- 2
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:19:02.27 ID:W8fZlT2d0
- ( ^ω^)「・・・殿が死んじゃったお・・・」
VIP藩主、耳無しモナの輔博之('ー`)が死んだのはついこないだ。
江戸でえらいことやらかして、切腹したと聞いた。
( ^ω^)「殿・・・なんでやらかしちゃったんだお・・・」
- 4
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:21:42.22 ID:W8fZlT2d0
- ( ^ω^)「はあ・・・藩も取り潰しになっちゃったし、どうしたもんかお・・・」
( ´∀`)「ブーン!ブーンはおらぬか!」
( ^ω^)「あ、はいはい、なんですお。モナーさま」
モナの輔が長子、モナ次郎勝成であった。御年14。
- 5
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:22:41.15 ID:W8fZlT2d0
- ( ´∀`)「あのな、藩がなくなったな?」
( ^ω^)「はい、そうですお」
( ´∀`)「なぜじゃ?」
( ^ω^)「・・・殿様がやらかしたからですお」
( ´∀`)「なにをじゃ?」
- 6
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:24:28.19 ID:W8fZlT2d0
- なにを・・・
それは知らされていなかった。
「モナの輔儀、城内にて尋常ならざる振る舞いにおよび、切腹申し付けられたり。
翌日見事果たしたり」
これが江戸からの報告の全てであった。
( ^ω^)「それは・・・わからないですお」
- 8
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:25:56.98 ID:W8fZlT2d0
- ( ´∀`)「ブーンよ、それではいかぬ。それではいかぬぞ」
( ^ω^)「と申されますと?」
( ´∀`)「わしはな、父上から『好奇心、それイカス』と教わったのじゃ」
( ^ω^)「はあ」
( ´∀`)「だから、わからないことはとことん追究するのじゃ」
- 9
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:27:52.68 ID:W8fZlT2d0
- ( ^ω^)「そうは申されましても、真実は闇の中にございますお
いまさら何がおこったのかは判り申さぬお」
( ´∀`)「江戸いこう」
しまった。
ブーンは後悔した。
この若君にはこれがあった。
- 10
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:29:16.34 ID:W8fZlT2d0
- ( ´∀`)「父上はこうも申されていた。『現場百回』と」
( ^ω^)「(言ってた・・・)」
( ´∀`)「この件における現場とは、江戸城じゃな?」
( ^ω^)「・・・そうですお」
( ´∀`)「ならば江戸城じゃ。行こう」
- 11
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:32:36.88 ID:W8fZlT2d0
- VIP藩は三河の小国である
肥沃ではあるものの、山の多い土地は耕作に向かず、
藩主モナの輔の発案のもと、さまざまな副産品を売ることで
財政は成り立っていた。
利発な藩主であった、と思う。
また領民を愛されていた。
その一粒種の、無邪気な願い・・・。
江戸へ・・・。
- 12
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:34:14.15 ID:W8fZlT2d0
- ( ^ω^)「・・・困難ですお」
( ´∀`)「不可能か?」
ブーンはなんともうれしくなった。
モナの輔と同じ物言いであった。
( ^ω^)「・・可能ですお!」
( ´∀`)「ならば支度せい!40秒で支度せい!」
( ^ω^)「わかり・・いや、半刻はくださいお!」
- 13
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:34:51.55 ID:W8fZlT2d0
- そして二人は東海道を東へ、>>1はトイレ休憩へ行くのであった
- 18
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:46:19.00 ID:W8fZlT2d0
