12 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 00:42:18.73 ID:HME2NOcf0

第一話

空白の   B   /二つの記憶を失くした男





……。





(; ω )「ぐっ……」

(  ∀ )「まったく、ここまで来ておじけづくとは……失望したぞ」

大荒れの海原を行く船の甲板、降りしきる大雨の中を二つの怪物が争いあっていた。


13 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 00:43:12.27 ID:HME2NOcf0

一つは、背に翼を持った半機械の怪物。
もう一つは、鳥を象るような印の刻まれた青い怪物。

争いは青い方が優勢。
手にした剣で何度も斬りつけられ、蹴飛ばされては壁に穴を空け倒れこみ、
ついには大量の砂埃が舞う中、半機械の姿が歪み始めた。

まず翼が消え、身体の到るところから覗いていた機械部分までもが消えていく。
そして、現れたのは至って普通の青年だった。

(; ω )「っっ……変身が…!」

(  ∀ )「どうしても協力はできないのか?」

砂利を踏みしめ、その青年の前に怪物が立つ。
だが、今度は青い怪物の姿までも、先と同じように歪み始め、人の姿に成っていく。

(; ω )「当たり前だお…! こんな虐殺みたいな真似、俺はごめんだ!」

(  ∀ )「仕方ないな、じゃあせめて選ばせてあげよう、ここで私に殺されるか…それとも」


14 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 00:44:47.35 ID:HME2NOcf0

(  ∀ )「大人しく、ブーンのガイアメモリを私に返すか、だ
     そうすれば命だけは見逃して―――」

(# ω )「断る、これを返せば…お前はまた、これで別の人間を苦しめるに決まってる」

(  ∀ )「……それで、お前は何がしたいんだ?」

(# ω )「こんな馬鹿げた事…これ以上、好き勝手にさせるかお!!」

(  ∀ )「馬鹿が……折角、ブーンの適合者に選ばれたというのに」

(  ω )「止めてやるお、俺が、お前を」

(  ∀ )「できるものか、貴様風情が、ベルトを持つこの私を」


そして二人は、手にしたガイアメモリをスロットへ差し込む。

左手の肘に差し込まれたメモリは、【ブーン】と響き、身体を半機械に変えた。
腰に巻かれたベルトに挿されたメモリは、【ナスカ】と響き、身体を青い怪物へと変えた。


15 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 00:46:24.13 ID:HME2NOcf0

そうして再び相対する二つの異形。

辺りに響くのは人の悲鳴。
そしていくつもの爆発音。

炎上し、傾いていく船の上。


(  ω )「              !!!!!」

(  ∀ )「              !!!!!」


二つの怪物が、雄叫びを上げた。






――――――――――。





17 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 00:47:13.91 ID:HME2NOcf0

その日、400人もの人間を乗せた豪華客船が沈没した。
直接的な原因は、未だに分かっていない。

何故ならば。

その謎の事故によって、船の乗客は全員、帰らぬ人となったから。




――――そして数ヵ月後。





喫茶ビップ、そこのマスターであるモララーはカウンターに腰掛け、
煙草を灰皿に押し付けながら、何とも暇そうに新聞を広げていた。

( ・∀・)「……連続婦女子暴行犯、ついに逮捕、か」

ξ゚ー゚)ξ「みたいですねー」


18 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 00:49:24.43 ID:HME2NOcf0

そして、ふとした呟きに応えるのは、カウンターの向こう側に居るエプロン姿の女の子。
彼女はどこか嬉しそうにしながら、鼻歌交じりにカップを磨いていた。
名はツン、この喫茶店のアルバイトその一である。

( ・∀・)「おや、なんか嬉しそうだね?」

ξ゚ー゚)ξ「そりゃもう、近所でこんな事件が頻発してたなんて嫌でしたし」

(;・∀・)「……え、もしかして不安だったりしたの? 自分も〜とか…」

ξ--)ξ「まさか、もし私の前に現れたらボコボコにしてやろうと思ってましたよ」

( ・∀・)「ですよね」

( ・∀・)「でも聞くところによれば…今回の、いや今回も、
      例のバイク乗りが関与してるって話なんだよね」

ξ゚听)ξ「正義のヒーロー、仮面ライダー……ですか」

近年になって増え始めた、怪物が関与する凶悪事件。
ドーパントと呼ばれる怪物が引き起こすその事件は、
大半の場合、人の力ではどうしようもできない。

できなかった、のだが。

19 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 00:50:13.79 ID:HME2NOcf0

