295 :下痢の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/23(木) 23:42:47.03 ID:sTWY5WZU0
 慌てるジョルジュの台詞を掻い摘んで解釈して、内藤は一言で纏めた。

(;^ω^)「詰まり、生贄を殺したところで儀式は止まらない、と?」

(;+゚∀゚)『そ、そういう事らしい。どうしよう』

 どうしようと言われても、やる事はあまり変わらない。

( ^ω^)「結局、コンラッドぶっ殺すかツン助け出すかすれば、どちらにしろ儀式は失敗だお。
取り敢えず、ジョルジュはなるべく早くこっちまで来て欲しいお」

(;+゚∀゚)『わ、判った。なるべく急いでいくように、する』

( ^ω^)「任せるお。線路を道なりに真っ直ぐだけど……」

(;+゚∀゚)『だ、だけど?』 (;^ω^)「凄く長いお。走っても追いつけるかどうか……」

(+゚∀゚)『あ、それなら心配すんな。俺は足には自信がある。すぐ追いつくよ』

(;^ω^)「あ、あと警備員が沢山」 (+゚∀゚)『じゃあな。またあとで』

 全部言うより先に通信が切れた。内藤は一瞬心配したが……ジョルジュが「心配するな」と言
ったのだ。心配せず、先に往ってしまうのが良いだろうと思い直す。



(+゚∀゚)「さーて……久し振りにアレやるか。でも、結構魔力喰うんだよなぁ……」

 その頃ジョルジュは、何故か服を脱いでいた。ストリップショーでは無い。

296 :下痢の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/23(木) 23:43:37.67 ID:sTWY5WZU0
 エレベーターの階層表示は、一番最初と最後に数字があり、その間に現在深度を示す点が
幾つか並んでいるものだ。そしてその点は、最後の数字に近付いている。

( ^ω^)「ふー……そろそろかお」

 結局、ゴルフバッグは置いていく事にした。中に入っているのが悉く刀剣ばかりで、内藤自身
に剣術スキルは無い以上、デッドウェイトにしかならないと判断しての事だ。
 だが、既に銃器が今手にしているレイジングブルマキシ――――と、腰のホルスターに佩い
たシグザウエルのみとなると、かなり心細いものがある。特に速射性のあるものがまるで無い
となると、多数の敵に囲まれた場合は返り討ちに合いかねない。

(;^ω^)「ま、ここまで来たら腹をくくるお」

 チン、と音がして、エレベーターが最下層まで到着した事を告げる。扉が開くのを待つ―――
―同時、レイジングブルの銃口を正面に向け、トリガーを弾いた。
 捻りも無く飛び掛かってきた吸血鬼の頭が吹き飛び、肉片が灰になって消える。正面には警
備兵らしき連中が銃を構えている。距離は五メートルも無い。目と鼻の先だ。

 「し、しまった!」

(#^ω^)「おうらぁっ!」

 レイジングブルを左手に持ち替えながら、右手のセイフティを外す。拳を握り込んで飛び出し
た仕込み刀を思い切り突き出し、一番手近に居た警備兵の心臓を貫く。
 血を吐いて息絶えた警備兵が、こちら側に倒れ込んで来る。仕込み刀を抜いて警備兵の首
に右腕を回し、その肩からレイジングブルを突き出して、即席の盾とする。

 「くそぉっ! 撃て、撃てえぇっ!」 「弾が通らねえぞ!」

 防弾チョッキを着込んだ警備兵の身体は、大概の銃弾から内藤の身を守っていた。

297 :下痢の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/23(木) 23:44:04.18 ID:sTWY5WZU0
 エレベーターを抜けた先は、また通路だった。少し進んだ先が突き当たりで、右と左に分か
れるようになっている。敵はその角を盾にして撃ってきていた。

( ^ω^)「普通に撃ったら当たらないお……なら!」

 内藤はレイジングブルの銃口を正面の突き当たりに向けると、角度をつけて撃った。内藤の
力で強化されたエクスプローダーの炎は、角に立つ警備兵達の身体まで燃やす。

 「ぐああああぁぁっ!」 「何だこいつは!」 「熱い、熱いいいぃっ!」

 悲鳴と共に飛び出して来た警備兵の頭を吹き飛ばし、内藤は盾にした死体から仕込み刀を
抜いた。走りながら血を払い、拳を開いて刀身を収納、セイフティもかけてしまう。
 そうして自由になった右腕を腰のホルスターに伸ばし、シグザウエルを抜いて走る。

