226 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:11:03.51 ID:n4Y0plzf0

(・∀・メ)「ジョルジュー。あんちゃんだよー。
     モーラのあんちゃんだよー。今帰ったよー。開けておくれー」

(+゚∀゚)「本当かー。本当に本物のあんちゃんかー。
     本当のあんちゃんならこれが出来るハズです」CV.中本工事

(+゚∀゚)「DIO様のものまねー」ぼそり

(・∀・メ)「お前は今まで食った米の数をおぼえているのか?」CV.いかりや。

ヽ(+゚∀゚)ノ「うわー超ゴーマーン。やっぱりあんちゃんだ〜!」

ヽ(・∀・メ)ノ「はっはっはっは〜」


(#^ω^)ξ#゚听)ξ「 話 進 め ろ よ 」

(;+゚∀゚)(・∀・メ;)「うはwwwwwwwゴメスwwwwwww」


227 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:21:31.88 ID:n4Y0plzf0
さて、そろそろ第八話を始めますよ
229 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:24:58.83 ID:n4Y0plzf0
(・∀・メ)「で、えーと、どこまで話したっけ?」 (+゚∀゚)「まだ何も話してません」

(・∀・メ)「それもそうだな。じゃ、吸血鬼ハンターについてこのオレ様が講義してやろう」

 言って。フリッツは立ち上がると、ホワイトボードの前に立った。そしてペンを取り、

(・∀・メ)「特に書く事もねーじゃん。書いて字の如くなんだから」とペンを元に戻した。

ξ;゚听)ξ(;^ω^)(;+゚∀゚)「ちょwwwおまwwwここまで引っ張っといてwwww」

(・∀・メ)「実際その通りなんだよ。ハンターってのは、吸血鬼を狩る連中だ。判るだろ?」

( ^ω^)「ヘルシング教授とか吸血鬼ハンターDとかその辺りかお?」

(+゚∀゚)「そうそう。ま、ヘルシングってのも二つあって。ブラム=ストーカーの方と、英国国教騎
士団ヘルシング機関って言うイギリスの対吸血鬼機関と」

( ^ω^)「政府も吸血鬼対策をやってるのかお……」 (・∀・メ)「一部の国だけだがな」

ξ゚听)ξ「違いがよく判らないわよ」 (+゚∀゚)「綴りが違うんだよ。こう――――」

 ジョルジュは立ち上がり、ホワイトボードに「HELSING」「HELLSING」と書いた。

(+゚∀゚)「実在するヘルシング卿はLが一個多いってワケ。関連は……あるんでしょうか?」

(・∀・メ)「オレにフられても困る。ま、とにかく吸血鬼を処理したい連中にも、政府に属している奴
等もいれば、オレみたいにフリーなのもいるって事だ」

( ^ω^)「ジョルジュもそうなのかお?」 (+゚∀゚)「うーん……それはまたあとで話すよ」

230 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:26:11.03 ID:n4Y0plzf0
(・∀・メ)「ハンターになる理由も、千差万別十人十色でな。私怨でやる奴もいれば、何らかの使
命感を以て戦ってる奴もいるし。或いは、金のためとかな。ま、理由はどうでもいいか」

 言いながら、フリッツは再度立ち上がると、壁に貼ってあった地図に近付いた。

(・∀・メ)「で、重要なのはこれから話す事……ニューヨーク吸血鬼事情って奴なんだよ」

 フリッツは近くにあった棒を使い、地図に描かれた赤い丸を指した。地図には他にも大量の
赤い丸があり、内藤も聞いた事がある地名や建物も少なくない。

(・∀・メ)「これが、オレ達が多種多様な情報を整理し吟味し関連付けた結果判明した、連中の
寝床とか巣とか溜まり場だ。連中はゴキブリみてえにニューヨークに巣食ってる」

(;^ω^)「血液銀行とかクラブとか……こんなところに居るのかお? 目立たないのかお」

(・∀・メ)「木を隠すには森の中、ってな。無理に地下とかに隠すよりは、こうやって表に置いた
方がバレ難い。誰だってこんな場所にバケモノ共が居るとは思わないだろ?」

