677 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 19:35:38.31 ID:yDWVaCRG0
 地上から響いてくる爆音を聞きながら、内藤は壁に寄り掛かって息を整えていた。
 時計を見る。作戦が始まってから、時計の長針は五分ほどしか進んでいない。

(;^ω^)「無茶苦茶だお……一歩間違えたら死んでたかもしれないお」

(;+゚∀゚)「あー……一応、計算してやったんだが、俺も死ぬかと思った」

(;^ω^)「ちょwwwwwwwヒドスwwwwwwwww」

 すまんすまん、と全く悪気無く謝りながら、ジョルジュはショットガンを片手に無骨な階段を下
りていく。ブーンも少し息を整えて、その背中を追った。

(+゚∀゚)「ドアがある……内藤、カバー頼む」 ( ^ω^)「判ったお」

 ショットガンを構えたジョルジュが、カービンを手に背後に立った内藤を確認し、

(+゚∀゚)「――――行くぞ」

 掛かっていた鍵ををダブルオーバックで破壊して、ドアを蹴り開ける。

 爆弾に吹き飛ばされたかのように飛んでいったドアは、重く硬い音を立てて地面に転がる。

(+゚∀゚)「――――――――」 (;^ω^)「――――――――」

 ジョルジュと内藤は入り口に立ったまま、暫くその場で待った。取り敢えず、誰かが襲ってく
るような感じはしないし、吸血鬼の気配も感じられない。

(+゚∀゚)「へー、こいつは凄いな……」

 一拍置いてドアの外に飛び出したジョルジュは、目の前に広がる光景に感嘆の声を上げる。

678 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 19:36:51.25 ID:yDWVaCRG0
 荷物を搬入する為に使われるらしい、巨大なエレベーターである。垂直下降式だが、ワイヤ
ーではなく側面のレールか何かで吊るされているらしい。
 エレベーターがあるのは内藤達から見て右手側、左手側にはこれまた巨大で分厚そうなシ
ャッターがある。恐らくあのアパートとは別の建物に繋がっているのだろう。

 まるでSF映画のワンシーンを思わせる光景。吹き抜けからは轟々と言う音が聞こえる。それ
が何の音かは判らないが――――内藤は、不吉な予感を拭えなかった。

( ^ω^)「どこが目的地なのか判ってるのかお?」

(+゚∀゚)「それは大丈夫だ――――ほら、階層表示が一つしか無い」

 ジョルジュの手元にはタッチパネル方式のコンソールが置かれている。確かにジョルジュの
言う通り、そこには上と下を示す矢印しか表示されていなかった。

(+゚∀゚)「判り易くていいな。行き先は一つって訳だ」

( ^ω^)「…………一度、カレンさん達に連絡とっておくかお?」

(+゚∀゚)「ん? そうだな……地下に行ったら通じなくなるかもしれんし」

 ジョルジュはそう言って胸元のダイヤルを操作すると、手を自分の首に押し当てた。骨振動
タイプのマイクが、ジョルジュの音声を無線通信を行う相手に届く。

(+゚∀゚)「こちらジュリエット=ワン……只今、敵勢力を振り切って地下エレベーターに到着」

 マイクに向かって自分の通信コードを呟くジョルジュ。ジュリエット、と言う名前に、大した意
味は無い。分割された十二班を、アルファベットのAからL――――アルファ、ブラボー、チャ
ーリー、デルタ、エコー――――のそれぞれに名前を割り当てた、所謂フォネティックコード
と呼ばれるものに準じただけだ。詰まりこれは第十班の第一隊員を意味する。

679 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 19:37:15.07 ID:yDWVaCRG0
彡*゚ー゚)『意外と早かったわね。今、あなた達が一番ターゲットに近いわよ』

 無線の向こうでは、今回の作戦に際して全体のオペレーターを務めるカレンだった。彼女は
ジョルジュ達も知らない場所から、情報を駆使してのサポートを行う事になっている。

彡*゚ー゚)『地図にある「生贄の場所」に近いわ。位置的には重なってるし――――降りたら、ロ
ードクラスの連中が待っているかもしれないから、気を付けて』

 今回の儀式において"使われる"吸血鬼は、所謂「生まれた時から吸血鬼」に限らない。専念
以上を生き抜いている吸血鬼であれば、その役目を果たせるらしい。
 彼等がコンラッドの計画に"殉教"する覚悟があるか否かは不明であるが、吸血鬼狩人たる
ジョルジュと内藤が、それを放置しておける筈が無かった。必然的に戦う事になる。

