1 : ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:10:19.41 ID:5QHOFep00
これまでのお話。



ノハ*゚Д゚)「仮面ライダーさん!!!!!」


内藤に憧れている少女は、ついに本人とまた出会う。


('、`;川「……じゃあ、どうして、戦っているんですか?」

( ^ω^)「……火狐、ファイアフォックスの件は、知ってるお?」


どうして同じ怪物なのに、戦いあっているのか、そんな疑問に対し、
全ての始まりファイアフォックス、内藤はその決意を再確認するかのように問いかける。


( ><)


そして、駅へと向かう謎の男の正体は。
3 : ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:12:47.87 ID:5QHOFep00

第三話  『 二つで一つ、Wで変身/ヒーローの条件 』



………。



カランカラン!

けたたましい音を立てて、あまり開かれない扉が再び開かれた。
そのあまりの勢いに、店員の女性も半口を空けて固まっている。

ノハ;゚听)「ぜえっ…ぜえっ……あの、すいません!」

ξ゚ー゚)ξ「いらっ……あ、ああ、なんだ…忘れ物ですか?」

ノハ;゚听)「か、仮面ライダーさんに! はな、話があって来ました!!」

ξ;゚ -゚)ξ「げっ……えーと、それ、今じゃないと駄目?」

ノハ;゚听)「はい! できればすぐにでも…!!」ゲッ?
5 : ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:17:06.80 ID:5QHOFep00

ζ(゚ー゚*ζ「ブーンなら、今は店長といっしょに上にいましゅよ」

ノパ听)「上に…!」


ξ*゚听)ξイマシュ・・・

ζ(゚ヮ゚*ζカンジャッタ


ノハ;゚听)「失礼してもいいですか!!」

ξ;゚听)ξ「い、いや……駄目、じゃないんだが…今はちょっと、よしたほうが…」

ノパ听)「な、何かあるのですか…!?」

ζ(゚ー゚*ζ「淫獣を見に行くって言ってました」

ノハ;゚听)「インジュウ!? なんですかそれ、新たな敵ですか!?
     あっ、もしかして、それを今調べていると!? そういうわけですか!?」

ζ(゚- ゚*ζ「…! ―――――キーワードは淫獣」

と、そんな勢い任せな質問に対し、デレはふと表情から色を消した。
その変化に気づいたツンが少女に問いかけるも、まるで反応しない。

6 : ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:18:56.61 ID:5QHOFep00

ξ;゚听)ξ「……デレ?」

ζ(-ヮ-*ζ『検索結果を順に』

ξ;゚听)ξ「は? 何言ってるんだ?」

ζ(゚- ゚*ζ『――火の元さくら、世界中の男たちから最も精液を搾り取った幼女、
      尚、淫獣とは、作中において彼女が兄から怪獣と呼ばれる事に起因する』

ξ;゚听)ξ「…おい、マジでどうした、大丈夫か!?」

ノハ;゚听)「あ、あの…!」

ξ;--)ξ「ああ、もう…! いいよ、そのドア開けて階段上った正面だよ、いっていいから!」

ノハ*゚听)「ありがとうございます!!」

ζ(゚- ゚*ζ『類似項目、ユーノスクライド、若い男である正体を隠し、可愛らしいフェレットに身を扮し、
      少女の生着替えやお風呂などを視姦し続けた、狡猾な獣である』

ξ;゚听)ξ「デレ! おいコラ、しっかりしろ!!」

ノパ听)「……よし…行くか」


7 : ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:20:13.25 ID:5QHOFep00

こうして、何だかイベント発生している事など露知らず、アクセラレータな彼女は二階を目指す、
ドアを開け、靴を脱ぎ、ゆっくりと階段を上がっていく、すると、段々と何かの声が聞こえてきた。

ノハ;゚听)「……女の子の……声…?」

あどけないようで、それでいて妙に色気のある声だった。
だが、それより気になるのは、ひそひそとした声と、奇妙な笑い声。

ノハ;゚听)「な、何が起きているんだろう……」

<そんな中途半端な変身で!!

<ど、どうしてその事を!?

ノハ;゚听)(変身!? くっ…気になる……!!)

ノハ;゚听)「……こんなの、いけない事だけど…」

ちょっとだけ、とヒートは扉に手をかけた。
引き戸式の扉がほんの少し開かれて、こっそりと顔を近づけていく。
そして、その先に彼女が見たのは。


8 : ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:22:26.60 ID:5QHOFep00

まだ夕陽も沈んでないのに閉め切られた暗い部屋。
テレビを見るときは部屋を明るくして離れて見んさい言うとるに、守ろうとしやがらない二人と、
その二人が眺める、二次元幼女が駆け回っている様子を映したアニメ映像だった。

ヒートはまだ状況が掴めず、口を半開きに固まった。
すると、そんな事はつゆしらず、ヲタ…男達は騒ぎ続ける。

(*゚ω゚)「フヒヒwwwwwwwカノンたん結構おっぱいおっきいおwwwwwww」

(*・∀・)「わんっ、て見た!? 今のポチ姉wwwwwwかわいすぎでしょwwwww」

(*゚ω゚)「それはわかるけどwwwwwwww僕はカノンちゃん一筋ですおwwwwwww」

(*・∀・)「そこは譲らないねぇwwwwwwwwwww」

(*゚ω゚)「譲れませんおwwwwwwwwwwwww」

(*・∀・)「よし! じゃあここはお互いに理解できる物を見ようじゃないか!!」

(*゚ω゚)「その心は!?」

(*・∀・)「インデックス19話!!」

(*゚ω゚)「それはいい! でかしたよ店長!! とミサカはミサカは賛同してみたりwwwww」

(*・∀・)「よーーーーし! 最高画質で見るぞ!!! 全裸待機だ内藤君!!」

(*゚ω゚)「サー!! イエスサー!!」

10 : ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:25:12.09 ID:5QHOFep00


<うひゃひゃひゃひゃひゃwwwwwwwwwwwww
<フヒッwwwフヒヒwwwwwwwwwwwwwww


どれほどの時間が流れたのか、もはや彼女にはわからなかった。
動揺と、否定と、困惑、それら全てが混ざり合い、ただ呆然とするばかり。

そして。


ノハ )


その全てを察したとき。彼女は何を言うでもなく、ただ、静かに扉を閉じた。

――――果たして、閉じたのは扉か、それとも彼女の――――心か。

そして笑い声に背を向けると、哀愁を漂わせながら階段を下りていく。

ξ゚听)ξ「ん? 用は済んだのか?」

ノハ )「………」

ξ;゚ー゚)ξ「……」アー



11 : ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:27:14.75 ID:5QHOFep00

ξ;--)ξ(……アレが始まる前なら…と思ったが、手遅れだったか……)

彼女の様子から全てを察したツンも、何だか居た堪れない思いだった。
やがてヒートはカウンターに腰掛けると、憔悴しきった表情でこう言った。

ノハヽ゚ー゚)「…マスター、この店で一番度数の高い酒を頼むよ」

ξ゚听)ξ「や、うち居酒屋じゃないんで」

ノハ;凵G)「う……うわああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!」

ξ;-听)ξ「参ったなぁ…」

ζ(゚ー゚*ζ「どうしちゃったんです?」

ξ゚听)ξ「見たくなかった物を見てしまったんだよ」

ζ(゚ヮ゚*ζ「ああっ、両親セックスリアルタイム遭遇ktkr!! とかですね?」

ξ゚听)ξ「ああ、それは嫌だな……ていうか楽しそうだなお前…」

ノハ;Д;)「絶望した!! ヒーローの実態に絶望したああああああああああああああああああああ!!!」

ξ゚听)ξ「まあ……気持ちは分からんでもないが、いいじゃないか別に」

13 : ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:29:30.12 ID:5QHOFep00

ノハ#;凵G)「いい訳ないでしょう!!? なんですかアレは!? さっきはあんなカッコイー事言ってたのに!
      あれは嘘だったんですか!! あの場だけの、ただのEカッコCだったんですか!!?」

ξ゚听)ξ「いや、アニメ見てたってだけで何もそこまで……」

ノハ#;凵G)「違います!! あれは完全に犯罪者の目でした!!!