- 腰に佩びたり脇差二振り、ブーンは迅さで剣を振る
重き刀はブーンに合わぬ、迅きこと迅きこと剣の道
速さを旨とする剣の使い手、ブーンならではの二本脇差は
城下で知らぬものはなかったが、道中のその姿は
刀を持てぬ貧乏侍の姿に見えた
( ´∀`)「やはりお前に刀は似合わぬのう」
- 19
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:48:56.84 ID:W8fZlT2d0
- ( ^ω^)「この方が刃の身が厚くこしらえられますお」
( ´∀`)「うん、そうじゃそうじゃ。お前にはそれがよい」
着いたは岡崎
神君の国
- 20
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:51:16.27 ID:W8fZlT2d0
- 岡崎は東海道の要所らしく活気溢れ、
また神君の国としての誇りがあった
味噌が香るのは岡崎ならではであった
( ´∀`)「腹が減ったのう」
( ^ω^)「なにか召されますかお」
一軒の飯屋に入った二人である
- 21
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:52:59.27 ID:W8fZlT2d0
- ( ´∀`)「店主、なにか食わせ」
店主「へえへえ・・こりゃあかわいいお侍さまですな
当地の味噌はご賞味くださいましたかな?」
( ´∀`)「食うたことがない。では味噌をくれ」
店主「へえへえ、ではシジミ汁を」
- 22
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:54:27.56 ID:W8fZlT2d0
- ( ^ω^)「これは・・!ハフハフ!ズリュ!ズババー!」
( ´∀`)「ひどい音を立てるのう・・・」
( ^ω^)「ジョビジョバ!ジョバー!」
( ´∀`)「・・・」
( ^ω^)「・・・ああ!ごちそうさまだお!」
( ´∀`)「・・・おぬし、作法はどうした」
- 23
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:55:44.07 ID:W8fZlT2d0
- ( ^ω^)「こういうところのメシは作法を無視して食べるのが・・」
( ´∀`)「黙れ。お前は侍であろうが」
( ^ω^)「は・・。は・・?それはそうですが・・・」
( ´∀`)「主人に恥をかかせるな」
( ^ω^)「はあ・・・」
- 24
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:57:30.82 ID:W8fZlT2d0
- おやぁ?
なにかおかしい。
藩はお取り潰しになったのだ。
モナーは既に君主世子ではなく、ブーンも家来ではない。
モナーの江戸行きに同行しているのは、あくまで前藩主への忠義から・・
( ^ω^)「あの・・・若君、状況を説明しますお」
- 26
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 11:59:30.74 ID:W8fZlT2d0
- ( ^ω^)「・・これこれこういうわけで、いまのブーンはモナ様の家来にはござらんお
だから『主人に恥をかかせる』ということにはなりませんお」
( ´∀`)「・・・いいたい事はそれだけか」
( ^ω^)「はあ・・・」
( ´∀`)「・・・」
( ´∀`)「忠義を知らぬ畜生め。もうよい、どこなりと行け」
- 27
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:01:19.61 ID:W8fZlT2d0
- ( ^ω^)「え・・・」
( ´∀`)「店主!馳走になった!美味であったぞ!支払いはこのマヌケ顔がいたす!」
店主「へぇ、またのお越しをー」
店主は奥へ行ってなにやら下ごしらえしている
気がつけば、他の客もいない
ひとり残されたブーンである
( ^ω^)「・・・・・えええええ!??」
- 28
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:04:39.97 ID:W8fZlT2d0
- その日の夜、ブーンは近くの酒場で飲んでいた
( ^ω^)「・・・!なんだおあの態度は!ブーンは善意から同行つかまつったにすぎぬお!
なんで偉そうに!やってられるかお!」
猪口のヘリに塩をつけた「ソルティ犬」でガンガンやるブーンである。
( ^ω^)「ふざけんなお!ひとりじゃなにもできぬくせに!
