286 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 14:03:20.31 ID:n4Y0plzf0
 とまれ。遠ざかっていくジョルジュの叫びを追い掛けて、内藤は食堂に辿り着いた。

 食堂、と言うのはそういう形に使われている部屋ではなく、かつてこの廃墟が工場として機能
していた頃に、従業員が使っていたとおぼしき本物の食堂だった。
 会議室の机よりはやや広いテーブルが幾つも並んだその様は、刑務所を連想させる。

ξ゚听)ξ「あ、内藤。遅かったじゃない」

 ガラガラの室内の一角に、トレイを前にしたツンが、見知らぬ女性二人と座っていた。
 女性二人はともかく、ツンの前に置かれた根菜類とミートボールを煮込んだシチューとパン
を見ていると、内藤の腹が「ファーブルスコファーブルスコ」と凄まじい音で鳴った。

(;+゚∀゚)人(・∀・メ;)「ちょwwwwキメェwwwwww」 (#^ω^)「余計なお世話だお」

 何時の間にか後ろに居たフリッツとジョルジュを睨みつける。それでも、ツン達女性陣がおか
しそうに笑っているのを見ると、何となく怒りが和らぐから不思議だ。

ξ゚听)ξ「内藤も食べてきたら? バイキング方式ですって。メニュー少ないけど」

( ^ω^)「唯で喰えるのかお!? それなら、是非とも頂きたいところだお!」

 喜び勇んだ内藤は、カウンターの方に行ってトレイを引っつかみ、並んでいる皿を片っ端か
ら載せていった。厨房に居た太ったスキンヘッドの男が、何となく厭そうな顔をしていたが内藤
は見ていなかった。今の彼は狗のように空腹だったのだ。

 トレイの上がシチューやらパンやら何かのフライやらで山盛りになった所で、内藤はそれら
をこぼさないように注意しつつ、ツン達の居るテーブルに腰を降ろした。

( ^ω^)「いただきますだお!」 (+゚∀゚)「その言葉は英語には無いぞ、内藤」

287 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 14:03:53.85 ID:n4Y0plzf0
( ^ω^)「ハムッ!!ハフハフッ!!ハムッ!!GLUP!!GLUP!!」

ξ;゚听)ξ(;+゚∀゚)(;メ・∀・)(;゚∀゚)彡;゚ー゚)「ちょwwwwキメェwwwwww」

 その場に居た五人の人間から突っ込まれると言う、実に珍しい体験をしながら、内藤の狼藉
は僅か五分で終了した。スプーンを皿に投げ入れて、げっぷを吐く。

(*゚∀゚)「アハッ! 面白いわアンタ」 彡;゚ー゚)「行儀が悪いのはどうかと思うわ……」

 ツンの隣に居たのは、派手なボンテージ風の衣装に身を包んだ赤毛の白人と、反対に地味
な黒のセーターを着た黒髪の黒人だった。どちらも美人でスタイルもいい。

( ^ω^)「ところで、こちらの美人二人はどちらさんだお?」

ξ#゚听)ξ「何、色目使ってんのよ……」 (;+゚∀゚)「おまwww落ち着けwwwww」

 今にも殴り掛からんとするツンを、慌てて身体を張って静止しようとするジョルジュ。二人を横
目に、問われた二人は顔を見合わせると、自己紹介を始めた。

(*゚∀゚)「わたしはブラッドレイン。元米軍の秘密諜報機関"ブリムストーン=ソサエティ"に居た
ハンターよ。まぁ、今も属してはいるんだけど、ちょっと複雑で、ね」

彡*゚ー゚)「私はカレン。元はある病院で医師をしていたんだけど……色々あって、今はこの石鹸
工場で厄介になっているの。戦闘はしないけど、武器を作ったり資材を調達したり」

(+゚∀゚)「カレンさんは血液学を専攻していてね。ほら、吸血鬼って血のバケモノだから、色々と
対策を考えてくれたりしてるんだ。レインさんは何と言うか普通に強いし」

(#*゚∀゚)「なんで私だけ投げやり?」 (;+゚∀゚)「いや、だって他に言いようが無いし……」

288 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 14:04:28.36 ID:n4Y0plzf0
( ^ω^)「よく判らないんだお……ここは、一体どういうところなんだお? 吸血鬼ハンターの人
達が集まってくる、アジトみたいな場所なのかお?」

