157 :657 ◆2hwVANPeHc :2006/03/17(金) 22:34:09.03 ID:GS4lQuNU0
 数時間後――――或いは内藤にしてみれば、無限の時間が経過した後。吸血鬼と化した母
親の頭を吹き飛ばした内藤の姿は、大都市ニューヨークの雑踏の中にあった。

 基本的に人込みが嫌いだから、表の通りを歩く事は少ない。それでもこうしてニューヨークタ
イムズの前なんかを歩いているのは、他に往くアテが無かったからか。
 知っている場所なんてタカが知れている。学校、板金工場、近所のスーパー……どれも内藤
を助けてくれる人は居ない。一瞬、ジョルジュやツンの顔が浮かんだが――――浮かんだから
こそ、迷惑を掛けたくなかった内藤は、彼らのところに往くのを、やめたのだ。

 どこか空虚な表情で歩いていく内藤に、ポン引きやキャッチが声を掛けるが、誰も彼も内藤の
普通ではない顔を見ると、悪態をついて離れていくだけ。


 ――――おいおまえおまえだなまたあったな

( ^ω^)「……誰だお?」 言うが早いか、内藤の顔面に強い衝撃が走る。

 ――――どうしたひとにたすけられなきゃなにもできないのか

 目前に佇むにきび面。リーゼントと着込んだ革ジャンが、あんまり似合っていない。

( ^ω^)「痛いお。やめてくれだお。ほうっておいてほしいんだお」

 ――――うるせえだまれにやけてんじゃねえこのうすのろがこのうすのろが

 五月蠅い羽虫のような雑音。耳障りなノイズに、ささくれた神経が余計に苛立ってくる。

( ^ω^)「あんたらのする事はいつも判り易くていいお。安心するお」

 ――――ふざけるなどうていやろうがしねてめえころしてやる
170 :657 ◆2hwVANPeHc :2006/03/17(金) 22:53:31.48 ID:GS4lQuNU0
 殆ど反射的な行動だった。内藤は、目の前の革ジャンの男が懐に手を突っ込むのと同時に、
ズボンに差してあったレイジングブルを抜いて、引鉄を引いていた。
 轟音と共に、革ジャンの頭がぱっと散る。混じり合って挽肉になった血と肉と脳漿と頭蓋骨の
破片が、彼等を迷惑そうに避けていた人々の頭上に降り注ぐ。

( ^ω^)「きれいだお」 (;゚;ж;゚; )「てめぇ、フザケやがってぇ!」

 怒号が聞こえる。頭を失くした革ジャン男に、何人かの仲間が居たのを思い出す。見ると、サ
ブマシンガンが二人にショットガンが一人とナイフが三人、あとは全員拳銃だ。
 倒れ込む革ジャン男の懐に手を差し入れ、中に入っていた銃を取る。ベレッタM92FS、イタリ
ア製の9mmオートで、映画なんかで色んな人がよく使っている。
 腰を屈めて、革ジャンの仲間の射線から逃れる。両手を広げて、銃口を左右に。

⊂二二二( ^ω^)二⊃「ブーンだおー」

 ばららん、どがががん。連続して叩き込まれた.454カスールが、不良達を薙ぎ倒す。
 まぁ、エクスプローダーは無くなったので、柔らかい弾頭部に切れ込みを入れて着弾時の衝
撃を増やしたホローポイントなのだが、それでも充分な威力がある。
 しかも撃ち込まれた四発のカスールに加えて、9mm弾の連射が加わっている。それぞれ、頭
に一発、心臓に三発撃ち、四人斃した。残りは適当に撃ったので、よく判らない。

