?」
 
( ^ω^)「しませんでしたお。だから、さっき強制終了させましたお」
 
(´・ω・`)「なるほど、ねぇ。つまり、ただの偶然だったってことか」
 
(;^Д^)「やばいっすね、これ。つまり素人をメンバー入りさせちゃったってことっすよね」
 
(´・ω・`)「うん。まさかこんなことになるとはね」
 
 想像もつかないような、出来の悪い夢のような偶然が起きてしまった、ということになる。
 いま後ろに椅子があったら、全身の力が抜けて自然と座り込んでしまうだろう、と初本は思った。
 
(;^ω^)「メンバーって、どういうことですお?」
 
(´・ω・`)「事情を話すから、聞いてほしい。いま色々と困ってるんだ」
40 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:00:26 ID:iN94.SDg0
 初本は全ての事情をゆっくりと話し始めた。
 既に17時10分。締め切りは過ぎている。
 もはやメンバーの変更はできない状態だ。
 
(´・ω・`)「と、いうわけなんだ」
 
(;^ω^)「勝手に登録しちゃったんですお? 僕を?」
 
(´・ω・`)「それについては確信を持ってやったことだから、本当に申し訳ないとしか言えない」
 
('、`*川「すみませんでした」
 
( ^Д^)「提案したのは俺だ、俺が全面的に悪い」
 
(;゚ー゚)「いや、直接的に騙したのは私です。本当にごめんなさい」
 
(;^ω^)「そんなに困ってるなら、ちゃんと話してくれれば」
 
(´・ω・`)「そうなんだけど、時間がなくてね。君が麻雀を知っているものだと思い込んでたし」
 
( ^Д^)「図書室で麻雀やるくらい麻雀が好きなら麻雀部に入らないなんて変だろ? なんか事情があるのかと思ってさ」
 
(´・ω・`)「だから、素直に話しても協力してもらえないんじゃないかと勘繰ってしまって、強引な手段を取っちゃったんだ」
 
 しかし、強引な手を使ってまでも手に入れたメンバーは、全くの素人だった。
 あまりにも身勝手なことだと分かってはいたが、さすがに初本も落胆せざるをえなかった。
 
('、`*川「まぁ、とりあえず登録しちゃったわけですし、何とか出てもらわないとマズイですよね」
 
(´・ω・`)「そうだね。これもまた、こっちの勝手な都合なんだけどね」
 
(;゚ー゚)「本当にゴメンなさいとしか言えないですね」
42 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:02:52 ID:iN94.SDg0
(´・ω・`)「とりあえず、土日の予定はないんだよね、内藤くん」
 
(;^ω^)「一応、そうですお」
 
(´・ω・`)「あとで何らかのお礼はする。だから、僕たちと一緒に県大会に出て欲しい」
 
(;^ω^)「いや、さっきも言ったように、僕は全くルールを知りませんお!」
 
(´・ω・`)「それでもいい。とにかく五人揃って出ないと全国への道が閉ざされてしまうんだ」
 
(;^ω^)「でも、そんな」
 
( ^Д^)「今年は初本さんにとって最後の大会なんだ。不参加なんて形じゃ絶対に終われねぇ」
 
('、`*川「そうです! 初本さんのために何としても全国に行かないと!」
 
(´・ω・`)「身勝手すぎるお願いだと、分かってはいるんだ。でも、頼む。一緒に行ってほしい」
 
(*゚ -゚)「内藤くん、ごめんね。でも、何とかお願いできないかな」
 
(;^ω^)(そんな、いくらなんでも唐突過ぎるお)
 
(;^ω^)(でも)
 
 四人の懇願を受け、内藤はいったん目を伏せた。
 切実な気持ちは充分に伝わっている。だからこそ、軽々しく返答できない。
 自分が入ることで、チームを敗退に導いてしまうこともあるかもしれない、と考えたためだ。
 
 だが、いずれにせよ参加しなければ、この四人全員、失意に打ちひしがれることとなるのだろう。
 そうも内藤は考えていた。
 手段は強引で、勝手に巻き込まれたとはいえ、麻雀部の面々が困っていることは間違いないのだ。

43 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:05:06 ID:iN94.SDg0
 思考を振り払うように、内藤は頭を振った。
 そして、目を開いた。
 