(+゚∀゚)「了解しました。では、ちょっと行ってきますね」

 だと言うのに、ジョルジュは何処までも軽い調子で、無線のスイッチを切った。

 報告を終えたジョルジュが、エレベーターのボタンを押す。ごうん、がこん、とかなり大きな音
を立ててから、ゆっくりとエレベーターが下りていく。
 この孔は何処まで続くのか……内藤がそう思っていると、ジョルジュが話し掛けて来た。

(+゚∀゚)「内藤、こいつはお前に渡しておく――――お前でも使える筈だ」

 ジョルジュはそう言って、ゴルフバッグからあのガンブレード……正式外典を取り出した。

( ^ω^)「そんな――――これはジョルジュが使えばいいお。僕は要らないお」

(+゚∀゚)「何だよ、折角見せ場をくれてやろうと思ったのに」 (;^ω^)「別にいいお」

 呆れながらも、内藤は少し安心していた。矢張りジョルジュはジョルジュなのだ。

680 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 19:37:39.02 ID:yDWVaCRG0
(+゚∀゚)「そういえばさ」 ( ^ω^)「ん?」

(+゚∀゚)「どうして、お前はツンさんを助けようとか思うんだ?」

 聞かれて、内藤は思わず押し黙った。考えてみれば、何故自分はここまでするのだろう。

( ^ω^)「どうしてって……」

(+゚∀゚)「フリッツさんじゃないけど、確かにお前とツンさんの間にある繋がりは、決して深いもの
じゃない――――何故お前は、そんな女に命を掛けられる?」

( ^ω^)「…………」

 内藤は答えない。その視線は正面のうねる配管を眺めているようで、実際はここでは無い何
処か遠くを見ている。それはツンとの思い出を辿り、やがて一番最初に戻る。

( ^ω^)「理由は幾つかあるけど……多分、大した事じゃないんだお」

 最初に出会った時、助けなければならないと思った。理由は特に無い。唯、綺麗だったから
――――男の子は、可愛い女の子を助ける義務があるのだ。

( ^ω^)「惚れてるのかもしれないけど、自分でも理屈はよく判らないお」

 唯、彼女を助けたいと言う曖昧な感情だけがここにあり――――それに従うだけの事。

(+゚∀゚)「ふーん……いや、それは普通に惚れてんじゃねーの?」

( ^ω^)「そうかお?」 (+゚∀゚)「そうとしか取れんな」

 まぁ、素直にそう思っておいた方が良いのかもしれない。精神衛生上。

681 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 19:38:15.29 ID:yDWVaCRG0
(+゚∀゚)「そうそう、俺がヴァチカン法王庁の騎士団員だっつーのは話したっけ?」

( ^ω^)「何かそういう話があると言うのは聞いた気がするお……」

(+゚∀゚)「所属は聖ジョージ騎士団だ。十二使徒の外だけど、聞いた事無いか?」

 聖ジョージはキリスト教における七人の英雄の一人に数えられる聖人であり、別に聖ゲオル
ギウスとも呼ばれる。元軍人出身と言う、聖人としては異色の経歴を持っている。
 彼を英雄とするのは、リビアのサレムにて行われたドラゴン退治譚があるからだ。ドラゴンは
生贄の娘を要求し、街はクジによってその生贄を決める事になった。しかし、そこで選ばれた
のは王女クレオドリンダであったため、王は困り果てていた。
 そこへ現れたのが聖ジョージである。旅の途中でサレムに立ち寄った彼は、ドラゴンを退治
する代わり、その土地の人々にキリスト教への改宗を要求した。それが聞き入れられたので、
彼はアスカロンと言う魔法の剣でドラゴンの頸を切り落としたのである。

 そこまで考えたところで、内藤はその聖ジョージを指すもう一つの名前を思い出した。

( ^ω^)「サン=ジョルジュ……ジョルジュって、そこから取ったのかお?」

(+゚∀゚)「あ、よく判ったな。いや、捻りの無い名前だとは思ったんだけどな」

 詰まり、彼は教会の人間として相応しい形でここに居る訳だ――――しかし、

( ^ω^)「どうして今、それを話すんだお?」

(+゚∀゚)「言う機会が今後あるかどうかわかんねーだろ。どっちか死ぬかもしれんし」

(;^ω^)「そ、そんな縁起悪い事言わないで欲しいお……」

(+゚∀゚)「あはははっ。ま、どうせ終わったら俺はすぐ帰んなきゃいけないし」

682 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 19:38:50.20 ID:yDWVaCRG0
( ^ω^)「帰る……って、何処だお? ヴァチカンかお?」