 悲鳴を上げて、しゃがみ込む人、逃げ惑う人。立ち上がる人の中には、銃を持つ人も居る。

 内藤は弾の尽きたベレッタを捨てて、内藤はレイジングブルのシリンダーを開けた。
 ポケットに手を突っ込む。倉庫の金庫から持ち出したホローポイントが何十発も。

 エジェクターロッドを押し込んで弾薬を捨てると、新たな弾薬を詰めた。空っぽで虚ろな孔が
鈍いプライマーの底で埋まると、自分の心まで落ち着いてくる。

( ^ω^)「オーケイ、みんな。楽しくやろうだお」
158 :657 ◆2hwVANPeHc :2006/03/17(金) 22:36:42.50 ID:GS4lQuNU0
 裏路地を行くブレイドは、かなり焦っていた。先日出会った青年――――×××××の友人
である内藤のアパートが、吸血鬼の襲撃を受けたと聞いたからだ。

 親である吸血鬼――――特に珍しくもないチンピラだったが――――は、何とかL.A.P.D.の突
入部隊に射殺されたものの、彼等は二次被害の可能性を忘れていた。
 封鎖が解かれてすぐに到着したマクマナス兄弟は、そこで新しい被害者を見付けた。突入が
行われてた時点で殺された住人は既に収容されていた筈だから、これはその後に出た死人と
言う事になる。簡単に言えばL.A.P.D.は吸血鬼を一匹殺し損ねていた。

 遅れて中に入った×××××の知らせで、内藤の部屋に吸血鬼の灰が落ちている事が確認
された。彼の家の銃保管金庫が開けられていた事、彼の母親は見付かっていない事も。

( ,' 3 )「母親を殺したのか、内藤……マズイな、こいつは具合が良くない」

 今まで平凡に暮らしていた一般市民が、突然肉親を殺さなければならなくなった。そうした場
合にまともな精神を保っていられるほど、内藤は強い性格では無かった筈だ。
 既に時刻は午後五時を過ぎている。夜の早い冬だ。辺りは既に夜のとばりが降りている。


( ,' 3 )「む……」

 目前から走ってくる何者かの気配を感じて、ブレイドはその場に立ち止まった。腰のホルスタ
ーに収まったイングラムM10"ブレイド"カスタムに、静かに手を掛ける。

(;゚;ж;゚;)「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ――――!」

 路地の闇から現れたのは、パンクファッションをした若い男だった。悲鳴のような呼吸を漏ら
し、こけつまろびつ走ってくるそいつは、銃を所持しているが単なる人間だ。
 一瞬身構えたブレイドだったが、男は銃を持っていない方の手を、必死にこちらへ伸ばしてく
る。どうやら、戦う意志が浮かばないほど、切羽詰っているらしい。

159 :657 ◆2hwVANPeHc :2006/03/17(金) 22:37:10.75 ID:GS4lQuNU0
( ,' 3 )「おい、どうした? 何があった?」

(;゚;ж;゚;)「あ、た、助け――――」

 問い掛けるブレイドを無視し、パンク男は彼の方に向かって手を延ばし掛け、

( ^ω^)「逃がさないお」

 腹に響くような大口径リボルバーの銃声と共に、ピアスだらけの頭を霧散させた。
 砕けた人間の破片がブレイドに降り注ぐ。顔面を手で庇いながら、凶手の姿を見る。

( ^ω^)「ブレイドさん、でしたかお? またお会いしましたお」

 近所の友人に偶然出会った――――そんな調子で言いながら現れたのは、正しくブレイドが
×××××の依頼で探していた、内藤ホライズンその人だった。
 先日出会った時よりも、落ち着いた顔をしている。しかし、真っ赤な返り血を浴びた凄惨な状
態でそんな顔をしていると、むしろその異常性が際立つ。

( ,' 3 )「まさか……お前が修羅に落ちるとは」 ( ^ω^)「知らんお」

 言い放つ。同時、内藤の右手が跳ね上がり、レイジングブルのトリガーが引かれた。
 凄まじいマズルフラッシュの中で発射されたホローポイントは、過たずブレイドの身体を護る
防弾着に着弾、しかしその衝撃は予想外に強く、ブレイドの身体を揺らす。

( ,' 3 )「チィッ……!」 ( ^ω^)「――――――――」

 内藤の足が軽く蹴られ、砂埃が舞う。目潰しの向こうから突き出された銃剣の切先を、ブレイ
ドは咄嗟に抜き放った背中の長剣――――彼の名前の由来――――で弾く。
 飛び退ったブレイドは、着地と同時に横方向へとステップ。連続で撃ち込まれた銃弾を全て
避け切り、懐から抜き放った銀のブーメランを投げ付けた。