( ^ω^)「分かりましたお。戦力にならなくても、とりあえず参加するだけなら」
 
('、`*川「おぉ!」
 
(*゚ー゚)「ありがとう! 内藤くん!」
 
( ^Д^)「よっしゃ! とりあえず県大会には参加できる! サンキュー内藤!」
 
(´・ω・`)「ありがとう、本当に。心から感謝するよ」
 
 万感を込めた息を吐いてから、初本は内藤に右手を差し出した。
 内藤が軽く握り返して、微笑む。
 初本は、それだけでまた、心が安らいだ。
 
(´・ω・`)「県大会が終わったら何かお礼するよ。お金はあんまりないけど」
 
( ^Д^)「飯くらいならがっつり奢ってやるぜ!」
 
('、`*川「こういうときこそアタシの出番? 初本さんを助けてくれたし、何でも買ってあげる!」
 
(;^Д^)「伊藤が『何でも』って言ったらガチで何でもOKになりそうだな」
 
(´・ω・`)「いやいや、部長の責任で何とかお礼するよ」
 
(;^ω^)「いや、っていうか別にお礼とかいいですお。そんな、ただの数合わせで」
 
(´・ω・`)「でも、できればルールもちょっと覚えてほしいんだ。一応参加するわけだし」
 
(;^ω^)「おっ」
46 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:07:07 ID:iN94.SDg0
(´・ω・`)「大会についてちょっとだけ説明すると、実は、五人必要だけど五人全員が対局するとは限らないんだ」
 
( ^Д^)「そうそう。三人目とか四人目とかで終わる可能性もある」
 
(´・ω・`)「だから内藤くんが対局しなくて済むよう最大限努力はするけど、もしかしたら出番があるかもしれない」
 
('、`*川「でも、そうなったらもう、ほとんど諦める感じですよね」
 
(´・ω・`)「そうだね。でも、可能性は少しでも高いほうがいい」
 
(*゚ー゚)「守備を覚えればリードを守って対局を終えることもできますよね」
 
(´・ω・`)「うん、そうだね。内藤くんには負担を強いてばかりで申し訳ないけど」
 
( ^Д^)「さっそく部室で特訓だ! 心優しい二人の先輩と美女がお相手するぜ!」
 
(´・ω・`)「毒島のこと忘れてるね、完全に」
 
( ^Д^)「そういやアイツどこ行ったんすかね?」
 
(*゚ー゚)「ドっくんにも事情説明しないと、ですよね」
 
(;^Д^)「ドっくん? いつの間にそんなニックネームつけたんだ?」
 
(*゚ー゚)「入部して二ヶ月くらい経つのに全然心開いてくれないから、愛称があれば距離が縮まるかなと思ったんです」
 
(´・ω・`)「いやホント、椎名には頭が下がるよ。仲良くしようとしてくれて、ありがたい限りだ」
 
(*゚ー゚)「だって仲間ですし! あ、内藤くんも愛称で呼びたいな、何がいいかな?」
 
(;^ω^)「いや、それは何でもいいですお。っていうか、ちょっと話を聞いてくださいお」
 
(´・ω・`)「ん?」
48 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:09:30 ID:iN94.SDg0
(;^ω^)「あの、実は僕、そろそろ帰らないといけないんですお」
 
(´・ω・`)「え? あ、何か予定があるのかい?」
 
( ^Д^)「マジかよ。まぁ今日は急だからしょうがねーけど」
 
(´・ω・`)「そうだね。まだ明日と明後日があるから、そこで色々と」
 
(;^ω^)「いや、それが、そういうわけにもいかなくて。実は、明日と明後日、僕は学校をお休みするんですお」
 
('、`;川「え、えぇ?」
 
(;゚ー゚)「何で?」
 
 県大会は三日後に迫っている。
 明日と明後日の時間を使えないとなれば、初本たちが内藤にルールを教える時間さえない。
 
(;^ω^)「家庭の都合で、実家に帰省するんですお」
 
(´・ω・`)「こんな時期に?」
 
(;^ω^)「すみませんお」
 
(´・ω・`)「いや、謝ることじゃないけどさ。ちょっと困ったね」
 
(;^ω^)「土曜の早朝には帰ってきますお。それからすぐ会場に向かえば、何とか間に合うとは思いますお」
 
(;^Д^)「マジで教える時間ねーな」
 
(*゚ー゚)「でも、しょうがないですよね」
 
(´・ω・`)「うん、こっちが勝手に巻き込んだことだからね」
50 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:11:32 ID:iN94.SDg0
(;^ω^)「暇な時間があったら、麻雀の本を読むようにしますお」
 
(*゚ー゚)「あ、それなら私が貸すよ。初心者向けの本、何冊か持ってるから」
 
(´・ω・`)「今も持ってるの?」
 
(;゚ー゚)「あ、家だ。えっと、私の家に寄ってくれる?」
 
(;^ω^)「それは構いませんお。ただ、あんまり遅くなるとちょっとマズイですお」
 
('、`*川「じゃーアタシが迎えを呼ぶから、クルマで行こう。それなら大丈夫でしょ?」
 
( ^Д^)「なるほど。それなら家に行ったあと椎名が戻ってくるのも楽だな」
 
(*゚ー゚)「ペニちゃんありがと〜」
 
('、`*川「これくらい、いくらでもやるわよ。マネージャーだもん」
 
( ^ω^)「ありがとうございますお」
 
('、`;川「敬語使わなくていいよ、同学年だから」
 
(;^ω^)「あ、そうなのかお? 知らなかったお」
 
(*゚ー゚)「私もだよ。初本さんと笑野さんは先輩」
 
(´・ω・`)「僕が三年で、笑野が二年。まぁ、そのへんの自己紹介はまた今度やろう」
 
 その後、内藤と麻雀部の部員が携帯番号とメールアドレスを交換した。
 そうした一つ一つのステップに、初本は軽い安心感を覚える。
 部外者で、しかも素人の内藤を引き込んでしまったことによる不安は、それほど大きいものだった。
 