(+゚∀゚)「うんにゃ、日本。俺、今は日本で高校生やってんだよ。言ってなかったけど」

( ^ω^)「そうなのかお……これが終わったら、遊びに行ってもいいかお?」

(+゚∀゚)「あー……それが出来るならな。ま、今は目の前の事に集中しようや」

 喋っている間中、ジョルジュはショットガンに予備弾を装填し続けていた。九発プラス一発の
散弾を弾倉と薬室に詰め込んで、ショットガンをゴルフバッグに仕舞う。


(+゚∀゚)「内藤――――お前、これ持ってけ。中身は刀以外なら適当に捨てていいから」

 ジョルジュは何時に無く真剣な表情で、ゴルフバッグを内藤に押し付けた。意味が判らず頭
上にクエスチョンマークを浮かべる内藤の横で、唐突に屈伸運動を始めている。

( ^ω^)「ジョルジュ?」 (+゚∀゚)「出来る限り早く、ツンさんのトコまで往くんだ」

 ジョルジュは言いながら、軽く両手首を振った。途端、袖口から飛び出した黒鍵が、それぞ
れ片手に三本ずつ、合計六本、ジョルジュの手の中に納まる。

 ふと、内藤はコンソールの表示に目を向けた。表示されていた深度はかなり深く、既に目的
の階層まで十メートルも無い事を示している――――そこで内藤は気付いた。

(;^ω^)「吸血鬼――――ジョルジュ、吸血鬼がすぐそこに」

(+゚∀゚)「知ってる。内藤、悪いが正式外典はやっぱり俺が使わなくちゃならないみたいだ」

 クッ、とジョルジュが笑みを浮かべると同時――――エレベーターが、止まった。

683 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 19:39:07.14 ID:yDWVaCRG0
(+゚∀゚)「――――――――ハッ!」

 ごうん、と駆動音が止まると同時に、ジョルジュが手にした黒鍵を全て投げた。
 計六本の飛剣は弾丸に匹敵する速度で空を裂き、あっと言う間に五体の吸血鬼の心臓や頭
を刺し貫き、彼等を半死の生物から一塊の塵へと変えてしまう。

 しかし、ジョルジュはそれに甘んじる事無く、手にした正式外典を頭上に掲げていた。

( ´・ω・)「けえええあああっ!」 (;+゚∀゚)「クッ――――!」

 正式外典に、毛の生えた刀身を持つ日本刀――――井上真改蟲殺が叩き付けられ、目も眩
まんばかりの火花を散らす。斬撃を受けつつそれを弾き飛ばし、ジョルジュが叫ぶ。

(;+゚∀゚)「ここは俺に任せて先に往けッ、内藤!」

(;^ω^)「で、でも――――ジョルジュ!」

(;+゚∀゚)「いいから! こいつは俺の獲物だ――――お前は手を出すんじゃない!」

( ´・ω・)「――――――――させん」

 受け止められた衝撃に吹き飛ばされながら、閑馬永空は井上真改蟲殺を投げ付ける。狙い
は内藤――――しかしその飛剣は、ジョルジュが射線上に割り込んで弾いた。
 自分ではこのサムライに適わないのだ――――内藤はそれを直感で認識していた。

( ^ω^)「……ごめんだお。ここはジョルジュに任せるお」

(+゚∀゚)「ふん、当たり前だ。お前にはやる事があるんだろうがよ?」

 あくまで憎まれ口を叩くジョルジュに背を向け、内藤は出口に向かって駆けて往った。
732 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 23:26:08.21 ID:yDWVaCRG0
 駆けて行く内藤の背を見送りながら、ジョルジュは目前に立つ袈裟姿の剣士――――閑馬
永空から視線を外さない。内藤が扉の向こうに消えたのを見計らい、軽く息を吐く。
 エントランス、と言うべきか。正面の奥に出口が一つあるきりの殺風景な部屋である。周囲に
は謎の意匠(儀式のためのもの?)が施されているが、暴れるには丁度良い広さだ。
 天井が比較的高く、目測でも十メートルはある。出口は内藤が出て行った扉と、先刻二人で
降りて来たエレベーターのみ。ジョルジュはそれを確認して、得心したように笑った。

(;+゚∀゚)「フゥ……さて、何となく予感はしていたが……」

 マグラ召喚に必要な長生種――――そこに閑馬永空を入れるのは道理であろう。彼以上に
強力な力を持った吸血種は、中々居ない。閑馬がそれを受諾するかは別として。

( ´・ω・)「クククッ……ここで御主に再会出来たのは、天の采配かもしれんな」

 十二箇所に分散される突入班に対して、閑馬の居るこの場所に辿り着けるのは一斑のみ。
それがここに当たる確立は、十二分の一に満たなかった筈だ。

(+゚∀゚)「俺からすると完全に貧乏くじだけどな……ま、仕方ないか」

 肩を竦めるジョルジュだが、本当にハズレを引いたとは思っていない。実際、こいつとは自分
が決着をつけなければならないと考えていたのだ。一応、公私混同はしていなかったが、こうなるだろうと言う事も、或いは予測していたのかもしれなかった。