 そうかもしれない。先入観と言う奴だ。そもそも吸血鬼の存在を知っている人間すらこの街に
は多くないと言うのに、こんな場所に居られたら誰も気付かない。

ξ゚听)ξ「どうして誰も気付かないのかしら……国や市は何をしているのよ?」

(+゚∀゚)「ふん。役人の中にも連中の手先が紛れ込んでいる。イノヴェルチって言って――――
ロシア語で異端者と言う意味なんだが――――こいつらは吸血鬼と言う人間以上の存在から
得られる甘い蜜に釣られたり、不老不死なんてものを欲しがって連中に協力している」

(・∀・メ)「誰かが気付いても、連中のせいで無かった事にされる。冗談にしちゃ笑えねえよ」

 フリッツは懐から煙草を取り出し、火を点けて咥えた。アメリカンスピリットだった。

231 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:26:46.87 ID:n4Y0plzf0
(・∀・メ)「ニューヨークの夜は、今や吸血鬼の温床だ。昼間はまだ人間の天下だが、一度夜に
なっちまえば、あちこちで人が喰われている。闇に目を向けてみろ。空には蝙蝠が飛び交い、
人の形で人に近付いた吸血鬼がそいつの咽喉を食い破る。仕事に行かない夫に家から出な
い妻、吸血鬼になった親父と一緒に暮らしながら、喰人鬼にならないよう輸血をする娘。夜毎
徘徊し人を喰らうガキ共に、襲い襲われるホームレス――――ほら、バケモノだらけだ」

ξ゚听)ξ「そんな……おかしいわよ。そんな状況なのに、どうして誰も気付かないの!?」

(・∀・メ)「どうして? 莫迦言うなよ、元々この街には大量の死人が出ていた。それが三倍に膨
れ上がった"だけ"だ。大体、気付いたからって何が出来る? 吸血鬼は最強じゃねえが人間よ
りはずっと強い。誰だって、そこまで簡単に命を賭けられるワケじゃねーんだ」

 忌々しげに鼻を鳴らし、フリッツは指に挟んだ煙草の先を、ツンの鼻先に突きつける。

(・∀・メ)「勿論、オレ達だってボーッとしてたワケじゃねぇ。政府の、特にヴァチカン法王庁なん
かは、この街に大量のハンターを送り込んでいるし、オレみたいなフリーの連中も集まり始め
ている。ホワイトハウスは最近になって、連中専用の特殊部隊を立ち上げた。そうして連中を
殺す奴等が増えた――――それでも尚、人手は不足してるんだよ」

(+゚∀゚)「……おまけに先刻言ったけど、人間だって誰も彼も吸血鬼と敵対してる訳じゃない。中
には吸血鬼になりたがっている奴等とか、奴等の力を頼りにしてるクズもいる。それに肉親が
吸血鬼になったからって、いきなり殺せる人はそう多くないからな……」

 フリッツの後に続けたジョルジュは、ちらりと内藤の方を流し見て、すぐ視線を元に戻す。

(+゚∀゚)「それに、連中を殺す力を持っている人間自体、殆ど宝石みたいに貴重なんだ。何しろ、
ほら、吸血鬼は強いから。普通の人は、もう家に閉じこもって震えるしか出来ない。
 そうして緩慢に進行して行く崩壊は、気付かぬ内に何もかも終わらせてしまうだろう。

 ――――狂っているんだよ。この街は」

232 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:27:05.91 ID:n4Y0plzf0
( ^ω^)「話が長いお。三行で説明するお」

(・∀・メ)「つまり    ・吸血鬼が沢山いて人を殺し捲っている
             ・吸血鬼は殺さないと駄目だから殺してるが人手不足
             ・だからお前等も一緒に参加汁      って事だ」