つい最近、そのライダーが次々に事件を解決している。
というのが人々の間で噂になっている。

( ・∀・)「って話なんだけど……内藤君はどう思う?」

言って、モララーは店のアルバイトその二へ声をかける。
するとテーブルを拭いていた男は、ピタリと動きを止め小さく肩を落とした。

(;^ω^)「…それを俺に聞きますかお」

( ・∀・)「いやー、一躍時の人って感じだけど本人はどうなのかなぁってね?」

(;^ω^)「どうって言われても……」

( ・∀・)「それ俺だし、とか言いたくならない?」

(;^ω^)「いえ、特には…」

( ・∀・)「ふーん?」

ξ゚听)ξ「ま、こんなのがそうなんて世間が知ったら、みんなガッカリだぜ」

(;^ω^)「……ツン、それはどういう意味だお?」

21 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 00:52:23.55 ID:HME2NOcf0

ξ--)ξ「だってあんた、職なし家なしのニートじゃないか」

(#^ω^)「ニートちゃうし…! ちゃんとこうして働いてるし!」

ξ゚听)ξ「それに知ってるんだぞ、あんたがキルミンずぅとか言うアニメを毎週録画予約してるのをさ」

(;゚ω゚)「……!! な、何故それを!!??」

ξ-听)ξ「ふん、何がカノンちゃんが可愛すぎて生きてるのが辛いだ、
     あんな子供向けのアニメキャラ持ち上げちゃって、馬鹿じゃないのか?」

(#゚ω゚)「な、お前、ツン、お前このやろー! 僕の事はいい!
      だがカノンちゃんを馬鹿にするのは許さんぞこのやろー!」

( ・∀・)「ポチ姉派の僕には関係ない事のようだ」

ξ;゚听)ξ「あんたもかい」


<時にホライゾン君、もういっそ店の名前を『あにゃまる喫茶』にしようと思うんだけど、どうだろう?
<おお、それは良い!!いや、素晴らしいと思います!!!
<ヤメロ! マジで!!
<是非!!!!!!!!!
<うっせえ!!!!!!!

22 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 00:54:17.12 ID:HME2NOcf0

あの戦いから数ヶ月。

海岸で倒れている謎の男、内藤ホライゾンを保護したのがこの喫茶の店主モララー。
そして全ての事情を知るや、彼を自分の店に居候として迎え入れた。

というにも、事情がある。


ξ#゚听)ξ「だからもうキルミンの話はどうでもいいっての!!」

( ^ω^)(せめてコスプレとかしてくれないかなぁ……)

ξ゚听)ξ「それで店長、仮面ライダーはいいですけど、例のエネルギー変換装置――――」

ξ゚ -゚)ξ「Vドライバーはまだなんですか? いくらなんでも、これ以上変身を繰り返したらまずいぜ…」

( ・∀・)「……それは」
( ^ω^)「いや、俺なら大丈夫ですよ?」

( ^ω^)「そんなもの無くてもブーンのガイアメモリで充分やっていける、だから大丈夫」

24 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 00:56:50.18 ID:HME2NOcf0

( ・∀・)「ホライゾン君……そうは言うがね、君はそれで一度、負けているんだろう?」

( ^ω^)「……次は、負けない」

ξ#゚听)ξ「そういう、それだけの問題じゃ無いって言ってるだろ…!!
      ガイアメモリは人の精神を蝕むんだ、このまま使い続ければアンタだって」

ξ#゚听)ξ「あんただって!! その例の男みたいに―――!!」

(  ω )「……ッ!!」


 『ここまで来ておじけづくとは……失望したぞ』
 『できるものか、貴様風情が、ベルトを持つこの私を』


彼女の言葉に、内藤は目を伏せながら拳を握りしめた。
強く、爪跡が残るほどに力を込めながら、思い返すのは一つの事件。

だがそれは、彼にとって原因不明の沈没事件ではなく。
変わり果てた友が、ついぞ狂ってしまった日の、苦い記憶。

26 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 00:59:07.90 ID:HME2NOcf0

(# ω )「…だからこそだ!!」

ξ;゚听)ξ「…っ」

(# ω )「だからこそ、そんなもんにだって俺は負けやしねぇんだよ!!
       そんで証明してみせる、どっちが馬鹿で、どっちが弱い奴だったかをな…!!」

ξ;゚听)ξ「内藤、お前……」

(  ω )「……見回り、行って来る」

ξ;゚听)ξ「ま、待て! 話はまだ終わってないぞ…!」

(  ω )「今日は月曜だし、早く帰るよ」

ξ゚听)ξ(月曜だし…?)

