19 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 18:02:12.73 ID:DEKAF8T90

第二打 共に



ζ(゚ー゚;ζ「や、止めてください」

(メ`口´)「うるせぇ!」


剣術道場に賊が入る。

剣術とは、強きに対抗するための手段。
普通であれば返り討ちにされるであろうこの場面で、

場を支配しているのは、意外にも賊側だった。


20 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 18:04:20.17 ID:DEKAF8T90

(メ`口´)「たんまり金を溜め込んでる、って情報があんだよ!!」

ζ(゚ー゚;ζ「うちにはお金なんて……」

(メ`〇´)「嘘付くんじゃねぇよ!」


門下生は木剣を、カタカタと震えながら構えているが、
賊達は真剣を片手に、構えてすらいない。

それでも門下生の中には、
真剣に立ち向かう事のできる者は居なかった。


ζ(゚ー゚;ζ「本当なんです!信じて下さい!」

(メ`口´)「……ラチがあかねぇな、おいマサとタカ!
      道場と家の中を調べてこい」

(メ`〇´)「へい!」

(メ`々´)「了解でさぁ!」

ζ(゚ー゚;ζ「ああ……義虎さん……」

26 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 18:14:09.54 ID:DEKAF8T90

間の悪い事に、義虎は内藤と共に買い出しに出ている。

後三刻は帰っては来ない。

義虎なら……義虎なら木剣でも賊を追い払ってくれるだろう。

だが、門下生に命がけでそれをお願いするのは酷であった。


(メ`々´)「兄貴!道場はおろか、家の方にも何もありゃしませんぜ!」

(メ`〇´)「それどころか、金目のものすらありません!」

(メ;`口´)「ガセか……親分に何て言やぁいいんだ……」

ζ(゚ー゚;ζ「おわかりの通り、うちは貧乏道場です。お引き取り願います」

(メ;`口´)「……」

28 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 18:19:28.13 ID:DEKAF8T90

親分への言い訳でも考えているのだろうか。
賊はキョロキョロと周りを見渡すと、口を開いた。


(メ;`口´)「本当はこんなお決まりな事ぁしたかねーんだが、
       あんた一緒に来て貰うぜ」

ζ(゚ー゚;ζ「えっ?」


そう言うと、手下の男二人に掴まれ口を抑えられる。


ζ(゚-゚;ζ「むぐー!」

(メ;`口´)「悪く思うな、俺らの命も掛ってるんだ」


そのまま令は、担がれ道場から連れていかれた。

終始、脅えきっていた門下生達は、
結局何もできず、震えているだけだった。


31 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 18:24:17.94 ID:DEKAF8T90





( ,,゚Д゚)「いやー内藤さんが一緒にいてくれて、本当に助かりましたよー」

( ^ω^)「お役に立ててなによりですお」

( ,,゚Д゚)「いつもの半額近くで買えた、令も喜びます」

( ^ω^)「値切りは任せて下さいお」


内藤と義虎は隣町へと仕入れに来ていたのだが、
内藤の値切り交渉が上手くハマり、上機嫌で帰ってきていた。
33 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 18:27:24.67 ID:DEKAF8T90

そして、道場が目視できるところまで来たところで、
異変に気が付いた。


(;,,゚Д゚)「!?」

( ^ω^)「……」


道場に人だかりが出来ている。


(;,,゚Д゚)「どうした!何があった!?」


人混み、役人を押し退けて義虎は道場へと駆け込んだ。

中には涙をボロボロと落としながら、
うな垂れている門下生達がいた。


35 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 18:29:13.93 ID:DEKAF8T90

(;,,゚Д゚)「おい!お前達!どうした!?何があった!?令は!?」

門下生「義虎さん……ううっ」


一気にまくし立てる義虎に、泣きすがる門下生達。


門下生「お嬢さんが……お嬢さんが……」

(;,,゚Д゚)「令がどうした!?」

門下生「賊に……連れていかれました」

(;,,゚Д゚)「なっ!?」


予想外の台詞に、義虎の思考能力が停止する。


38 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 18:32:23.61 ID:DEKAF8T90