( ^ω^)「よくわかtt」 Σξ;゚听)ξ「って、最後のちょっと待てええぇ!!!」

 さらりとお前等も命を賭けろと言われて、ツンが凄まじいツッコミを入れた。

ξ;゚听)ξ「最後のおかしいでしょ! そんなの一言も言ってなかったじゃない!」

(・∀・メ)「そっか? まぁ、どうせ言う積もりだったんだから、後でも先でも変わんねーよ」

(;+゚∀゚)「強引過ぎると思いますけど……まぁ、その通りですからいいんですが」

 説明の仕方に難色を示しているが、どうやらジョルジュも似たような考えであるらしい。

ξ゚听)ξ「ジョルジュくんまで! 無理に決まってるでしょうが! 私達はただの人間よ!」

(;^ω^)「ちょwwwおちけつwwww」 (;+゚∀゚)「ちょwwww揺らすなwwwww」

 がくんがくんと揺らされて死にそうになりながら、ジョルジュは椅子に凭れ掛かった。

(;+゚∀゚)「はぁ……だから、最初に言っただろ。聞いたら、もう後戻りは出来ないって。大体だな
ぁ、ここまで聞いて、今更知らん振りなんて出来るのか? 無理だろ、普通に」

ξ;゚听)ξ「それは、まぁ……でも、私はただの人間よ。あんなのとは戦えないわよッ」

(+゚∀゚)「ん? いや、この部屋に居る人間って、フリッツさんだけじゃん」

233 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:27:35.49 ID:n4Y0plzf0
( ^ω^)ξ゚听)ξ「は?」 (+゚∀゚)「あ、でも内藤は人間、かなぁ。微妙だと思うけど」

 ぶつぶつと何かを呟きながら、ジョルジュはホワイトボードに「Dhampir」と書き足した。

(・∀・メ)「あぁ、やっぱりそっちのちんまい子は、ダンピールだったのか」

(+゚∀゚)「カレンさんが血液検査した結果、そういう事になったらしいです。瞳も赤いし」

 勝手に話を進めるフリッツとジョルジュに、ツンとブーンが狼狽した表情で訊ねた。

ξ;゚听)ξ「ダンピール……って、何?」 (;^ω^)「ツンってダンピールだったのかお」

 顔を見合わせる。ジョルジュはそんな二人を興味深げに眺めてから、

(+゚∀゚)「じゃ、内藤に説明を任せる」 (;^ω^)「ちょwwwwマジかwwww」

ξ#゚听)ξ「いいからダンピールって何!」 (;^ω^)「お、怒んないでほしいお……」

 内藤は今直ぐにでも殴り掛かって来そうなツンの方を向き、簡単な説明を行う。

( ^ω^)「簡単に言うと、吸血鬼と人間の間に生まれた子供の事だお。僕が見た話では、大概
、吸血鬼の父親と人間の母を持つキャラが多かったハズだお」

(+゚∀゚)「ジプシーの伝説では、吸血鬼となった男は自分の妻と性交したいという強い欲求を抱
き、その結果生まれるのがダンピールだって話だが――――連中は器に似合わない力を手
に入れたせいで、本来抑えるべき欲求や欲望を、そのまま表に出してしまうんだろうな。実際、
吸血鬼にレイプされた女の人がダンピールを生むって話は、よく聞くんだけど」

(・∀・メ)「ま……そういう事だ。クソみてぇな話だが、別にお前さんは悪くない」

234 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:28:04.49 ID:n4Y0plzf0
 ツンは何か反論しようとしたが、思い当たるフシがあるのか、結局何も言わなかった。

ξ゚听)ξ「確かに……母さんは、父親の話を一度もした事が無いわ。それに、一箇所に留まら
ず、まるで逃げるようにあちこちを転々としていたのを覚えてる」

(+゚∀゚)「まぁ、普通、吸血鬼と人間の間に生まれた子供は、忌み嫌われるからな。正体がバレ
る前に引っ越すのは妥当だと思う。えっと……それも一つの選択って意味で」

