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名前: ◆3m0SptlYn6
:2008/03/30(日) 19:00:20.24 ID:4GUObZgM0
第3打 七識刀
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( ゚∀゚)「おーい!おっさん!」
( ^ω^)「おっさんじゃないお、内藤と呼べお」
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( ゚∀゚)「いいじゃんよー」
( ^ω^)「刀諦めるかお?」
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( ゚∀゚)「内藤先生!」
調子の良い奴だが、憎めない奴でもあった。
- 76
名前: ◆3m0SptlYn6
:2008/03/30(日) 19:02:42.41 ID:4GUObZgM0
工房へと長岡を上げ、まずは茶を出す。
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( ゚∀゚)「きったねぇとこだな」
( ^ω^)「……」
長岡は町の商人、「乙輩堂」の三男。
町民の中でもそれなりに裕福な暮らしをしている。
おとなしく家業を営んでいれば、金には困ることは無いだろう。
しかし、目の前の男は「仇討ち」という羅刹の道を歩もうとしている。
財を捨て、情を取る、そんな男のようだ。
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名前: ◆3m0SptlYn6
:2008/03/30(日) 19:05:23.18 ID:4GUObZgM0
( ^ω^)「失礼するお」
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(; ゚∀゚)「な、な、何すんだよ!」
長岡の腕や腰、足を触り、
骨格や筋肉の付きを確かめる。
体格に恵まれ、肉の付きも申し分無い。
見込みとしては悪くない、と思われる。
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(; ゚∀゚)「わ!ひゃっ!くすぐってぇ」
( ^ω^) サワサワ
- 84
名前: ◆3m0SptlYn6
:2008/03/30(日) 19:07:26.60 ID:4GUObZgM0
無限刀の時の過ち。
それは自分が満足できるような刀を打ってしまった事。
今思えば、渋澤の体格に合わせもう少し長く・太く打つべきだった。
そう打ったからと言って、村正を打ち破れたとは思わないが。
( ^ω^)「よし、帰っていいお。五日後に取りに来い」
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( ゚∀゚)「へ?」
( ^ω^)「後、五両持って来いお」
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( ゚∀゚)「もう終わりかよ?」
- 87
名前: ◆3m0SptlYn6
:2008/03/30(日) 19:09:14.80 ID:4GUObZgM0
拍子抜けだったのだろう。
だが安心しろ小童。
貴様にとって、これ以上無い、貴様専用の、
人斬り道具を造ってやる。
旅の中で、血を吸い、他の刀の気を吸い、
育て上げて来い。
我が息子を。
それより五日間、再び金属音が響くようになった。
- 88
名前: ◆3m0SptlYn6
:2008/03/30(日) 19:11:10.90 ID:4GUObZgM0
※
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( ゚∀゚)「……」
打ち上げた刀を長岡が手にし、眺めている。
かれこれ半刻は固まっている。
内藤はその様を、一言も発さず見つめていた。
恐らく意外だったのだろう。
蕎麦屋で知り合っただけの鍛冶屋に、
軽く依頼しただけの刀。
安物とでも思っていたのではないか。
- 95
名前: ◆3m0SptlYn6
:2008/03/30(日) 19:12:14.05 ID:4GUObZgM0
しかし我ながらいい刀が打ちあがった。
無限刀を間違いなく超えるであろう。
だが、今のままでは村正には勝てない。
だからこそ、この男に渡した。
あの村正が放っていた、ドス黒い気。
あれは茂羅ノ助により、多くの血と刀気を吸い取ってきたからに違いない。
長岡が剣の旅の中で、この刀を成長させてくれるだろう。
( ^ω^)「行かなくていいのかお?」
このまま魅入ってしまえば、いつまで続くか分からなかった。
- 98
名前: ◆3m0SptlYn6
:2008/03/30(日) 19:13:51.30 ID:4GUObZgM0
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( ゚∀゚)「あ、ああ……おっさ、ゲフン、内藤さん」
( ^ω^)「?」
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( ゚∀゚)「この刀の銘は?」
( ^ω^)「この刀は童の潜在能力まで引き出してくれるだろう。
名を七識刀」
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( ゚∀゚)「七識刀……」
( ^ω^)「鞘は旅の途中で鞘師に頼めお」
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( ゚∀゚)「分かった……」
七識刀を再び蓙で包むと、長岡に手渡す。
- 104
名前: ◆3m0SptlYn6
:2008/03/30(日) 19:16:02.37 ID:4GUObZgM0
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( ゚∀゚)「……蓙……そうか、あんたは」
( ^ω^)「もう話す事は無いお、行けお」
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( ゚∀゚)「……先生とあんたの仇、討ってやるよ」
そう言い残すと、長岡は五両を置き歩いて行った。
村正への刺客が放たれた。
乙輩堂では、五両の盗難騒ぎが起こったが、
この後、三年程長岡は美府の町に戻ってくることは無かった。
- 107
名前: ◆3m0SptlYn6
:2008/03/30(日) 19:17:03.21 ID:4GUObZgM0
これより二年程後
剣客の間でひとつの噂が広まる。
剣客1「なんとも凄い剣豪がいるらしいな」
剣客2「ああ、最近良く名を耳にする」
剣客1「名をなんと言ったか……」
剣客2「七識刀の長岡……だったか」
剣客1「是非、一度手合わせ願いたいものよ」
今、巷を賑わす侍の持つ刀には、
【内藤】と銘打ってあった。
2本目 〜七識刀〜 完
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