ξ--)ξ「ああ…それについては私も同感だが…」

ノハ#;凵G)「あんなの違う! あんなの正義のヒーローじゃない!!」

ξ゚-)ξ「………」

ノハ#;凵G)「あんな格好悪い人、ヒーロー失格だよ!! ううん、違う! きっとあれは偽者だ!!
      そうに決まってる、仮面ライダーの名を語ってるだけの、ただの変態なんだ!!」

ξ )ξ「…つまり、あいつが嘘をついていると?」

ノハ#;凵G)「そうだよ…あんな人が仮面ライダーなんて、あるわけない…!
      嘘なんだ、嘘に決まってる! ただの口だけの、最低な―――」

と、言いかけた所で、ツンはテーブルを殴りつける事でその言葉の続きを静止した。
15 : ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:32:33.50 ID:5QHOFep00

見ればツンは目を細め、明らかな苛立ちを含めた視線を向けている。
その剣幕に、ヒートはおろかデレまでも息を飲んだ。

ノハ;凵G)(……あ)

ξ゚听)ξ「…………」

それで頭が冷えたのだろう、ヒートは自らの失言を悟る。

何故なら、彼女はあの凍結事件よりも以前に、内藤たちの姿を目撃している、
だから内藤という男が仮面ライダーである事を、他ならぬ彼女自身が確信していた。

だからこそ、信じたくないと思ってしまった。
嘘であってほしいと、そう思ってしまった。

ノハ; )(…………何、やってるんだろ、私…)

けれど、その憤りをツンにぶつける事はお門違いだ、と。血の気が引いていくのを感じながら。
怒られて当然だと、半ば自棄にも近い思いのまま、ヒートは自分を睨みつける彼女の言葉を待った。
17 : ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:35:37.41 ID:5QHOFep00

と、その時。

ヒートのポケットの奥が細かく震え、
<とあ〜る〜世界の果〜てで〜駆け〜抜けて〜く♪
着信を告げるメロディが、緊張した空間に鳴り響いた。

ノハ;゚听)(………こんな時に…)

ヒートは流石に出られないと、そのまま無視しようとするものの、
着信音はいつまで経っても鳴り止まない。

やがてツンはため息混じりに出るように告げる。

ζ(゚ー゚;ζ「……あれ?」

と、そこで少女は階段のある扉奥から聞こえてくる物音に反応を示し、
間もなくして、扉が開かれるや否や、やけに真剣な表情をした内藤が足早に出口へと向かう。
そしてヒートは、やりきれない思いのままに目を伏せ、携帯を開いた。

ζ(゚ー゚;ζ「ブーン? どうしたの?」

(  ω )「ドーパントが出た、行ってくる」

20 : ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:38:33.66 ID:5QHOFep00

ξ;゚听)ξ「何? どうやって分かったんだ?」

( ・∀・)「ふふふ、画面上のテロップに出ていたのさ……」

ξ;--)ξ「そうですか……通りでなんか苛ついてる訳だ……」

(#^ω^)(……くそ、邪魔しやがって……どこの馬鹿だ……)

そして噂をすれば何とやら、BGMを流していたラジオの音が途切れ、
ドーパントが電車を乗っ取った、という旨を伝える速報が入った。

「………え…?」

と、その速報に反応する声があった。

声のした先へと目を向ければ、そこには携帯を耳に当てたまま、表情を凍りつかせるヒートが居た。

彼女のすぐ側に居たツンが、彼女にどうかしたのかと問いかけると、
ヒートは震える手に握られた携帯電話を、ゆっくりとツンへと差し出した。
22 : ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:40:31.80 ID:5QHOFep00

ξ゚听)ξ「……? もしもし?」

ノハ; )「…………」

そしてツンは疑問符を浮かべながら、受け取った携帯へと話しかける。
だが、来ると思われた返事はなく、ただ、騒がしい音声だけが聞こえるばかり。

不思議に思うも、そのまま携帯を耳に当てていれば、やがて一つの声に気づく。

それは、誰とも判別のつかない程に重なった、多数の悲鳴だった。

ξ;゚听)ξ(……まさか…!)

ξ;゚听)ξ「おい! しっかりしろ! 一緒に居た二人はどうした!」

ノハ; )「……先に、帰るって………駅に……」

(;・∀・)「!」

ζ(゚- ゚;ζ「そんな…!」

ノハ;凵G)「どうしよう……! どうしよう…! 二人とも、あの電車に乗ってるんだ!!」

24 : ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:42:34.10 ID:5QHOFep00

その場にぺたんと座り込み、怯えるようにヒートは頭を抱える、
すると、そんな彼女の肩へと、支えるように手が置かれた。

( ^ω^)「……」

ノハ;凵G)「……ぁ…ぅ」

見上げれば、まっすぐに自分を射抜く瞳と視線が交差する、
様々な感情が入り混じり、ヒートは思わず言葉を失った。
そんな彼女に対して、内藤は笑みを浮かべると小さく頷き。

( ^ω^)「……必ず助ける」

簡潔にたった一言、それだけを言い残し、排気音と共に駆け抜けていった。
そしてヒートは、その言葉にも、背中にも、何も応える事ができなかった。


………。




25 : ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:44:36.08 ID:5QHOFep00

車内は、パニックを起こした乗客たちによって騒然としていた。
逃げ惑う人に蹴られた子供、それを庇おうと被さる母親、そんな二人につまづき倒れこむ誰か。
そして、倒れた誰かをまた誰かが足蹴にしながら、車両の進行方向へと向かって人々が集まっていく。

('、`;川「渡辺! 急いで!!」

从;'д'从「う、うん!」

('、`;川「もう!! 鈍くさいんだから!!」

从;'Д'从「ご、ごめん〜」

('、`;川「……とにかく、逃げるよ! あと渡辺、ヒートに電話して!!」

从;'д'从「ひっちゃんに? ど、どうして〜っ?」

('、`;川「もしかしたら、まだ一緒に居るかもしれないでしょ!!」

从;'Д'从「あ、そっそっかぁ〜!」

28 : ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:47:03.11 ID:5QHOFep00

慌てながら、渡辺は携帯を取り出すと履歴の一つを選択し、通話ボタンを押した。
と、その時。彼女はうしろから誰かに押され、その勢いで携帯を落としてしまう。

从;'ヮ'从「あ」

('、`;川「あーーっ! 何あんたまで落としてんのよーーーーっ!」

从;'д'从「待ってぇ〜!」

('、`;川「馬鹿!! もういいから――――――……


……―――――事の発端は、一つの怒声。


痴漢にあっていた女生徒を、若者が助けたのが始まりだった。

(痴漢してましたよね?)

(;><)(なんのことだかわかんないんです!)

29 :三話だった… ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:50:06.91 ID:5QHOFep00

(言い逃れはできませんよ……ていうか、ここまで制服はだけさせといてどの口がいいますかこの野郎!)

その女生徒は、シャツのボタンを全て外され前は半開き、スカートもホックを下げられ落ちる寸前、
ついでに、あちこちに変な液体が付着している、むしろここまで出来た事に関心できるレベルだった。

(次の駅で、一緒に来てもらいますよ)

そんな言葉を皮切りに、周囲も痴漢男を非難し始め、
女生徒は泣きながら、その若者へとしがみついた。

ひとまず一件落着かと、誰もが思うシーンだった。

けれど、その女生徒の様子は安心感からの行動といった類ではなく、
女生徒は若者にしがみつきながら、こう叫んだ。

(もう…もうやめて! こいつをこれ以上刺激しないで……!!)

突然、発狂したかのように叫ぶ女生徒に、周囲は困惑の表情を浮かべる。
すると先ほどまで慌てていた痴漢男の様子が一変。

( ><)(………ったく、人が穏便に済ませてやろうと思えば、調子こきやがって)

(なんだお前、その態度は!!)


30 :三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:52:57.41 ID:5QHOFep00

(#><)(あーうぜえ!! わっかんないかなあああああああああああ!!)

(…や、やだ、言うとおりにすれば、何もしないって!)

( ><)(はははは!! そうだよなぁ! 言ってやれよ袖から白いの垂らした女子高生!!
      あんたら何余計なことしてくれちゃってんですか、ってなぁ!!)

(あんた、まさかその子を脅して)

( ><)(そうとも!! こうやってさあ!!)