( ´・ω・)「そこまで熱烈に想われていてはな……こうなるのも道理と言えよう」

(+゚∀゚)「ほざけよ、閑馬。そうやって笑ってられんのも、今の内だろうぜ?」

 ぽとり、と。井上真改蟲殺を握る閑馬の右手から、血の帯を引きながら何かが落ちた。それ
は刀を握っていた小指が根元から断ち切られたものであったが――――

( ´・ω・)「む、再生しない――――」 (+゚∀゚)「言ったろ、笑ってらんないって」

733 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 23:26:58.20 ID:yDWVaCRG0
 駆けて行く内藤の背を見送りながら、ジョルジュは目前に立つ袈裟姿の剣士――――閑馬
永空から視線を外さない。内藤が扉の向こうに消えたのを見計らい、軽く息を吐く。
 エントランス、と言うべきか。正面の奥に出口が一つあるきりの殺風景な部屋である。周囲に
は謎の意匠(儀式のためのもの?)が施されているが、暴れるには丁度良い広さだ。
 天井が比較的高く、目測で十メートル。出口は内藤が出て行った扉とエレベーターのみだ。

(;+゚∀゚)「フゥ……さて、何となく予感はしていたが……」

 マグラ召喚に必要な長生種――――そこに閑馬永空を入れるのは道理であろう。彼以上に
強力な力を持った吸血種は、中々居ない。閑馬がそれを受諾するかは別として。

( ´・ω・)「クククッ……ここで御主に再会出来たのは、天の采配かもしれんな」

 十二箇所に分散される突入班に対して、閑馬の居るこの場所に辿り着けるのは一斑のみ。
それがここに当たる確立は、十二分の一に満たなかった筈だ。

(+゚∀゚)「俺からすると完全に貧乏くじだけどな……ま、仕方ないか」

 肩を竦めるジョルジュだが、本当にハズレを引いたとは思っていない。実際、こいつとは自分
が決着をつけなければならないと考えていたのだ。一応、公私混同はしていなかったが、こう
なるだろうと言う事も、或いは予測していたのかもしれなかった。

( ´・ω・)「そこまで熱烈に想われていてはな……こうなるのも道理と言えよう」

(+゚∀゚)「ほざけよ、閑馬。そうやって笑ってられんのも、今の内だろうぜ?」

 ぽとり、と。井上真改蟲殺を握る閑馬の右手から、血の帯を引きながら何かが落ちた。それ
は刀を握っていた小指が根元から断ち切られたものであったが――――

( ´・ω・)「む、再生しない――――」 (+゚∀゚)「言ったろ、笑ってらんないって」

734 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 23:27:47.62 ID:yDWVaCRG0
 見ると、ジョルジュの持つガンブレード――――正式外典の刀身を囲むように、無数の方陣
が組み上げられている。刀身に刻まれた聖句が、聖なる光に輝いていた。

 これこそ正式外典――――肉体ではなく、魂魄に対して働き掛ける、概念武装の力である。
決して殺せない筈の閑馬永空は、魂と言う記録を破壊されたのだ。

( ´・ω・)「ふむ……なるほど。貴様は儂を、殺せるのだな」

 閑馬の顔に陰鬱な笑みが浮かぶ。それはジョルジュを嘲笑っているようで、その実、漸く自分
が"死ねるのだ"と言う事実を前に、歓喜しているようにも見えた。

 殺したい/殺されたい――――――――――――――――死にたい/死なせたい

 その矛盾した感情は、ある意味、閑馬の中に残った最後の「人間」なのかもしれない。

( ´・ω・)「引導には相応しい……最後に斬るのが御主と言うのも、また面白かろう」

(+゚∀゚)「知らんよ。俺はアンタを殺して、早いトコ内藤を追っ掛けなくちゃいけないんだ」

 ジョルジュは陰鬱に嗤う閑馬永空を前に、興味が無いと言う風に軽くかぶりを振った。

(+゚∀゚)「アンタがどれだけ苦しんだのかは判るけどね――――俺には、これから死ぬ奴の悩み
まで抱えて生きるような、余力も暇も無いんだよ。そんなのは地獄で語れ」

( ´・ω・)「クッ……いやはや、手厳しい。御主はそう言う生き方を選ぶのか」

(+゚∀゚)「シンプルでいいだろ?」 ( ´・ω・)「いやはや……真、御主は面白い――――!」

 瞬間、ジョルジュの突き出した正式外典と閑馬の繰り出した井上真改蟲殺が火花を散らす。

735 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 23:28:12.90 ID:yDWVaCRG0
(;^ω^)「ハァ、ハァ、ハァ……」