それだけ言い残し、内藤は店を出て行った。
後に残ったのは遠ざかるバイクの排気音と、一時の静寂。

店内を流れる穏やかなBGMだけが虚しく鳴り響いていた。

27 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:01:38.77 ID:HME2NOcf0

オノノノ〜♪

ξ゚听)ξ「………」

Σξ;゚听)ξ(キルミンか!)

( ・∀・)「リアルタイムで見れるにこしたことは無いからね」

ξ゚听)ξ(このロリコン連中……はやくどうにかしないと……)

( ・∀・)(……しかしホライゾン君、最近すこし怒りっぽいな)

( ・∀・)「…なんとか、しないといけないね」

ξ゚听)ξ「……ええ、どうにかした方がいいと思う、このご時世だし、児ポとか」



( ・∀・)「えっ」

ξ゚听)ξ「えっ」


29 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:03:58.08 ID:HME2NOcf0

互いのすれ違いには気付く事無く、ただ違和感だけをもって二人は顔を見合わせた。
そんなクエスチョンマークが浮かぶ空気を打ち消すように、扉につけられた鐘が鳴った。

??『あの、すみません…』

(;・∀・)「はーい、ようこそあにゃまる喫……な、何ィ!!??」
ξ;゚听)ξ「うわあいらっしゃいませええ!! お一人ですかぁ!?」

??『その、ちょっと聞きた……え!? あ、は、はい!!』

ξ;゚ー゚)ξ「カウンターのお席へどぞー?」

??『はい、ど、どうも……あ、それで、その、聞きたいことが』

( ・Д・)「……」

ξ;゚听)ξ「うお!? 店長どうした! 誰だかわからん顔になって……」

(;・∀・)「……似ている」


30 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:08:24.47 ID:HME2NOcf0

ζ(゚ー゚;ζ「あるので――え、はい…?」

(;・∀・)「カノンちゃんに―――!! そそそそっくりだぎゃああああああああああああ!!!!!!」

そう、訪ねてきたのは、黒のゴスロリファッションに身を包む、小柄の金髪少女であった。

ξ;゚听)ξ「だぎゃってあーた」

モララーは周囲の椅子を弾き飛ばしながらうしろへ吹き飛び、
壁に背中を預けてずるずると下がりながら、手足をガクガク震えさせた。
その姿はそう、完全なる不審者である。

ζ(゚ー゚;ζ「え!? え!? あの、一体何が!?」

ξ゚ー゚)ξ「すみませんね、ちょっとした病気みたいなもので」ビョウメイハ ロリコン ッテンダゼ

( ;∀;)「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
      この心揺さぶり見るだけで幸せになれちゃう胸の高鳴りと温かさは何!? こ、これが恋!?!?
      あああああ駄目だ駄目だ! 僕にはポチ姉が! ポチ姉という人が!!人が!!!」

ξ゚听)ξ「おい落ち着け、泣くな」

ζ(゚ー゚;ζ「……!?!?」


(参考画像)
http://52028.l-3-l.me/pin/imager?user_id=52028&size=500&mode=e&essay_id=1256898215

31 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:10:42.82 ID:HME2NOcf0

( ;∀;)「でもかわいい! なにこれかわいいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
      同じ金髪でもうちのとは大違いだ! 大違いだよ!!ふしぎ!!!!!!」

ξ゚听)ξ「……おい、4発殴るぞ」

ζ(゚ー゚;ζ「あ、ぁ……あのぉ!!」

(メメメメ・∀・)+「うん、注文は決まった? あ、このコーヒーは初めてさんへのサービスだよ」ドゾー

ζ(゚ー゚;ζ「あ、ありがろうございます……」

ξ゚听)ξ「店長店長、ギャップがでかすぎてお客さん困ってるぜ」

ξ゚ー゚)ξ「……で、何でしょうか?」

ζ(゚ー゚*ζ「あ……そ、それで、ですね…あの…」

( ・∀・)(性格は似てなさそうだな、だがそれがイイ!)