男は叫びながら、後ろのポケットから何かを取り出し、見せ付けるように掲げた。
見えるのは、骨のような装飾がされた四角い物体と、銀色に輝く接続端子。

(…!?)

( ><)(これが何か、もうわかんだろ!!)

(…………が、ガイアメ)

( ><)(大当たり!!! そう…こいつが噂のガイアメモリさ!!)

一気にざわめきたつ車内に、笑い声とメモリ起動を告げる音声が響き、男は自らの首へとメモリをあてがった。
同時に、同じ音声が鳴り響き【ギガントピテクス】メモリは不気味に蠢きながら男の体へ取り込まれていく。
32 :三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:55:42.46 ID:5QHOFep00

そして変化が起きた。

男の四肢が大きく歪み、ついには膨張を始めた。

腕は大人一人分はあろうかという太さに変わり、身の丈は車内ギリギリにまで伸びていく。
次いで、全身を刺々しい剛毛が覆いかくし、顔はおよそ人の代物ではなくなっていた。

やがて、変化を追えた怪物―――太古に存在したという大猿の名を持つドーパントは、
鼓膜に叩きつけるような叫び声を上げながら、振りぬいた腕で、車両の壁の一部を座席ごと吹き飛ばした。

恐怖に顔をひきつらせ、固まっていた人々はそれを合図に一斉に悲鳴を上げ、逃げ惑う。


( <●><●>)(ほおれ逃げろ逃げろ! びびってんのはわかってんだぜぇ!!??)

そうして逃げ惑う中に、運悪くあの二人も居た。

从;'Д'从(…いいい、いっちゃんー! ドーパントだよー!!)

('、`;川(わかってるっての! はやく内藤さんに……!)

('、`;川(………)

从;'д'从(…どうしたの?)

34 :三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 00:57:15.98 ID:5QHOFep00

('、`;川(……出ない)

从;'Д'从(えええーーっ)

(注:アニメ鑑賞中)

('、`;川(もうっ、こんな時に…!!)

そうこうする間にも、逃げゆく人並みの奥からのぞく大きな頭が近づいてくる。

('、`;川(……っ…)

しかも、時折、妙な音が聞こえてきた。
ペットボトルを潰したような音、びちゃびちゃとした水音、
悲鳴に混じる絶叫と、鶏の首をしめたような声。

あまりの恐怖に、力が抜ける。

从;'д'从(あっ、いっちゃん!? 携帯がー!)

緩んだ手からこぼれた携帯は、誰かの足にぶつかりどこかへ転がっていった。
こうして、二人はとにかく逃げる以外に選択肢を失い、話は現在へと戻る。

……。



35 :三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 01:00:40.02 ID:5QHOFep00

徐々に追い詰められ始めた乗客たちは、端に群がり、狭い方へ逃げようとした。

そこへ、わざとゆっくりと歩む怪物は、愉悦に口元を歪めながら乗客へと向かっていき、
やがて一人の若者を見つけると、彼をひょいと掴み上げ、自分の眼前に落とした。

( <●><●>)「よお! 勇気ある青年!」

「う、うわ…っ!!」

( <●><●>)「おいおい、どうしたんだよさっきまでの威勢は……まあ、わかってるけどな、
       お前はさ、俺があんな真似してたからって、見下してたんだろ?
       だからあんなに強気だったんだろ? こんなクズになら勝てるって思ったんだろ?」

「ち、違う! 違います、だから助けてください、お願いします…さっきの事は謝りますから!!」

( <●><●>)「だが…それがどうだい? 相手が自分より上だと分かった瞬間これだ…」

「嫌だ…来るな……来るなぁあああああ!!」

( <●><●>)「はっ、まあいいや…無様すぎてもう怒る気も失せたよ、所詮、選ばれなかった人間か、
       ……お前らもよく見ておけよ!! 正義感ぶった奴が…どういう末路を辿るのかをな!!!」


36 :三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 01:02:37.01 ID:5QHOFep00

怪物が、大木のような腕を振り上げた。

それを見た若者は顔をひきつらせ、逃げようとする。
だが、それよりも早く腕は下へと落ち。

「助け…!!」

悲鳴の中、その若者の身体は大きな腕と共に床下にまでめりこみ、
ついには開いた穴から、多量の赤色と、その中身を線路上にばら撒いた。

赤は車内にも飛び散り、乗客をよりパニック状態にさせた。

( <●><●>)「ばぁーっか!! 助けなんざ来るわけねえだろ、
       正義のヒーロー気取りが、んなもん誰もなれやしねぇんだよ!!」

と、その時。列車はけたたましいブレーキ音を響かせながら一気に減速を始めた。
ようやく事態を把握した運転士が、列車を止めようとしているのだ。

それにより、将棋倒しのように人波が前へ倒れるように崩れていく。

( <●><●>)「おっと……危ねぇ運転しやがるなぁ」

しかし、怪物は若干よろけてみせるだけで、すぐに体制を建て直し、
更に人波へと歩み寄っていく。
38 :三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 01:04:59.51 ID:5QHOFep00

( <●><●>)「さて、と、そんじゃあ続きといこうか……
       おいお前ら、助かりたかったら俺の言う事をよーく聞け」

(*<●>・・<●>)「交換条件だ、命が惜しけりゃ……女共は全員、下に履いてるもんを脱げ!
       そんで上は何か羽織る程度で、俺の前に来な、可愛がってやるからよ」

そんなHENTAI的要求にいろんな意味で息を飲む乗客たち、
だが、そんな中に一つ、ため息をつく姿があった。

('、`;川「この期におよんで……結局それか、このエロ猿」

( <●>・・<●>)「おー、威勢のいい事で…つまりそれは、お前からしてほしいって事かい?」

从;'Д'从「ちょ、な、なにしてるの!? 危ないよ!!」

('、`#川「アンタは下がってな渡辺、もうね、もういいよ、なんていうかもう頭きた、
     こんな脳みそが股間についてるような馬鹿にさ、なんでいいようにされなきゃならんのかと」

从;'Д'从「いっちゃん!!」

('、`#川「それに……大丈夫よ渡辺、私、さっき見えたから」

从;'д'从「ふぇ…?」


39 :三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 01:08:26.60 ID:5QHOFep00

('、`#川「それでアンタ、そこのエロ猿!」

( <●>・・<●>)(……こいつ、チンコには勝てなかったよ、な目に合わせてやる……)

('、`#川「アンタはさっき言ったわね、正義のヒーローは居ないみたいな事を」

( <●>・・<●>)「ああ、それがどうした」

('、`#川「生憎だけど、私は知ってるんだよね、まだ会ってばかりだし…どこまで本気なのかなんて知らないけど、
     アンタみたいに、誰かを泣かせる奴を許せないって、そう言いきれる人間を、
     ぜんぜん迷いもせず、まっすぐに顔を見て、笑顔でそう言いきれる人間を知ってんだ!!」

( <●>・・<●>)「ああ? だから、それがどうしたんだよ?」

('、`#川「だから! わかんない奴だな、居るって言ってんのよ!!」

( <●>・・<●>)「だから何が……」

('、`#川「仮面ライダー!!」


そして鳴り響く。

バイクが奏でる排気音。

44 :三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 01:11:36.47 ID:5QHOFep00

次いで。怪物の後ろの屋根が砕け散れば、埃が舞う中に降り立つ人影があった。
黒い甲冑を思わせるシルエットに、赤く輝く二つのレンズアイ、そして額に見えるはV字のアンテナ。

( <●><●>)「なんだ…黒い…ドーパント!?」

どよめきたつ車内。
それはまるで、合わせたかのような完璧なタイミングでやってきた。

('、`*川「正義のヒーローの、名前だよ」

自分の目でその姿を見たものは居ない。
けれど、彼女の言葉で誰もがその名を連想し、口にした。

(;<●><●>)「ま、まさかコイツが…………!?」

そして、降り立った黒いドーパントは破片を踏みしめながら、大猿へと歩み寄っていく。
怯むことなく自分へと向かい来る姿に、大猿は一歩下がる。

やがて、大猿の正面にまでやってきた黒いドーパントは、
左手を正面に突き出し、


( 0ω0)「さあ! お前の罪を、終わらせてやる!」


声高々に告げた。



59 :三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 03:11:27.54 ID:5QHOFep00