(#^ω^)「はぁっ!」

 角から飛び出しつつ、踵を捻って回転。両側で火を消そうと躍起になっていた二人の警備兵
にポイントし、躊躇いもせずにトリガーを弾く。
 右手に軽い衝撃、左手に強い衝撃が響き、片方は呆気なく、もう片方は大砲に撃たれたかの
ように吹っ飛び、動かなくなった。人肉を焼く酷い臭いが立ち込める。

(;^ω^)「っていうか凄い臭いお……」

 壁に着弾した炎は既に消えているが、死体は変わらずに燃え続けている。天井を見上げると
やはりスプリンクラーのようなものがあるから、その内作動するだろう。

( ^ω^)「お?」

 天井に監視カメラらしきものを見付けた。明らかにこちらを睨んでいる。
 取り敢えず、ブイサインをしておく。そうして、内藤は適当な方向に駆け出した。

298 :下痢の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/23(木) 23:44:33.68 ID:sTWY5WZU0
( ´∀`)「全く……よくここまで大暴れしてくれるね」

 監視カメラの映像を眺めていたコンラッド=ヴァルカンは、思わず苦笑した。

 そこはこの儀式場に設置された全ての機材を管理する、コントロールルームだった。中に居
るのが全て吸血鬼なのは、作業効率を考慮しての事だろう。血液さえ摂れば不眠不休で活動
出来るし、その卓越した動体視力は秒単位で切り替わる映像を判別出来る。
 逆にこの儀式場自体が細く狭い通路で構成されているので、例えば吸血鬼で無くても、人間
が弾幕を張るだけで敵を殲滅出来る。故に警備兵は殆どが下僕の人間だ。数と状況さえ揃え
れば、彼等でも吸血鬼並の敵に対処する事が可能となる。

( ´∀`)「まあ、それも突破されたら意味が無いか」

 この儀式場は確かに防衛のためとするにはよく出来ている。落とすのは至難の業だろう――
――が、それも程度によると言う事をコンラッドは知っていた。
 敵はこちらに対して戦力を十二に分散して攻撃してきた……これは想定の範囲内だ。しかし
その一人一人が「世界を救える」ほどの兵場合、小細工も意味が無くなる。

( ´∀`)「それも今日を持ち応えられれば良いだけの事だが……」

 コンラッドは手近に居た吸血鬼に命じて、映像を切り替えた。映像は古い石で作られた遺跡
のような場所で、その中心の寝台には彼の娘が横たわっている。

( ´∀`)「準備は滞りなく完了……あとは、時間か」

 まだ日付が変わるまで六時間近くある。それは襲撃者からすれば、時間的にかなりの余裕
がある事になる。時間を掛ければ、突破される事も在り得るだろう。

( ´∀`)「人間の警備だけでは些か心もとないね。私が何か送っておこう」

299 :下痢の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/23(木) 23:45:10.59 ID:sTWY5WZU0
(;^ω^)「ふー……これで結構来た筈だお」

 内藤は壁に張り付いて辺りを見回しながら、ほっと一息ついた。
 片手には警備兵の死体から掠め取ったイスラエル製のウージーサブマシンガンを携え、レイ
ジングブルとシグザウエルは、腰のホルスターに戻してあった。

(;^ω^)「確か、道はこっちで合ってる筈……」

 先刻、上階に居た時と同じように、瀕死の警備兵から地図を奪っていた。そのため、どうすれ
ば中央部に辿り着けるかは判っていた。道に迷わないのは面倒じゃなくていい。
 何しろ、上階のすっきりとした通路と異なり、敵の本拠に近付いた途端、唐突に道が複雑に
なっている。道を知らないと、あっと言う間に迷ってしまうところだ。
 壁際から離れないようにしながら、足早に先へ進む。敵の抵抗はかなり激しいが、クルース
ニクの身体能力を使えば、止まってしまうほどでは無かった。

(;^ω^)「何か、突然敵が出てこなくなったお……どうしたんだお?」

 先刻から大量に出現していた警備兵が、突然姿を見せなくなっていた。唐突な状況の変化
は不自然である。以前ならこれを幸運だと喜んでいたかもしれないが……

 「居たぞ! こっちだ!」 (;^ω^)「おっ、おっ、おっ」

 暫く走っていると、矢張り曲がり角の向こうから警備兵が何人か現れた。内藤の姿を見付け
てウージーを撃って来るが、すぐに隠れたので内藤には当たらない。

(;^ω^)「ていうか、道を間違えたお」

 曲がる角を一つ間違えた事を思い出したが、このまま放っておけば敵もこちらに来てしまうだ
ろう。手榴弾も使い切ってしまったし、どうしようかと思案する。

300 :下痢の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/23(木) 23:45:38.05 ID:sTWY5WZU0
 と。唐突に、銃声や着弾の音が、まるでスイッチを切ったかのように無くなった。

