44 : ◆3m0SptlYn6 :2009/10/28(水) 00:20:19.44 ID:v0ZdMnNF0
第三打  〜岐路〜



川゚ -゚)「今日はごちそうだ!」

(ФωФ)「よくあの庄屋から盗めたな」

川゚ -゚)「えっへん!」


どさりと袋置き、いっぱいに詰まった米をすくってみせる。


(・ω・)「空ねえちゃんすごいや!」


下町の外れにある荒廃したお堂に、
大勢の童たちが集まっていた。

今の新都藩は戦に次ぐ戦により、
納税できない貧民層から多くの孤児がうまれていた。


川゚ -゚)「みんな均等に分けるんだぞー」


その中で、幼き空と童が長となり面倒を見ていた。
45 : ◆3m0SptlYn6 :2009/10/28(水) 00:25:15.64 ID:v0ZdMnNF0


(ФωФ)「だけど大丈夫だったのか?庄屋は悪い奴なんだぞ?」

川゚ -゚)「構うもんか!あいつらいっぱい貯め込んでた!
     蔵の中にはまだまだたくさんあったぞ!」

(・ω・)「お米だーうれしいなー」

川゚ -゚)「お前もうれしいよなー」

(ФωФ)「だけど……」

川゚ -゚)「大丈夫、上手くやるから」





46 : ◆3m0SptlYn6 :2009/10/28(水) 00:28:00.38 ID:v0ZdMnNF0


―三日後―



川゚ -゚)「へへっ、上手くいった!」


今日は畑から野菜を盗み、意気揚々とお堂へと向かっていた。

両手いっぱいに野菜を抱えた空の頬を、一滴の水が打つ。


川゚ -゚)「あれ、雨か……」


あっという間に雨足が強くなり、
空は道端の地蔵が置いてある祠でやり過ごしていた。


川゚ -゚)「凄い雨だなぁ」


50 : ◆3m0SptlYn6 :2009/10/28(水) 00:31:06.46 ID:v0ZdMnNF0


半刻程、宿ってみたが一向にやむ気配もなく、
空は雨の中再度走り出した。


川゚ -゚)(寒いなぁ……帰ったら火に当たりたいなぁ)