……。


再び時は戻り、内藤が出て行ったその直後。

方や事件が起きているものの、喫茶VIPでは変わらず穏やかなBGMが流れ、
ますます傾いていく斜陽の間で、ゆるやかに時も過ぎていた。

だが、その店中は未だ緊張感に包まれている。

というのも、何処か険悪なムードのツンとヒートの存在だった。

二人とも、何も話そうとはしない。
正確には、ヒートがツンの言葉を待っているのだが、
結局は沈黙ばかりが続いているので、同じ事だった。

けれど、不意にその沈黙をモララーが破った。

( ・∀・)「……しかし、流石に恥ずかしいところを見られちゃったね」

ノハ )「………」


60 :三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 03:12:27.90 ID:5QHOFep00

( ・∀・)「……………それと、ごめんね、君の夢を壊しちゃったみたいで、
      でもね、彼がああなったのはつい最近のことで、以前はああじゃなかったんだよ」

ノパ听)「……え?」

(;・∀・)「ていうか、まあ……僕が引き込んだんだけど……それにも、ちょっと事情があってね、
      あまり深いとこは話せないけど、彼も色々あって……何かしらの拠り所が必要だったんだ」

ノパ听)「……………それが、アニメだって言うんですか?」

ξ#゚听)ξ「店長、ちょっと待て」

(;・∀・)「…な、なんですか?」

ξ゚听)ξ「何故、そんな言い訳みたいな真似をしてるんだ」

(;・∀・)「なんでって、僕はただ、彼女が納得できるように」

ξ゚听)ξ「それがおかしいだろ、内藤は別に悪くないんだぞ」

(;・∀・)「でも、ほら……やっぱり理想像ってのは大事で……」

ξ#゚听)ξ「そんなの知るか! この勘違い女はこう言ったんだぞ、正義のヒーロー失格ってな、
      たかが人の悪い面を一つ見ただけで、あいつの、内藤が苦しんできた全てを否定したんだ!!」


61 :三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 03:14:27.07 ID:5QHOFep00

(;・∀・)「………それは……いや、しかしね、ツンちゃん…相手は何も知らない子なんだから」

ノハ )「………っ」

モララーの言葉は、彼女を庇おうとして出たものだ、
けれど、無知である、ということを言葉にされた事は、彼女の胸を抉った。

ξ#゚听)ξ「……いいか、知らないなら教えてやる」

ノハ; - )「……」

ξ#゚听)ξ「内藤はな、確かに優しい奴だから、正義の味方であろうとしているのかもしれない、
      だけどそれ以前に、アイツには"そういう存在でなければならない"理由がある」

ξ#゚听)ξ「その内容までは話せないが、だが、その為にアイツはずぅっと戦ってきた、
      ガイアメモリを使うたびに、自分を失っていく恐怖と、
      自分と同じ力を持つ怪物が、どれだけの数が居るのかも分からないまま」

ξ#゚听)ξ「………いつか、自我を失いかけたら、自ら命を絶とう、なんて勝手に決めながらな」

ノハ )「………」
63 :三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 03:17:05.27 ID:5QHOFep00

ξ゚听)ξ「なのに、いつもあいつは平気だと笑った」

ξ゚听)ξ「心も体もボロボロになりながら、それでも、あいつは仮面ライダーである事をやめなかった、
     そして、それ以上に……笑顔である事、笑顔で居続けることを絶対にやめなかった」

ξ--)ξ「確かにあいつは変態ロリコン野郎かもしれない、人として間違っているかもしれない……が」

ξ゚听)ξ「私は……そんな内藤の事を、ヒーローじゃない、なんて思った事は…」

ξ゚听)ξ「一度たりとも無い」

ノハ )「………」

ξ゚听)ξ「その上でもう一度聞く、それでもお前は、内藤が正義のヒーローである事に失望するのか?
     正義のヒーローってのは、お前の言う理想通りの、完璧で格好良い奴でなければ駄目なのか?」

ノハ )「……………」

ヒートは、ツンの言葉を半分上の空で聞いていた。
そして思うのは、いつから自分は間違えていたのだろう、という事。
65 :三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 03:18:44.98 ID:5QHOFep00


いつから私は、正義のヒーローを、アイドルのように見ていたのかな。


そうじゃなかった筈だ、私が憧れたのは、確かに格好いい事でもある、
でも、その"格好いい"に対しての憧れではなかった筈なんだ。



ノハ )「……ち…がう」


『どうして、道場になんて通ってるの?』

自分を鍛える為、有り体に言えばこうなる。
けど、そのきっかけは。

66 :三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 03:21:41.41 ID:5QHOFep00


ノパ听)「私は……私が憧れたのは…」


『面白くもないのに、何で行くのさ?』

棒を構えたとき、少しだけ、心が沸く。
胸に熱いものがこみ上げて、それが心地よかった。

その感情を、先生はこう言っていた。


目の前に壁に、立ち向かう勇気と。


ノハ )「そうだ、私が本当に憧れたのは……」

完璧なヒーロー像、その格好良さなんかじゃない。
誰かを守れる強さを、行動できる心を持った、本物の正義のヒーローだ。


67 :三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 03:24:06.21 ID:5QHOFep00


ノハ )「――――」


けど、それも、すこし違う。


ノハ;凵G)「それよりもっと前…一番最初に思ったのは……」


羨ましいって思ったから。



自分にはできない、真似事はできても、何もできない。
犯罪を解決することなんてできないし、怪物どころか試合の相手にだって適わない。

そんな自分は、正義のヒーローにはなれない事を、とても悔しく思っていた。
"私も"
だから、あれはせめて理想像であってほしい、そんな、私の自分勝手な押し付けだった。
68 :三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/02/15(月) 03:27:05.42 ID:5QHOFep00


ノハ;凵G)「何よりも、私が、私も、みんなを守りたいって思ったからなんだ……!!」


それに気づいた時、考えるよりも先に身体が動いていた。
そして外に飛び出して、形振りかまわず走り始めた。

ノハ; )(電車は街を一周してる……なら、うまく先回りすれば…!)

自分は確かに非力だ、何もできないかもしれない。
だけど、それでも、あの二人は大事な友達だから、友達を助けたい。

みんなを助けるのは無理かもしれないけど。
あの二人だけは、私が、助けたい。

胸に宿る温かさは、今までに感じた事もないくらい、熱く、熱く、猛っていた。



………。


 

2 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05 /05(水) 03:44:10.32 ID:vAMb/nr60

喫茶VIPから赤髪の少女が飛び出したその直後。

カラン、と音を立てながら揺れる扉を見つめながら、
やがて一人がため息混じりに口を開いた。

( ・∀・)「行っちゃったねぇ、あの子」

ξ゚听)ξ「そうですね」

( ・∀・)「行かせてよかったのかい?」

ξ゚ー゚)ξ「あら、友達の為に走る人を、止める理由がどこにあるんです?」

( ・∀・)「前から思ってたけどさ、ツン君って男前というか、たまにかっこいいよねぇ」

ζ(゚ヮ゚*ζ「おっとこまーえー」

ξ;--)ξ「……嬉しくない」

店内に響くラジオからは、今も尚、ドーパントに襲われた列車と、
その乗客たちの安否を気遣うMCが流れ、続けて、もう一つの事件を語り始めていた。



3 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 03:45:43.85 ID:vAMb/nr60

………。


停車したままの列車内、すでに乗客たちは避難を終え、残ったのは二対のドーパント。
そして今尚、続く戦闘の余波によるものか、定期的に衝撃音がガラスを叩き、あるいは割れて飛び散り、
遠巻きにその様子を眺める一部のギャラリーたちの不安を煽っていた。

自分たちをこうして逃がしてくれた、正体不明のドーパント。
あれが仮面ライダーであるという確信はあっても、あんな化物に果たして適うのか。

しかし、そんな人々の不安とは裏腹に、中では戦いと呼ぶにはあまりに一方的な光景が広がっていた。

(#0ω0)「ふんっ!!」

(メ<・><●>)「ぶべらっ!!」

回し蹴りからの連続動作で、内藤の蹴りがまっすぐに大猿の腹部を打ち抜いた。
すでにボコボコにされ途中の大猿ドーパントは、身悶えながらうずくまる。

(#<・><●>)「ふ、ふーっ、ふぎぎぎ……!!」

が、それでも大猿ドーパントは立ち上がった。

( 0ω0)「タフな奴……それとも、そのガイアメモリの特徴か?」

(#<・><●>)「く、くそ! このいじめっこめ!! 何がヒーローだ!!」



4 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 03:47:49.07 ID:vAMb/nr60

大猿は狂ったように叫びながら、内藤へ殴りかかる。
だが、その拳はことごとく避けられ、あるいは片手でいなされてはカウンターを叩き込まれていく。

( 0ω0)(……さて、もう気も晴れたし、決めるか)

