- 108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 01:04:07.29 ID:iQSPLTtG0
- 夏休み明け、私は銀さんが教えてくれた秘儀を使って、友人を増やした。
対人関係も、家庭環境も改善され、私はこれまでとは違った環境を楽しんだ。
短い体験が何もかもを変える事があると、私はこうして学んだ。
全ては、夏の体験がもたらした必然。
あの日以来、祖父が無くなるまで私は毎年ここを訪れていた。
季節は決まって夏。
夏休みを利用して、私は両親と共に一週間この地で過ごした。
だが、毎日この場所に来ても、銀さんとは一度も再会出来なかった。
誰に聞いても、銀さんを見た事が無いのだと云う。
何がどうなっているのか、当時の私にはさっぱり分からなかった。
ひと夏の夢の様な体験は、本当に夢だったのではと思うようになり、祖父の死後、この地に来る事はなくなった。
振り返って見て、私はあれは夢だったのではと思う様になり始めた。
仮に夢でも、私はそれでも構わない。
(´・ω・`)「ふぅ……」
蝉の大合唱と、川のせせらぎ。
ひんやりとした空気。
まるで、十五年前のあの日に戻ってきたかのような心地だ。
例えどれだけ私が歳をとっても、この土地と私の関係は変わらない。
不変の存在として、この土地は私を出迎えてくれた。
(´・ω・`)「……ん?」
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 01:06:33.15 ID:iQSPLTtG0
- 不意に、岩場を移動する跫音が聞こえて来た。
誰か来ているのだろうか。
跫音の方に眼を向け、誰が来るのか、私は少し期待していた。
(;´・ω・`)「……う」
白い人影が近付いて来る。
眼の錯覚だ。
視力が低下しているのだ。
だから、あれは違う。
(;´・ω・`)「嘘……だろ……」
眼を擦る。
眼を凝らす。
しかし、その姿は徐々に大きさを増し、輪郭がハッキリと見えてくる。
疑いようがなかった。
十五年と、全く同じ少女の姿が、そこにはあった。
笑顔のまま、私に向かって歩いて来る少女。
白いワンピースと、大きな麦わら帽子。
長い黒髪と、夏空の色をした碧眼。
見紛う事は無い。
銀さんだ。
(;´・ω・`)「そ、そんな…… まさか……」
イ从゚ ー゚ノi、「こんにちわ。
久しぶりじゃの、ショボン君」
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 01:11:51.93 ID:iQSPLTtG0
- あの頃と全く変わっていない少女は、柔らかく微笑んだ。
(;´・ω・`)「ぎ、銀……さん?」
イ从゚ ー゚ノi、「大きくなったのぅ、あの頃はこんなに小さかったのに」
(;´・ω・`)「あ……」
体が芯から震えた。
感動に打ち震え、目頭が熱くなる。
私は込み上げてくる涙を止める事が出来ず、頬を伝って大粒の涙が零れ落ちた。
(´;ω;`)「お……久しぶりで……す……」
岩から飛び降り、私は銀さんに駆け寄った。
飛びつく様にして銀さんを抱きしめ、私は子供の様に声を上げて泣いた。
ずっと会いたかった。
ずっと、お礼を言いたかった。
(´;ω;`)「あっ……うぁっ……ああっ……!」
イ从゚ ー゚ノi、「おやおや」
私は、聞きたい事や言いたい事が沢山あった。
そんな全てが、泣き声となって私の口から溢れだす。
銀さんは、優しく私の背中と頭を撫でてくれた。
ようやく私が泣き止んだのは、ヒグラシが鳴き始めた頃だった。
赤く眼を泣き腫らした私は銀さんから離れ、呼吸を整えて、改めて挨拶をする。
- 112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 01:17:14.30 ID:iQSPLTtG0
- (´・ω・`)「本当に、お久しぶりです、銀さん」
イ从゚ ー゚ノi、「うむ、久しいの」
(´・ω・`)「一体今まで何処にいたんですか?」
イ从゚ ー゚ノi、「う〜ん、それを答えるのは簡単なんじゃが……
……のぅ、ショボン君。 ショボン君のおじいちゃんの家って、まだあるか?」
(´・ω・`)「え、えぇ」
イ从゚ ー゚ノi、「今日、泊ってもいいか?」
(´・ω・`)「えっ?!」
イ从゚ ー゚ノi、「おや? 確かショボン君って、結婚はしていないのでは?」
(;´・ω・`)「なっ?!」
イ从゚ ー゚ノi、「ちと、こう云う場所じゃ話したくないんじゃ」
(´・ω・`)「あ、あぁ、そう云う事ですか。
では、大したおもてなしは出来ませんが」
イ从゚ ー゚ノi、「かまわんよ、別に」
こうして私は、十五年前と同じように銀さんと一緒に祖父母の家に向かった。
夕食のカレーライスを平らげ、交互に風呂に入った。