お堂には百段にも及ぶ石段を上がらなければならない。

雨が流れ落ちる石段で、空は気付いた。


お堂へと向かう石段の上の方から、
赤い水がながれ落ちてきているのを。


川゚ -゚)「……」


石段を駆け上がり、お堂を正面に見据えたところで、
空は腕に抱えていた野菜を全て落とした。

53 : ◆3m0SptlYn6 :2009/10/28(水) 00:34:56.06 ID:v0ZdMnNF0


( `ハ´)「ぐぇっへっへっ」

(*;ー;)「きゃー」

(メ`ハ´)「楽なもんだぜ!餓鬼を殺るだけで三両も貰えるなんてな!」


弟達が、妹達が、二・三人の大人たちが振るう、
銀色に光る棒によって蹂躙されていく。


川゚ -゚)「い……いy」


叫び声をあげてしまう瞬間、草むらから飛び出した影に突き倒された。

口を押さえられ声も出せない。


川;-;)「んーんー!」


空は必死に口を塞ぐ手を噛む。

55 : ◆3m0SptlYn6 :2009/10/28(水) 00:39:17.37 ID:v0ZdMnNF0


(;ФωФ)「空!俺だ!杉浦だ!」

川;-;)「!!」


薄暗い大雨の中、かすれるような声を聞き取とれた時には、
見慣れた顔が目の前にあった。

思わず力一杯噛んでいた歯を緩める。


川;-;)「す、杉浦!あ、あいつらを」

(;ФωФ)「……」

川;-;)「あいつらを助けないと!」

(;ФωФ)「無理だよ……刀も持ってる」

川;-;)「なら私が!」

57 : ◆3m0SptlYn6 :2009/10/28(水) 00:41:20.10 ID:v0ZdMnNF0

(;ФωФ)「駄目だ!死にに行くようなもんだよ!」

川;-;)「離せっ!」

(;ω;)「ねえちゃん怖いよぅー」

川;-;)「太郎!お前も無事だったのか」

(;ФωФ)「町からの帰り道で雨宿りしてたんだ」

川;-;)「でも、あいつらが……」

(;ФωФ)「空……俺らは……何も出来ないんだ」

川;-;)「ああ……ああぁぁぁぁ!」



空の泣き声は激しい雨音に掻き消され、
三人の耳の中にだけ響き渡った。



59 : ◆3m0SptlYn6 :2009/10/28(水) 00:44:42.05 ID:v0ZdMnNF0


やがて雨は止み、お堂では動く物がいなくなった。


川゚ -゚)「……私のせいだ」

(ФωФ)「違う、遅かれ早かれこうなってた」

(;ω;)「うえーん」

川゚ -゚)「……」

(ФωФ)「……みんなのお墓を……作ってあげよう」


空の噛んだ杉浦の指からは、まだ止まらずに血が流れている。


川゚ -゚)「指……ごめん」

(ФωФ)「あいつら程、痛くはなかったさ」



60 : ◆3m0SptlYn6 :2009/10/28(水) 00:46:34.09 ID:v0ZdMnNF0

首から上の無い者や、胴を斬り離された者もいた。

寂しくないようにと、
大きな穴を掘って亡骸をみんな一緒に埋めた。


川゚ -゚)「……」

(ФωФ)「……」

(;ω;)「ひっくひっく」





その後、三人は野垂れ死に寸前まで追い込まれたが、
空は器量の良さで遊処に拾われた。

杉浦兄弟は兄の頑張りもあり、小さな商店に居候させて貰える事になった。

62 : ◆3m0SptlYn6 :2009/10/28(水) 00:48:53.66 ID:v0ZdMnNF0

―六年後―



川 ゚ -゚)(あれはお役人、あれは行商人)


【素直家】の二階から、ぼんやりと街道を眺める日課。

だが、楽しみは二つあった。


( ФωФ)「ねえちゃん!」

川 ゚ -゚)「おー、太郎元気か?」

( ФωФ)「ねえちゃん、太郎はもう止めてよ」

川 ゚ -゚)「ははっ、ほらお駄賃だ」


窓から小銭を落とす。


(* ФωФ)「へへ、ありがと!」


最近、兄によく似てきた。
数年前の兄と瓜二つだ。
63 : ◆3m0SptlYn6 :2009/10/28(水) 00:54:03.57 ID:v0ZdMnNF0
川 ゚ -゚)「!」


(メ ФωФ)ノ

川 ゚ -゚)ノ


杉浦、客として来れる訳も無いが、
聞いた噂によると通っている剣術道場を代表するまでの者になったらしい。


体制を気にしてるのか、声を掛けることはなく、
互いに合図だけだった。

だが



64 : ◆3m0SptlYn6 :2009/10/28(水) 00:55:22.60 ID:v0ZdMnNF0



(メ ФωФ)「空!」

川; ゚ -゚)「ふぇっ!?」


いきなり声を掛けられ、すっとんきょうな声を出してしまった。

それにしても、声を聞くのは何年ぶりだろう。


(メ ФωФ)「今度、美府藩の御前試合に出る事になった」

川 ゚ -゚)「凄いじゃないか」


空には御前試合たる意味の大きさも分からなかったが、
嬉々として話す杉浦を見て、良いことなのだろうと解釈した。

66 : ◆3m0SptlYn6 :2009/10/28(水) 00:58:20.96 ID:v0ZdMnNF0

(メ ФωФ)「その試合に勝てば剣術指南役だ!」

川 ゚ -゚)「……指南役?」

(メ ФωФ)「あぁ!そうしたら己がお前を身請けする!」

川; ゚ -゚)「っ!!」

(メФωФ)「己が、お前を……自由にしてやる」


自由、あぁなんと素晴らしい響きなのだろうか。


川 - )「……」

(メ ФωФ)「待っててくれ」






川 ;ー;)「私は……高いぞ?」

(メ ФωФ)「ああ」


67 : ◆3m0SptlYn6 :2009/10/28(水) 01:00:20.77 ID:v0ZdMnNF0


素直家の前の街道は、時が止まったかのように、
全ての人が足を止めた。


はっ、と、状況に気付いた杉浦は、
顔を真っ赤に染めて足早に立ち去って行った。







(メ ФωФ)「必ずお前を自由にしてやる」





第三打   〜了〜


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