 ジョルジュは何処と無く遠慮するように答えた。ちらり、とフリッツの方を見る。

(・∀・メ)「続けろよ。オレは大丈夫だから」 (+゚∀゚)「そうですか……ツンさん」

ξ゚听)ξ「えぇ。母の実家は裕福で、そういうお金はあったの。といっても殆ど絶縁状態で……
と言うか、母さんが縁を切ろうとしてたみたい。迷惑、掛けたくないって」

( ^ω^)「……大丈夫かお? 顔色が悪いお」 ξ゚听)ξ「……えぇ、大丈夫」

 内藤は俯き加減のツンの背中を軽くさすった。確かに、自分は母親がレイプされて生まれた
子供なのだ、と言われれば(特に女の子からすれば)ショックだろう。

(;+゚∀゚)「あの……でも、まだツンさんのお父さんがそういう酷い奴だったとは……」

ξ゚听)ξ「苦労してる母さんを放って置くだけで、充分酷いわよ」 (・∀・メ)「……」

ξ゚听)ξ「母さんは、今から二年ぐらい前に亡くなったわ。心労が祟ったのね……結局、最後
まで父親の事は言わなかった。言ったら、私が悲しむと思ったのかも。そうして私は母さんの
実家で暫く暮らしていたんだけど。一年前、手紙が来たの」

(+゚∀゚)「手紙……って、父親から!?」 ξ゚听)ξ「手紙にはそう書いてあった」

235 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:28:50.39 ID:n4Y0plzf0
ξ゚听)ξ「今まで放っておいてすまなかったとか、母さんには謝っても謝り切れないとか。それ
で、今ニューヨークに居るから、来て欲しいんだって。お祖父様には反対されたけど、何とか説
得したのよ。赦す積もりは無いけど、恨み言の一つでも言う積もりで」

(・∀・メ)「そ、それで? その後、連絡は?」 ( ^ω^)「ツンにそんな過去が……」

ξ゚听)ξ「ニューソークに転校してから、何度も手紙は来たわ。会いたいけど、事情があって
会えないって。それじゃ気が済まなくて街を探したけど、見付からなかった」

( ^ω^)「もしかして、この間外に出てたのは……その、お父さんを探してたのかお?」

ξ゚听)ξ「そうよ……でも、今思えば、見付からなくて正解だったかもしれないわね」

 ツンのどこか投げやりな言葉に、内藤とジョルジュ、フリッツは顔を見合わせた。美少女のど
こか影のある表情と言うのは、何時だって男を翻弄するものだ。

(;+゚∀゚)「うーん……やっぱ、アレ、ですかね?」 (・∀・メ;)「アレ、だよなぁ……」

( ^ω^)「あれって何だお?」 ξ゚听)ξ「父の事を、何か知っているの?」

 ジョルジュとフリッツは若干躊躇っていたが、やがて壁に貼ってあった一枚の写真を外すと、
内藤とツンの居る机の上に置いた。そこには、黒髪を後ろに撫で付けた一人の若い紳士が、何
やら若い婦人と会話をしている様子が映し出されている。

(・∀・メ)「一ヶ月前に撮られたある吸血鬼の写真だ。撮った奴はこの数時間後に死んだ」

(+゚∀゚)「名前はコンラッド=ヴァルカン。元々はロサンゼルスに居た奴だけど、最近、ニューヨ
ーク一帯を納めていたドラゴネッティの一派が死んで、こっちに移ってきた」

ξ゚听)ξ「……これ、もしかして」 (+゚∀゚)「……多分。これがツンさんの父親だと思う」

236 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:29:27.72 ID:n4Y0plzf0
(・∀・メ)「根拠は二つある。ジョルジュ、説明」

(+゚∀゚)「えーとですね。一つは、時期が重なっていると言う事。ツンさんのお母さんがツンさん
を受胎した日――――えっと、誕生日から逆算したんですが」

( ^ω^)「何でツンの誕生日を知ってるんだお?」 (+゚∀゚)「ツンさんの友達から」

( ^ω^)「そういうのって個人情報じゃないのかお……」 ξ゚听)ξ「…………それで」

(+゚∀゚)「とにかく、ツンさんが母胎に宿った時期に、コンラッドがフランスで目撃されてる。確か
ツンさんって、フランスの寒村で生まれたんだよね?」

(;^ω^)「そ、そんな事まで知ってるのかお」 ξ゚听)ξ「…………で?」

(+゚∀゚)「奴が場所はパリの辺りだって聞いてるけど――――」

 とはいえ、昔とは違って交通機関の発達した現代である。別にそのぐらいの距離はすぐに移
動出来るだろうから、パリからやや離れたツンの故郷に、奴が居た可能性は少なくない。