160 :657 ◆2hwVANPeHc :2006/03/17(金) 22:38:31.96 ID:GS4lQuNU0
( ^ω^)「邪魔だお」

 発砲音が響く。内藤は、自分の首を切り落としに来た蝙蝠型のブーメランを、視界に入れる
前に左手で抜いた、拾い物のトカレフTT-33で撃墜したのである。
 内藤は一発でジャムを起こしたトカレフを投げ捨て、空いた左手をポケットに入れる。新しく取
り出した弾薬をシリンダーに再装填、ブレイドに向き直った。

 ブレイドの姿が、一瞬掻き消える。途端、内藤は展開したレイジングブルの銃剣で、己の腹目
掛けて差し込まれた剣先を、皮一枚のところで受け止めていた。

( ,' 3 )「――――クッ。甘いんだよ」

 ブレイドの顔に笑みが浮かぶ。内藤はそこで初めて、彼が右手だけで剣を操っている事に気
が付いた。残りの左手の行方を探す内藤の眉間に、銃口が押し当てられる。
 ばららら、と連続で撃ち込まれた9mm×19法儀済銀製弾を、内藤は首を僅かに逸らすだけで
避けた。更に逸らした首と共に身体を倒し、叩き込まれた膝蹴りをかわす。

 幾度と無く繰り出されるブレイドの剣を、内藤は銃剣の切っ先で捌いた。互いの眉間を目掛け
て突き出されたイングラムとレイジングブルがぶつかり、絡まって、弾かれる。

 既にブレイドの動きは、人の領域から幾らか外れ始めている。にも関わらず、内藤はその動
きに追随し、或いは超越している。それは、単なる一般人の動きではない。


( ,' 3 )「ふんっ……やるじゃないか、内藤!」 ( ^ω^)「どうもだお」

 ブレイドの心からの賞賛を素っ気無い言葉で跳ね除け、内藤のレイジングブルはブレイドの
剣を弾いて、首筋を狙う。返し刀で何とかそれを弾いて後退した。

161 :657 ◆2hwVANPeHc :2006/03/17(金) 22:41:20.47 ID:GS4lQuNU0
( ,' 3 )「仕方が無い……こいつは使いたくなかったが……!」

 呟いて、ブレイドは拳に取り付けられた装置のスイッチを、軽く握り込む事で入れる。軽やか
な音を立てて、装置はブレイドの手の甲を覆うような形で展開した。

 それは彼の協力者が作った武器の一つで、相手を殴りつけると無針の注射器が作動、内部
に装填された薬物を注射する。本来は吸血鬼退治に使われる血液凝固剤を装填するのだが、
こうなる事をある程度予想していたため、今回は麻酔薬を詰めていた。

 とはいえ、ブレイドがこれを使いたくなかったのにも理由がある。使用されている麻酔の量が
殆ど致死量に近く、打ち込まれた相手がショック死する可能性があったのだ。
 ×××××は大丈夫だと言ったし、その根拠もまともだったが――――やはり躊躇われる。

( ,' 3 )「しかし、止むを得んか……」 ( ^ω^)「何をぶつぶつ言ってるお」

 内藤は弾が尽きたレイジングブルを、ナイフ代わりとして使っていた。一見して狂っているよう
に見えて、その実、弾薬装填のタイミングを見計らえる程度には冷静だ。
 ブレイドは覚悟を決めた。既に「防御に徹する」だけでは、彼を倒す事は出来ない。かと言っ
て殺す訳にも往かない以上、この麻酔薬を打ち込むしか無いだろう。