(#<・><●>)「ちくしょう! 見下しやがって、何でだよ、話が違うじゃねえか!!
       これからは俺がそうする側なんじゃねえのか!? 俺は選ばれた特別な存在(ヴェルタース・オリジナル)だぞ!!」

( 0ω0)(……そういえば、こっちのメモリは…)

内藤は倒れる姿を一瞥し、腰に巻かれたドライバーから右側のメモリを引き抜いた。

それは、元自分が使っていたブーンのガイアメモリ、それが変化したこのブランクメモリとは果たして、
興味本位と共に、腰にあるもう一つのメモリホルダー、ガイアメモリの力を増幅させるマキシマムスロットに差し入れた。

だが。

(;0ω0)「……?」

しばしの間を置いても尚、反応しなかった。


5 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 03:49:31.18 ID:vAMb/nr60

リミッター解除を告げる声ばかりか、起動を告げる音声さえも、
自身の身体にも、何故かなんの変化も感じられない。

以前使った時には、熱にも似た感覚が全身を満たし、それらが集中していくのを感じたのに、
と、内藤は自らの身体を改めながら、一体どういう事かと困惑の色を見せた。

( 0ω0)(そういえば、カノンちゃんが言ってたっけ、記憶が消えていると……
       ブランク……まさに文字通り、ってことかお)

(;<・><●>)「ぐっ……ぬぬぬ、ちくしょお、どんなになっても、変わらねぇのかよ……」

んで、そうこうしている間に、倒れていた大猿が立ち上がった。
内藤は無言のまま、片手をほぐすように振ると、再び構えを取る。

そして大猿は両腕を上げ、威嚇するように雄叫びを上げ。
最後の力を振り絞るかのように飛び上がり。

(;<・><●>)「ごめんなsうぼぁーーーーーーー!!!!」

(;0ω0)「な、何ェ!?」

成功さえすれば、それはもう見事なジャンピング土下座であったその行為は、
よもやそう来るとは予想だにしなかった内藤の拳によって、失敗に終わった。


6 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 03:52:21.47 ID:vAMb/nr60

(;0ω0)「……おい、今、なんだって?」

内藤はどこか脱力感を覚えながら、鼻を押さえながら悶絶する大猿へと話しかけた。
すると大猿は泣きながら――――
AA表現の都合によりそれを表すことはできないが、大猿は大粒の涙をこぼしながら顔を上げた。

(;<●><●>)「す、すみませんでした……どうか、命だけは」

(;0ω0)「…………いや、別に殺すつもりはないが」

(;<●><●>)「お願いします、見逃してください!!」

( 0ω0)「お前、自分がやった事を忘れてるんじゃないだろうな」

(;<●><●>)「い、いえいえ! 違います、わかってます、ちゃんと悔い改めるつもりです!」

(;<●><●>)「だからもう……勘弁してください………」

( 0ω0)「…………」

両手を下につけたまま、何度も頭を下げながら鼻声の大猿が謝罪する。
内藤はしばらく肩を落としたまま、そんな様子を眺めていたが、やがて一つの考えに至った。


7 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 03:53:40.11 ID:vAMb/nr60

妙だな、と。

これが本心から来るものか、それとも騙まし討ちでも狙っているのか、それは分からないが、

(;<●><●>)「俺だって、本当はこんな事がしたかった訳じゃないんだ……
       ただ、今まで俺を虐げてきた奴らを、皆を、見返してやりたかったんだ……」

( 0ω0)(正気に、戻っている…?)

ガイアメモリが持つ毒素、それは人の精神を蝕み、その人間がもつ欲望だけを増幅させる。
故に、その力を欲望のままに使えば使うほど、正気を失くしていく、
人としての理性は失われ、死を賭してでも暴れるだけの、怪物となってしまう。

それが絶対であると、内藤はもちろん、ガイアメモリを知る全ての人物が知っている。

そして見た所、この大猿ドーパントは正に文字通り、欲望の赴くままに力を行使していた。
身も心も、怪物と成り果てていたはずだ。

にも関わらずこうして人間であるかのように振舞い、自らの事を顧み、命乞いをさえしている、

内藤はそんな姿に、一筋の光明を見た。



8 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 03:55:29.74 ID:vAMb/nr60

( 0ω0)(………そんな事がある、いや、できるのか……?)

もし、そうなら。

ガイアメモリによって奪われた心を取り戻す事ができるとしたら。
その方法が本当にあって、それを見つけることができたなら――――。

( 0ω0)「……なら、とっとと変身を解除したらどうだ」

(;<●><●>)「は、はい…!」





「くすくす」




(;0ω0)「!?」

( <●><●>)「!!」

と、一時の静寂のなかに、幼げな笑い声が響いた。
二人が一斉に声のした先へと振り向けば、隣の車両へと続く扉をくぐり、現れたのは。


9 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 03:58:32.12 ID:vAMb/nr60

从・∀・ノ!リ「お猿さんが泣いてるのじゃー」

フリフリの真っ白いドレス調の衣装を纏う、小さな女の子だった。
幼げな声に似合うその容姿と、元気に横へと跳ねる髪型はまさに子供。

内藤はそんな少女の出現に、思わず、いや堪らずときめいた。
そして、あまりの愛くるしさに目を奪われ、動けない。
あまりに場違いな存在である事さえ忘れ、立ち止まった。

だが、周囲を見渡せば、先までの戦いによって車内はボロボロ、
いくつもの窓は割れ、天井や壁には大穴が開き、消えた電灯が小さな火花を散らしている。

しかし少女は意に介した様子も無く、怯えるでもなく、当然のように凄惨な場を進む。
パキン、パリン、と破片を踏みしめながら、トコトコと歩いていた。

从・∀・ノ!リ「なんだか楽しそうなのじゃ、妹者も混ぜてほしいのじゃー」

(*0ω0)(やだなにこのこ可愛い………っ!!)

(;<●><●>)(まだ逃げてないガキが……?)

( <●><●>)(……そ、そうだ、このガキを利用すれば…!!)



10 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 04:00:50.87 ID:vAMb/nr60

そう考えるや否や、大猿はちらりと内藤の姿を見上げると、
何故かぼんやりとした様子で立ちすくんでいる、いやよく見ると細かく震えてるのを確認し、
今がチャンスと言わんばかりに身を起こし、野生の獣を髣髴とさせる勢いで少女へと飛び掛った。

从・∀・ノ!リ「わ、お猿さんが飛んだ」

(#<●><●>)「うおおおおおおおおおおおおおもらったあああああああああああ」

大きな影が少女を覆い隠し、大猿は眼下にて自分を見上げる小さな姿を確認すると、
口元を大きく歪めた、

【 ジョーカー マキシマムドライブ 】

( <●><●>)「え」

(#0ω0)「美少女に手を出すなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

と、その時。

飛び上がった大猿を追いかけるように内藤も跳躍、次いで、紫の光帯を纏わせた左足で蹴りつける。
瞬間、大きな発光が車内に輝き、爆発めいた音と、勢いを伴わせながら、大猿が車内から弾き飛ばれた。

( < >< >)(………あ、ああ…)

彼が最後に聞いたのは、何かの起動を告げる音声と、
何だか嫌な響きを含んだ男の雄叫び。



11 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 04:02:59.82 ID:vAMb/nr60

そして、もんどりうって地面を転がる彼が最後に見たのは。

元の、人間の物へと戻っていく自らの腕と。
目の前で砕け散った、Gの文字が描かれたガイアメモリと。



目に焼きついて離れない、外へと弾き出される直前に見た、謎の少女の、歪んだ笑み。



やがて地面に打ち付けられた男は、頭の中を霧が包んでいくのを感じながら、
背筋が凍るような恐怖の中で、ついぞ意識を失った。

( 0ω0)「これで……お前に罪は終わった」

そして車内では、飛んでいった男が人間に戻ったのを確認し、
内藤は囁くように言った。

(#0ω0)「それにしても……この期に及んでこんな小さい子を襲うなんて、とんだロリコン野郎だ」

从・∀・ノ!リ「ありゃ? 飛んでったのじゃ」



12 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 04:05:25.33 ID:vAMb/nr60

