598 :メンバー紹介 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 14:49:24.71 ID:yDWVaCRG0
>第十班
(+゚∀゚):ジョルジュ長岡。人呼んで「アナイアレイター」他。

( ^ω^):内藤ホライズン。現在は特に呼称無し。

>第五班
( ,' 3 ):ブレイド。人呼んで「デイウォーカー」

( ゚∀゚):ダンテ。人呼んで「デビルメイクライ」

>第四班
(*゚∀゚):レイン。人呼んで「ブラッドレイン」

(*゚ー゚):トリッシュ。人呼んで「デビルネバークライ」

>第十二班
(#゚;;-゚):日向夕介。人呼んで「夜刀の神使い」

( ゚д゚ ):コナー・マクマナス。人呼んで「処刑人(兄)」

(,,゚Д゚):マーフィ・マクマナス。人呼んで「処刑人(弟)」

(メ・∀・):フリッツ・ハールマン。特に呼称無し。

>第七班
( `Д´):秋山ノブ。人呼んで「デビルサマナー」。仲魔が多数。

                                          ……他七班。
603 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 15:18:09.34 ID:yDWVaCRG0
( `Д´)「そう、そう……そのまま押し込んで、プライマーでフタしちまえ」

(;^ω^)「こ、こうですかお?」 ( `Д´)「そうそう、上手じゃねーか」

 あの会議から数日後。ブーンは石鹸工場に通っているハンターの一人に、銃弾の作り方を
教わっていた。ハンターと言っても、これも矢張り吸血鬼専門では無いらしい東洋人だ。
 黒いウルフカットの頭にバンダナを巻いている、目つきの鋭い男だ。肘と肩にプロテクターの
ついた革ジャンを着込み、ゆったりとしたレザーパンツにもニーパッドを付け、足元は対地雷デ
ザートブーツ、手にはグローブを嵌めた、如何にも戦闘装備の格好。
 名前を秋山ノブと言う。外見からすればあまり戦闘向けには見えないが、何と彼はたった一
人でポイントを任されている。無論、それには何か秘密があるらしいが……

(+゚∀゚)「あれー? ノブさん、内藤と何楽しそうにやってるの?」

 そうして額を突付き合わせて作業をしていると、両手に大量の弾薬箱を抱えたジョルジュが
やって来た。推定でも数十キロはありそうだが、その顔は涼しいものである。

( `Д´)「おう、ジョルジュか。いや、内藤がタマ作るの教えてって言うもんでな」

(;^ω^)「結構難しいお……でも、ほら、見てくれだお!」

 弾薬箱を下ろすジョルジュに、内藤は自作したカートリッジを差し出した。弾頭部分に火薬と
雷管を詰め込んだ、所謂エクスプローダーと言う弾薬である。

(+゚∀゚)「あれ? エクスプローダーってあまり威力が無いって言うんじゃ……」

( ^ω^)「それがそうでも無いらしいんだお。"僕達"の力だと思うんだけど……」

 通常、エクスプローダーは弾頭部に仕込んだ火薬量に比例して威力が上がる。火砲などに
使えば威力も高いが、拳銃弾程度の弾頭では、大量の炸薬は詰められないのだ。

604 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 15:18:36.38 ID:yDWVaCRG0
( ^ω^)「どうも僕がエクスプローダーで撃った場合、普通の人が撃つよりも威力が上がって
いるらしいんだお。何か、撃つと弾丸が炎を纏ったりとかするし」

( `Д´)「俺が使う「氣の弾丸」みたいなモンなんだろうが……威力は俺より高いぜ」

(+゚∀゚)「へー……今まで何人かクルースニクを見て来たけど、そういう事例は初めてだな」

( ^ω^)「そうなのかお? でも、クルースニクは炎に変身出来るとか……」

(+゚∀゚)「普通のクルースニクは、平常では火炎を扱えないんだよ。お前の場合は「自分から離
れる在る一定以上の発火物体」の燃焼力を上げられるんだろうな」

 詳しい事は判らないけど、と言って肩を竦めるジョルジュに、ノブが頷く。
 クルースニクが特殊な能力を使うように、ノブも弾薬に特殊な"氣"を篭めて撃ち出す事が出
来るらしい。そのおかげで、吸血鬼相手に銀の弾を使わなくても良いのだとか。
 以前は唯の人間だった彼が、どうしてそのような力を得るに至ったのか……気になったが、
ジョルジュから聞くのを止められていた。何か深い事情があるらしいが。