( ,' 3 )「喰らえ、内藤おおおぉ!」 ( ^ω^)「こんなの屁でも無いお」

 怒号と共に突き出した切先を、内藤は何時の間にか手にしていた鉄パイプで受け止めようと
した。だが、そうして内藤の狙いを逸らす事が、そもそもの狙いである。

( ,' 3 )「掛かったな? 眠れ!」 ( ^ω^)「――――――――ッ!」

 薬品射出ナックルの針が、内藤の胴を目掛けて打ち込まれる。既に零距離でのパンチだ、吸
血鬼でも無い限り、避ける事は絶対に不可能――――そう思った。

162 :657 ◆2hwVANPeHc :2006/03/17(金) 22:41:58.61 ID:GS4lQuNU0
 だが、内藤はここで、ブレイドの予想の斜め上を往った。

 内藤はその拳が必殺である事を瞬時に悟り――――切先を受け止めんとした鉄パイプの軌
道を強引に捻じ曲げ、なんとナックルを破壊するのに使ってしまったのである。
 それだけならば問題は無い。しかし、ブレイドは同時に剣先を叩き込んでいたのだ。本来鉄パ
イプで受ける筈だったその剣を、内藤は避ける事が出来なかった。

( ^ω^)「――――つぅッ……」 ( ,' 3 )「な、ば、バカかお前は!」

 ブレイドの怒声も無理は無い。何しろ内藤の腹には、ブレイドが突き出した剣が、半ばほどま
で埋まっていた。人間ではなくても、充分に致命傷である。
 しかしブレイドは、内藤の心配をしている場合では無かったと、すぐに気付かされる。

 一瞬の隙を作ったブレイドの腹に、内藤の蹴りが直撃する。衝撃よりもブレイドの身体を吹き
飛ばすのを優先した一撃は、互いの距離を五メートルほど引き離す。

( ,' 3 )「――――――――ぬぅ……」

 ブレイドは、首筋に感じた違和感に、思わず呻き声を上げた。からん、と音を立てて転がった
のは、その部分だけは無事だったナックルの注射器の部分であった。
 狙った訳では無い。おそらく。単に幸運の女神の微笑んだのが、内藤だっただけの事。

 しかし、ブレイドは自分の目を疑った。回避のための打撃が、起死回生の一撃になるとは。

 内藤が腹に剣を突き刺したまま、銃弾を取り替えようとシリンダーを開いている。その光景を
眺めるブレイドは、既に動く事もままならなくなっていた。
 多少の薬物ならすぐに分解する事が出来る。しかし致死量ぎりぎりまで濃度を高くした麻酔
薬を、数秒で中和してしまえるほど、ブレイドは人間を止めていなかった。

( ,' 3 )「くくくっ……クソッ、オレも焼きが回ったか……」

163 :657 ◆2hwVANPeHc :2006/03/17(金) 22:42:39.15 ID:GS4lQuNU0
 腹に剣が突き刺さっているためか、内藤はかなり作業が遅かった。それでも、決して長くは無
い時間を掛けて、内藤はレイジングブルの弾薬を籠め直した。
 無言のまま、その銃口がブレイドの眉間に押し付けられる。ハンマーを起こして、引鉄に指を
掛ける。そうして、かつて自分を助けた男を、内藤は殺し――――


 「――――ブレイドさん! 内藤! テメェ、何やってんだ!」

 執行されようとした凶行は、突如路地裏に響いた声に止められる。ハスキーな声を張り上げ
て走ってくるのは、フードを目深に被ったロングコートの背の低い男だった。
 その手に握られているのが鋭いナイフであるのを確認して、内藤は狙いをそちらに変えた。し
かし相手もそれに気付いてか、トリガーが引かれるのと同時にナイフを投げる。

 しゅっ、と鋭い音。ごとり、と音を立てて地面に落ちるレイジングブルを、内藤はそこにくっつい
た自分の手諸共拾い上げた。歯を使って張り付いた指を剥がす。
 アスファルトに血の跡を残し、投げられたナイフに腕を切り落とされた内藤は、腹にブレイドの
刀を突き刺したまま、踵を返してその場から立ち去った。


 内藤のレイジングブルから放たれた銃弾は、彼の頭のフードを吹き飛ばすだけに留まった。
あと数センチもズレていたら、彼は首から上を失っていた事だろう。
 男にしては長い黒髪が揺れている。ブレイドを介抱しようと座り込んだその左頬には、十字架
の刺青が入っている。顔立ちは女のようで、身体付きも細い。