( ^ω^)「ん……? 何だお、弾切れかお……?」

 訝しさと警戒心をない交ぜにしながら、角から顔を覗かせた内藤の目に、

 「あああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」 ( ゜ω゜)「」

 床から伸びる巨大な刃に股間から頭頂部まで身体を貫かれ、尚死ぬ事が出来ずに叫ぶ警
備兵の姿が映る。まるで地獄の底から響くかのように、その声は内藤の耳に残った。

(;^ω^)「な、何だお! 何だおあれ!」

 一瞬、内藤は警備兵が自分の影に貫かれたようにしか見えなかったが、よく見ると通路の壁
や天井の全てが不自然に黒く染まっている。それは叫び続ける警備兵の身体を四方八方から
伸ばした影の刃で八つ裂きにした後、悠然と本来の姿を形成していく。

 ソレは巨大な猫だった。一見すると黒豹に見えなくもないが、一般的な豹よりも一回りも二回
りも巨大な体躯をしている。蠢き続ける体表の中で、唯一、赤い瞳が光っている。

(;^ω^)「悪魔――――!」

 一目でその正体を見破った内藤は、ウージーを投げ捨てて右腕の仕込み刀を抜き放つ。左
手は腰に佩いたレイジングブルに伸ばされ、引き抜くと同時に銃剣を持ち上げている。
 悪魔に対して、9mm程度の豆鉄砲を幾ら撃ち込んだ所で効果は無い。接近戦で首か心臓を
破壊する以外には無い――――そう直感した内藤は、既に悪魔目掛けて走っている。

(#^ω^)「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ」

 技術も何も無い、ただ速度だけに優れた二刀を思い切り叩き付ける――――

301 :下痢の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/23(木) 23:46:13.78 ID:sTWY5WZU0
( ゜ω゜)「」

 キン、と言う音と共に、突き出した銃剣と仕込み刀の切っ先が止まる。それはまるで当たり前
のように、切っ先は猫のような悪魔の額を貫く寸前で停止している。
 幾ら力を込めても、その先に進む事は無い。突如、見えない壁に阻まれた感じだ。

(;^ω^)「ど、どうなってるお!」

 ――――内藤は知らないが、その悪魔を「シャドウ」と言う。

 闇そのものを具現化したような形状をしているこの悪魔は、文字通り「影」の意味を持つ名前
を与えられている。それは人が闇を恐れる所以がこの悪魔にあるからだ。
 この悪魔はかなり長い歴史を持っている。それが種族や種類としての歴史では無く、それぞ
れ一個体としての歴史である点にある。彼等は、或いはこの世界が作られる前の混沌に由来
する悪魔であるのかもしれない。しかも彼等は唯歴史を積み重ねただけでは無い。
 大昔から戦いの中で力と経験を蓄えて来た彼等は、獣じみた外見(これも単にその効率が
良いからに過ぎず、形態は自由に変えられるのだが)に反して、魔力による盾を張ると言う凄
まじい力を持っている。故に、剣や槍による古来からの攻撃は通用しない。

 内藤は判断を間違えている――――こいつに剣の攻撃は通用しない。

(;^ω^)「チィッ!」

 咄嗟に身を屈めて、頭上を過ぎる漆黒の槍を避ける。更に後方へと跳躍しながら、地面から
生えたシャドウの刃を紙一重で躱した。踵を返し、走り出す。

(;^ω^)「こんなのに構ってられないお――――コンラッドが先だお!」

 倒せないなら最初から相手にする必要は無い、とばかりに駆けていく。
 無論、そうして逃がしてくれるのなら、最初から苦労しない。
310 :下痢の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/24(金) 00:17:52.74 ID:VWv0nOSf0
(;^ω^)「おおおおおおおおおおおおおぉぉぉおぉおおおぉぉぉぉっ」