( `Д´)「それじゃ、俺はそろそろ往くわ。良いクリスマスを」

 これが今生の別れになるかもしれない――――確かにそうである筈なのに、ノブはまるでこ
れからちょっと釣りに往って来ると言うような、気楽な調子で去っていく。

(+゚∀゚)「えぇ、また明日……じゃなくて明後日ー」 ( ^ω^)「……また、明後日」

 ジョルジュの返答も同じく軽い。本当にこの人達は、これから死地に赴くのだろうか。

(+゚∀゚)「最初から死ぬ積もりで行くよりは、このぐらいの方がいいだろ」

(;^ω^)「僕の心を読まないで欲しいお……」

605 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 15:19:23.79 ID:yDWVaCRG0
( ^ω^)「それで、ジョルジュはこれからどうするんだお?」

(+゚∀゚)「俺も弾薬詰めるから。ここ、一緒に居てもいいか?」

 好きにするお、と答えると、ジョルジュは内藤の正面に座って、腰のホルスターから一挺の銃
を手に取った。軍用の木箱から白い匣を取り出して、銃の弾倉に篭めていく。

 ジョルジュは刀剣類に関してはかなり凝っているようだが、銃器類はむしろ手に入れ易く交換
も容易なものを好んでいた。M4A1やベネリなど、米軍で制式採用されている銃器や装備を主
に使っているのは、ここに支給されてくる銃器類が主に米軍から配給されているものであるた
めらしい。これもジョルジュのコネだと言うから驚きだ。何処の迷彩君かと。
 彼が手にしているグロック17は、9mm×19弾を使用するオーストリア製のポリマーフレームハ
ンドガンである。ポリマー故に軽量で、作動も良好。ジョルジュ曰く「撃ってて疲れない銃」だと
か。ずっと使い続けていく道具と言う意味なら、かなり優秀な部類に入るだろう。

(+゚∀゚)「……いよいよ明日だな。内藤、気分はどうだ?」

 突然、エクスプローダー弾を作り続ける内藤に、ジョルジュが訊ねてきた。視線は下に落とし
たままで、手元も機械的に弾薬を詰めている。唯、その口だけが動いていた。

( ^ω^)「待ち切れないお……早くツンを助けに往きたいお」

(+゚∀゚)「ふーん。意外と肝が据わってんだな。ビビってるのかと思ってたぜ?」

(;^ω^)「まぁ、ビビって無いって言ったら嘘になるお……怖いのは、本当だし」

 今日までにどれほどの数を殺したのかは判らないが、それでもまだ恐怖はある。唯、それは
吸血鬼と対峙する事への恐怖であり、彼等を殺す事への恐れとは違う。

 むしろ――――自分がクルースニクに"なっていく"恐怖の方が勝っていた。

606 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 15:19:45.33 ID:yDWVaCRG0
( ^ω^)「何だか……何時の間にか、奴等を殺す事を悪いと思わなくなっているお」

 以前、と言うほど昔では無いが、初めて吸血鬼を殺した時は、自分が殺人を犯したと言う事
が信じられなかったし、信じたくなかった。夢であれば良いとも思っていた。
 だが、冷静になってみると、自分が気にしているのは被害者に対する罪悪では無いのだ。ど
ちらかと言えば、自分は人を殺したのだから苦しまなければならない――――と言う、半ば義
務的な感情で悔いていたような、そんな形容し難い感覚を抱いている事に気付いた。

