590 :ヽ(`Д´)ノ ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 14:40:25.57 ID:yDWVaCRG0
 銃爪を弾く。立て続けに放たれる5.56mm×45弾が、立ち向かって来る喰人鬼達を薙ぎ倒す。
既にどれだけの弾薬を撃ち込んだのか判らないものの、敵の数は確実に減っている。
 喰人鬼の群れを抜けて、吸血鬼が襲い掛かって来るのが見える。数日前までは捉える事す
ら出来なかったその動きも、今では何とか追い付ける程度に判っていた。
 しかし、放っておく。何時でも対処出来るから、目前まで来た瞬間に倒してやればいい。
 そう思っていた内藤の真横から、突然喰人鬼の腕が突き出し、手にしたライフルを掴んだ。

(;^ω^)「し、しま」 (+゚∀゚)「あーらよっと」

 振り払おうとする内藤の目前を、ジョルジュの握るグロック17が通過した。ダン、と耳に残る銃
声を発して、喰人鬼の腕がだらりと垂れ下がる。動かなくなった。

(+゚∀゚)「来るぞ、内藤!」 (;^ω^)「ま、任せてくれだお!」

 喰人鬼の群れを盾にしていた吸血鬼が、漸う内藤達の居る方に襲い掛かって来た。内藤は
左手のセイフティを外し、拳を握り込み――――突き出す。ぞぶり、とあまり好ましくない手応
えと共に、耳を弄する悲鳴が響く。顔を上げると、苦悶の表情を浮かべる吸血鬼が。
 そう思った次の瞬間には、既に吸血鬼は灰と化していた。その命の残滓を感じる暇も無く、内
藤とジョルジュは手にした銃を撃ち鳴らし、遅い来る喰人鬼達を殺していく。

(;^ω^)「喰人鬼達が止まらないお!」 (;+゚∀゚)「畜生、また"親"じゃないのか!」

 狂ったように牙を剥き出す喰人鬼に痺れを切らしたジョルジュが、グロックをホルスターに収
めて、代わりにコートから三本の鉄パイプのような長剣を抜き放っている。内藤も義手に仕込
んだ仕込み刀と銃剣付きのM4A1を構え、接近戦闘の構えを取った。

(+゚∀゚)「さぁて、皆々様方。ようこそ、この素晴らしき殺戮空間へ――――」

 嗤うジョルジュを見ながら、内藤はふと、ここ数日の出来事を思い返していた――――

591 :ヽ(`Д´)ノ ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 14:41:53.67 ID:yDWVaCRG0





 ――――クリスマスも差し迫ったある日。






592 :ヽ(`Д´)ノ ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 14:42:27.24 ID:yDWVaCRG0
(+゚∀゚)「……それでは、第二回コンラッド・ヴァルカン討伐作戦会議を始めます」

 会議室の壇上に立ったジョルジュが、手元のノートパソコンを弄りながら言った。

(+゚∀゚)「先日のラウンジビルに対する襲撃では、名のある吸血鬼達を消滅させる事が出来まし
た。これもひとえに皆様の御蔭ですが、我々には乾杯をする暇も在りません。これを」

 言って、ジョルジュはノートパソコンのキーを操作した。会議室の正面に設置された巨大なス
クリーンに、ニューヨーク市街地の広大な地図が表示される。
 そこには、数え切れないほどの赤い点があり、それが吸血鬼の根城と思しき場所を示してい
るのは誰もが知っている。しかし、その中に一際目立つ大きな紅点が幾つかある。

(+゚∀゚)「これは今までに集めた情報を元に、ニューヨークで特に吸血鬼が多いとされる場所を
表記した地図です。見れば判ると思いますけど、この地図の大きいマーク……特に吸血鬼が
多い巣が、規則的に並べられています。それを繋ぐと……判りますか、ブレイドさん」

( ,' 3 )「見覚えがあるな……これは、どこかで見た――――なるほど、そうか」

 突然指されても動じずに答えた黒人の男性に、ジョルジュが満足げに頷いた。再度キーを操
作して、今度は新しいウインドウを表示、コンピューターグラフィックで描かれた、奇妙な儀式の
様相を映し出す。既に何度も見たせいか、会場内の狩人達が息を呑む。

(+゚∀゚)「魔術的に見ても幾何学的に見ても、この特に重要な吸血鬼の巣は、マグラ復活の儀式
における召喚陣の形状を模しています。これは正しく――――」

(#゚;;-゚)「連中は、このニューヨークそのものを儀式の場とする積もりか」

 ジョルジュの後を繋いだのは、黒い背広を着た顔に深い刀傷のある東洋人だった。何処か憂
いを帯びた表情で、右手に嵌めた手袋を大事そうにさすっている。

593 :ヽ(`Д´)ノ ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 14:43:14.45 ID:yDWVaCRG0
(+゚∀゚)「その通りです、夕介さん。彼等は、小さな遺跡を使った小規模な儀式を止めて―――
―手っ取り早く、この街全体を巻き込む手段を取ったようです」

 吐き気がする、と誰かが言った。言わずもがな、それはこの場の誰もが同じ気持ちである。

(+゚∀゚)「本来ならば現存勢力を使って、敵拠点を一個ずつ潰していく予定だったのですが……
残念ながら、前回の戦いで多くの人員を失ってしまい、それは不可能となりました」