ξ゚听)ξムッ(またよからぬ事を考えてるな……)


32 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:11:42.33 ID:HME2NOcf0

少女は、そこで一度目を伏せ深呼吸。
そして今度は力強く二人を見据えて言う。








ζ(゚ー゚*ζ「ガイアメモリ・ブーン、そして仮面ライダーについて、聞きたいのですが……」



………。





33 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:13:38.27 ID:HME2NOcf0

黒塗りヘルメットの向こう側で急速に流れていく世界。
あらゆる音を消し去りながらぶつかってくる風。

内藤はアクセルを握る手に、更なる力を込めた。
その背にたなびく灰色のマフラーが大きく揺れる。

(  ω )「……わかってるさ」

内藤自身、ちゃんと自覚していた。
ブーンメモリは、確実に自分を蝕んでいる事を。


最初は、ただの人助けだった。
誰かの為に、誰かの笑顔のために。

だけど正体を明かすわけにはいかない。

同じ怪物であるというのも、極力知られたくもないし、
それ以上に、ブーンのメモリを持つ自分は、あまり表には出られない。


34 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:16:04.00 ID:HME2NOcf0

こういった要因が重なって、内藤はまさしく正義のヒーローを行っていた。

だが、今は少し、違う感情が芽生え始めていた。

それは純粋な願い。
ただ、戦いたい、と。

そしてブーンドーパントと成って、同じ怪物を倒した時、
内藤は内から沸きあがる、狂気めいた愉悦を感じていた。

ガイアメモリは人の心を蝕む、それがどういう結果をもたらすかは人それぞれだが、
この場合、内藤に現れているそれは特に分かりやすい。すなわち破壊衝動。

ならばこれを繰り返した先に、果たして自分はどうなっているのだろう。
戦いを求め、戦いの為に生きて、そして、そして?

(  ω )「正義のヒーロー…仮面、ライダー、か」

とんだヒーローが居たものだと、呟いた言葉は風切音に混じり消えた。
代わりに、かつて聞かされたその解決策が脳裏によぎる。
36 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:18:14.82 ID:HME2NOcf0

その解決策とは、とある装置。

ガイアメモリの力を制御し、そしてペナルティ無く使用できるという、
VIPドライバーと呼ばれた、ベルト型の制御装置である。

だが、その実用には未だ至っていない。

実は以前、内藤はそれを使用した経緯がある。

元々はモララーが所持していたのだが、メモリを持つ内藤なら、と渡した物だ。

だが、ブーンのメモリをVIPドライバーは受け付けなかった。
そればかりか、ドライバーは壊れ、修理が必要という結果に終わった。

後になって分かった事だが、どうやらVドライバーは特定のメモリしか受け付けず。
その特定のメモリであるVIPクラスのメモリが無ければ、どうにもならないのだと言う。



37 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:21:14.46 ID:HME2NOcf0


(  ω )「……」

そう、だからどうしようもない、ないのだと。



内藤は自分に言い聞かせるように、更にその身をスピードに委ねた。

そんな彼の目に映るのは、視線の先、逃げ惑う人々と、立ち上る黒煙。
高層ビルを赤く染める、炎に限りなく近い熱物質。

内藤は懐から取り出したメモリを、自らの肘へと挿し込む。

【ブーン】

響く声がした瞬間には、彼の身体は異質な物へと変わって行く。
高速飛行を思わせるその単語が持つのは、飛行機械の記憶。
サイボーグと化した内藤は、自らの背から火を放ち、更なる加速をもって翔けて行った。



38 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:23:06.35 ID:HME2NOcf0

…………。



人々は、そのバイク乗りに手を挙げて歓迎を示した。
そして呼ぶ名は、仮面ライダー。

砕け落ちた瓦礫の隙間を一台のバイクが駆け抜け、
溶岩と化した大地を飛び越え、ついにその場に降り立った。

/^o^\「現れましたね仮面ライダー!!」

そう叫ぶのは、全身を岩石に覆われた怪物。

( ^ω^)「まるで待ってたみたいな言い草だな」

/^o^\「そう言っているのですよ、しかし、どんな方かと思えば……
    同じドーパントだったとは、いやはや驚きというか、納得というか」
41 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:25:43.59 ID:HME2NOcf0