どこぞでのたれ死ね!アホ若!」
酒は飲んでも飲まれるな。
飲まれたブーンはそのまま眠りについた
- 29
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:07:12.89 ID:W8fZlT2d0
- 翌朝
ブーンは痛む頭を抱えつつ、飲み屋の二階から降りてきた
( ^ω^)「いてて・・・飲みすぎたお・・・ぅおえぷ」
('A`)「ちょ、お侍さん!戻すなら裏の川でやっとくれよ!」
( ^ω^)「ああ、ああ、すまんこ。可能ならそうするお・・・ぅおえぽ」
('A`)「おい!裏に行けって!・・・・・あ〜あ〜・・・」
- 30
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:09:02.50 ID:W8fZlT2d0
- 酒屋の下働きのドクオに背負われ、ブーンは店の裏に寝転がった
ドクオはブーンの吐瀉物を片付けている。('A`)こんな顔で。
( ^ω^)「・・・せせらぎが気持ちいいお・・・」
頭半分を川につけたまま、ブーンは言った
そこに船がきた
そしてぶつかった
- 31
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:10:32.70 ID:W8fZlT2d0
- ( ^ω^)「うごえっ!?」
船頭「あれっ?なにかある?・・・あ、人だ。」
( ^ω^)「・・・いっ・・・・・・・たい・・お!!」
船頭「だめだよそんなところに頭出してちゃあ。死ぬよ」
ボチャン
- 32
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:11:59.88 ID:W8fZlT2d0
- 何かが船から落ちる音がした
続いてバッシャバシャと暴れる音
そして、・・・わっぷ・・・たす・・・わっぷ・・・たすけ・・・、と声にならぬ声
( ^ω^)「・・ぅおえ・・・・え?」
聞き覚えのある声にブーンは頭を持ち上げた
- 33
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:14:29.24 ID:W8fZlT2d0
- そこに見えたのは( ´Д`)こんな顔。
反射でざぶんと飛び込んだブーンは、( ´Д`)こんな顔を助けて
岸へ運んだ
( ´Д`)「げえっふ!はあはあ!・・・おお、かたじけなし・・助けていただいて・・・!?」
( ^ω^)「・・・なにしてるんですお」
(#´∀`)「なんだ畜生か。おまえの知ったことではないわ」
- 34
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:16:09.48 ID:W8fZlT2d0
- 船頭「こぉら!お前は助けていただいて礼も言えんのか!?」
(#´∀`)「・・・」
船頭「・・・そんなやつは船にのせられんぞ」
(#´∀`)「・・・お侍さん、お助けいただきかたじけのう申すシネ」
- 35
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:17:22.60 ID:W8fZlT2d0
- ( ^ω^)「・・・いえ、あの、どういたしまして・・・だお」
船頭「じゃ、お侍さん、失礼しますよ」
ギィ〜コ ギィ〜コ・・・・
船は行ってしまった。
若君を乗せて。
( ^ω^)「なんなんだお・・・」
- 36
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:21:55.95 ID:W8fZlT2d0
- それから二日、ブーンは飲み屋の二階にい続けた。
('A`)は困った顔だったが、ブーンがあまりに必死に頼むので
ついつい部屋を貸してしまった
( ^ω^)「必ずもう一度あの船が通るはずだお。せめて事情を聞くお」
それが前藩主への
( ^ω^)「せめてもの忠義だお・・・」
- 37
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:23:34.00 ID:W8fZlT2d0
- 三日目の朝、ついにブーンははるか彼方に船をみつけた
いそいで二階から降り、川岸にて船を待つが
待てども船は来ない
不審に思っていると、遠くから声がした
「船頭・・!逃げよ!」
モナーの声である
- 38
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:25:41.46 ID:W8fZlT2d0
- 神速をもって聞こえたブーンである。
一歩で犬に追いつき、二歩で馬に並ぶと言われたその脚は
何に遠慮することなく、川岸を駆けた。
⊂二二二( ^ω^)二⊃ ブンブン!ブーン!