( ,, Д )(馬鹿な……何故こんな道場に賊が……。
     それより、令は……)

( ^ω^)「賊の特徴は?」


落ち着いた様子で内藤が賊の事を聞き出す。


門下生「さ、三人組で、全員頬に傷がありました」


門下生の中でも冷静な一人が答える。

内藤は「ああ」、と言い言葉を繋ぐ。


( ^ω^)「掘二田一家で間違い無いお」

( ,, Д )「掘二田一家?」

0 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 18:36:02.46 ID:DEKAF8T90

( ^ω^)「金目の物を強奪したり、女を拐ったり、女を売ったり、女を犯したりするような連中だお」

(;, Д )「ッ!」

( ^ω^)「確か南の山に砦を作って、根城にしてるはずだお」


その言葉を聞いた途端、義虎は木剣を手に取り道場を飛び出す。
駆ける速さは風の如く早かった。



( ^ω^)「……」




44 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 18:48:01.00 ID:DEKAF8T90





<ヽ`∀´>「ホルホルホルホル」

ζ(゚ー゚;ζ「……」

(メ;`口´)「……」

<# `∀´>「ってファビョーン!」


賊の頭、掘二田。

以前は新速藩の足軽であったが、
先の戦で落ちて以来、手下を集め賊として山に居着いた。

故郷を滅ぼされた美府に強い恨みを持ち、
報復もかねて度々町民を襲っている。

49 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 18:50:24.03 ID:DEKAF8T90

<# `∀´>「何も無いとは……あの野郎、次会ったらぶっころしてやるニダ!」

(メ;`口´)「お頭!この小娘を売ればいい金になりますぜ!」

ζ(゚ー゚;ζ「あっ」

<ヽ`∀´>「……」


両手を後ろに縛られ、掘二田の前に投げ出された。

周りには屈強そうな男達が取り囲んでいる。

状況は絶望的だった。


52 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 18:51:51.21 ID:DEKAF8T90

<*`∀´>「そ、そうニダね……中々器量の良い娘ニダ」

(メ;`口´)(ホッ)

ζ(゚ー゚;ζ「……」

<* `∀´>「納品する前に毒味をしなきゃならんニダね」


のしのし、と巨体を左右に揺らしながら、
令に近付いていく。
55 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 18:54:55.84 ID:DEKAF8T90

だが


ζ(゚ー゚;ζ「やぁっ!」

<;`∀´>「ホルッ!?」


令は縛られたままで、掘二田に体当たりを喰らわす。

体格差から倒れはしないものの、
意表を付かれた掘二田は二、三歩後退した。


ζ(゚ー゚*ζ キッ

<;`∀´>「……」


56 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 18:57:00.75 ID:DEKAF8T90

ζ(゚ー゚*ζ「私は剣豪、渋澤権兵衛の娘!
      何を失おうとも誇りと名だけは、低俗なお前達ごときに汚させない!」


強くそう言い放つと、掘二田を睨む。

足は恐怖でガクガクと震えていたが、
目の光だけは強い意思を持っていた。


<# `∀´>「ファッビョーン!落ちぶれ侍の娘っ子が!偉そうに!」

ζ(゚ー゚*ζ(義虎さん……)


令の小さな体に、賊の大きな体が覆い被さった。




57 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 18:59:43.71 ID:DEKAF8T90







門番二人

帯刀


目に見える状況を、端的に確認しながら足を止める事なく駆ける。



58 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 19:00:30.58 ID:DEKAF8T90

(メ`々´)「なんだあいつは!?」

(メ`∀´)「止まれ!止まれぇい!」


気付いた

抜刀

迎撃


( ,, Д )「シッ!」

(メ;`∀´)「ギッ」


頭蓋

砕いた

上から斬撃



避け




59 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 19:02:16.37 ID:DEKAF8T90