( ^ω^)「……俺を待ってただと? どういうつもりだ」

/^o^\「どういうも何も、決まっているでしょう」

/゚o゚\ヒーローなどともてはやされ、調子付いた邪魔者をここで始末するためです!!」

( ^ω^)「…!」

と、そこで岩石男の身体が赤く染まり、周囲を陽炎が歪ませていく。
内藤は反射的に構えを取り、背中に大きな機械翼を展開させた。

/゚o゚\「私の持つガイアメモリは【マグマ】、そんなサイボーグもどきのようなメモリ、
    何でも溶かす熱量の前では無力、あまりにも無力だと教えてあげましょう!!」

( ^ω^)「前口上が長いやつだな、何でもいいから来るならこい」

/#゚o゚\「貴様ァーーー!! ヒーローならもっと、こっちの言う事に応えなさい!!!」

( ^ω^)「うるさいな、こっちは帰って見たいテレビがあるんだ
       お前みたいなお山の大将、まともに相手してる暇はないんだよ」


42 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:28:08.06 ID:HME2NOcf0

/#゚o゚\「くゥッ、AAの形状で物を言うとは顔に似合わずなんてクールな奴!! 気にいりません!!」

( ^ω^)「だから長いって―――」

/#゚o゚\「おのれェ! ならば喰らいなさい!! 『岩石弾(ロックバスター)!!』」

マグマと化した男の身体から、大量の火石が空に飛び上がり、そして一斉に落下。
大小さまざまな火炎弾が、次々に地上へと降り注ぎ、石の地面を砕き、穿ち、そして溶解させる。
そして内藤も、ついにその流星群に飲み込まれ、その姿は黒煙と砂塵によって覆い隠された。

だが、降り注ぐ火の雨はやむことを知らず、更に激しさを増していく。
そして、周囲を焦土と化した頃、その雨はようやく収まりを見せた。


/^o^\『やったか……?』


辺りは超高熱に包まれ、生き物の気配は存在しない。
岩男はそんな様をしばらく見渡し、動く影もないことを確認すると笑みを浮かべた。
44 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:30:55.13 ID:HME2NOcf0

/^o^\「ふふ……あっけない、すかしておいてこの程度でしたか」

だが。

/^o^\「……?」

そんな地獄のような硝煙の先、動く者も、生きる者も居ない空間にて、
何か、人の姿にも似た影がぼんやりと浮かび始める。

/;^o^\「……まさか!!」

そう、そこに在ったのは。
まるで何事もなかったように立ちすくむ、機械。

( ^ω^)「お前は、言ってはいけない台詞を言った…!!」

言いつつ、内藤は両手を広げた。

と、その機械の背面に展開された翼がまばゆい光を放つ。
同時に、衝撃波めいた風圧が放たれ、辺りの砂塵と黒煙を吹き飛ばす。

46 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:32:41.76 ID:HME2NOcf0

/;^o^\「あ、あ……」

(#^ω^)「さっきの台詞、後悔しろ!!」

/;゚o゚\「アッーーーー!!?」

(#^ω^)「ふっ飛べ『夜鷹重落下(ナイトホークダイブ)!!!!』」

フイイ、と風鳴る音が。
ゴオオ、と地鳴る音へと変わった瞬間。

内藤の身体がその場に雲だけを残し、一度宙へと舞い上がり回転、
次いで空からの加速を持って、強烈にして凶悪なまでの体当たりをかました。
岩男は、砕けた自身の欠片を撒き散らしながら、背後へと吹き飛ばされていく。

/;゚o゚\「ゴ、ゴエエエエ!!!!」

(; ω )「ッッ……!!」

対する内藤も、衝突と着地と加速度、あらゆる衝撃をこらえながら、
地面に数メートルも続く亀裂を刻みながら停止、そして背面から多量の煙を吐き出した。

48 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:35:52.10 ID:HME2NOcf0

その直後、爆発音。自らが壊したビルへと激突した岩男が、大量の砂塵を巻き上げながら埋もれていく。
内藤はまだ軋み声をあげる身体を引きずるように、その煙の中を目指した。