( 0ω0)+「……君、大丈夫かい?」

从・∀・ノ!リ「んー、じゃあアナタが遊んでくれるのかえ?」

( 0ω0)「え、いや、遊んでる場合じゃ……?」

(;0ω0)「………な!?」

と、そこでようやく内藤は少女が手にしている物体に気づいた。
禍々しい装飾がされた、USB型メモリデバイス。

見紛う事も、見間違える筈もなく、ガイアメモリその物だ。

唯一見慣れぬ部分があるとすれば、かつて見た事もない銀色をしている事と、
描かれる、風と、雷と、氷と、炎を表した4つの記号が造る【 W 】の絵文字。

そして、少女が現れた隣の車両。

扉の奥にて覗き見えた、その光景を前にして、
内藤は得も知れない焦燥に駆られ、少女から距離を取る。


13 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 04:08:31.65 ID:vAMb/nr60

(;0ω0)(そうだ…そういえば、他の車両…これだけの騒ぎがあったのに、妙に静かだった)

(;0ω0)(…くそ、なんでもっと早く気付けなかった…!?)

見えたのは、氷の壁。
その中には、いくつもの人影。

内藤は、それでこの状況の全てを察した。

対する少女は、相変わらず笑みを浮かべたまま、メモリを自らの顔の正面にて掲げ、

从・∀・ノ!リ「それじゃあかめんライダー、ううん、ブーンのお兄ちゃん」

从・∀・ノ!リ「妹者とあそぼお」

ガイアメモリの起動を告げる音声が、馬鹿に大きく、やけにはっきりと、車内に響き渡った。








【 ウェザー 】


15 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05 /05(水) 04:11:18.34 ID:vAMb/nr60

……。


ノハ;゚听)「はあっ、はあっ……!」

迷路のような住宅街を走り抜け、一つの陸橋へとやってきた彼女は、
息を切らしながら、やがて眼下に広がる光景に息を潜めた。

ノハ;゚听)「あった…!」

不自然に停車した列車、内の一つは無残な姿に成り果て、
その周辺には、大きな人だかりができている。

間違いない、これがそうだと、彼女は確信をもってフェンスを乗り越え、
もつれそうな足を必死で踏ん張り、下っていく。

やがて下り終えると、ちょうどその先に見知った顔が向かってくるのが見えた。

从;'ー'从「ひっちゃん!? な、なんでここに」

('、`;川「まさか……追ってきたの?」



16 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 04:13:34.70 ID:vAMb/nr60

ノハ;゚听)「二人とも大丈夫!? 怪我とかしてない!?」

从'ー'从「うん、大丈夫だよ〜」

('、`*川「内藤さ……仮面ライダーがちゃんと来てくれたからね」

ノハ:゚ー゚)「そっ、そっか……」

ノハ )(……間に、合わなかった…?)

友人二人が無事だった事はうれしい、けれど、結局なにもできなかった、
持てる勇気を振り絞って駆けて来ただけに、安堵と共に憤りを感じ、彼女は拳を握った。

从'ー'从「もしかして、ひっちゃんが伝えてくれたの〜?」

ノパ听)「う、うん……」

('、`*川「そうか、一応はちゃんと通じたのね、よかったよかった」

从'ー'从「あのとき電話落としちゃって〜、一時はどうなることかと思ったよ〜」

20 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05 /05(水) 04:16:45.53 ID:vAMb/nr60

ノハ;゚听)「そ、それで、ドーパントは…」

('、`*川「ほれ、あそこで伸びてる野郎がそうよ」

伊藤が指し示す先を見れば、線路沿いから少しばかり離れた場所に横たわる男と、
ある程度の距離を置きながら、それを不安げに見据える人だかり。

それで、彼女は全ての事が済んだのだと知る。

从^ー^从「ひっちゃん、"ありがとう〜"」

ノハ )「………」

('、`*川「………? どうした?」

ノハ )「違うよ、私は何も……私は……っ!!」

自分は弱い、何をできた訳でもない、二人を助けられた訳じゃない、
それどころか、恩人である人を最低呼ばわりした、最低な人間だ。

从;'ー'从「ひっちゃん……?」

ノハ;゚听)「…っ、そ、そうだ、それで、仮面ライダーさんは…?」
23 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05 /05(水) 04:20:00.32 ID:vAMb/nr60

从'ー'从「まだ出てきてないよ〜」

ノパ听)「そっか……」

ノハ )(なら、せめて謝りたい……今度は、ちゃんと)

('、`*川「……ところでさ、アンタ、ここへ来る途中にここから逃げてきた人とすれ違わなかった?」

ノハ;゚听)「え? う、ううん、特にそれらしい人は見てないけど……なんで?」

('、`*川「いやほら外に今居る連中、やけに少ないなー、と思って」

ノハ;゚听)「そうなの?」

('、`*川「まあ、外に出るなり遠くへ逃げちゃったのかとも思うんだけどね……
     なんていうか、見た感じだと…私たちが乗ってた車両の乗客しか居ないような」

その時だった。
列車の真上を走る送電線に赤みを帯びた電光が走り、列車と繋ぐ連結部が火を噴き、火花が散る。
次いで、車両内に光が瞬き、大小混じりあう爆発音が連続して響き渡った。

25 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05 /05(水) 04:22:29.42 ID:vAMb/nr60

突然のことに、外に留まっていた人々から悲鳴が上がる。
そして、それは彼女たちも例外ではなく、互いを庇うようにしながらその場で身を屈めた。

从;'ー'从「な、なに、なんなの〜!?」

ノハ;゚听)「お、終わったんじゃないのか!?」

('、`;川「知らないわよ!!」

異変は、尚も続く。

稲光のような爆発だった光が、今度は炎となって列車を包む。
轟々と凄まじい勢いで燃え盛る炎は、空気を焦がし、黒煙となって空に立ち昇る。

だが、それさえも僅かな間の事。

続けて白い霧が炎を包み、それを更に突風が消し飛ばし。
三度雷鳴が轟けば、大きな爆発となって列車の一部は消炭となった。



26 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 04:26:05.33 ID:vAMb/nr60

テレビなどで見る、自然が作る異常気象がまとめて襲ってきたような、
元、乗客たちは身を屈めたまま、怯えるようにしながらそんな様子を眺めていた。

だが、やがて飛び出してきた一つの影に、ついぞ痺れを切らしたのか、
悲鳴を上げながら、一斉にどこかへと逃げ去っていく。
しかし、彼女等は飛び出してきた影を前に、立ち止まった。

从;'ー'从「な、なんかやばそうだよ〜」

('、`;川「…うちらも逃げるよ! ヒート! ほら何してんだ!」

ノハ;゚听)「ま、待って! だってあれは…!」

飛び出した影は黒い甲冑姿のドーパント。

吹き飛ばされるように車内から飛び出し、そのまま地を転がると、
やがて紫の光が身体を包み、その姿を元の人間の姿へと変貌させた。

(メ ω )「ぐっ……」

从;・∀・ノ!リ「むー、なんか、あんまり面白くないのじゃ」

(; ω )(む、無茶苦茶だ……火だの氷だの次から次へと…)

28 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05 /05(水) 04:28:39.73 ID:vAMb/nr60

次いで現れたのは、衣服の前部分が大きく裂かれ、未だ膨らみのない素肌を見せる、小さな女の子だった。
少女は倒れる内藤へと歩み寄りながら、身振り手振りで不満を表している。

从>∀<ノ!リ「もっと本気になってほしいのじゃ! お兄ちゃん何もしてこないからつまんないのじゃ!」

(; ω )(……なんなんだこの子は…ベルトも持っていないのに)