(・∀・メ)「それにこいつがニューヨークにやって来たのも、お前さんの"親父"とやらがニューヨ
ークに居るって手紙を寄越した、丁度その辺りだ。ここも重なっている」

( ^ω^)「でも、そんなのは偶然かもしれないお。単なる状況証拠だお」

(・∀・メ)「そうともいえるけどな。そこで奴がこの街に来た動機ってのが、次の根拠だ」

 フリッツが顎で指示すると、ジョルジュは頷いて部屋を暗くした。ホワイトボードを退けて白い
スクリーンを下ろし、プロジェクターのスイッチを入れる。
 ジョルジュがPCを操作して投射したのは、何やらCGで作成されたムービーで、遺跡のような
場所で行われている。見た感じでは、何らかの儀式であるらしい。

237 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:30:09.23 ID:n4Y0plzf0
ξ゚听)ξ「これは……」 ( ^ω^)「何なんだお。何だか……厭な感じだお」

(+゚∀゚)「ニューヨークの吸血鬼が信奉する闇の聖書ってのがあってな。そいつに書かれている
古代の儀式で、何でも血の神マグラってのを降臨させるものらしい」

(・∀・メ)「連中の神ってのは要するに悪魔なんだがな。ま、とにかくこのイカレた儀式をやっちま
ったフロストってのが、ドラゴネッティ達を殺した張本人だと。死んだけどな」

ξ゚听)ξ「ドラゴネッティは前にニューヨークを治めていた吸血鬼で、そいつが居なくなったか
らコンラッドが来た――――これが、私の父にどう関係があるって言うの?」

(+゚∀゚)「まぁ、話は最後まで聞いてくれ。とにかく、この血の神マグラっが本気になれば、このニ
ューヨークを滅ぼすぐらいの事は出来たらしい。この時はまだ血で出来たモンスターみたいな
のだったから、血液凝固剤ってのを使って殺したんだけど……尤も、殺したのはフロストだけ
で、マグラは"戻った"――――魔界だか異界だか、どこかは知らない――――だけだ」

(・∀・メ)「ただなぁ……最近、どうもこの儀式の事が書かれた聖書が、改竄されていた可能性が
浮上してきてな。フロストは儀式の手順を間違えていたフシがあるんだ」

( ^ω^)「ちょっと待つお。吸血鬼の聖書なんてモノがあるなら、きっと大切に保管されていた筈
だお。誰にも気付かれずに改竄する事なんて不可能じゃないのかお?」

(+゚∀゚)「だからさ。そうして大切に保管される前に、改竄したって事だと思う」

(;^ω^)「それって、どのぐらい昔だお」 (+゚∀゚)「さあね。千年以上前には違いない」

(・∀・メ)「誰が改竄したかは不明。しかし、オレ達は改竄前の正しい儀式の情報を手にした」

(+゚∀゚)「血の神マグラを降ろすのに必要なのは、人と吸血鬼の血を受けた生贄に、長生種を十
二使徒と同じ数揃えれば良い筈だった。でも、本当は違ったんだ」

238 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:30:30.96 ID:n4Y0plzf0
(+゚∀゚)「この時使われた生贄は、母親が吸血鬼に噛まれて遺伝子が変異したダンピールの亜
種だった。でも、実際に必要なのは吸血鬼と人の親を持つ"正しい"ダンピールだった」

(・∀・メ)「しかもダンピールなら何でもいいんじゃない。この儀式の主役――――マグラを降ろ
すべき人物の血を受けていなければ、本物の"神"は降りてこないんだと」

ξ゚听)ξ「えっと……段々話がこんがらがってきたんだけど」

(+゚∀゚)「コンラッドは、この儀式を正しい形でもう一度やろうとしている。聖書には一九九九年の
日食の日に行うって書いてあったが、本来の年は今年――――そして日食の日では無く、今
から十日後って決められているんだ。今から十日後は何月何日だ、内藤」