(+゚∀゚)「……まぁ、フリーのハンターは基本的に個別に動き、状況に応じてチームを組んだりす
るって感じなんだが……何となく成り行きで、ここをアジトみたいに使ってる」

 アジトだけどアジトじゃない、とジョルジュは困ったように言った。その辺りの事情はかなり複
雑そうで、ジョルジュやフリッツ等も詳しく話す気は無いらしかった。

(メ・∀・)「迷惑な話だぜ。知っている人間が多ければ多いほど、場所はバレ易くなる。まぁ、莫
迦な吸血鬼がトラップに引っ掛かるのを見るのは楽しいんだけどよ」

 そんな台詞を口に出来ると言う事は、ジョルジュもフリッツもこの工場を使う者として、それな
りに古株なのだろう。それに頷くカレンとレインも、また。

彡*゚ー゚)「元々は、私とブレイドがここを根城にしたんだけどね。私も彼も、基本的に来る者は
拒まず去る者は追わずって姿勢でいたら、何時の間にかこんな感じに」

( ^ω^)「ブレイド? ブレイドさんって、あの背の高くてサングラス掛けた黒人の……」

 途端に。内藤は、自分がそのブレイド本人に、銃口を向けた事を思い出した。この流れから
すると彼もハンターなのだろうが、目の前に居る人達はその知り合いだ。
 自分がここに居るのが酷く場違いな気がして、目を伏せる。その肩をジョルジュが叩いた。

(+゚∀゚)「……大丈夫だ、内藤。誰もお前を責めない」 (;^ω^)「でも、僕は……」

彡*゚ー゚)「そうね……大体事情は知っているわ。あなた、自分の事については?」

 首を振る。結局、ジョルジュが教えてくれそうで教えてくれなかったのだ。

289 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 14:04:46.08 ID:n4Y0plzf0
彡*゚ー゚)「ふぅん……じゃあ、私が説明してあげようか?」 (+゚∀゚)「いいんですか?」

彡*゚ー゚)「どうせ、この後ヒマだもの」 (+゚∀゚)「うぅん……じゃあ、お願いします」

 ジョルジュに頭を下げるカレンの横で、かぶりを振ったレインが立ち上がった。

(*゚∀゚)「話が長くなりそうだから、私は先往ってるわ」 (メ・∀・)「あぁ。じゃ、オレも」

 何とも気軽に言って、フリッツとレインが席を立つ。去っていく二人を眺めて、

(+゚∀゚)「俺も往くかな……ツンさんは?」 ξ゚听)ξ「聞くわ」

 残って彼の事を知る、そう答えたツンに頷き返し、ジョルジュもどこかに消えて行った。

 後に残されたのは、内藤とカレン、それにツンの三人。厨房からはあのスキンヘッドの男性が
食器やなんかを片付ける音が響いているが、これはカウントしない。

 そうして一呼吸置いてから、血液学者カレン教授による講義が始まった。

彡*゚ー゚)「まず聞きたいんだけど。あなた、吸血鬼の伝承には詳しいのよね?」

( ^ω^)「まぁ、そうなりますお……物語や言い伝えの中の事しか知りないですがお」

彡*゚ー゚)「結構よ。伝承の中の事は、殆ど真実と見ていいわ。正確には真実の一部だけど」

 確かに。火の無い所に煙は立たないと言うから、全くの出鱈目では無いだろう。少なくとも吸
血鬼は存在するのだから、それに関する伝承も嘘で無い可能性は低くない。

彡*゚ー゚)「そういう伝承の中に吸血鬼を退治する専門家が居るでしょう?」

290 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 14:05:20.95 ID:n4Y0plzf0
( ^ω^)「専門家? ダンピールみたいな奴かお?」 ξ゚听)ξ「…………」

 内藤の言葉に、カレンは否定の意味でかぶりを振った。

彡*゚ー゚)「スラヴの伝承にいるじゃない、十字架を語源とする白い吸血鬼狩人が」

( ^ω^)「それってもしかして――――――――」 彡*゚ー゚)「そう。"クルースニク"よ」

 ――――そも、"クルースニク"とは何か。

 kresnikは、スロベニアの民間伝承に伝わる、光の力の加護を受けた「十字架の番人」たる吸
血鬼の始末人の事である。拝火教的な思想によるものか、同じスラヴの伝承に登場する闇の
吸血鬼……所謂"クドラク"とは、対の存在として考えられている。
 両者は必ず敵対する運命にあり、雄牛や狼などの動物、或いは火炎に変身すると言われク
ルースニクが変身した動物は白い色をしている。逆にクドラクは黒い動物に変身する。
 神の敵であるクドラクは、光の使者であるクルースニクには決して勝てないとされ、両者の戦
いは常にクルースニクの勝利で幕を閉じる事になっている。