( ,, Д )「ふっ!」

(メ;`々´)「ガッ」


胸部

陥没


瞬く間に門番二人を絶命させ、
義虎は刀を奪い本陣へと乗り込む。

門を潜ると、すぐに本営が見えたが
見張りらしき男が三人で話をしている。


(メ`-´)(メ`〜´)(メ`_´)
71 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 19:20:05.62 ID:DEKAF8T90

足音を立てずに、三人組の一人の胴と脚を切り離すと、
声を出させる間も無く、さらに一人の首を跳ねた。


(メ;`〜´)「で、出入りだー」


大声

認知


残った一人の額に穴を開け、さらに義虎は動きを速める。
81 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 19:28:48.65 ID:DEKAF8T90


「出あえ!出あえー!」


屋形の中から、次々と賊が湧いて出てくる。


八人

帯刀

脅え


( ,,゚Д゚)「はああぁぁぁ!!」


本陣は修羅場と化した。
84 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 19:29:49.74 ID:DEKAF8T90




(; ^ω^)「うひゃー、これは即死だおね……」


頭部を潰された賊の死体を、足で転がす。

一撃

見事なまでに叩き潰されている。

内藤は傍らに落ちていた刀を拾い上げる。


( ^ω^)(酷い刀だお)


本陣へと歩を進めて行った。

87 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 19:31:23.40 ID:DEKAF8T90




状況が把握できない。


男と女

あれは……令?

口から……血?


<;`∀´>「て、てめぇは何者ニダ!?
      他の奴等はどうしたニダ!?」

( ,, Д )「……令?」


静かに令を抱き起こす。

90 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 19:32:26.51 ID:DEKAF8T90




ζ( ¬ ζ


口からは血を流し、目は閉じたまま開こうとはしない。


( ,, Д )「令!令!」

<;`∀´>「へっ、馬鹿な娘ニダ。ウリが折角気持良くさせてやろうとしたのに」







<ヽ`∀´>「舌を噛み切りやがったニダ」

100 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 19:37:06.37 ID:DEKAF8T90


( ,, Д )「令……令……」

<;`∀´>「う、ウリを無視するなニダ!」


自慢の大刀を振り上げて、斬り掛ろうとしたが、
振り降ろす間も無く心の臓に刀が突き立った。


<;`∀´>「あっ、がっ!」


掘二田はゆっくり後ろへと倒れ込む。


義虎は令を抱き締めたまま、ピクリとも動かなかった。

106 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 19:39:57.73 ID:DEKAF8T90

( ^ω^)「おーおー、随分派手にやったおねぇ」


ひょっこりと内藤が現れ、
辺り一面に飛び散った血を、「よっ」「ほっ」と跨ぎながら入ってくる。


<;`∀´>「ヒューヒュー、て…めぇは……この前の」

( ^ω^)「……」


手にしていた刀を喉へ突き立てる。


<ヽ ∀ >


掘二田は沈黙した。

110 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 19:42:31.42 ID:DEKAF8T90

( ,, Д )

ζ( ¬ ζ

( ^ω^)「……」


動かなくなった令を、抱き締めている義虎。
内藤は半刻ほど見つめていた。


ぼそり と内藤の口から言葉が漏れる。


( ^ω^)「令と……一緒にいたいかお?」

( ,, Д )


ビクッと体を震わせ、ゆっくりと義虎が顔を上げる。

125 : ◆3m0SptlYn6 :2008/05/07(水) 19:54:39.30 ID:DEKAF8T90

( ,, Д )「……」

( ^ω^)「……」


( ,,;Д;)「一緒に……いたい」


( ^ω゚)「……ククッ」


「付いて来い」と内藤は言い、その場から立ち去る。

死臭が立ち込める中、義虎は動かなくなった令を背負い、
内藤の後を付いていった。



第二打  〜了〜

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