 内藤は走る。唯それだけしか出来ない足を動かし、追ってくる吸血鬼を蹴散らして。

 「貴様、一体何処から――――」

 左手に握ったM4A1が吼える。三十発を瞬く間に撃ち尽くし、そのまま投げ捨てる。

 「クソッ、上の連中は何を――――」

 左手に握ったベネリが啼く。十発の散弾をバラ撒いて、停止したそれを投げ捨てる。

 「突っ立ってんな、撃て、撃て――――」

 左手に握ったU.S. M79をポイント。壁の向こうに居た吸血鬼達に向けて撃ち込んだ40mm炸
裂弾は、聖法儀式済みの銀製ベアリングを撒き散らし、彼等を灰に変えていく。

 壮絶な消耗電撃戦だった。内藤はゴルフバッグから手当たり次第に銃器を抜き出し、それら
を撃ち鳴らしながら走り続けた。弾が切れた銃は全て捨てていった。
 吸血鬼達は次々に現れ、その得物を内藤に向ける。しかし、彼の研ぎ澄まされた感覚は、自
分に銃口が向くよりも幾分早く、殺意の存在に気付き、それを駆逐する。

(;^ω^)「ハッ、ハッ……ハッ、フッ」

 角を曲がろうとして、急停止。眼前を薙いで往く5.56mm曳光弾を眺めつつ、新たにゴルフバッ
グから杭撃ちライフルを取り出し、角から差し向けて連射する。

 「ぐぇっ」 「ぎゃあっ」 「逃げr」 「助けt」

 悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴。耳に残るそれを意識の外に追い出し、内藤は地面を蹴る。

736 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 23:29:06.37 ID:yDWVaCRG0
 中心部へと至る道は、どうやら使われなくなった地下鉄を改造して作られているらしい。かな
り金を掛けて作り変えているのか、本当にそうなのかは疑わしいが、内藤の走っている通路の
横には明らかに地下鉄用と思しき線路が敷いてあるのだから、多分間違いない。
 出来ればその車両を見付けられたら良かったのだが、どうやらそれは中心部に持っていかれ
てしまったらしく、内藤は走って目的地まで往かねばならなかった。

 一呼吸。手にしたグレネードランチャーに再装填をし、内藤は息を整えた。かなりの距離を走
った筈だが、一向にコンラッドの所に辿り着く気配がしないのである。

 ――――当たり前だ。大体、自分はそこへ往く道を知らないのだから。

(;^ω^)「ちょ、ちょっと落ち着こうかお――――」

 壁に背を預けて呟いたところで、内藤は左手を跳ね上げていた。手にした杭撃ちライフルの
銃口が、扉を開けて出て来た敵(人間だったが)を、横合いから吹き飛ばす。
 意思より先に身体が動く。扉から腕だけを突き出して、更にトリガー、トリガー。飛び出して来
た兵士の首を掴み、横手の線路の方へと放り投げる。地下鉄用の線路は電気が通っている―
―――ばちばちと肉の焼ける厭な臭いを背に、内藤はその扉の中に入った。

 中は食堂のような場所になっていた。吸血鬼が飯を喰うのかと言うと奇妙な話だが、何もここ
に居るのは吸血鬼だけでは無い。彼等の下僕である人間用なのかもしれない。

(;^ω^)「――――――――――――――――やれやれ」

 内藤は額から流れる汗を拭うと、腰から抜いたレイジングブルを無造作にポイント。
 銃口から放たれた銃弾は、白い炎の軌跡を描いて机を吹き飛ばし、その向こうに隠れていた
女吸血鬼の足を、文字通り「根元からごっそりと」もぎ取っていた。
 それでも、吸血鬼はその生命力を生かして逃げようとする。実際、逃げようと思えば逃げられ
ただろうが――――今の内藤の前では、コンマ数秒遅かった。
 立て続けに四回、.454カスールの銃声が響く。白い食堂に、両腕と片足が飛び散る。

737 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 23:30:22.86 ID:yDWVaCRG0
 転がっている女……女の残骸を片手で拾い上げ、食堂の机の上に置く。吸血鬼に美人と言
う表現が当て嵌まるかどうかは知らないが美人で、長い黒髪がツンを思い起こさせる。
 何だか浮気をしているような罪悪感を感じ、内藤は意識して事務的な口調で訊ねる。

(  ω )「――――コンラッドの居場所は?」

 女が首を振る。内藤はやれやれとかぶりを振ると、レイジングブルのグリップを女の顔面に叩
き付けた。鈍い衝撃と共に女の骨が砕けるが、それが致命傷で無い事は判る。
 唯でさえ超重量のマグナムで、尚且つ底面にはスパイクまで付いているのである。当たり所
が悪ければそれだけで人一人殺すのは容易そうな威力があった。