 奇声を上げながら、黒い悪魔が追い掛けて来る。内藤の脚が強靭であるからこそ追い付か
れずに済んでいるが、それでも敵の攻撃が届くギリギリの距離に迫っている。

 「な、なんだ?」 (;^ω^)「のおおおおおぉぉぉっ」

 曲がり角を曲がったところで、敵の警備兵と出くわした。肩から提げていた銃を構えようとし
たその足元目掛け、一拍早く内藤のウージーが銃声を轟かせる。

 「くそっ、下がれ下がrぎゃあああああああああああああ」

 足元で弾ける銃弾に慌てる警備兵達の横を、内藤は構わず擦り抜けた。一瞬振り返った内
藤の目に、シャドウの刃に貫かれる警備兵達の姿が見えるが、止まらずに走る。

(;^ω^)「く――――っ!」

 手にしたウージーのトリガーを弾こうとするが、敵はとても早く、立ち止まれば確実にその刃
に捕まるのが目に見えている。一斉射で倒せるなら撃つが、生憎とこんなサブマシンガン程度
の弾幕で悪魔を止められると思うほど、内藤は楽観的では無くなっている。
 少なくとも、天井や壁に肉体を巡らせ、縦横に刃を伸ばしてくるシャドウを、この狭い通路で相
手取るのは不可能だった。何とか広い場所に出れば大丈夫だが。

(;^ω^)「ここを右――――左に曲がって、二個目の十字路を真っ直ぐ――――」

 ぐねぐねと曲がりながら、暫く走り続けている。後少しで中心に着くと言う時に、

 『内藤、今どこだ!』

 耳のインカムに、聞き慣れた相棒の声が響く。内藤は走りながらも通信スイッチを押す。

311 :下痢の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/24(金) 00:18:12.34 ID:VWv0nOSf0
(;^ω^)「ジョルジュかお! 今、中心に向かってるトコだお!」

(+゚∀゚)『そうか。こっちは、今丁度エレベーターに乗った。すぐ追いつく!』

(;^ω^)「結構道が複雑だお! 敵から地図を奪っておくといいお!」

 ご忠告どうも、と通信を切ろうとするジョルジュに、慌てて叫ぶ。

(;^ω^)「ま、待つお! 今、悪魔に追われてて大変なんだお!」

(+゚∀゚)『悪魔ァ?』

(;^ω^)「黒い影の獣みたいな悪魔だお! 剣が効かないんだお!」

(+゚∀゚)『落ち着け。そいつはきっと、シャドウって言う悪魔だ』

(;^ω^)「名前なんていいお! どうすれば倒せるんだお!」

 内藤の混乱を感じ取ったジョルジュが、インカムの向こうでため息をつくのが聞こえた。

(+゚∀゚)『そいつは長い歴史の中で、様々な攻撃に対する耐性をつけた悪魔だ。だから、剣や槍
による打撃は慣れちまってて通用しない――――しかし、現代の武器は別だ』

 聞き流しながら、ちらり、と背後を振り返る。悪魔――――シャドウの姿は離れていない。

(+゚∀゚)『急激な進化を遂げた現代の武器に、そいつは対抗しきれない。内藤、銃は?』

(;^ω^)「え、あ、敵から奪ったサブマシンガンとレイジングブルとシグと……」

(+゚∀゚)『ありったけの銃弾を撃ち込むんだ。そうすれば――――』

312 :下痢の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/24(金) 00:18:37.47 ID:VWv0nOSf0
 そこまで言った所で、通じていた通信が切れた。慌てて無線機を見ると、アンテナが立ってい
ない。どうやら、地下に行き過ぎて電波が切れてしまったようだ。

(;^ω^)「て、ちょwwwwwwアンテナってwwwwwwwww」

 突っ込んでいる場合では無い。内藤は走りながら地図を見て、今自分が曲がったのが最後
の曲がり角である事を確認した。正面には妙に凝った作りの両開きの扉が一つ。

(;^ω^)「てか鍵持って無いおwwwwwwヤバスwwwwwwww」

 笑っている状況ではなかったので、内藤はレイジングブルを抜いて、鍵穴と思しき部分を狙っ
てトリガーを弾いた。五発全て撃ち終えて、ノブの部分が根こそぎ吹き飛ぶ。

(;^ω^)「おおおおおおおおおおおおおぉぉっ!」

 扉に突っ込んだ内藤は、振り向き様に手にしたウージーのストックを肩に押し付けた。やや
遅れて扉から飛び出したシャドウの体表に、大量の鉛弾が降り注ぐ。

 ギャアアアアアアアアア――――――――――――――――

 先刻までまるで攻撃の通用しなかった悪魔が、悲鳴を上げて射線から逃れようとする。それ
を驚異的な集弾率で火線に捉え続け、弾が切れたら弾倉を交換する。

(#^ω^)「いい加減に死ぬおおおおおぉぉ――――!」

 魔力の盾では防げない現代兵器の攻撃を受け、シャドウの動きが鈍ってきた。

(;^ω^)「作者! さっきから叫び声がワンパターンだお!」

 知った事か。

313 :下痢の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/24(金) 00:19:30.84 ID:VWv0nOSf0
 キシャアアアァアアアアァァァ――――――――――――