見れば、内藤の衣服はところどころ破れ、身体の至るところに裂傷を負い、
あちこちから真っ赤な血を滴らせ、痛々しいまでの姿になったいた。

从;'ー'从「え? え? あれ? 女の子?」

ノハ;゚听)「仮面ライダーさん!!」

('、`;川「うわ馬鹿! 行くんじゃない!!」

そんな内藤の下へと、彼女は思わず駆け寄っていた。
そしてその身を助け起こすと、正面から不思議そうに見つめる少女へ向きなおす。

ノハ;゚听)「大丈夫ですか!?」

(;-ω^)「……ちょ、おま、何やって……痛っ……」
30 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05 /05(水) 04:30:28.73 ID:vAMb/nr60

从・∀・ノ!リ「おお? 誰なのじゃ?」

ノハ;゚听)「酷い……あなたがやったの…!?」

从・∀・ノ!リ「なんじゃ、今度は赤髪のお姉ちゃんが遊んでくれるのかえ?」

ノハ;゚听)「遊ぶって…あなた、何を」

(;^ω^)「何やってんだ馬鹿! 早く逃げろ!」

ノハ;゚听)「でも…!」

(#^ω^)「俺に任せりゃいい! とっとと…」

从・∀・ノ!リ「うん、大っきい兄者が教えてくれた、弾幕ごっこなのじゃ!」


【 ウェザー 】


そして少女は、手にしたガイアメモリを再び、自らの左胸へとあてがう。
するとメモリは蠢きながら、少女の中へと挿入されていく。
32 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05 /05(水) 04:33:07.42 ID:vAMb/nr60

从*-∀-ノ!リ「んっ……」

少女はそれを気持ちよさそうに受け入れ、やがてその身体を大きく跳ねさせた。
ビクン、と跳ねるのに伴い、その四肢が歪みはじめた。

小さな体格はおよそ倍にまで膨れ上がり、人の形は残しながらも大きくその姿を変えていく。
白色を貴重とした重厚な装甲、所々に見える金色の装飾、その隙間に見えるのは黒。
影がそのまま実態を持ち、その上に西洋の鎧を纏うかのような姿だった。

ノハli )「ひ……っ!」

(;^ω^)「くそ……!」

从∇∀∇ノ!リ「さあ、続きなのじゃ、ちゃんと避けないと今度こそ死んじゃうのじゃ!!」

再びウェザードーパントとなった少女は、手のひらを真上に掲げた。
白い霧がその腕を包めば、辺りに氷の結晶が浮かび上がる。

そして、その腕が振り下ろされるよりも早く、

【 ブランク ジョーカー 】

(#0ω0)「は、ア、ア、あ、ああああああああああああああああ!!!」

内藤は、背後にて腰を抜かした彼女を庇うかのように、
雄叫びと共にウェザードーパントへと駆けていく。
43 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05 /05(水) 07:03:00.59 ID:vAMb/nr60

从∇∀∇ノ!リ「わあい、まだ元気いっぱいみたいなのじゃー」

続けざまに放たれる、尖った氷の結晶。
内藤はその場で停止すると、それら一つ一つを叩き割っていく。

从∇∀∇ノ!リ「おお、凄いのじゃ! ならばーーー」

(#0ω0)(こ、こうなったら……もっかいマキシマムで…!)

从∇∀∇ノ!リ「風よこおれ」

(#0ω0)「……おい、腰抜かしてないで早く逃げろ!!」

ノハ; )「あ…あ……」

从∇∀∇ノ!リ「そして吹きあれろ」

【 ジョーカー マキシマムドライブ 】

内藤は、ジョーカーのメモリを再び制限解除のスロットへ挿した。
対するウェザードーパントは、両手を真上でこねるように動かし、白い霧を束ねていく。


44 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 07:05:23.91 ID:vAMb/nr60

(#0ω0)「ライダーキック!!」

从∇∀∇ノ!リ「……えたーなる」

白い甲冑姿と、黒い甲冑姿、どこか似た雰囲気をもつ二対のドーパントが向かい合う。
そして、先手を取ったのは黒、内藤の方だった。

助走をつけて飛び上がり、紫に発光する左足をまっすぐに向け、
重加速をもって文字通りの飛び蹴りを放つ、が。

(#0ω0)「うおりゃあああああああ!!!」

从∇∀∇ノ!リ「ぶりざぁど」

宙をこねくり回す腕を中心に、放たれたのは大気を凍らせるほどの強烈な冷気。
それは白いドーパントの姿を覆い隠すまでに膨張し、迫り来る内藤の姿をも飲み込んだ。

「……!!!!」

ノハ; )「!!」

聞こえてきたのは男の絶叫と、幼げな少女の笑い声。
そして、呼吸が止まるほどの冷たい空気に、身体の心まで冷えていくのを感じた。



45 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 07:07:19.14 ID:vAMb/nr60

何が起きているのか、彼女にそれを知る術はないが、どういう状況なのか、それだけは理解できた。

ノハ )(寒い……)

気付けば、彼女の頬を涙が伝っていた。

この場に居るのが恐ろしい事もある。
怖くて逃げ出したいとも、それが情けないとも思う。

けど、それ以上に。

ノハ;凵G)(……私は、あんな)

力があるとか、ないとか、そんなのは問題じゃない。
あんな物に、あんな風に立ち向かえる人を、私はああまで罵ったのか。

ノハ;凵G)(怒られて、当然だ、私は……口だけじゃないか)

そして、足がすくんで動けない不甲斐なさが、
自分の理想というものが、安全な場所に居たからこそ生まれた物だと悟らせた。

ノハ )(なら、せめてここを離れなければ、逃げろと言った、言ってくれた
    少なくとも、ここに居れば邪魔になる、居てもしょうがない、邪魔なんだ
    違う私は怖くて逃げたいだけだ、足がすくんでうごけない事も、手が言うことを聞かない事も、
    全部言い訳、逃げるために、怖くてしょうがないから、逃げたくてそうしている)

そしてそれが。
たまらなく嫌だった。
47 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05 /05(水) 07:08:49.95 ID:vAMb/nr60

ノハ;凵G)「う、うううっ………!!」

ぐちゃぐちゃになった思考の中で、正面を見据える。
先ほどまで白い霧に覆われていた空間に、一つの光が灯る。

それに疑問を抱くよりも早く、光は巨大な炎となって肌をジリジリと焦がした。
更によく見れば、炎は渦を巻きながら逆三角形に空へ伸びながら前進を始めている。

从∇∀∇ノ!リ「ふぁいあ、とるねーど」

ふと、白いドーパントと目が合った。
それで、悟った。この火の塊は。

ノハ )(こっちに……来る)

もうどうしようもない、という諦めにも似た思いが脳裏をよぎる。
けど、その反面、不思議と湧き上がってくる感情があった。

この熱量のせいだろうか、あるいは壁のように迫る炎のせいだろうか。

それとも。

偶然か必然か、自分の足元に転がっている、恐らく元手すり、今は長めの鉄パイプ。
この存在が、もうどうにでもなれだこの野郎、といった感情の原因だったのかもしれない。



48 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 07:11:05.92 ID:vAMb/nr60

ノハ )「こんな……」

彼女は、その棒を拾うことにした。
シャン、と耳の奥にだけ、心地よい音が鳴った。


ノハ#゚Д゚)「こんな火が、なんだぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


一度、ぶん、と振り回し。

後ろを向けば逃げられるかもしれない、この状況で、それでも尚。
彼女は前に出た、一歩を踏み出し、そして、眼前にまで迫り来る炎に向かい駆け出した。

けれど、炎は問答無用で周囲にある物を焼き焦がしながら迫る。
そして、今、正に炎が彼女の姿を飲み込もうとしたその瞬間。

【 ジョーカー マキシマムドライブ 】

地鳴りのような爆音が響けば、地面に大きな亀裂が走り、
炎が四散し、立ち込める煙だけを残して消え去った。
50 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05 /05(水) 07:12:37.50 ID:vAMb/nr60

「むむ、どうなったのじゃ? 見えないのじゃー」

ノハ;凵G)「……あ、ぁ」

向こうからは見えずとも、その中心近くに居る彼女には見えていた。
未だ陽炎が揺らめく先に、膝をつく影の姿を。
黒い甲冑姿が、徐々に人の姿へと変わっていく様子を。

(メ ω )「……く、そ、さすがに連発、しすぎ…た、か……」


そして、今尚、自分を守ったせいで傷ついてしまった、倒れゆく誰かの姿を。


ノハ )「う……」

(メ ω )(ま、不味いな………勝てないぞ、これ)