(#´∀`)「きさまら、なにやつじゃ!」
- 39
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:27:42.60 ID:W8fZlT2d0
- 賊「荷を渡せ。殺しはせぬ」
( ´∀`)「なんで荷を渡さねばならぬ!おぬしらのモノではなかろう!」
賊「論を待たず。渡すか死ぬかだぞ」
( ´∀`)「渡しては死ぬも同然じゃ!失せい!」
賊「哀れ若者。ならば死を」
文学がかった賊である
- 40
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:30:50.58 ID:W8fZlT2d0
- (#´∀`)「死ぬかボケェ!!」
(#^ω^)「死なすかボケェ!!!」
ブーン参上、迅きこと迅きこと稲妻のごとし
舞う草 飛ぶしぶき 血風吹き荒れる
倒れる賊に逃げる賊 いずれ劣らぬ悪人面を
討ちて尽くさん VIP霧崎流
- 41
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:32:50.94 ID:W8fZlT2d0
- 川面はゆれる 船頭は無事
息も整い、二人は顔を見合わせる・・・
( ´∀`)「何しにきた畜生」
( ^ω^)「助けを求める声がいたしましたゆえ・・」
( ´∀`)「助けなど求めておらぬ」
そういわれれば求められた覚えもない
- 42
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:34:54.06 ID:W8fZlT2d0
- ( ^ω^)「し、しかし、若君の危機でした」
( ´∀`)「だからどうした。家来ではあるまい」
( ^ω^)「目の前の人を助けて、なぜそのように言われねばならぬのです」
( ´∀`)「目の前でもなかったろう」
( ^ω^)「・・・わ、わたしが若君を助けてなにが悪いのです!!」
- 43
名前:VIP皇帝 :2006/12/09(土) 12:36:52.89 ID:W8fZlT2d0
- ( ´∀`)「・・礼が欲しいか?」
礼?そうだ、助けたのだ。
頭のひとつも下げてもらわねば、ワリに合わぬ
そうだ・・そうだ・・・
( ^ω^)「・・・」
しかしなんだこの充足感は
礼が要るのか?いま満ち足りているのに
若君が助かった
それだけで満ち足りているのに・・!
- 45
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:38:51.17 ID:W8fZlT2d0
- ( ^ω^)「要りませぬお」
( ´∀`)「そうか、ではさらばじゃ」
船頭のもとへ寄り、優しい声をかけるモナーをブーンは見ていた
( ^ω^)「(さらば、と言われた・・・)」
( ;ω;)
- 46
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:40:13.40 ID:W8fZlT2d0
- なぜだ。
どこへでも行けと言われてブーンは怒った
さらばと言われてブーンは泣いた
「若君に見捨てられた・・・」
その想いが、ブーンの涙となってこぼれようとした
- 48
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:41:30.15 ID:W8fZlT2d0
- ( ;ω;)
↓
( ^ω^)
ブーンは船頭に近寄り、手早く傷を確かめ、手当てをした。
幸いかすり傷である
モナーはそれを見ていた
- 49
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:43:31.90 ID:W8fZlT2d0
- そしてブーン散らばった荷を船に積めなおした
重い荷も多い
力仕事であった
いつのまにかモナーが近くに来ていた
( ´∀`)「・・・大儀であった。誉めてとらす」
- 50
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:44:51.18 ID:W8fZlT2d0
- もったいのうござりまする
いや、みごとな働きであったぞ
いえ、腕も鈍りました
稲妻のようであったぞ
おそれいります
…まこと、稲妻のようであったぞ
- 51
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:46:12.19 ID:W8fZlT2d0
- 若様・・・何卒、なにとぞ江戸までの道に、それがしを同道させ・・
ブーン、ついてこい
・・え?
江戸まで行く。ついてこい
御意に
- 53
名前:靴下右 :2006/12/09(土) 12:48:54.94 ID:W8fZlT2d0
- 忠義とは・・・忠義とはなんであったか・・・
モナの輔さまに抱いていた思いは、あれはなんであったか・・・
いま思えば、あれは立派な叔父を誇るがごとき心持であったか・・・
モナの輔さま・・・
それがしは、モナーさまに忠義をつくしまする
最期まで、モナーさまの味方でい尽くしまする!