/;゚o゚\「あ、あがががががが……」

( ^ω^)「お、ちゃんと生きてるな」

右腕を抑えながら、悶え苦しむ岩男。
とその時、岩に覆われた腕の隙間に光がさし、メモリが排出された。
同時に岩男の姿が、ただの男へと変わっていく。

\(^o^)/「お……オワタ……」

( ^ω^)「そうだ、お前の罪はこれで終わりだ」

\(;^o^)/「……? あれ、僕は……?」

内藤はそれだけ確認すると、その場を後にした。


49 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:37:38.11 ID:HME2NOcf0



否、しようとした所で、彼の名を呼ぶ声が二つ。



ξ;゚听)ξ「おい!! 内と……いや、仮面ライダー!!」

ζ(゚ー゚;ζ「ブーン!! 早く逃げて!!!!」



(;^ω^)「へ? ツン? と………」





( ゚ω゚)


  +ζ(゚ー゚*ζ+  (※内藤ビジョンでは辺りを星が輝いています)



50 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:40:14.93 ID:HME2NOcf0

ξ;゚听)ξ「熱ちち、なんだこりゃ、また酷いな……」

ζ(゚Δ゚;ζ「早く! 早くここを離れて!! 罠なんだよ!!」

(;゚ω゚)「か、かかかかかかか……」

ζ(゚Δ゚;ζ「か? かじゃなくて!」

(;゚ω゚)「カノンたあああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!???」

ζ(゚Δ゚;ζ「ひえ!? 何!?」

ξ゚听)ξ「またか」

(;゚ω゚)「ふおおおおおお!!! 夢にまで(ガチで)見たカノンちゃんが目の前に!!これは現実!? リアル1? マジリアル?
     それとも夢!?これはまさに大陸かち割るドリーム彗星!! イッツクレイジー! クレイジーコメットですぞ!!」

ζ(゚Δ゚;ζ「ブーン、落ち着いて! そんなことより早く逃げないと!!」


51 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:42:33.43 ID:HME2NOcf0

( ;ω;)「カノンちゃんが! カノンちゃんが俺を呼んでる!? うわ、うわわーーーー!!えらいこっちゃ!!
      てかやべえ、どうしようマジ可愛い、可愛いなぁちくしょう……生きてるのが辛ぇ……辛ぇよお…ぐすっ
      同じ金髪なのにツンとは大違いだ、どうなってんだよちくしょう……ちくしょぉ……」

ξ゚听)ξ「よし、後で殺そう……つーか何でそんな同じ反応するかな」

ζ(>Δ<;ζ「話を聞い……聞けぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

( ^ω^)+「なんだいカノンちゃん、何でも言ってごらん?」

ζ(゚ー゚;ζ「は、はひ?」

ξ゚听)ξ(……こいつら)

ζ(゚ー゚;ζ「あ、あのね、だから、早くここから逃げないと駄目なんだよ」

( ^ω^)「どうして?」

ζ(゚ー゚;ζ「マグマは囮、あなたを呼び出すための、だから…!」

( ^ω^)「……そうか、それであいつあんな事…」


52 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:44:22.57 ID:HME2NOcf0

ζ(゚Δ゚;ζ「あいつが、あいつが来るんだよ…!」

( ^ω^)「……ナスカ、か?」

ξ;゚听)ξ「!!」

内藤自身、そうなる事はわかっていた、いや、望んでいたのかもしれない。
こうしてドーパントに反目し、戦い続ければ、そう遠くない内にそうなるだろうと。

だが、そんな内藤の問いに対し、少女は首を横に振った。

ζ(゚Δ゚;ζ「違うよ、これを指示したのは…! コンセプトクラス……」


『見ぃつけた』


ζ( Δ ;ζ「……あ、あああ、あ!!!」

ξ;゚听)ξ「お、おい、どうした?」

『噂の仮面ライダー……そして、こんな所まで逃げてくるなんて、いけない子だねぇ…』

54 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 01:49:12.01 ID:HME2NOcf0

