3 名前: ◆3m0SptlYn6 :2008/03/30(日) 18:15:03.40 ID:4GUObZgM0

( ´ー`) (今日も聞こえるダーヨ)


カーン!カーン!


この1月の間、鳴り止むことなくこの音が聞こえていた。
町民達も既に聞き慣れてしまっている。

それどころか、微かに聞こえる美しい金属音に癒しを覚える者すらいた。


( ´ー`) (!?)


その音が突然鳴り止み、逆に金属音が聞こえなくなったことに違和感を覚える。


( ´ー`) (止んだ?)


なんとなく寂しさを覚え、町の活気も下がったかのように思えてしまう。

城下町の殆どの町民が、同じように感じていた。
5 名前: ◆3m0SptlYn6 :2008/03/30(日) 18:15:53.83 ID:4GUObZgM0


( ^ω^)ブーンは刀匠のようです



2本目  〜七識刀〜



第1打  武者

7 名前: ◆3m0SptlYn6 :2008/03/30(日) 18:16:30.84 ID:4GUObZgM0

(ヽ ω )

ひたすら叩き続けた。

10日も経てば、既に鉄から不純物など出ることも無くなっていたが、
それでも満足いかず叩いた。

内藤自身、時間の認識は既に無くなっていたが、
1月程叩き続けたところで鎚が止まった。


(ヽ ゚ω゚)「美しい……」


出来上がったのは、自分の顔を映し出すほど
滑らかに鍛錬された鉄板。

魂を削って叩き上げた。

その美しさに内藤は、下半身に熱が帯びるのを感じた。
10 名前: ◆3m0SptlYn6 :2008/03/30(日) 18:18:02.65 ID:4GUObZgM0

―渋澤道場―



  _
( ゚∀゚)「おああああああ!」

(,,゚Д゚)「せいいい!」


ガッガッ!

と木剣がぶつかり合い、道場からは活気が溢れている。

道場主の渋沢権兵衛が没した後、
長岡喜助と伊藤義虎の弟子2人が道場を引っ張っている。


11 名前: ◆3m0SptlYn6 :2008/03/30(日) 18:19:24.06 ID:4GUObZgM0

(,,゚Д゚)「!!せぃ!」
  _
(; ゚∀゚)「ッ!!」


義虎の鋭い突きを、長岡は紙一重で避けるが、
体勢を大きく崩してしまう。


(,,゚Д゚)「隙あり!」
  _
(; ゚∀゚)「うっ!」

(;,゚Д゚)「……」


だが、その長岡の無防備な体勢を見て、
義虎は剣を鈍らせた。

13 名前: ◆3m0SptlYn6 :2008/03/30(日) 18:21:07.86 ID:4GUObZgM0

  _
(; ゚∀゚)「!!」

(;,゚Д゚)「うっ!」
  _
(# ゚∀゚)「がぁぁ!!」


ズン
と長岡の反撃の胴が決まり、義虎がその場にうずくまる。


門下生「勝負あり!」

「おお〜」 パチパチ


と一連の流れを、まだ読むことのできない門下生達は、
感嘆の声を上げ感心に浸る。

  _
(# ゚∀゚)「……」

(;,-Д゚)「……」

門下生「互いに礼!」


14 名前: ◆3m0SptlYn6 :2008/03/30(日) 18:22:31.59 ID:4GUObZgM0

―道場裏―



  _
(# ゚∀゚)「てめぇ!大概にしろよ!」

(;,゚Д゚)「……」
  _
(# ゚∀゚)「何故あそこで打ち込まねぇ!?
     なめてんのか!?」

(;,゚Д゚)「……いや、切返しが鋭くて……」
  _
(# ゚∀゚)「ざけんな!木剣を振り落とせば終わりだったろうが!」


裏で先ほどの立合いに対してもめている長岡と義虎。


15 名前: ◆3m0SptlYn6 :2008/03/30(日) 18:23:52.28 ID:4GUObZgM0

門下生は気付かなかったろうが、
一連の動作の中に手抜きの箇所があったのは間違い無い。

その同情にも似た義虎の剣に対し、
長岡は剣を志す者として、怒りをあらわにしていた。


ζ(゚ー゚;ζ「長岡さん!」
  _
(# ゚∀゚)「お嬢さんは黙ってて下さい!」


止めに入ったのは、渋澤の一人娘、令。

  _
(# ゚∀゚)「なんとか言ったらどうだ!!」

(;,゚Д゚)「うっ!」


長岡の拳が義虎の頬を捉えた。

16 名前: ◆3m0SptlYn6 :2008/03/30(日) 18:25:22.95 ID:4GUObZgM0

そのまま後方へと飛ばされ、義虎は尻餅を付く。


ζ(゚ー゚;ζ「義虎さん!」


令が義虎に駆け寄り、肩を抱く。


その構図は、長岡一人に2人が対峙するかのように写った。

長岡はさらに気に食わない。

  _
(# ゚∀゚)「大体てめぇは……」

(;,-Д゚)「……」

18 名前: ◆3m0SptlYn6 :2008/03/30(日) 18:26:22.51 ID:4GUObZgM0

  _
(# ゚∀゚)「先生が斬られた時も、泣くだけで茂羅ノ助はそっちのけ!
     弟子としてそれでいいのか?」

(;,-Д゚)「……」


元々、剣の才は天武を持っていた義虎。

長岡はその才に嫉妬しながらも、良き好敵手として認めていた。


ζ(゚ー゚;ζ「長岡さん……義虎さんは優しい方なの」
  _
(  ∀ )「……」


そして長岡は、容姿の美しい渋澤令に好意を抱いていた。

22 名前: ◆3m0SptlYn6 :2008/03/30(日) 18:27:57.52 ID:4GUObZgM0

  _
(  ∀ )「決めた」

(;,-Д゚)「?」

ζ(゚ー゚;ζ「え?」
  _
(  ∀ )「俺はこの道場を出る」

(;,゚Д゚)「待て長岡!」


言い捨て立ち去ろうとした長岡に、
義虎はそうとしか言えなかった。
25 名前: ◆3m0SptlYn6 :2008/03/30(日) 18:29:36.49 ID:4GUObZgM0

  _
(  ∀ )「俺ぁよぉ、不器用な輩だ。
     この道場が、先生が好きだった」

ζ(゚ー゚;ζ「長岡さん……」
  _
(  ∀ )「だからこそ……茂羅ノ助を討つからこそ、
     強くならなくちゃぁいけねぇ」

(;,゚Д゚)「……」
  _
(  ∀ )「ここじゃ、一生掛かっても茂羅ノ助にゃ勝てない。
     だから俺は修行に出る」


そうとだけ言い残し、長岡は振り返らず立ち去った。

残された義虎と令には、掛ける言葉も見つからなかった。




第1打  〜了〜

戻る

inserted by FC2 system