(;+゚∀゚)「だ、大丈夫ですか、ブレイドさん……怪我してるんですか?」

( ,' 3 )「自分のミスで、麻酔針を刺しちまっただけさ。それより、お前は内藤を……」

 その言葉に些か戸惑いつも、結局はブレイドに促され、少年――――ジョルジュ長岡は、内
藤ホライズンの後を追った。そのまま気を失ったブレイドを残して。

164 :657 ◆2hwVANPeHc :2006/03/17(金) 22:43:06.17 ID:GS4lQuNU0
 何処をどう走ったのか。内藤は後になっても、よく思い出せなかった。路地を抜け、人込みを
掻き分けて、そして路地裏に入って、ビルの壁にもたれている。


 突然現れたコートの男は、ブレイドを助けるように、内藤の胴体と言うか心臓目掛けてナイフ
を投げた。カウンターで銃弾を放ったが、恐らく当たらなかっただろう。

 内藤はナイフを避けた。避けたが、避け切れなかった。路地は狭く、ナイフは速かった。
 左手に握っていた銃が落ちたと思ったら、左手首から先も一緒に落ちていた。


 自分の肉や骨の断面を見るのは初めてだった。血が噴き出したので止血したが、あっと言う
間に血が抜けていく感触に、内藤は恐怖を感じて、幾らか正気づいた。

 切断面よりやや上を、コートから抜いた紐で縛っているが、あまり意味は無い。
 まだ内藤の腹には、ブレイドの剣が突き刺さっている。こっちの方が重傷だ。


 痛みよりも寒さが先行する――――そう思った内藤の頬に、白い雪が張り付いていた。

( ^ω^)「雪かお……とても綺麗だお……」

 思わず、そんな言葉が零れる。少なくともソレは、先刻まで命を奪っていた内藤の口調と比べ
れば、幾分穏やかで彼の常態に近いものではあった。

 腹に刺さった剣を抜くか迷ったが、止めておいた。今抜いたら突然血が噴き出したりして、却
って危ないかもしれないと言うのを何となく思い出したのだ。
 病院に往くべきだと思うのだが、そんな事をすれば自分が警察に捕まってしまう――――あ
れだけ沢山の人を殺しているのだ。もう指名手配されているかもしれない。

165 :657 ◆2hwVANPeHc :2006/03/17(金) 22:43:28.48 ID:GS4lQuNU0
( ^ω^)「もう疲れたお、パトラッシュ……パトラッシュって何だお……」

 内藤はそう呟いて、ずるずると、壁に血の跡を残して腰を降ろそうと――――


ξ゚听)ξ「……誰? ねぇ、誰かそこにいるの?」

 どことなく、聞きなれた声がして。内藤は、閉じ掛ける目蓋を強引に抉じ開けた。

 それはツンだった。

 ジョルジュよりも長い黒髪を靡かせて、こちらに走ってくる。
 手には安い合皮の傘が握られていて、それもまた服や髪と同じく黒だった。

ξ゚听)ξ「内藤……? 内藤くんなの!? ちょっと、どうしたのよ、一体!」

 駆け寄ってくるツンの瞳が、何故か赤い。吸血鬼なのか、とも思ったが、どうも違う。

( ^ω^)「やぁ、ツンさん……どうしたんだお、血相変えて……」

ξ゚听)ξ「バカ! お、おなかに剣が刺さってるのよ! 喋っちゃだめよ!」

 切羽詰まったように叫んで、屈み込むツン。その赤い瞳が、内藤の瞳を見詰めてくる。

 ――――あれ? 前にもこんな事があったかな。あの時、僕はどうしたんだっけ?
 赤い瞳に見つめられて、どうしたらいいか、判らなくなった僕は……

 あぁ、そうか ξ゚听)ξ「内藤くん?」 レイジングブルが持ち上がる ξ゚听)ξ「……何してる
の」 少女の眉間にポイント ξ゚听)ξ「やめ」 ……トリガー。
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