ノハ; Д )「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

(;^ω^)「は!? お前、何を!?」

と、何を思ったか彼女は内藤に襲い掛かるように掴みかかると、
その腰元に手を添え、突然のことに困惑する内藤から、ガイアメモリを一つ奪った。

52 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05 /05(水) 07:16:18.55 ID:vAMb/nr60

色は無色、Bという文字が描かれた、人を怪物へと変貌させる装置。
これを使えば、自分も戦える、力があれば、力さえあれば。

(;^ω^)「……!! よ、よせ!! それは!!」

ガイアメモリの起動ボタンを押す。
【 ブランク 】
すると、起動を告げる音声が鳴り響く。

ノハ )(……どうすればいいんだっけ…)

以前、聞いた話よればメモリを使えば、コネクタと呼ばれる刻印が身体のどこかに現れるらしいが、
今のところ、それらしき姿は確認できていない。ならば。

ノハ )「どこでもいい……! とにかくこうすれば…!!」

(;^ω^)「やめ…!!」

未だ立ち込める煙の中、彼女はついに、自らの腕にガイアメモリを押し当てる。
しかし、メモリはそれ以上進まず、何の変化も起こらない。

代わりに、彼女の身体に異変が起きた。


53 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 07:19:19.59 ID:vAMb/nr60

ノハ;゚听)「え…? な、なにこれ…!?」

その身体を、淡く、赤い光がオーラのように包み込み、その姿を完全に覆い隠す。
そして次の瞬間、メモリの中へと吸い込まれていく。
赤い発光物体と化した彼女の身体が、まるで溶けるように。

(;゚ω゚)「なっ……!」

やがて全てが吸収されると、カツン、と、内藤の目の前に紅いメモリが落ちる。

しばし呆然と地に転がったメモリを眺めていると、ぶわ、と眩い光を放ち、今度はメモリが変化を始めた。
その形状は変わらず、その色と、中央に描かれた文字だけを変化させていく、

色は紅。

文字は炎を象るような形によって描かれた、Hの文字。

(;゚ω゚)(……今、吸い込まれたように見えた)

(;゚ω゚)(それにこのメモリの色……まさか)

まるで、本来あるべき状態の逆。
ガイアメモリが人を変えるのではなく。

(; ω )(………人が"ガイアメモリに変化した"……?)

55 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05 /05(水) 07:21:04.79 ID:vAMb/nr60

これが、あの時、カノンちゃんに聞かされた、VIPメモリの真の力か。
内藤はおそるおそる、紅く変化したメモリを手に取った。

すると、どこからか声が聞こえてくる。
それは頭に直接響いてくるような、不思議な声だった。

しかし聞き覚えはある、つい、今しがた聞いた声だが、それはとても悲しそうに聞こえた。

(メ ω )「……」

(メ ω )「………なんで、こんな事を」

ノハ;凵G)『嫌なんだ……もう、私だけこんな、情けないままなんて』

(メ ω )「戦えない事を言っているのか? それは別に君だけじゃないし、恥じることでもない……」

ノハ;凵G)『違う、違うんだ、私はずっとそういう存在に憧れてたんだよ、なのに、
     私はいざという時に何もできないような人間だったんだよ、なのに、
     私はアナタという存在が、理想通りじゃないからって否定した、最低な人間なんだ』

(メ ω )「……それで、君はどうしたいんだ?」

ノハ;凵G)『強くなりたい、もうこんな弱い自分は嫌だ、弱いままじゃ何もできない、
     私が弱いから駄目なんだ、もっと強ければ、強くさえなれれば』


56 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 07:23:06.84 ID:vAMb/nr60

(メ ω )「……そうだな、君は弱い」

ノハ;凵G)『――――っ』

(メ ω )「けど、君は勘違いしている、君は確かに弱いかもしれないけど、
       それは決して"終わり"を意味する事じゃない」

ノハ;凵G)『え…?』

(メ ω )「弱さや脆さなんて、誰もが持っている物さ、それは悪い事なんかじゃない」

ノハ;凵G)『で、でも……強くならなきゃ、何もできない、今だってこうして…!』

(メ ω )「だからさ、何もできなくても、そこで終わりじゃないよ」

ノハ;凵G)『何もできなきゃ終わりじゃないか!! だから……!!』

(メ ω )「………強く、なりたい?」

ノハ;凵G)『強くなりたい……誰かを守れるくらい、強く、強く…』

(メ ω )「……そんなの、簡単だ」

ノハ;凵G)『わからないよ…どうしたらいいのか』

(メ ω )「じゃあ教えてやる、簡単なことだ……足を踏ん張ってさ、ただ」
58 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05 /05(水) 07:25:23.64 ID:vAMb/nr60

内藤は紅いメモリを握り締め、痛む身体に苦痛を浮かべながら、それでも、
それでも決して、笑顔を崩すことなく、ゆっくりと立ち上がった。

(メ^ω^)「立ち向かえばいい、自分が大事だと思える全ての為に、立ち向かっていけばいい」

( ^ω^)「そしてそれは、何も敵を倒す事が全てじゃない、誰も悲しませないよう、
       生きるために逃げるのだって必要なことだ、俺はそれを弱いなんて思わない」

ノハ )『……』

(メ^ω^)「…強さなんて結局はそういう物の先にあるもんさ、無理だと嘆くことでも、自虐することでもなく、
       自分の為に、前へ進めること、だから君に、その意思があるのなら……俺の方から頼もう」

ノハ )「………っ」

彼女は言葉を失くした様に、黙り込んだまま。
内藤の、続く言葉を待つように。

そして内藤は、紅色のメモリを眼前にて掲げ。
【 ヒート 】
ガイアメモリを起動させた。

(#^ω^)「ヒート、君に今、立ち向かう勇気があるのなら……俺と一緒に、戦ってくれ!!」

ノハ )「――――っ」



59 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 07:28:17.99 ID:vAMb/nr60


一呼吸の、間を置いて。


ノハ;凵G)「……はい!!」


その返事とほぼ同時に、紅いガイアメモリがVドライバーの右側のスロットに差し込まれ。
差し込まれたメモリの力によるものか、ベルトは赤と紫の光が瞬く。






( ^ω^)「変―――」
唱える様な声に。


ノハ#゚听)「―――身!!!」
強き願いと、熱い心を秘めた声が応えた。





60 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 07:30:43.25 ID:vAMb/nr60



【 ヒート ジョーカー 】


内藤の手によって二つのメモリスロットが展開され、Vの字を描けば、
Vドライバーの正面に、JとHを象る光字が浮かび上がり、全身を二色の輝きが包み込む。

だが、その光は混ざり合う事は無く。
中央に走る銀帯にそって、二つに分かれた。


そして――――。






   「ところで」






61 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 07:32:21.37 ID:vAMb/nr60



  (消えた訳じゃないって……デレ、つまりどういう事なんだ?)




  (変化したんです、メモリの……ジョーカーの力で)



  (ジョーカーの?)



  (あのメモリが持つ記憶は、切り札)





     (自分の好きなカードに、変化させる力)







62 名前:三話 ◆aYo30Ks4N6 :2010/05/05(水) 07:33:47.81 ID:vAMb/nr60

――――光が収まった先にて、立つのは赤と黒のドーパント。

ボディ中央から分断するように、半分は赤く、もう半分は黒く。
二つのメモリと、二人の強さを兼ね備え、一つの、一人の仮面ライダーがそこに居た。

从;∇∀∇ノ!リ「おお、半分こ怪人になったのじゃ」

ノハ;゚听)『は、半分こ怪人ーー!?』

( 0w0)「……妹者ちゃん、と言ったね」

从∇∀∇ノ!リ「ん? うむ、妹者は妹者なのじゃ」

( 0w0)「君が使ったそれはとても危険な物だ、だから、すぐに捨てるんだ」

从∇∀∇ノ!リ「??? なんで? だってブーンのお兄ちゃんも使ってるのに」

( 0w0)「……」

从∇∀∇ノ!リ「それにそれに、大っきい兄者も言ってたのじゃ、これは妹者がベリュタースオンジナルな証、
      絶対に失くしたりしちゃ駄目だって、いつも持ってなきゃだめだって」

次回ここから

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