- 213 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 00:35:59.01 ID:n4Y0plzf0
(+゚∀゚)「けっこー長い話になるからな。トイレとか往きたいなら今の内だぞ」
( ^ω^)「ジョークはいらないお。早く話してほしいんだお」
内藤の辛辣な言葉に、ジョルジュは照れくさそうに頭を掻き、手近の椅子に腰掛ける。
(+゚∀゚)「まず最初に言っておこう。吸血鬼は――――まぁ、お前等は実物を既に見ているんだ
から、言うまでも無いだろうけど――――実在する。これはいいか?」
ツンは数日前に襲われた事を、内藤はそれに加えて自分の母親の顔を思い出していた。
ξ゚听)ξ「えぇ……私達もそれは知ってるわ」 ( ^ω^)「うん。続けてくれだお」
(+゚∀゚)「ふむ。内藤、連中の事はどの程度知ってる? お前ってそういうの詳しいだろ?」
( ^ω^)「詳しいって言っても……普通の人が思っているようなのしか知らんお」
血を吸う鬼。人間より腕力も俊敏性も高く、霧や蝙蝠や狼に姿を変えられて、色々な魔術を
使える。反面、陽光や十字架、銀に対して強い拒否反応を示し、殺害するには白木の杭を心
臓に突き刺すか首を落とすかしかない……内藤が知っているのはこのぐらいだ。
(+゚∀゚)「まぁ、大体そんなトコか」 ξ;゚听)ξ「(……吸血鬼オタクなのね、内藤)」
( ^ω^)「でも、これはフィクションの中の話だお。現実と同じとは限らないお」
(+゚∀゚)「ところがそうでもねーんだよな」 (;^ω^)「どういう事だお?」
(+゚∀゚)「吸血鬼って言うのはな……「何でもあり」なんだよ」
- 214 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 00:36:31.63 ID:n4Y0plzf0
- ( ^ω^)「なんでもあり……って、よく意味が判らないお」
(+゚∀゚)「だからさ。吸血鬼って言うのは――――血を吸う人外って言う以外、殆ど共通点が無
いんだよ。精々、死んだ人間が多いってぐらいの話でさ」
ジョルジュはそう言って、何かを思い出すように虚空を眺めて、再度内藤に向き直った。
(+゚∀゚)「例えば――――十字架だ。あれが効くのと効かないのが居るってのは、映画とか見て
れば判るだろ? 単に棒状の物が交差してるだけの代物を嫌うのも居れば、教会で毎日聖人
の祈りを受けた十字架に突き刺されても生きていられる奴だって居るしさ。
陽光だって同じで、長い間生きている間に克服した奴や、吸血鬼になった当初から効かない
奴もいるし、どれだけ生きてもデイウォーカーになれない奴等も多い。心臓を刺される以外の
攻撃を意に介さない奴は手強いが、首切ったり銀の銃弾で死ぬ奴も少なくない」
( ^ω^)「ちょ、ちょっと待ってくれだお! 吸血鬼ってそんなにいるのかお?」
(+゚∀゚)「ん? あぁ、そうだ。ある社会学者の説によれば、その数、ニューヨークで一万」
一万……どれだけの数かはぴんと来ないが、容易くチャラに出来る数ではあるまい。しかも
これが全世界規模ともなれば……考えた内藤は、軽い眩暈すら覚えた。
ξ゚听)ξ「そんなバケモノが……一体どこからやって来たっていうの……?」
(+゚∀゚)「よく判らないな。どこから来たのか、どうやって生まれたのかは誰も知らず、気が付く
と人類の夜を脅かしていた。その起源は月から来た「アルティメットワン」とも、ワラキアのヴラ
ド=ツェペシュ=ドラキュラとも、諸説入り乱れているし証拠もねぇ。ただ」
ぴたり。何時の間に抜いていたのか、ジョルジュの手には一丁の拳銃が握られていた。
オーストリア製のグロック……型番は不明。同口径のオートマティックの中でも特に装弾数
が多い事と、ポリマーフレームを使っているから非常に軽いと言う点が特徴だ。
- 215 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 00:37:44.87 ID:n4Y0plzf0
- (+゚∀゚)「判っているのは、人間の血を吸うだけではなく、その力に溺れて暴力的で無秩序な行
動を取る連中だって事。連中は社会のガン細胞だ。殺さなけりゃならない」
( ^ω^)「殺すって……物騒な話だお。吸血鬼ってそんなに悪い奴等なのかお?」
(+゚∀゚)「そうか? お前だって、何時喰われるか判らずに怯える日々を送るのは厭だろ」
なじるでも責めるでもなく、ジョルジュはあくまで、淡々と会話を進めた。
(+゚∀゚)「こいつは単純な戦いじゃない……言ってみれば、戦争なんだ。感情は関係無い。この
星の夜を誰が手にするかを賭けた、ある意味では非常に原始的な戦いだ。ヒトを止めたくなき