( ^ω^)「十二月二十五日――――」 ξ;゚听)ξ「クリスマス?」

(・∀・メ)「つまりコンラッドは、この時のためにお前を呼んだって事だ。生贄にする為に」

 ツンが愕然とした表情を浮かべる。先刻から衝撃の事実が連続し、最後に自分がこの街の
運命を握ると言われたら……まぁ、普通はそうなってしまうだろう。
 内藤はそんな彼女の様子を見ている事が出来ず、思わず口を開いていた。

( ^ω^)「まだだお。それだけなら、完全にコンラッドがツンの父とは言えないお!」

(+゚∀゚)「そうだよ。こんなのは所詮推測だ。でも、それはこれから判る」 ( ^ω^)「?」

ξ゚听)ξ「……儀式まで十日も無いのよ。奴が私の父なら、そろそろ近付いてくる筈よ」

( ^ω^)「!!!!!」 (+゚∀゚)「そういう事。その時、本当の事が判るだろう」

(・∀・メ)「……注意するんだな、嬢ちゃん。奴は強いだけじゃなく、反吐が出るほど賢しい」
240 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:33:29.89 ID:n4Y0plzf0

 今にも倒れそうなぐらいツンを横目に、内藤は唯黙し、じっと考えていた。
 彼女はこんな顔をするべきでは無い――――実の娘を悲しませる奴が、肉親とは思えない。
こんな父親なら自分だって要らない。むしろ殺したいと

(+゚∀゚)「フリッツさん。悪いんですけど、彼女に何か食べさせてやってください」

 ジョルジュの台詞が、内藤の危険な考えを断ち切った。

 ――――危ない危ない。流石にそこまで立ち入るのはプライベートの侵害だ。

(・∀・メ)「……あぁ、判った。確かまだカレンの作ったスープが残ってた筈だからな」

ξ||゚听)ξ「…………」 (;^ω^)「あ、あの、僕も一緒に……」

 退出していくフリッツとツンについていこうとする内藤の腕を、ジョルジュが掴んだ。

(+゚∀゚)「内藤は少し残ってくれ。自分が何者なのか、知りたいだろう?」

(;^ω^)「で、でも……こんな危ない感じ人に、ツンを任せたくないお」

(+゚∀゚)「大丈夫だよ。この人、ロリっ子には起たないから」

(・∀・メ;)「ちょwwwヒデェwww」

 あまり大っぴらに言えない事を普通に言って、ジョルジュは二人を追い出した。後には、心配
そうにそれを見送る内藤と、内藤の横顔を眺めるジョルジュだけが残される。
242 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:37:35.54 ID:n4Y0plzf0
(+゚∀゚)「……フリッツさんってね。昔はダンピールの妹と一緒に仕事をしてたんだって」

 唐突に、独り言のように言って。ジョルジュは、PCの電源を落とした。カーテンを開けて、既に
暮れ掛けた太陽の赤い光を取り入れる。その眩しさに、内藤は目を細めて、

( ^ω^)「え? でも、あの人はちゃんとした人間……」

(+゚∀゚)「父親違いだよ。とにかく、その妹さんがツンさんみたいに幼女な外見で、さ。だからあの
ぐらいのトシの子は、どうしても妹に重なってほっとけないんだって」

( ^ω^)「ふぅん……じゃあ、任せても大丈夫だお」

 ジョルジュが大丈夫だと言うのだから、ここは信用すべきだろう。


 それより、内藤には幾つか気になる事があった。

( ^ω^)「ジョルジュ達は、コンラッドを狙っているのかお?」

(+゚∀゚)「あぁ……そうだな。大物だし、賞金も多い。奴が死ねば、連中の勢力を減らせる。倒せ
るなら倒すべきだし、どの道、奴があの儀式をするなら、捨て置く事は出来ない」

 探るような口調ではあったが、撤回する積もりは無さそうだった。

( ^ω^)「でも、コンラッドはツンのお父さんで……」

(+゚∀゚)「だとしても、だ。俺達のやる事は変わらない――――」

 謝っておいた方がいいかな、と真面目な顔で訊ねるジョルジュに、内藤は曖昧に笑った。

243 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:39:05.22 ID:n4Y0plzf0
( ^ω^)「……ところで一つ、中々聞けなかった事があるお」 (+゚∀゚)「ん。何?」