私達は祖父母の残した浴衣に着替えて、寝室に使っている部屋で話を始めた。
- 115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 01:20:43.72 ID:iQSPLTtG0
- イ从゚ ー゚ノi、「さて、と。
儂が今まで何処に居たのかって、聞いたよね」
(´・ω・`)「はい。 あれから何回もここを訪れたのですが、銀さんとは会えずじまいで。
祖父母に聞いても銀さんを知らないと言っていて、手掛かりもなくて……」
イ从゚ ー゚ノi、「まぁ、知られてたらちょっとビックリするがの。
儂は、あれからもずーっとここに居たんじゃが」
(´・ω・`)「で、でも――」
イ从゚ ー゚ノi、「狐のお話、覚えてるか?」
(´・ω・`)「あ、はい。 勿論です。
人と遊びたかった狐の話ですよね」
イ从゚ ー゚ノi、「あれな、儂の事なんじゃ」
(´・ω・`)「……はい?」
一体、何の謎かけだろうか。
私は頭をフル稼働させて考えたが、答えが分からない。
田舎でしか通用しないジョークだろうか。
はて、どう返したものだろうか。
イ从゚ ー゚ノi、「謎かけではない。
だから、儂があのお話の狐の妖怪なんじゃ」
- 116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 01:24:51.29 ID:iQSPLTtG0
- からかっているのか。
ならここは、笑えばいいのだろうか。
ううむ。
イ从゚ ー゚ノi、「まぁ、信じないとは思っていたが。
それじゃあ、ショボン君に見せてあげよう」
_ ,
ヘ
./1.} _.
/ |
,〃 }.} ィ彡ヽ / }
.// 丿ト-'/ |.| / |
/ムイ´ ヽ. |.|'
.リ
./ ヽ .l.l /
ノ ∨ノ
/
{ h. /
ヽ ゙= 、_ >ゝ.
./
ヽ  ̄, . イ7 { ヽ /
ゞ―‐ ´ .// 厶 '
⊂ゝ、__ノ/‐-- '´
し' し'
それは正に、一瞬の出来事であった。
一瞬前まで銀さんがいた場所に、狐が座っていた。
頭の中でジャン=ピエールさんがパニックを起こしていた。
(´・ω・`)「……」
「そりゃ」
小さな狐の前足が、私の頬を軽くつまんだ。
- 118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 01:29:45.14 ID:iQSPLTtG0
- 「狐につままれたような顔してるって、きっとこんな顔なんじゃろうな」
(;´・ω・`)「ふぉおおお?!」
イ从゚ ー゚ノi、「どうじゃ?」
再び、私の目の前で狐がいた場所に銀さんが現れる。
イ从゚ ー゚ノi、「これで信じてくれるか?」
(´・ω・`)「……あ、あの」
イ从゚ ー゚ノi、「ん?」
(´・ω・`)「半分って云うのは出来るんですか?」
何を言っているんだろう。
私は馬鹿だ。
あいや、待たれよ。
これは私の意志ではない。
そう、頭の中のポルポルさんが命令したのだ。
ノト∧ハ∧,
イ从゚ ー゚ノi、「んふふ。 出来るぞ。
……そりゃ!」
- 120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 01:32:42.92 ID:iQSPLTtG0
- それまでそこに無かった狐の耳と尻尾が、何の前触れも無しに出現する。
信じるしかない。
漢のロマンは、嘘ではない。
何より、銀さんは私を信用してこの話をしてくれたと云う事が、疑わせなかった。
(´・ω・`)「……信じます」
ノト∧ハ∧,
イ从゚ ー゚ノi、「おお。 ありがとう、ショボン君」
耳と尻尾が、幻の様に消える。
少し残念だった。
(´・ω・`)「あの、それで、どうして暫くの間、いなかったんですか?」
イ从゚ ー゚ノi、「それはな、もう少し長く人間の姿になれるように練習してたんじゃ。
まさかショボン君が、儂を探してくれていたなんて知らなかったのぅ。
大体、ここに来た子供達は帰ってこないし、帰って来ても忘れているからな。
ロマネスクとも、昔は遊んだんじゃが、忘れておるからな。
じゃがショボン君は、覚えていてくれたのか。
待たせてすまぬ、ショボン君」
(´・ω・`)「いえ、いいんです。 銀さんにまた逢えただけで、私は十分ですから」
イ从゚ ー゚ノi、「そうか……それはよかった」
安心した風に、銀さんが笑った。
その笑顔に、不覚にも私は幼い頃の恋心を再燃させてしまう。
- 122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 01:37:06.80 ID:iQSPLTtG0
- イ从゚ ー゚ノi、「儂も、ショボン君に会えてよかったよ」
嬉しそうにそう言って、銀さんが私を抱きしめてくれた。
私の胸は高鳴った。
いかん。
いかんですぞ!