('A`;)「あれ? みんなこんなところに居たんですか?」
53 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:13:25 ID:iN94.SDg0
 内藤が帰り支度を整えたところで、毒島が図書室に入ってきた。
 その姿を見て、内藤は軽く手を挙げる。
 
( ^ω^)「毒島じゃないかお。そういえば、麻雀部に入ったって言ってたかお」
 
('A`)「内藤? なんでお前がみんなと一緒にいるんだ?」
 
(´・ω・`)「それより、毒島は今まで何をしてたんだい?」
 
('A`)「僕は、図書委員の仕事が終わったあと、いったん教室に忘れ物を取りに行ってから部室に行ったんです」
 
(´・ω・`)「なるほど、そこで入れ違っちゃったんだね」
 
('A`)「そうみたいで、でもずっと待ってても誰も来なくて、おかしいなと思って部室を出まして」
 
('A`)「僕はそんな感じですけど、内藤は?」
 
(´・ω・`)「ちょっと色々あってね、試合に出てもらうことになったんだ。内藤くんに」
 
(゚A゚;)「ええええええぇぇぇ!? 内藤、お前麻雀できたっけ!?」
 
(;^ω^)「まったく打てないお。これからルールを覚えるところだお」
 
(;^Д^)「本当に色々あったんだけどな、簡単に説明するよ」
 
 初本と笑野が簡潔な説明を述べる。
 そしてその途中、毒島の顔色がはっきりと変わった瞬間があった。

54 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:16:15 ID:iN94.SDg0
(゚A゚;)「『雀王道』の画面を見てたから、みんなが勘違いした?」
 
(´・ω・`)「うん。偶然って怖いよね」
 
( ^Д^)「まったく、パソコンをフリーズさせたやつが放置してなきゃ、こんなことにはならなかったのに」
 
(゚A゚;)「いや、あの、その」
 
(´・ω・`)「ん?」
 
(゚A゚;)「す、すみません! フリーズさせたまま放置してったの、僕です!」
 
(´・ω・`)「え?」
 
(;^Д^)「はぁ!?」
 
 髪を乱しながら何度も毒島が頭を下げる。
 笑野は一歩、毒島に詰め寄った。
 
(゚A゚;)「図書室で仕事が終わったあと、『雀王道』の自分の成績をちょっと確認したくて、アクセスしたらフリーズしちゃって」
 
(゚A゚;)「あんまりパソコン詳しくないから下手にイジるのも怖くて」
 
(゚A゚;)「内藤が寝てたから、起きたら直してくれるかなって思って」
 
(゚A゚;)「内藤、パソコン詳しいから、それくらい簡単かなって」
 
(゚A゚;)「一応、内藤にはメールしといたんですけど」
 
( ^ω^)「あ、いま気づいたお。サイレントマナーにしてたから気づかなかったお」
57 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:18:41 ID:iN94.SDg0
(゚A゚;)「さっきここに戻ってきた理由は、パソコンがどうなったかを確かめるためだったんです。本当にすみません!」
 
(´・ω・`)「なるほど、ねぇ」
 
(# ^Д^)「図書委員が放置していくんじゃねーよ!!」
 
(゚A゚;)「す、すみません!!」
 
(´・ω・`)「まぁ、過ぎたことだからしょうがないよ。笑野が言うとおり、放置して退出するのはまずいと思うけどさ」
 
(゚A゚;)「ほ、本当にすみません」
 
(;゚ー゚)「これだけ謝ってますし、許してあげましょうよ。悪気があったわけじゃないですし」
 
(;^Д^)「まったく」
 
 誰しもにとって本意ではないことが起きた。
 それでも、淡々と時間は過ぎていく。
 県大会の日は、三日後にやってくる。
59 名前:第1話 ◆azwd/t2EpE:2012/09/02(日) 01:19:48 ID:iN94.SDg0
(´・ω・`)「とにかくこのメンバーで県大会に臨む。みんな、頑張ろう」
 
( ^Д^)「やってやるっすよ」
 
(*゚ー゚)「初めての公式戦、ドキドキでワクワクです! 頑張ります!」
 
('A`;)「精一杯頑張ります」
 
(;^ω^)「どこまでやれるか分からないけど頑張りますお」
 
('、`*川「アタシもサポート頑張ります」
 
 突然巻き込まれた内藤と、巻き込んでしまった麻雀部。
 それぞれが多少の不安を抱えながら、全国へと続く道を進み行く。
 
 初本が図書室の出口へと向かい、その背中に他の面々がついていった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 第1話 終わり
 
     〜to be continued

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