( ^ω^)「僕は……昨日の記憶が曖昧なんだお。僕は、一体何をしたんだお?」

 それはずっと気になっていた事だ。内藤の昨晩の記憶は、母親の頭を吹き飛ばした辺りから
曖昧になっている。何発も銃を撃っていた事は、覚えているのだが。
 あぁ、それか。と、どこか軽い調子で言って、ジョルジュは懐から何かの紙を取り出した。

(+゚∀゚)「二十人の若者を射殺した連続殺人犯って事で、警察から指名手配中。つっても、お前
が殺したのは吸血鬼並に危険なジャンキーだったからな。市民からの協力もあまり無く、捜査
は進展していない――――ほら、吸血鬼の事も忙しいみたいだし」

 あっけらかんと言うジョルジュだったが、二十人の人間を殺したと言う事実は重く、内藤の心
を押し潰さんとした。だが、同時に安心している自分が居る。

( ^ω^)「二十人……僕は、それしか殺していなかったのかお?」

 そう。確かにあの時、内藤の周りではそれ以外にも銃を抜いていた者が居た筈だ。彼等にも
引鉄を引いた筈なのに、殺したのはあのジャンキーだけだったのだろうか。

(+゚∀゚)「怪我人とかは結構居るみたいだけど。お前は連中しか殺していないよ」

( ^ω^)「そうかお……でも、僕は二十人も人を殺して……しまったのかお……」

 その重圧に耐え切れず、内藤は机の上につっぷした。その肩を、ジョルジュが軽く叩く。

(+゚∀゚)「でもさ――――スッキリしたろ?」 ( ^ω^)「……それもそうだお」

 切り替えが早いのが自身の利点なのだ、と内藤はあっさりと立ち直った。

244 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:40:56.87 ID:n4Y0plzf0
(+゚∀゚)「大体さぁ、そいつらは内藤に銃口向けてきたんだろ? それなら、正当防衛ってのが成
り立つじゃんか。銃を持つって事は、武器を持つって事は、そういう事だ」

 確かに。人を殺す道具を持つと言う事は、人に殺される事も覚悟しなければならないのだ。覚
悟しなくても、銃を使おうとして返り討ちにあった者は、文句なんて言えない。


( ^ω^)「まぁ、それはいいとして……僕の正体って何なんだお?」

(+゚∀゚)「あぁ、それか。その前に、俺の事も聞きたいんじゃないのか?」


 言われてみて。内藤は、自分が目の前に立つ少年の事を何一つ知らない事に気付いた。つ
ーか、昨日まで普通の高校生で――――親友、だと、思ってたのに。

(#^ω^)「僕を騙していたのかお!」 (+゚∀゚)「そうだ。俺はずっと、キミを騙していたんだ」

 開き直られてしまって、内藤は言葉を失った。それを無視して、ジョルジュは続ける。

(+゚∀゚)「俺はね、内藤。ある国から派遣されてきた、吸血鬼殲滅専門のエージェントだ。ジョル
ジュ長岡って名前も本名じゃない。唯一、顔と年齢は本物だけど」

( ^ω^)「じゃあ、そうやって三年も僕を騙してたのかお?」

(+゚∀゚)「違うよ」 ( ^ω^)「は――――?」

(+゚∀゚)「俺がこの街に来たのは一ヶ月前だ。俺は暗示――――簡単な催眠術みたいとでも―
―――を使って、お前の学校に潜り込んだ。三年なんて、嘘だよ」

245 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:41:46.45 ID:n4Y0plzf0
( ^ω^)「…………嘘、だお。僕とジョルジュは、高校の時に知り合って……」

(+゚∀゚)「じゃあ、聞くけど。俺と出会った時の事とか、一年の頃の行事の思い出とかある?」

 無い訳が無い。そう思って記憶を辿った内藤は――――愕然とした。

 無いのだ。ジョルジュと三年間共に過ごしたと言う事実は認識出来ても、その間に何があっ
たのか、具体的に思い出す事が出来ない。必死に頭を捻っても、何も出ない。

(+゚∀゚)「ほらね。俺の暗示は、そういう"都合の悪い事実"を無意識下で考えないようにするタイ
プだから、気付かなかったんだろうけど。今は抵抗力が出来て、俺の暗示が効かなくなってい
るみたいだから……それがおかしいって、気付けるだろう?」