そう思うのだが、足は言う事を聞かないし、手は命令を拒絶していた。
風呂上がりの銀さんの甘い香りは、何時までも嗅いでいたかった。
私は変態だろうか?
きっと変態だろう。
うん、変態だ。
イ从゚ ー゚ノi、「どうした?」
(´・ω・`)「本当に……嬉しくて……
ずっと、私はこうしていたかったんです」
何とも恥ずかしいセリフだ。
大人の男が言うセリフではないだろう。
イ从゚ ー゚ノi、「……そっか。
それじゃあ、もう少しこうしてようか」
(´・ω・`)「すみません……」
- 130 名前:>>128 また猿でした:2012/10/08(月) 02:00:48.83 ID:iQSPLTtG0
- 銀さんの小さな体は、ちょこんと私の膝の上に跨る形になっていた。
まるで、子供に慰められる大人の図だ。
ふと、全てを見透かす瞳が私の目を見る。
思わず目を逸らす。
銀さんの眼は色っぽく潤んで、切なげに私を見ていた。
男として、勘違いしてしまいそうになる。
イ从゚ ー゚ノi、「おやぁ。
何故目を逸らす?」
恥ずかしいからです。
はい。
(;´・ω・`)「〜〜っ!!」
顔を近づけて、銀さんは私の目を覗き込む。
芸術品と言ってもいい程の美しい顔が、宝石の様な瞳が、私に向けられる。
顔を真っ赤にして、私は顔をそむけた。
だが、銀さんは、尚も私に顔を近付ける。
息遣いは勿論、瞬きの音さえも聞こえる至近距離。
化粧をしていない、自然のままの美しさ。
長いまつ毛。
風呂上がりの石鹸の香り。
この一撃でよくぞまぁ、頭が壊れなかった物だ。
突然、銀さんは両手を私の首の後ろに回して、彼女の柔らかい唇が私の唇に重ねられた。
口の中に銀さんの舌が入り込んで、口内を舐めまわした。
満足したのか、銀さんの唇は唾液の糸を引いて離された。
- 133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 02:02:57.32 ID:iQSPLTtG0
- イ从゚ ー゚ノi、「大人の味じゃな」
(;´・ω・`)「ど、どんな味ですか」
何て質問をしたのだろう。
私は馬鹿だ。
イ从゚ ー゚ノi、「歯磨き粉の味」
銀さんは斜め上を行っていた。
妖艶な笑みを浮かべ、銀さんは私を布団の上に押し倒した。
パニックに陥った私の顔を見て、銀さんは嬉しそうに言った。
イ从゚ ー゚ノi、「ショボン君は可愛いのぅ!」
(´・ω・`)「か、可愛い?」
イ从゚ ー゚ノi、「うむ! 食べちゃいたいぐらい可愛いぞ!」
(´・ω・`)「あ、銀さんの方が」
イ从゚ ー゚ノi、「嬉しい事言ってくれるのぅ」
銀さんの様子がおかしい。
顔が上気し、呼吸が荒かった。
この時初めて、私は銀さんの新たな一面を見る事となった。
イ从゚ ー゚ノi、「よし、食べてしまおう」
- 135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 02:05:36.28 ID:iQSPLTtG0
- 原因不明の恐怖と混乱で、私は口をパクパクとさせるしか出来なかった。
その間に、銀さんは私の上に体を密着させ、片手で私の両手首を掴み上げた。
これで殴りかかられたら危ないなと、私は現実逃避を始めていた。
私、もう少し頑張れよ。
銀さんは、私の首筋を舐め上げた。
小さな女の子の様な声を上げて、私は震えあがった。
クスクスと笑い、銀さんは尚も私の首筋を舐める。
耳朶を、銀さんの息が擽る。
そして、耳たぶを甘噛した。
(;´・ω・`)「ぁく?!」
