220 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/01/10(火) 22:27:41.87 ID:GqeAKOzcO
─最終章・C─
( ^ω^)「ここは…」
周りには何もない。ただ荒野が広がっているだけだ。そして前には荒巻が立っている。
( ^ω^)「ツンとショボンをどうしたんだお!?」
/ ,' 3「奴等は別の空間で他のエクスキューショナーと闘っているだろう」
落ち着き払って言う。
( ^ω^)「自分達が何をしようとしているか分っているのかお!?」
/ ,' 3「そんな事は知らぬ。閣下の敵は排除するだけだ」
( ^ω^)「閣下?お前は神に仕えてるんじゃないのかお?」
/ ,' 3「フン、神などどうでもいい。俺の君主は閣下だけだ」
/ ,' 3「ここを出たければ俺を殺せ。行くぞ」


221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/01/10(火) 22:34:56.94 ID:GqeAKOzcO
荒巻は走り出す。
ブーンも走り出す。
二人の間にあった距離は一瞬で消滅した。
ガキィン!ギリギリ…
剣を交差させ、押し合う。
/ ,' 3「俺の通り名を教えてやろう……戦の電光石火だ」
ブーンの視界から荒巻が消えた。
その速さはまさに電光石火といった所か。
( ^ω^)「!!」
ブーンは背後の殺気に咄嗟に反応する。
ガキィン!
/ ,' 3「やるな…」
( ^ω^)「スピードなら僕も負けないお!」
ブーンも高速で動く。右に突きのフェイントを入れ、左から回り込む。
今度はブーンが荒巻の背後を取った。背中を突き刺そうと繰り出す…が、甘かった。
荒巻は身をよじってギリギリでかわす。そして振り向きざまに一閃!
ズバッ!
ブーンは身を引いたが、胸板を切り裂かれ、切っ先から一輪の血の華が咲く。
(#^ω^)「ぬおおお!!」
ブーンは体勢を崩しながらも蹴りを放つ。
荒巻はこの蹴りの威力を侮っていたようだ。
腕で受け止めるが、その威力に吹き飛ぶ。
/ ,' 3「ぐ……」
/ ,' 3「想像以上の力だ…。だが!」
荒巻は高速で左右にフェイントを入れ、接近する。その速度は驚異的で、残像が残るほどだ。
(;^ω^)「(普通の人間かと思ってたら全然普通じゃないお)」
227 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/01/10(火) 22:42:25.55 ID:GqeAKOzcO
ブーンも移動を開始する。自身も高速で移動しながら、その卓越した胴体視力で荒巻を捕捉し続ける。
それは、荒巻も同じらしい。
間合いに入った。
すぐさま両者の斬撃が始まっる。
ガギギンッ!ビュオゥ!ギギンッ!
三つの刃が火花を散らして激突し、甲高い音が響き渡たる。両者は少しも攻撃の手を緩めず、斬撃は更に勢いを増す。
ガキィィイン…
ミルナの剣が弾き飛ばされて後方に突き刺さる。
( ^ω^)「一本でも!」
両手で握り、また走りだした。
両者はその眼力で隙を探す。
( ^ω^)「(ここだお!)」
/ ,' 3「(そこだ)」
両者の渾身の一撃を放つが、刃はぶつかり二人は飛び退いた。
( ^ω^)「………」
/ ,' 3「………」
二人は無言で睨み合う。共に剣気を高め、相手を斬る事のみに集中する。
どう撃ち込み、どうかわすか。
相手に、どう自分より深い傷を負わすか。
二人の思考はそれのみを考える。
しばしの沈黙。
それは唐突に破られた。
229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/01/10(火) 22:51:53.49 ID:GqeAKOzcO
またもや一瞬で距離が消滅し、二人の殺意が交錯する。ブーンの剣は弧を描き、荒巻の剣は雷の一撃となり突き出された。
(;^ω^)「………」
/ ,' 3「………」

二度目の、静寂。
ブーンの剣は荒巻の首筋に食い込む所で止まり、荒巻の剣はブーンの喉を刺し貫く所で止まっている。
ブーンは喉、荒巻は首筋から血が滴る。
/ ,' 3「………どうする。このまま斬り合えば相撃ちだ」
(;^ω^)「………」
ブーンは硬直する。
/ ,' 3「提案がある」
/ ,' 3「合図で二人共剣を放す。そこからはより速い者が勝つ。どうだ」
(;^ω^)「…………乗ったお」
/ ,' 3「合図は……0分にこの時計の音が鳴る。それが合図だ」
荒巻は時計を懐から出し、足下に落とす。
時計の針は57分。
針の音と滴る血の音が大きく聞こえるほどの静寂。
逃げ出したくなるほどの重々しい空気。
3分が永遠に感じられた。
ピピピ…ピピピ…
両者は同時に剣を放す。
重力に引かれ、地面に落下する剣をすくい取ったのは荒巻だ。
すぐに下からすくい上げるように斜めに一閃する。
ブーンは身をかがめこれをかわすと、蹴りを放つ。
荒巻は一歩下がり衝撃を殺す。ブーンはこの隙にまだ落下しきっていない剣を掴み、追撃する。
232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/01/10(火) 22:55:08.37 ID:GqeAKOzcO
荒巻の斬撃。
剣と剣が擦れ合う。
再び斬撃。
ブーンは身を翻し、かわす。そのまま半回転し、必殺の一撃を右腕に撃ち込んだ。
/ ,' 3「……!」
宙を舞う右手。
よろける荒巻。
突きを繰り出すブーンの目に迷いはない。
突きは腹を突き破り、捻りを加えて傷を広げる。そしてそのまま横に引き裂いた。
/ ,' 3「……閣…下…」
血の塊を吐き出し崩れ落ちる。
(;^ω^)「(信長ほどじゃなかったけど危なかったお…)」
スピード勝負はブーンの勝利に終わった………

《荒巻スカルチノフ》
ヒトラーにその才能を買われ、直属の部下に。戦場では火器は使わず剣のみで戦った。その速さから『戦の電光石火』と呼ばれるようになる。
ヒトラーが闇に染まった時でも彼の忠誠心に揺るぎはない。
力を与えられたが、強靱な精神力と忠誠心で闇を押さえ込んだせいで、得た力は微々たる物であった。

─最終章・C─
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