ζ(゚- ゚;ζ「タブー……!!」

从 ゚∀从「ああ、星の司書デレ、お前はあとでおしおきだねぇ」

(;^ω^)「な、なんだ……こいつは…」

从 ゚∀从「けどその前に…こっちの」

現れたのは、宙に浮かぶ箒頭の怪物だった。
まだ若そうな女の、軽々しい声色。

だが内藤は、その姿に激しい悪寒を覚えた。
理由もわからぬ不快感と、それ以上に感じるのは後悔にも似た感覚。
触れてはいけない、見てはいけない物を見てしまったような。


ゆえに、内藤はその場であとずさる事しかできなかった。

58 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 02:05:45.83 ID:HME2NOcf0

从 ゚∀从「仮面ライダー…いや、ブーンドーパント、お前は少し…勝手が過ぎるようだ、
     悪いが、いや別に悪いと思っちゃいないけどさ、ここで―――――」

(; ω )「な……あ、う……!」

ζ(>Δ<;ζ「駄目、ブーン! 逃げてぇーーーーーーーーー!!」

怪物が手を前に出すと、雷に包まれた赤い球体がいくつも浮かび。


从 ゚∀从「記憶もとろも、消え去るがいい!!」


それらが一斉に、内藤めがけて放たれた。
内藤はただ、それを呆然と眺めている。

だが、その衝突の間際。
彼を突き飛ばすように飛び込む姿があった。
60 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 02:08:31.94 ID:HME2NOcf0

从 ゚∀从「ほう」

(;^ω^)「てて……っ、ツン!?」

ξ#゚听)ξ「馬鹿者! ぼさっと見てる奴があるか!!!」

(;^ω^)「ああ、すまん……ってツンお前、その腕!?」

内藤に覆いかぶさるように倒れこんだツンの右腕を血がつたう。
言われて気付いたのか、ツンもそれを確認すると顔を引きつらせた。

ξ;゚听)ξ「……まったく、乙女の柔肌に傷がついたじゃないか」

(;^ω^)「……乙女…?」

ξ゚听)ξ「なんか言ったか?」

(;^ω^)「いや、なんでもない! それよりありがとうツン、助かった!!」

ξ-听)ξ「それは、この状況をどうにかしてから言ってほしいな」

( ^ω^)「違いない……!!」


61 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 02:11:45.19 ID:HME2NOcf0

从 ゚∀从「なんだ、やる気? 本気かい?」

そうして内藤は、再びブーンメモリを握る。
空と地上にて相対する二人。

そんな二人の間に、少女が割り込む。

ζ(゚ー゚*ζ「ブーン」

(;^ω^)「カノンちゃん!? ばっ、危ないから! 下がって…」

そこで内藤はようやく気付いた。
少女が、ずっと持っていた、とある物。

(;^ω^)「……そ、それって……VIP、ドライバー?」

あの日、壊れてしまったはずの、Vドライバーであった。
少女は戸惑う内藤を真剣な表情で見据えると、やがて静かに口を開いた。



ζ(゚ー゚*ζ「悪魔と相乗りする勇気……ある?」



62 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 02:13:29.46 ID:HME2NOcf0

言って、差し出すのは赤い差込口が二つ取り付けられたベルトと、
紫色の『J』と書かれた一つのガイアメモリ。


( ^ω^)「カノンちゃんとなら、喜んで…!」


内藤は、ちょっと嫌な笑みを浮かべながら、しかし迷わず受け取った。


从 ゚∀从「新しいメモリ? だが、それがどうした!!」


内藤はベルトを巻き、紫のメモリを手に、二人を庇うように前へ出た。
宙に浮かぶ怪物が手をかざし、内藤に狙いをつける。

赤い球体が、大量に浮かび上がる。
対して、内藤はメモリを掲げ上げた。


鳴り響く音声が告げる。     


 【ジョーカー】

64 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 02:17:22.62 ID:HME2NOcf0

更に、少女は叫ぶ。

ζ(゚Δ゚;ζ「ブーン、ブーンもだよ!!」

(;^ω^)「な、んな事したらまた……」

ζ(゚Δ゚;ζ「信じて、ブーン!!」

(;^ω^)「〜〜〜〜ッ わかったよぉ!!!!」


从 ゚∀从「別れの挨拶は済んだか?」


(#゚ω゚)「うああああああああああああああああああああ!!!!」


そして、赤い球体が放たれるのとほぼ同時。
内藤の腰に巻かれたベルトに、ついぞ二つのメモリが挿し込まれた。


65 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 02:18:13.38 ID:HME2NOcf0




【ブー】








66 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 02:19:09.58 ID:HME2NOcf0









【ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーrrrrrrrrrrr】








67 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 02:22:35.07 ID:HME2NOcf0

それは、ほんの一瞬の出来事であった。


ブーンメモリは明滅と共に音をバグらせ。
激しい割れ音と共に、その形状を変化させた。


(;゚ω゚)(こ、これは……!?)