イ从゚ ー゚ノi、「んふふ」
銀さんの眼は、怪しげに輝いていた。
浴衣は肩まではだけ、鎖骨が見える。
それが色っぽく、私の頭はますます混乱していた。
何故か頭の中で、ワーグナーのワルキューレの騎行が流れていた。
イ从゚ ー゚ノi、「ショボン君、こう云う事に興味ないのか?」
興味の塊、いや、結晶体のようなものである。
とは、口が裂けても言えなかった。
まぁ、言わなくても銀さんには分かっていた様であった。
仮に声に出そうとしていたら、きっと、少女の様な可愛らしい悲鳴になっていただろう。
(;´・ω・`)「……っ」
- 137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 02:11:23.68 ID:iQSPLTtG0
- ともあれ、私は突如豹変した銀さんの態度にうろたえつつも、この状況を甘んじて受け入れていた。
気持ちよくされて不快がる程、私は人間が出来ていない。
イ从゚ ー゚ノi、「……んふふ」
汗ばんだ私の肌の上を、銀さんの舌が走る。
首筋から胸へ、そして頬へ。
(;´・ω・`)「……き、汚いですから」
イ从゚ ー゚ノi、「可愛いのぅ、可愛いのぅ!」
蚊の鳴くような私の小さな声は呆気なく一蹴され、銀さんは私の浴衣を脱がしにかかった。
帯を取られると、流石の私にも羞恥心があったので抵抗を試みた。
この突然の展開が嫌な訳もなく、むしろ喜んでいた。
それにしたって、もう少しステップはゆっくりでもいいのではと思う。
イ从゚ ー゚ノi、「だめじゃ」
膝を軽く乗せられ、息子を人質に取られた。
嘗て刀を誇りとした勇ましい武士のように、卑怯なり、とは言えなかった。
ですが、武人の方、お聞きください。
現代の武士が持つ刀は今や相手の手の内、もとい足の下にあるのです。
刀を潰されては、武士として生きてはいけないのです。
私の気持ちを分かって下さると思うのですが、私の刀はその刀身に我が血潮を滾らせております。
一歩間違えれば女子供も傷付けてしまう、恐ろしい刀となっているのです。
抵抗しないのは、武士の誇りであるとご理解いただきたい。
などと、私は頭の中で一人言い訳をしながらも、そのまま情欲の波にのまれ――
- 139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 02:14:47.19 ID:iQSPLTtG0
――翌朝、気が付くと銀さんの姿はどこにもなかった。
昨夜の記憶が曖昧で、私は銀さんと本当に結ばれたのか。
私には、それさえも定かでは無かった。
そもそも、銀さんと再会出来たと言う事自体が夢だったのではないだろうか。
私は長い夢を見ていただけで、あれは、私の願望だったのではないだろうか。
(´・ω・`)「……夢、だったのか?」
そう考えると、何もかもが幻に思えてくる。
何の気なしに、私は窓の外を見た。
夏の空が、そこにはあった。
突然、雲一つないのに、強い雨が急に降り出した。
(´・ω・`)「珍しいな。 天気雨か」
その時、玄関の戸が控えめに叩かれた。
(´・ω・`)「……ん?」
- 141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/08(月) 02:17:56.89 ID:iQSPLTtG0
起き上がって、私は玄関に向かう。
曇りガラスの引き戸の向こうには、白い人影が見えていたのであった。
(´・ω・`)やはり嫁入り前には雨が降るようです
終わり
戻る