(  ω )「――――コンラッドの、居場所は?」

 女は首を振った。内藤はやれやれとかぶりを振ると、涙と血でぐしゃぐしゃになった女吸血鬼
の頭を掴み――――持ち上げて――――机上に叩き付ける。
 顔面に続けて後頭部が潰れたが、その程度で死ぬなら対吸血鬼も苦労しない。内藤はレイ
ジングブルの銃剣を起こしながら、ごぼごぼと血を吐く女に尋ねる。

(  ω )「――――コンラッド、の、居場所、は?」

 女は首を振ってしまった。それは決定的なまでの「ハズレ」に他ならない。
 ゴルフバッグを探り、内藤はソレを抜き出した。直径三センチほどのセイヨウサンザシの棒―
―――但し、長さが一メートルはあり、先端が鋭く削られた「杭」である。
 杭を右手に、左手で女の頭を掴んで持ち上げ、机の上に立たせてやる。限界まで振り上げた
右手をそのまま振り下ろしてやると、女は口の中に白木の杭を叩き込まれていた。

 右手を押し込み、咽喉の奥に捩じ入れていく。杭は女の食堂を掻きながら進み、噴門を抜け
て胃に達した所で、これを食い破って幽門から十二指腸を貫通した。
 女の口の隙間から、鮮血と粘膜の欠片と胃液とその他諸々の体液と汚物が零れ、テーブル
の上を汚していく。女の股から突き出した杭をテーブルに固定し、内藤は同じ質問をする。

738 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 23:31:04.04 ID:yDWVaCRG0
( ^ω^)「線路を沿って真っ直ぐ、かお」

 既に人の形を留めない肉塊の発した言葉は、最初から予想していたものだった。
 ある程度呪術的意味合いを持つ経路を作っているとは言え、そこまで複雑怪奇な迷路にす
る筈が無い。内藤がコンラッドでも、なるべく道の数は少なくするだろう。

( ^ω^)「ありがとうございましたお。これは――――お礼ですお」

 言って。内藤は手にしたレイジングブルの最後の一発を、女の心臓に叩き込んだ。
 クルースニクの力で強化されたその炎は、女の身体を内側から焼く。吸血鬼としての死に方
を経験するより先に、女はその白い炎によって、体内から焼かれていった。

( ^ω^)「やれやれ……折角急いだのに、手間取ってしまったお」

 呟きながら、内藤はレイジングブルのシリンダーを開けて、空薬莢を派出、クイックローダー
を取り出して空いた孔に突っ込むと、手首を捻ってシリンダーを閉じた。レイジングブルを腰の
ホルスターに戻して、ゴルフバッグに手を突っ込み、新たな銃器を探す。

(;^ω^)「そういえば、ジョルジュは大丈夫かお……あのサムライ強そうだったけど」

 友人の心配をしてみるが、残念ながら内藤に、あのおっぱい聖人(誤字でなく)が斬殺される
場面を想像する事は出来なかった。多分、後から追い付いて来るだろう。

( ^ω^)「さて、あんまり待たせるとツンが怒るから、そろそろ往くk」

 そう言って振り返った内藤と、やって来た警備兵の目が合う。一瞬の沈黙。直後、口を開き掛
けた警備兵に飛び蹴りを食らわし、内藤は通路の両側からやって来る警備兵達を確認した。

(;^ω^)「…………やれやれ、だお」
848 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/20(月) 21:57:54.01 ID:eGdCwnea0
(+゚∀゚)「――――ふんっ!」

 気合一閃、胴を薙ぎに往くジョルジュの剣が、閑馬の刀に捌かれてあらぬ方に弾かれる。し
かし、彼はそれを敢えて弾かれるに任せ、転身しながら足を払う。

( ´・ω・)「クッ、やりおる! やりおるわ!」

 昂奮した様子で叫びながら、閑馬永空は飛び上がって足を薙ぎ払いに来る正式外典を躱し、
落下の勢いを利する形で、兜割りに井上真改蟲殺を振り下ろす。
 一歩退がってそれを避け、ジョルジュは切り上げ、逆切り上げをほぼ同時に放つ。流石にこ
れは避けられなかったと見え、閑馬の身体に×字の傷が走る。

(;´・ω・).・;'∴「ぐ――――ふぉっ!」

 斬撃の衝撃に吹っ飛んだ閑馬が、壁に激突すると同時に懐から片手を抜く。ばらり、とその
指の間に挟まれた合計八本の匕首が、ジョルジュ目掛けて飛翔する。
 僅かに時間差をつけて放たれた八本の刃は、ジョルジュの咽喉や胴、頭蓋などの急所、並
びに腕や足などの行動を制限し得る場所にまで放たれている。