 第六感にも似た直感から、内藤は強く地面を蹴った。浮き上がった内藤の残像を追い掛ける
ように、シャドウの身体から影の槍が伸び、コートの裾を抉る。

(;^ω^)「お?」

 内藤が降り立ったのは、その槍の上だった。自分を見つめるシャドウが、不思議なものを見
るような視線を内藤に向ける。悪魔は唐突に、その動きを止めていた。

(#^ω^)「チャンスだお――――――――」

 内藤は最後の弾倉を叩き込んだウージーを、シャドウに目掛けて連射した。殆どゼロ距離で
撃ち込まれた銃弾は、その全てがシャドウの身体に直撃する。

 ギャアアアアアアアアア――――――――――――――――

 一度だけ、びくん、と震えたシャドウの身体が、紐が解けるように弾けとんだ。その中心から
現れたのは、どの国の言語でも使われていない文字の書かれた、赤い球体。

( ゜ω゜)「あれが弱点かお!」

 きっとジョルジュが最後に言おうとしたのは、このコアの事だったのだろう。既に魔力の盾は
無くなっている。詰まり、刀による攻撃が通用すると、瞬時に判断。

( ゜ω゜)「死ねお――――!」

 地面を滑りように走りながら、内藤は右腕のセイフティを解除し、拳を握る。軽やかな音と共
に飛び出した仕込み刀を――――今度こそ、その赤いコアに突き立てた。
 確かな手応えを感じた内藤だったが、突然収束したシャドウの身体に弾き飛ばされる。

314 :下痢の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/24(金) 00:20:31.27 ID:VWv0nOSf0
(;^ω^)「チッ……! 一回だけじゃ駄目だったかお!」

 素早く受身を取り、転がるように立ち上がった内藤が振り向く。そこには、元の形を取り戻し
たシャドウが、その真っ赤な瞳をこちらに向けて――――あれ?

(;^ω^)「なんか赤くね?」

 誰に言うともなく呟いた内藤の前で、突然シャドウが飛び掛かって来た。

(;^ω^)「おわっ! び、びっくりしたお!」

 新たに抜いたシグザウエルのトリガーを弾くが、黒い獣の悪魔は、鉛の弾よりずっと強力な
銀製弾をまともに喰らいながら、ヤケクソのように突っ込んでくる。

 目前に迫ったシャドウの巨大な顎が開かれ、内藤の身体を捉え――――


 ガアアアァァァァァアアアァアァアァァァァ――――――――ッ!


 横合いから突然現れた黒い影が、内藤の身体に喰らいつこうとしたシャドウを吹き飛ばす。
 直後、赤から黒へ、黒から赤へと身体を点滅させたシャドウが――――爆発した。

(;^ω^)「ま、巻き込む気だったのかお……何て奴だお!」

 改めて悪魔の非常識さを感じた内藤だったが、

( ゜ω゜)「」

 シャドウを吹き飛ばした影が正面に立ったため、そこから先の言葉を失った。

315 :下痢の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/24(金) 00:20:58.97 ID:VWv0nOSf0
イメージ映像
ttp://www.pinky.ne.jp/~aogachou/prof/work/fenrir.jpg




拾ってきた画像けどね

316 :下痢の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/24(金) 00:21:36.52 ID:VWv0nOSf0
( ゜ω゜)「」

 それは巨大な狼だった。黒々とした毛並みに、先のシャドウを遥かに凌ぐ巨大な体躯、大き
な耳に燃えるような瞳、綺麗に揃った銀色の牙ががっちりと噛み合わされている。

 ――――――――死んだ。

 「死ぬ」では無く「死んだ」である。

 これを前にすれば、最早生きていても死んでいる。結果は既に出ているのだ。
 それは内藤の生存本能から来る、恐怖を通り越した絶対の結果だった。

 『おーい、何ぼーっとしとるんですか』

 と。目前に立ち塞がった巨躯を前にして、唐突にそんな声が聞こえた。否、それは音として耳
には届かず、脳に直接響いてくるような、不思議な感覚だった。
 原理はよく判らないが、この黒狼は音を使わずに会話し、尚且つ知性を持っているらしい。