ゃ、連中を拒絶しなけりゃならない。それこそ――――手前の命を、賭けてでもな」
ジョルジュはグロックを腰のホルスターに戻すと、会議室の入り口に目を向けた。
(・∀・メ)「たまにはいい事言うじゃねーか、ジョルジュよぉ」
背の高いがっしりとしたスラヴ系の白人で、地味な軍用のコートがよく似合っている。皮肉っ
ぽい笑みを浮かべた顔の左側に、引き攣れたような傷があった。
(+゚∀゚)「おかえりなさい、フリッツさん。今日はどうでしたか?」
(・∀・メ)「土産が幾つかあるだけだ。ヤローの足取りは掴めなかったけどな」
そう言ってどかどかと入って来た男――――フリッツは、ツンをちらりと一瞥してから、怯えた
ように彼を見ている内藤を見下ろした。その目に嗜虐的な色が浮かぶ。
(・∀・メ)「オレはフリッツ。フリッツ=ハールマン。ここのハンターの一人だ。よろしくな」
(;^ω^)「な、なんだかよく判らないけど、よろしくだお……」
- 216 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 00:38:28.04 ID:n4Y0plzf0
- 元々いじめられっこ気質の内藤であるから、如何にも相手を見下して悦に入っているような
感じのフリッツに、多少の怯えを禁じ得なかったのも無理は無い。
(+゚∀゚)「おいおい内藤、あんまりビビっちゃダメだよ。この人はねー、いじめっ子だから。少し相
手が弱気になっただけで、すーぐに調子付く超絶にイヤな人なんだ」
(・∀・メ)「余計な事を言うんじゃねーよ。しかし、こんなのがお前と同類とはねぇ」
フリッツはニヤニヤと楽しそうに笑いながら、内藤を値踏みするように眺めていた。と、隣に座
っていたツンが突然立ち上がると、フリッツの前に立ち塞がった。
ξ゚听)ξ「何の積もりか知りませんけどね。内藤くんは、あなたみたいに見た目からして粗暴
な人からそういう好奇の目で見られるのに慣れていないんです。止めてください」
(・∀・メ)「おろ? なんだよ、強気な嬢ちゃんだな。誰だこいつは?」
(+゚∀゚)「内藤の連れです。からかうと火傷しますよ」 ξ#゚听)ξ「火傷って何よ!」
(・∀・メ)「まあまあ落ち着けって。それで、何でこいつを苛めるとお前が困るんだ?」
ξ゚听)ξ「え……? あ、それは、その……」
突然答えに詰まったツンに、フリッツの目は新しいおもちゃを手に入れた子供のようにきらき
らと少しかなりとてもヤらしく輝いていた。ジョルジュが横で頭を抱えている。
(・∀・メ)「オレだって大体事情は知ってるさ。お前さんとそっちの内藤とか言うのが、どのぐらい
の付き合いかってのもな。合計で四時間も一緒に過ごしてない奴を理由も無く庇うには、ちい
いいぃぃぃっとばかし、理由が弱ぇじゃねーかな、と思ってよぉ」
ξ;゚听)ξ「あ……う、あの、その……」 ( ^ω^)「……………………」
- 218 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆2hwVANPeHc :2006/03/18(土) 00:38:50.34 ID:n4Y0plzf0
- ( ^ω^)「止めるお」 (・∀・メ)「あ?」 ( ^ω^)「止めろって言ったお」
内藤は静かにそう呟くと、椅子を立ってフリッツを睨み付けた。背丈は内藤もフリッツも大体同
じぐらいなのだが、内藤の方が横幅があるので大きく見える。
( ^ω^)「無駄話をしている時間は僕らには無いんだお。邪魔するなら帰れだお」
(・∀・メ)「……ふーん……へぇー……なるほどなるほど。いやいや、面白ぇなぁ」
内藤の静かな迫力を真正面から受け止めて、フリッツはむしろ楽しそうに笑っている。この男
はどこか頭がおかしいのではないか、と内藤は少し怖くなったが。
ξ;゚听)ξ「ちょっと、内藤……」 (;+゚∀゚)「二人とも、いい加減落ち着いて下さい」
ツンとジョルジュの静止に、フリッツがひらひらと両手を掲げて一歩退がってみせた。
(・∀・メ)「オーケイ。判った、どっちも苛めるのは止めるよ。これでいいか?」
そう言って会議室から出て行こうとしたフリッツの肩を、ジョルジュががしっと捕まえた。
(+゚∀゚)「ダメですね。講義の邪魔をした罰に、次の項目はあなたが説明しなさい」
(・∀・メ)「はぁ? イヤだよ、面倒な」 (+゚∀゚)「やれって」 (・∀・メ;)「わ、判った」
プレッシャーに圧されて、フリッツが正面の席に立つ。ジョルジュはそれを見届けてから、ホ
ワイトボードの横の位置に席を作って座った。内藤とツンも元の席に戻る。
(・∀・メ)「えー、じゃあ、次は……」 (+゚∀゚)「ハンターの話とニューヨークの事です」
(・∀・メ)「そうか。それじゃ、まずはクソを狩るゴミ処理係の話をするかねぇ」