(;+゚∀゚)「チッ、効果が切れたか!」

 ジョルジュは飛来する八つの刃を前に、僅かに一歩身を引いて、ガンブレードのトリガーガー
ドに指を引っ掛ける。そしてガンプレイよろしく正式外典を眼前で回転させ、飛んで来た匕首を
悉く打ち落とし――――否、絶妙な力加減で刀身に絡め取っている。
 八本全てを刀身に絡めた所で回転を止めると、脇の地面に刃先を滑らせ、投げられた匕首
を並べる。一度刀を引くと、それを閑馬目掛けて思い切り弾き飛ばした。

( ´・ω・)「面白い芸をするな、小僧――――」

 閑馬は己の正中線に返って来る匕首を、大上段から振り落とした刀で両断し――――嗤う。
850 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/20(月) 21:58:46.21 ID:eGdCwnea0
 立ち上がった閑馬の身体は血だらけではあったが、傷は残っていなかった。ジョルジュの持
つ正式外典の周囲にあるべき方陣が、既に消えていたからである。
 ジョルジュはガンブレードのシリンダーを開くと、空になった薬莢を取り出した。火薬の燃焼を
示す煙を漂わせ、焼けた聖書の灰がゆらゆらと地面に落ちていく。
 ジョルジュが新たにシリンダーに詰めているのは、大きさだけなら.500S&Wによく似た巨大な
薬莢だった。但し弾頭の代わりにカバーを被せ、火薬と中に詰めた聖書のページが零れない
ようになっている代物であり、銃弾を発射するための弾薬とは大きく異なる。

 確かに、正式外典は閑馬永空を殺害し得る力を持っている――――しかし、それはあくまで
その力が持続している間のみ、だ。それ以外では彼を殺し得る力が無い。

(;+゚∀゚)「ふー……マジでタフだよな、アンタ……」

 そう言うジョルジュだが、閑馬との剣技は拮抗しているのか、相手も既に決して浅くは無い傷
を幾つか負っていた。特に肺を貫通した胸の刺し傷と、脇腹から肝臓を割って背骨で止まった
一撃が効いており、閑馬は久しく感じていなかった「痛み」に苦しんでいる。
 無論、ジョルジュも無傷とは言えない。斬撃は粗方躱しているが、身体中に小さな切り傷が幾
つもついている。負傷具合の差は、単に閑馬とジョルジュの避け方の違いだろう。

( ´・ω・)「笑止……この程度で倒れるようなら、儂はとうの昔に死んでおる……」

(+゚∀゚)「それもそうだな。攻撃は最上級だけど、受けるのはへたくそだし」

( ´・ω・)「クカカカカッ……御主は遠慮が無い喃」 (+゚∀゚)「よく言われるよ」

 言葉の応酬を返しながら、ジョルジュも閑馬も隙を見せようとはしない。むしろ、そうして会話
を繰り広げつつ、相手に隙を作ろうとしているのが判る。

( ´・ω・)「とは言え、このままでは埒があかぬな――――なれば、"埒をあける"としよう」
852 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/20(月) 21:59:17.38 ID:eGdCwnea0
 閑馬は井上真改蟲殺を鞘に収めると、それを横手に放り投げてしまった。代わりに腰に差し
ていたもう一本の刀に手を掛け、その無骨な柄をゆっくりと握る。

(+゚∀゚)「妖刀ニヒルか……出し惜しみとは、らしくないな」

( ´・ω・)「これが最後になる。出来る限り楽しんでやらねばと思うてな」

 緑色の妖気が漂うニヒルを脇に下げて、閑馬はくつくつと嗤っている。ジョルジュは何がおか
しいのかと訝しんだが、殺人鬼の思考を理解する必要は無いと考え直した。

(+゚∀゚)「さて、些か飽いたな……そろそろ終わりにしたいところだけど」

( ´・ω・)「面白い冗談を言う。儂はまだ満足しておらぬと言うに――――」

 冗句じみた台詞に口の端を曲げながら、ジョルジュは正式外典のトリガーを引く。落ちたハン
マーが聖書と聖油を詰め込まれた薬莢に引火し、刀身の周囲に方陣を組む。

(+゚∀゚)「そーぉいえば、アレに切られた事ってまだ無いんだよな……」

 以前に克ち合った時は様々な要素が重なり合ったせいで、あのニヒルに傷付けられないまま
閑馬に逃げられた。しかし、今度ばかりは流石に無傷とは行かないだろう。
 正式外典がそうであるように、妖刀ニヒルも恐らく単に傷付けるだけでは済むまい。斬撃の際
に何らかの付与効果を持っていると考えるのが妥当である。