(;^ω^)「ぼ、僕がそのクルースニクだって言うのかお? 有り得ないお! 証拠は!?」

彡*゚ー゚)「……証拠ならあるわ。クルースニクがどうやって生まれるかは判るわよね」

 無論だ。クルースニクは、必ず白い羊膜に包まれて生まれてくると言われている。それぐら
い、内藤だって知っている。知っているが――――まさか。

彡*゚ー゚)「あなたって、正規の医者じゃなくて闇医者の手で取り上げられたらしいわね。おまけ
にその医者はもう亡くなってたから、カルテを探すのが大変だった」

ξ゚听)ξ「じゃあ、カルテが?」 彡*゚ー゚)「いいえ。でも、診療日記が見付かった」

291 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 14:08:14.47 ID:n4Y0plzf0
 カレンが取り出したのは、B5より一回り小さいハードカバーの日記帳だった。しおりを挟んで
あった箇所を開き、びっちりと文字で埋まったページを指で叩く。

彡*゚ー゚)「あなたの生まれた日、あなたの事が書いてあるわ。「この子供は白い羊膜に包まれ
て生まれてきた。こんな事例は初めてだ」って。個人的な日記だから、わざわざ嘘を書き記し
ているとは思えない。これは、その医者の文章だと見て間違いないでしょうね」

(;^ω^)「でも、そんな……僕の両親は、普通の人間の筈だお」

彡*゚ー゚)「そうでしょうね。クルースニク自体、数が少ないから詳しいデータは取れていないん
だけど、どうやら一種の突然変異みたいなものらしいのよ」

ξ゚听)ξ「突然変異? って事は、親が人間かそうじゃないかってのは関係ないわけ?」

彡*゚ー゚)「そうね……一説によれば、遠い昔に何か神秘の存在と交わった人間の子孫だとも言
われてるけど……でも、その説が本当なら、交わったのは神代――――つまりアキレスとかヘ
ラクレスなんかの時代――――まで遡る事になるんでしょう。でも、そんなに大昔までの家系
図を残している人なんて、そうそう居ないから、結局判らないまま」

(;^ω^)「そ、それだけじゃ判らないお。まだ、他に証拠は無いのかお」

 最後の悪足掻きじみた言葉に、カレンは難なく「あるわよ」と言ってのけた。

彡*゚ー゚)「クルースニクって言うのはね、どういう原理か知らないけど、必ず対になるクドラクと
同じ日の同じ時間に生まれるの。そこまでは普通の人間なんだけど、やがてこの二人は出会
う。これは――――まぁ、科学者が言う台詞じゃないけど――――逃れようのない運命って奴
らしくて。クルースニクとクドラクは、戦う宿命になっているのよ」

(#^ω^)「それがどうしたんだお!」 ξ;゚听)ξ「ちょっと。落ち着いてよ、内藤」

292 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 14:08:42.85 ID:n4Y0plzf0
 今にも飛び掛かろうとする内藤の前で、カレンは往き過ぎなほど冷静に話す。

彡*゚ー゚)「実はメキシコの方で、赤い羊膜に包まれた子供が生まれたって言う記録――――ク
ドラクは、赤い羊膜に包まれて生まれてくる――――があったのよ」

 厭な予感。内藤は、聞きたくないと思いつつも、目を塞ぐ事が出来なかった。

彡*゚ー゚)「クドラクが居るなら、クルースニクも必ず居る。見付けるには、片方が生まれたのと同
じ日と同じ時間に生まれた子供を見付けて、羊膜の色を見れば良い」

彡*゚ー゚)「でもね。結局、その殺されたクドラクの対になるクルースニクは、見付かっていなかっ
た。当然よね。公式な記録の無い、闇医者の所で生まれたんだから」

(;^ω^)「……そいつの、生まれた日は?」 彡*゚ー゚)「あなたの誕生日と一致した」

 ここまで来て否定出来るほど、内藤は莫迦では無かった。それが幸福かは別として。

彡*゚ー゚)「それにね。初めてブレイドに助けられた時の事、ちゃんと覚えている?」

 忘れてはいない。ツンのファンを名乗る奴等に、初めてボコボコにされた日の事だ。

彡*゚ー゚)「あの時、あなたは武器も無く彼等を殺そうとした。クルースニクには、大気中のエー
テルを消費して、自らの肉体を炎に変える能力がある。その時、ブレイドに同行していたジョル
ジュは、あなたの手にエーテルが集中するのを観測したそうよ」