 それは詰まり、誰かを殺していながら、それを悪いと思わない人間だと言う事――――

(+゚∀゚)「まぁ、それもクルースニクの特徴と言えば特徴なんだけどな……」

( ^ω^)「そうなのかお?」

(+゚∀゚)「俺達にとっちゃ、吸血鬼を殺すのは息を吸うのと同じぐらい自然な事だ。その自然な行
為をするのに、毎回罪悪感を伴っていたら、心が持たないだろう?」

 そういうものなのだろうか。ジョルジュは割り切っているようだが、内藤はまだ……自分がそん
なモノになってしまったと、納得する事が出来ずに居る。

 苦悩する内藤を横目に見ながら、ジョルジュはどうでもいいと言う風に続けた。

(+゚∀゚)「そういえば……悪かったな」 ( ^ω^)「何がだお?」

(+゚∀゚)「騙してた事とか……それはいいけど、その、お前のおふくろさんの事とか……」

 思い出したくない事を言われて、内藤の顔が僅かに歪む。あの事件は内藤の人生そのもの
を狂わせた出来事であったし、それでジョルジュに謝られても複雑なだけだ。
 では、今も気にしているかと言えば、そうでも無い。確かに母親を自分の手で殺さなければな
らなかったのは確かだが、妙に楽な気分にもなっていたのだ。

607 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 15:22:09.11 ID:yDWVaCRG0
 母親が嫌いだったのでは無い。愛していたし、今も愛している。だが、辛かった。このままずっ
と、母親の世話をするために生きなければならないと思うのが、厭だった。
 もうそんな事に悩む必要は無くなった。そう思うと――――あまりこういう事を考えるのは良く
ないのだろうが――――嬉しいような悲しいような、複雑な気分だった。
 これを誰かに話す積もりは無い。こんな感情は、地獄の底まで持っていく。

( ^ω^)「……別にジョルジュは悪くないじゃないかお」

(+゚∀゚)「いや、ほら……お前の事を外に誘ったの、俺じゃないか。俺と一緒に出なければ、もし
かしたらおふくろさんが死なずに済んだかもしれないし……あと、ガンショップでお前を一度引
き止めた時も、あの時止めなければ、助けられたかもしれないし……」

 そういえば。しかし、それでもジョルジュは何も悪くないだろう。それで勝手に罪悪感を抱かれ
ても、却って不快なだけだった。自己嫌悪なら、誰でも出来るのに。

( ^ω^)「もしかして、ずっと気にしていたのかお?」

(+゚∀゚)「え、あぁ……まぁ、な。もしかしたら、お前がこちらの世界に来なくても済む方法だって
あったかもしれないと思うと、正直、やってらんなくてよ……」

 そうして俯くジョルジュの背中は、今まで見た事が無いほど小さかった。
 彼がどれだけ自分を責めているのか、内藤には判らない。しかし、内藤は初めて、ジョルジュ
の内面に――――それこそ手先だけだが――――触れたような気がした。

( ^ω^)「本当に悪いと思っているなら――――」 (+゚∀゚)「ん、な、なんだ?」

( ^ω^)「――――悪いと思ってるなら、ツンを助けるのに全力を出して欲しいお。死んだ人は
もう戻ってこないけど、生きている人を助ける事は出来るから」

 だから、もういい。過去を顧みるぐらいなら、前を向いて歩き続けよう、と内藤は言う。

608 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 15:22:37.30 ID:yDWVaCRG0
(+゚∀゚)「そう、か……うん、そうだな……お前の見せ場を盗らない程度に、頑張るよ」

( ^ω^)「そうして欲しいお。ツンが間違ってジョルジュに惚れたりしたら困るお」

(+゚∀゚)「あは、はっ。そりゃあ、ちげーねえな」

 疲れたように笑うジョルジュの頭を軽く叩いて、内藤は弾薬を作る作業に戻った。

(+゚∀゚)「あ、そうだそうだ。こいつを渡そうと思ってたの忘れてた」

 ジョルジュはグロックのマガジンに粗方弾薬を詰め終えると、何やら大きなアルミケースを取
り出した。縦一メートル半で、一見すると弾薬箱に見えない事も無い。

( ^ω^)「これ、何だお? 箱には『重要物資』ってだけ書いてあるけど……」

(+゚∀゚)「連中をぶっ殺す切り札って所かな――――ちょっと退いてな」

 言いながら、ジョルジュはケースの金具を外して、布に包まれた長い板のようなものを取り出
した。梱包を解くと、何とも形容し難い得物がその姿を現す。

 聖句の刻まれた幅の広い片刃の長剣の根元に、リボルバーの機関部を取り付けたような代
物に見える。柄は刀身と平行な剣の握りで、黒塗りのポリマー製だと思われる。
 名前を付けるとすれば、「ガンブレード」とでも言うのか。リボルバー部分の銃身は空いてい
る訳では無く、刀身部分に直接繋がっている。口径は比較的大きめだ。