( ゜ω゜)「誰?」 (+゚∀゚)『姿形は違えど、お前の相棒のジョルジュですよ』

 驚く事に、それはジョルジュ長岡と名乗った。一瞬、何を莫迦な事を言っているのだろうと思
ったが、彼は口に紐で縛ったジョルジュの衣服と、ゴルフバッグを加えている。

(;^ω^)「ほ、ほんとにジョルジュかお? 本当にジョルジュなr」

(+゚∀゚)『某兄弟ネタはいいっての。大体お前、俺だってクルースニクだぜ?』

 そういえば。クルースニクには、狼、豚、牛と言った動物に変身する力があると伝えられてい
る。内藤が炎になれた以上、ジョルジュ動物になる事が出来ない訳は無い。
 何と言うか、元と比べるとあまりにも猛々しく、すぐにその可能性が出て来なかったのだ。

317 :下痢の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/24(金) 00:21:57.69 ID:VWv0nOSf0
 「流石にあんな雑魚悪魔一匹では止められんか……」

 かつん、と言う硬い靴音が聞こえた。そちらに視線を向けると、十日前に見掛けたのと全く変
わらない姿で、コンラッド=ヴァルカンがこちらを見下ろしていた。

(;^ω^)「何で前と同じ格好なんだお。風呂とか入ってないのかお?」

(+゚∀゚)『吸血鬼だから風呂入る必要無いだろ。服が変わんないのは、金持ちだからじゃね?』

 確かに、金持ちは同じ服を何着も持っているようなイメージがある。何故だろう。

(+゚∀゚)『ちなみに、俺の声はお前にしか聞こえんから、あしからず』

 それだけ言ってから、ジョルジュは頭上に立つコンラッドを睨み付けた。

( ´∀`)「キミ達は想像以上だな……ここまで辿り着けるとは思わなかったよ」

( ^ω^)「それはどうもだお……褒美はお前の命が良いお」

( ´∀`)「生憎、私は死ぬわけには行かないのでね。これから大事な用事がある」

 今になって気が付いたが、ここがまさに儀式の場であるらしい。円柱の内側を思わせる室内
には、遺跡のような意匠が施された壁に囲まれ、中心には巨大な円柱が立っている。コンラッ
ドは丁度その円柱の頂上に続く階段に立ち、こちらを見下ろしている形だ。

(+゚∀゚)『多分、あの上にツンさんが居るんだろう。往けるか、内藤』

(#^ω^)「全然余裕だお。早くあのニヤケ面叩き潰したくてウズウズしてるんだお」

 ジョルジュに小声で答えながら、内藤はその階段に向かって歩き出す。

318 :下痢の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/24(金) 00:22:54.71 ID:VWv0nOSf0
( ´∀`)「私を殺せると思っているのかね?」

( ^ω^)「ツンを返してくれるなら、見逃してやってもいいお」

 まぁ、その直後にジョルジュが殺すだろうけど、と言って、最初の一段に足を掛ける。

( ´∀`)「やはりそちらの狼は教会の殲滅者と言う訳か……いいだろう!」

 突然、コンラッドが片手を持ち上げた。人差し指を合わせ、ぱちん、と鳴らす。


( ´∀`)「私の命はやれないが――――代わりにこれをくれてやる」


 言うが早いか、周囲のエーテルがコンラッドの周囲に収束する。直後、内藤の目前に召喚陣
が出現、出現したシャドウが飛び上がり、ギロチンじみた刃となって襲い掛かってくる。

( ^ω^)「甘いお!」

 身を捻ってそれを躱し、内藤はそちらに銃口を向け掛け、

(;+゚∀゚)『うわー、何だこの数……』 ( ゜ω゜)「」

 この儀式場の中でもっとも低い床を埋め尽くすシャドウの群れに、言葉を失った。

(+゚∀゚)『内藤、悪いが俺はここでこいつらとじゃれあわなきゃならんらしい。往けッ!』

(;^ω^)「仕方ないお……ジョルジュ、死ぬなお!」

 飛んで来たシャドウを噛み砕くジョルジュを尻目に、内藤は階段を駆け上る。
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