 なるほど。確かに、自分の身体を火炎に変えるなんて真似が出来るのは、クルースニクぐら
いしか無さそうである。判ろうとしなかった自分の往生際の悪さに、苦笑が浮かぶ。

 その様子を敢えて無視しながら、カレンは説明を続けた。彼女に出来るのはそれだけだ。

293 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 14:09:21.22 ID:n4Y0plzf0
彡*゚ー゚)「あなたがクルースニクとして覚醒しなかったのは、対になるクドラクが既に死んでい
たからでしょうね。それが、吸血鬼との出会いによって眠っていた感覚が爆発した……今まで
に無い事例だわ。論文にまとめようって気にはならないけど」

( ^ω^)「つまり……僕がここに居るのは、不幸な偶然が幾つも重なった、って事かお?」

 ――――それこそ有り得ない話だ。

 偶然なんて言う言葉は、神秘を隠すために用いられる隠語だ。人は理解の及ばない必然を
偶然と呼んでいるだけで、実際、それは何らかの必然であった筈である。
 最も、それを自分達が知る手立ては無い。あくまで自分達はその運命の輪の中で生きる者
に過ぎないのだから。檻の中で生きる者が檻の外を知る事は無いように……

 ――――どうでもいい話だ。今はそれより、大切な話があるではないか。

( ^ω^)「主人公に突然未知の力が覚醒するなんて。まるでマンガかアニメだお……」

ξ゚听)ξ「内藤……」 彡*゚ー゚)「まぁ、普通はショックよね」

 暢気に言うカレンを横目に、ツンは頭を抱える内藤の背を撫でた。

ξ゚听)ξ「ほら、元気出しなさいよね。らしくもない」 ( ^ω^)「ツン……」

ξ゚听)ξ「大丈夫よ。私だって、半分吸血鬼なんだから。実感湧かないけど」

( ^ω^)「そうかお?」 ξ゚听)ξ「そうよ。あなただってそうでしょ?」

 言われてみて。まぁ、ショックな事はショックだが、自分がそんな吸血鬼を殺す事を宿命付け
られた伝承の人物だと言われても、あまりピンと来ない。
 それ以前に、自分がツンと同じ立場だと考えるなら、それはそれで良い気がしてくる。

294 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 14:09:50.03 ID:n4Y0plzf0
( ^ω^)「それもそうだお。励ましてくれてありがとうだお」

ξ///)ξ「ば……!!! ち、違うわよ! 別に励まそうって訳じゃなくて……」

( ^ω^)「そうなのかお?」 彡*゚ー゚)「(そんなワケは無いでしょうに)」

ξ///)ξ「そ、そう! 唯、アンタが落ち込んでいるのが見てられなかっただけで」

( ^ω^)「そういうものかお」 彡*゚ー゚)「(それを励ますと言うのではなかろうか)」

 そんな二人の様子を生暖かく見守りながら、カレンは心中で突っ込みを入れた。

( ^ω^)「あ、そういえば。ジョルジュは僕と同じって言ってたけど、本当かお?」

彡;゚ー゚)「え? え、えぇ、そうよ。彼もまた、クルースニクよ。ま、ちょっと特殊で」

( ^ω^)「特殊って何だお?」 彡*゚ー゚)「それは……まぁ、本人に聞きなさい」

彡*゚ー゚)「さて。それじゃ、今後の事を話し合いましょうかしらね」

( ^ω^)「今後の事? つまり、僕はここでハンターをしろって事かお?」

 確か。そんな感じの事を、フリッツやジョルジュらが言っていた気がする。
 最初は、単にダンピールであるツンのおまけかと思っていたのだが。自分がクルースニクで
あるなら、彼等が必要とするのはツンだけでは無いのだろう。