( ^ω^)「……なんで、そんな事をしたんだお……そうやって、僕を騙したのかお?」

(+゚∀゚)「うん。まぁ、一つ言わせて貰えばね。俺が使う暗示の術は、特殊なタイプでね。掛けら
れた人は、自分の中でもっとも自然な役割を俺に与えるのさ」

 寂しそうに笑うジョルジュは、内藤から少し目を逸らした。痛々しく、どこか哀しく。

(+゚∀゚)「つまり、俺に親友と言う役割を与えたのは、キミ自身なんだ。本来ならもう少し関わり
の薄い役にする筈なのに、どうしてそんな親しい間柄にしたのかは判らないけど」

 内藤を責めるでもなく、申し訳ないと思うでもなく。ジョルジュは唯只管淡々と話している。

( ^ω^)「……でも、その役割を否定する事は出来た筈だお。暗示を掛け直すとか……」

(+゚∀゚)「最初はそうしようと思ったんだけどね……なんか、放っておけなくて。なんか、こう、例
え嘘でも、友情って言うものが何なのか、知っておいて欲しかった。偽善だって判ってるけど、
そうする事で、せめてこの嘘を償う事が出来ないかと思ったんだ――――」

246 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:43:50.56 ID:n4Y0plzf0
 ――――気休めだけどな、と。

 そこまで一息に言い切って、ジョルジュは黙り込んだ。
 流石にそんな言い方をされては、内藤も掛ける言葉が見当たらない。

 ――――彼が嘘を突くのが嫌いだって事は、ずっと前から知っている。

(+゚∀゚)「……怒ってる、だろ? 別にいいよ。罵倒ぐらいは受け入れる」

 無感情を装いながら呟くジョルジュの声に、内藤は魂が揺らぐのを感じた。

 強く握り締めた拳を――――開いて。自分より低い位置にあるジョルジュの頭に乗せる。

( ^ω^)「でも、ジョルジュは僕に人と接する事の大切さを、教えてくれたお。例え嘘だったとし
ても、僕とジョルジュの友情は、確かなものだったお。だから――――」

(+゚∀゚)「内藤……お前は、俺を赦してくれるのか?」

( ^ω^)「……よく判らないお。ショックだったのは確かだけど、怒ってはいないお」

 ジョルジュはその言葉に何か小さく呟くと、窓際から内藤の居る机の方まで歩いて来た。そう
して内藤の正面に立つと、決心を固めるように、内藤の手に触れる。

 その手はひやりと冷たく、しかしずっと触れていると染み出すような温かさがあった。

(+゚∀゚)「内藤……俺は――――」

247 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 01:44:19.49 ID:n4Y0plzf0
(・∀・メ)「おい、お前等! カレンが飯作ったから、とっとと来やg」

 怒号にも似た声を上げて会議室に入って来たフリッツは、室内の状況に声を失くした。

(;+゚∀゚)「………………」 (;^ω^)「………………」 (・∀・メ;)「………………」

 長い長い沈黙。その後、フリッツは軍隊式の綺麗なターンで踵を返した。

(・∀・メ;)「じ、邪魔したな。カレンにはよろしく言っとくから、ゆっくりやれ」

(;+゚∀゚)「ちょwwwwwwねーよwwww誤解、誤解です! 待ってー!」

(・∀・メ;)「いや、人の趣味はそれぞれだから、俺が言う事は何も」

(;+゚∀゚)「俺の話も聞いてくださいよ! そういう趣味は無いって前に何度も」

(・∀・メ;)「そういえばあいつ、バストもあったしな。ほら、おっぱいおっぱいやってろよ」

(;+゚∀゚)「違う違う違う違う違う違うううぅぅぅ!!!! あああぁー、ああぁああぁぁ!」

 大慌てで飛び出したフリッツを、大声を張り上げて追い掛けるジョルジュ。


 そんな二人の背中を見送りながら、内藤はぽつりと呟くのだった。

(;^ω^)「……結局僕の正体って何だったんだお」
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