(+゚∀゚)「それに斬られるとどうなるか、教えてくれたりしない?」

( ´・ω・)「何処の莫迦が己の手の内を敵に曝け出すと言うのやら」

 それはそうだ、と半ば呆れ気味に笑って――――ジョルジュは閑馬目掛けて剣を突き出す。

853 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/20(月) 21:59:51.16 ID:eGdCwnea0
 ……銃火が響く。内藤は手にしたミニミM249軽機関銃を突き出しながら、只管にトリガーを
引き続けていた。耳を弄する轟音と共に反動が身体を揺らし、床に空薬莢を撒き散らす。

 「クソッ、何だっ!」 「下がれ、莫迦!」 「死ぬ! 死ぬ! 死ぬ!」

 「ふざけやがってぶち殺s」 「ボブが撃たれたぁっ! 退け、退けぇ!」

 人間や吸血鬼の悲鳴が響くが、内藤はトリガーに掛けた力を緩めなかった。あっと言う間に
二百発の銀製弾を撃ち尽くし、すぐに引っ込めて再装填作業を行う。

(;^ω^)「来るなお! 来るなお!」

 向かって来る警備兵や吸血鬼を薙ぎ倒しながら、内藤は目的地へと続くらしいエレベーター
の前に立っていた。予想していた通り、通路の突き当たりには地下鉄のような車両があり、通
路もそこで行き止まりになっているから、道は間違っていないだろう。
 内藤はこの場所を確保してジョルジュを待つ事を決め、銃を手に敵の足を止めていた。既に
人間だけで三十人は射殺している筈だが、追撃の手は全く緩まない。まるで無限に涌いてくる
かのようだが、無論そんな筈は無い。しかし、こちらの弾は確実に減っている。

(;^ω^)「ジョルジュ遅いお……何やってんだお!」

 最後のボックスマガジンを装着して、内藤は角から銃口を突き出す。一瞬、装填の間に迫っ
てい たらしい吸血鬼と目があったが、慌ててその頭に銃口をポイントする。

(;^ω^)「うわおおおおぉぉぉぉっ」 「らああああぁぁぁっ」

 吸血鬼が鋭い爪を振り下ろすより先に、その頭が5.56mm銀製弾によって吹き飛ばされる。そ
のまま火線を通路の方に向けて、警備兵達をその場に釘付けにする。弾幕を張っている間は
敵も近寄れないだろうが、それでもこちらの弾薬は既に底を尽き掛けている。

854 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/20(月) 22:00:25.96 ID:eGdCwnea0
(;^ω^)「あぁ、もう――――これが弾切れしたら、先に往っちゃうお!」

 言った瞬間に銃火が止んだ。一瞬の沈黙の後、通路の向こうから敵が撃ち返して来る。

(;^ω^)「うっきょおおおぉっ! 次、次の銃は!」

 角に引っ込み、慌ててゴルフバッグを探る内藤だったが、手に触れるのは刀剣類の柄ばかり
で、一向に銃器の触れる気配が無い。自分の言葉は既に忘れている。
 弾薬装填の暇を惜しんだので予備の弾は大量にあるが、M249に装填出来るNATO標準の三
十連アルミ弾倉は使い切っており、残っているのはショットシェルだけだ。無論、ショットガンは
全て道中に落として来てしまったので、最早デッドウェイトにしかならない。
 ちらり、と角から先を伺うと、警備兵達がこちらに歩いてくるのが見えた。反撃を警戒して歩調
は然程早くないが、すぐにこちらまで到達してしまうだろう。

(;^ω^)「か、かくなる上は……ジョルジュ、ごめんだお!」

 内藤は今ここに居ない友人の名前を叫び、バッグから取り出した手榴弾のピンを抜き、向か
って来る警備兵と、線路の上にある車両の中に放り投げた。
 五秒の遅延信管が作動するのを待たず、エレベーターの方へと走る。扉の中へと転がり込む
と同時に爆音と悲鳴が響いたが、最早敵に構っている余裕は無かった。

(;^ω^)「はぁ、はぁ……あ、あらかじめ扉を開けておいて良かったお」

 挟撃を警戒してエレベーターを一番上に上げておいたのだが、それが脱出に使われるとは思
わなかった。開閉ボタンを押して壁に背を預けつつ、レイジングブルを抜く。
 角から現れた吸血鬼に向けて、エクスプローダーを撃ち込む。狙いは適当だったので命中は
しないが、それでも着弾点から突如吹き上がる白炎に、吸血鬼が自ら飛び込む。

 五発全て撃ち尽くすと同時に扉が閉まり、エレベーターが下がっていく。手先で機械的にリロ
ードを終えた内藤は、荒い呼吸を繰り返しながら、ゆっくりとその場に腰を降ろした。
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