彡*゚ー゚)「それがジョルジュやフリッツの希望みたいだけど、別に強制では無いわ。あ、ツンち
ゃんはコンラッドの事があるから、私達で保護する事になるけど」

ξ゚听)ξ「内藤は要らないって事? でも、彼はクルースニクでしょう」

295 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 14:11:14.04 ID:n4Y0plzf0
 むっとした様子のツンに、カレンは出来の悪い生徒を諭すような口調で静かに語る。

彡*゚ー゚)「ツンちゃん、私達は、この工場に集まる人達が一つのチームって訳じゃないの。みん
なあくまで、利害が一致しているから一緒に動いているだけ。だから、自分一人で行動したいっ
て言うなら、その人の責任で行われる限り、その人の自由なの」

 なるほど。要するにカレンは、身の振り方は内藤自身が決めろと言っているのだ。

( ^ω^)「……少し、考えさせてほしいお。いきなり言われても決められないお」

彡*゚ー゚)「好きになさい。でも、あなたはもう、元の生活には戻れないわよ」 ( ^ω^)「?」

彡*゚ー゚)「クルースニクは、覚醒すると第六感の精度が飛躍的に向上する。その延長として、
彼等は吸血鬼の存在を感知するセンサーが備わる。そのスイッチは死ぬまで切れない……

 ――――つまりね。あなたはもう、彼等を無視する事は出来ないのよ」

( ^ω^)「あるあるwwwww」 Σξ;゚听)ξ「ねーよwwwwww」

 殆どノリで返した内藤と反射的に突っ込んだツンを、何処か微笑ましく眺めて、

彡*゚ー゚)「まぁ、私の話はこれで終わりだけど……」

 カレンは立ち上がり、ちらり、と内藤の無くなった左腕を見た。

彡*゚ー゚)「それじゃ不憫でしょう。後で義手ぐらいだったらつけてあげるわ」

( ^ω^)「あ、ありがとうございますお。よろしくおながいしますお」

 頭を下げる内藤に微笑んで、美貌の血液学者は食堂から去っていった。

296 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 14:11:30.66 ID:n4Y0plzf0
ξ゚听)ξ「……ねぇ、内藤。これから、どうするの?」

 ぼんやりと座っていたツンが、ぽつり、と呟いた。内藤も、ぼんやりとそれに答える。

( ^ω^)「判らないお……指名手配中だから、外にも出れないし。母さんは……死んだし」

ξ゚听)ξ「ジョルジュくんから聞いたわ……あなたが、自分で……ウッ……」

 想像してしまったのか。ツンの目から、ぽろぽろと涙が零れた。

(;^ω^)「だ、大丈夫かお?」 ξ;凵G)ξ「聞きたいのは私よ……大丈夫なの、内藤は」

 問われて。内藤は、自分が母親を殺したと言う事実を、理解していない自分に気付いた。

( ^ω^)「……よく覚えていないから、哀しくは無いお。ただ……寂しいだけだお」

 俯く内藤を、涙に濡れた目で眺めて。ツンは、探るような口調で訊ねていた。

ξ゚听)ξ「それなら……私が、あなたのお母さんになってあげようか?」

( ^ω^)「え……? それってどういう――――」

 聞き返そうとした内藤の顔に。ふわり、と柔らかい黒髪が覆い被さった。

ξ*゚听)ξ「その……私には、このぐらいしか出来ないけど」

 耳まで真っ赤にして耳元で囁くツンの姿に、内藤は思わず顔がにやけた。

(*^ω^)「ちょwwwwwうはwwwww萌えるwwwwwwハズイwwwww」

297 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 14:12:10.29 ID:n4Y0plzf0
ξ*゚听)ξ「ば、ばか! こういう時ぐらい、ムード出しなさいよね!」

 そう言われましても。こちとら、十八歳童貞高校生ですから。

(*^ω^)「うぇwwwwっうぇwwwwムリスwwwwww我慢の限界wwwww」

Σξ;゚听)ξ「え! ちょwwwwwおまwwwww拉致るなwwwwww」

 内藤は戸惑うツンを抱き抱えると、そのままどこへともなく消えた。






(;+゚∀゚)「……結局出て行けなかった。何ともまぁ、恥ずかしい」

 それを目撃したジョルジュの呟きは、誰の耳にも届く事は無かった。



 俺だって恥ずかしいよ。このバカップル共が(# ω )
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