(+゚∀゚)「ヴァチカンの方で作られた『正式外典』って奴さ。トリガーを引くと聖書を織り込まれた
薬莢に雷管で引火、刀身の聖典としての力が発動し、刀身の周りに方陣を組み上げる仕組み
になってるが……まぁ、理屈はどうでもいいか? 判んないだろ」

( ^ω^)「全然判んないお。でも、正式外典……って、何か由緒正しいものなのかお?」

609 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 15:22:56.09 ID:yDWVaCRG0
(+゚∀゚)「んー……詳しい出自は秘密だが、異端審問騎士団の団長さんが使ってて、ある吸血
鬼を滅ぼす時にぶっ壊されたけど、破片を回収して再生したものだとか」

( ^ω^)「ふーん……でも、何だか凄そうなのは判るお」

 内藤はジョルジュから渡されたそれを、軽く手で作動させてみた。先端と柄元に重心が寄っ
ている、かなり特殊な重量バランスである。取り回し易い代物では無い。

(+゚∀゚)「吸血鬼に対する「滅び」の純粋概念である概念武装なんだとさ。不死身のものに寿命
の概念を叩き込み、不死性を失わせて倒す――――まぁ、何から作られているのか知った事
じゃないが……こいつさえあれば閑馬もコンラッドもマグラも殺せるだろう」

( ^ω^)「シズマ……って、あのサムライかお?」

(+゚∀゚)「そうだよ。首を落とそうが心臓貫こうが絶対に死なないあのバケモノさ」

 ジョルジュが「殺し切れない」と言った相手を「殺し切れる」力……それがどれほど凄まじいも
のであるかは、想像に難くない。内藤もこの剣の力がやっと判って来た。

(+゚∀゚)「他にも色々と聖遺物やら何やら混ぜ込んだから、大概の魔術行使を叩き斬れるとか」

(;^ω^)「魔術を斬る……って、どんだけなんだお」

 と言うか、そんな代物を自分が使ってしまっても良いのだろうか。

(+゚∀゚)「そこは心配しなくていいぞ。これと同じのが、あと十一本ある」

(;^ω^)「そんなにあるのかお!? て言うか、十一本って事は……」

(+゚∀゚)「詰まり、襲撃班一つに付き一本用意されてるって事だ。スゲーだろ?」

610 :腹痛の吸血鬼狩人 ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 15:24:05.72 ID:yDWVaCRG0
(+゚∀゚)「そういえば、前にブレイドさんの剣を折った時……意外とすぐに赦してくれたろ?」

( ^ω^)「あぁ、
>>317の最後かお?」 (+゚∀゚)「そうそう」


> ( ,' 3 )「……それとジョルジュ」 (+゚∀゚)「あ、はい。何でしょうか?」

>( ,' 3 )「例の奴、一本俺にくれ。いいだろ?」 (+゚∀゚)「え……はぁ、判りました」


(+゚∀゚)「あの時の一本って、こいつの事だったんだぜ。どうだ、この伏線の回収具合!」

(;^ω^)「何の話をしてるんだお……でも、合計十二本ってのはどういう事だお?」

 確かに、襲撃班は十二班ある。元は一つだったものをそれだけ分割したら、得られる力が目
減りしてしまうのでは無いか――――しかし、この刀剣が持つ力は確かなものだ。

(+゚∀゚)「あー、それは知り合いの剣製の魔術師に少々頼み込んで……」

( ^ω^)「剣製……? ま、切り札が多いに越した事は無いお」

 あのシズマと言うサムライが、コンラッドの近くに待ち構えている事は間違いない。ジョルジュ
か内藤か、或いは他の誰が戦うかは知らないが、奴は殺さないとならない。
 恨みがある訳では無い――――が、あれは既に人間とか吸血鬼とか、そういうモノとは関係
無い代物になっている。話し合いで宥められる相手では、無い。

 確かに誰かを殺す事が良いとは思わない……けれど、自分にとって、彼を殺してでも手にし
たいものがある。そのためならば、誰を殺す事も厭わない。

 そうしてジョルジュ達は、明日に備えて只管に武器を作り続けた。
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