白色のガイアメモリ。

響く音声は。








   【ブランク】【ジョーカー】





68 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 02:25:03.57 ID:HME2NOcf0




そして迫り来る赤い凶弾も、周辺の瓦礫さえも。
巻き起こった紫の波動が、全てを吹き飛ばした。






第一話

空白の   B   /二つの記憶を失くした男   おわり





69 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 02:26:14.13 ID:HME2NOcf0


おまけ。

「この話におけるガイアメモリってなんぞや」


ζ(゚ー゚*ζ「えと、ガイアメモリについて……僭越ながら私が補足させてもらいますね」

ξ゚听)ξ「じゃあまず、ガイアメモリってなんだ?」

ζ(゚ー゚*ζ「ガイアメモリというのは、地球上に存在した記憶が封じ込められた、
      手のひらサイズのUSBメモリ型デバイスの事です」


ζ(゚ー゚*ζ「メモリには、一つにつき一つの記憶が入っていまして、
      人体やドライバで読み込むことで、使用者にその記憶を伴う力と、姿を与えます」


ξ゚听)ξ「冒頭の変質者が使っていたのは、プレコって魚のガイアメモリだったらしい
     それを使った事で、魚の怪物に変身していたとか」


70 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 02:27:57.74 ID:HME2NOcf0

ζ(゚ー゚*ζ「中には例外もあるのですが、およそ、そんな感じですね」

ξ゚听)ξ「例外っていうと、VIPクラスってやつかい?」

ζ(゚ー゚*ζ「はい、元々ガイアメモリには階級があるのですが、
      ……それでも、VIPクラスはその中でも更に特異な物です」

ξ゚听)ξ「ん? 階級なんてあるのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「ええ、最上位とされるフィーリング、上位にコンセプト、次にフェノメノンと続き、
      そこからは特に区分けされずに数多が存在しています」

ξ゚听)ξ「つまり……どういうのがそうなんだ?」

ζ(゚ー゚*ζ「感情、概念、現象……記憶として存在しながら形の無い物たち、
      おもにそれらを差し、そういった物ほど強力な力をもっています」

ζ(゚ー゚*ζ「…もっとも、その辺りはとても曖昧なものですから、完全な区分けはされていないのです」


71 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 02:29:04.91 ID:HME2NOcf0

ξ゚听)ξ「そして、それを記録するのがあんたの仕事ってわけか」

ζ(゚ー゚*ζ「わけです」

ξ゚听)ξ「で、VIPクラスってのは何なんだ?」

ζ(゚- ゚*ζ「それは………」

ξ゚听)ξ「それは?」

ζ(゚ヮ゚*ζ「いずれ、本編で語ることになるでしょう」

ξ-听)ξ「ああ、そういう話ね」

ζ(゚ー゚*ζ「というわけで、今日はここまでです、見てくれてありがとうです」

ξ゚听)ξ「んじゃ、またな」


72 名前: ◆aYo30Ks4N6 :2009/12/04(金) 02:30:56.79 ID:HME2NOcf0
    ノハ*゚听)「私、仮面ライダーさんのファンです!!」

   (;^ω^)「はあ?」


           从 ゚∀从「あれはまるで……鎧を着るような」

           (*゚ー゚)「とにかく、私たちとは全く違う変身形態ってことね」



ノハ#゚Д゚)「でも私だって……みんなを守りたいんだよおおおおおお!!」



                      (;^ω^)「メモリが紅く……なった…?」

                       ???(な、ななな、なんだこれはあああああ!?)


        ( ^ω^)『さあ、お前の罪を―――』
   
          ノパ听)『焼却処分だ!!』


                    次回 
                    第二話

                    二人で一つ、Wで変身/平和を愛する熱血少女

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