(,,゚Д゚)「半分ぐらいはお前がシャンデリア落としたせいだったんだがな」

(;+゚∀゚)「す、すいません……お詫びにその人達の分も働くので、許して下さい」

( ゚д゚ )「なんか本気でやりそうだよな……いや、いいけどさ」(;+゚∀゚)「はうぅ……」

 ヴァチカン所属の処刑人兄弟の突っ込みを受けながら、ジョルジュは説明を続ける。

(;+゚∀゚)「と、とにかく。そういう訳で現在集められる限りの人材で、コンラッドの行う儀式を止め
ねばなりません。まぁ、今更説明する必要は無いかもしれませんが……」

( ゚∀゚)「問題なんかねぇだろうが。クセェの我慢してキリングジャンキー共に片っ端から声を掛
けたんだ。これで駄目なら……悪いが御手上げってトコだな?」

 赤いコートを着た銀髪の男の言葉は、悪い冗談でしか無い。この場にいるハンターの半分以
上は、一度ならず二度までも「世界の危機」を救ったヒーローなのだから。
 一昔前のマーヴルですら有り得ないような英雄達の集団に、勝てるモノなど在る筈が無い。
ジョルジュはそうですねと頷いて、作戦の概要説明を続けた。

(+゚∀゚)「はい。現在残っている我々は、それぞれが一騎当千の実力を持った精鋭です。敵対
吸血鬼の全てを倒す事は無理でも、その根幹部分にある最重要拠点を破壊する事は充分に
可能だと思います。しかし、それ以外にも問題はありまして――――」

594 :ヽ(`Д´)ノ ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 14:43:50.56 ID:yDWVaCRG0
 ジョルジュがレーザーポインターで指し示したのは、魔方陣の中心……即ち、この儀式の根
幹に当たる、今回の作戦の最終目標とも言える場所だった。

(+゚∀゚)「この場所、何も無いんですよ」 ( ,' 3 )「……何も無い、とは」

(+゚∀゚)「何らかの建築物とか、地下へと続く入り口とか、そういうのが無いんです。まさか連中
もまっさらな空き地の上で儀式を行う筈がありませんから、矢張り地下へと行くのが正しいと
思うのですが……それが一個も見当たらないのはおかしいでしょう?」

(,,゚Д゚)「なんだよそれ……そこが一番大事なのに、手詰まりか!」

(+゚∀゚)「まさか。赤外線探査を使って、地下に何があるか調べました」

 やるじゃない、とか言う声が聞こえた気がしたが、ジョルジュはネタだと思って無視した。代わ
り、スクリーンに映された地図に、幾つもの青いラインを追加する。

(+゚∀゚)「中心部にはかなり大きな空洞があるようですが、凄まじく地下深くに作られているらしく
構造は不明。核攻撃にも耐えられる深度に存在しているため、掘削作業によって到達する事
は不可能ですが、この場所へ至る通路を発見する事が出来ました」

( ゚д゚ )「それがこの青い線って事か。地道な作業だな……って、あれ?」

(+゚∀゚)「気付きましたね。この青いラインは、中心部から周囲の赤い点……即ち、儀式におけ
る重要拠点に繋がっているのです。と言うよりは、生贄とした吸血鬼達の力を中心部へと注ぎ
込むためのラインなのでしょう。それ以外の道は発見出来ませんでしたが」

(メ・∀・)「なるほどなぁ……流石腐れ牙持ち(ファンギー)、悪知恵だけは働くってワケだ」

(+゚∀゚)「そうですね。ですが、これは我々にとって、逆に好都合です。少なくとも、中心部襲撃
と各拠点襲撃の班は同一視してしまっても構わないでしょうから」

595 :ヽ(`Д´)ノ ◆Vampja/kBo :2006/03/19(日) 14:44:30.01 ID:yDWVaCRG0
(+゚∀゚)「ここまでが概要の説明となります。では次に、今作戦の具体的な内容について説明し
ますので、手元の資料を……配りましたよね? うん、配ってる配ってる」

 スクリーンが収納され、会議室の中に明かりが点る。外は既に夕暮れに近く、会議が終わっ
たら直ぐにでも新たな獲物を狩りに出掛けようと考えている者も少なくない。
 部屋の中に居た者達はジョルジュに言われた通り、予め渡されていたプリントに視線を落と
した。そこには、自分を含む今作戦参加メンバーの名前が表に纏められていた。

(+゚∀゚)「内容としては至極単純。人員を十二の班に分割し、それぞれの拠点から攻め入る事と
なります。各拠点にある「生贄」を浄滅した後、各々の判断で中心部へと移動、コンラッドを襲
撃します。まぁ、要するに早い者勝ちって奴ですけど、無理はしないで下さい」

 何か質問は、と訊ねたジョルジュに、サングラスを外したブレイドが訊ねる。

( ,' 3 )「おい、どうして俺がこんなハーフフリークスと一緒なんだ?」

( ゚∀゚)「そりゃあこっちの台詞だぜ。よりによってこのニグロなんて!」

 どうせならあっちが良かった、と赤毛のダンピールを指したダンテの後頭部に、殺傷力すら在
りそうな勢いで平手が叩き付けられ、赤いコートが大きく傾いだ。

(*゚ー゚)「ダンテ? 口説くのは勝手だけど、命の保証はし・な・い・わ・よ?」

(;゚∀゚)「ほ、ほんのジョークだぜ、トリッシュ! くそ、いてえぇ……」

(;+゚∀゚)「え、あ、そのですね、一応全ての班が同一の権利を得られるよう、戦闘力が均一にな
るよう調整したので、チームワークはあまり考えていませんでした」

 同一の権利――――即ち、誰もが平等に、コンラッドを殺害するチャンスがある訳だ。
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