48極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/01/27(土) 12:53:48

第六話 『道徳放棄の日 後編』

ギコの目の前にビルが聳え立つ。

( ;゚Д゚)「非常階段を登ろう」

(;゚ー゚)「そんなことしてどうするの?」

( ;゚Д゚)「高い位置のほうが行動可能範囲が大きくなるだろ?」

常人ではありえないことだが。この二人ならありえる。

「いたぞー! 撃てー! だから殺さないように撃てって言ってるお!!」

( ;゚Д゚)「……もう来たのか……とにかく登るぞ!」

二人は非常階段を駆け上がった。その非常階段は銃弾で悲鳴を上げる。

そしてついに

( ;゚Д゚)「…………………ぐあっ!!!」

生々しい声を上げる。兆弾がギコの肩をかすった。

随分威力の弱まった兆弾で、服も破れなかったが、ギコの精神をズタボロにするには簡単だった。

( ,,;Д;)「………………痛えええ……」

涙が嫌でも零れ落ちる。

(;゚ー゚)「ギコ君大丈夫?!」

( ,,;Д;)「…………駄目だあ……」

49極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/01/27(土) 12:54:22

二人はビルの屋上、いったん小休止。

(* - )「…………」

( ,, Д;)「…………」

まだ涙は止まらない。下からはいろんな悲鳴が聞こえる。

そりゃそうだ、ここは繁華街、こんなところでドンパチがあればそんな悲鳴も上がる。

すぐに警察は駆けつけ、団員達は一気にはけた。これでひとまずは安心……だが、

心は完全におかしくなっている。

痛い。恐い。疲れた。辛い。

二人はおかしくなっている。

(* - )「………………恐かった?」

( ,, д )「……………………」

無視しているわけじゃない。

(* - )「……私は……恐かったわ……」

(* - )「…………逃げ続けられるのかしら……」

( ,, д )「…………意地でも……逃げるよ……」

50極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/01/27(土) 12:54:56

二人は優等生だ。


ビルの屋上にいる二人。寒い北風が襲う。たまらず体が震えだす。

((* - ))「……………………さ、寒いね」

(( ,,д))「…………あ、ああ、そうだね……」

((* - ))「……そ、側に寄っていい?……」

(( ,,д))「……俺も寒いし……いいよ……」

しぃがギコに近づく。


そして、抱きついた。

(( ,, д ))「……な、な、何してんの?……」

((* - ))「……………………抱きしめてほしいの……」

(( ,, д ))「…………そうか……」

ゆっくり背中に手をまわして、その華奢な体を抱きしめた。

恥ずかしさなどは消えていた。ただ純粋に、抱きしめた。

((* -;))「……恐いのよ…………何もかもが……」

涙が流れる。

51極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/01/27(土) 12:55:27

風も止み、体の震えも止まっていった。

( ,, д;)「…………大丈夫だから…………もう、何も考えるなよ……」

考えるなと言われて考えない愚か者ではない。そんなことは二人とも承知だ。

(* -;)「…………私達がね、捕まればね、一人、いや、何人もの命がね、助かるのよね……」

( ,, д;)「……そうだよ、助かるんだ………………でもな、そんな義務はないんだよ……」

お互いが、お互いを諭すように喋る。

( ,, д;)「…………今の俺にはな……他人の命なんてどうでもいいんだ…………大事なのは……」


二人は優等生だ。人間として。


( ,, д;)「………………君なんだ」

そう言って、その華奢な体を、抱きしめる。強く。

( ,, д;)「…………君の、辛そうな顔は見たくない……自分も辛い思いはしたくない……
      ……逃げよう…………どこか遠い、誰も俺達を知らないところに行こう……」


(* -;)「………………………嬉しい…………

でも、辛い思いはするよ…………するに決まってるじゃない……あなただって……してるでしょ?
…………私もあなたの辛そうな顔は……見たくないわ……大事なのは、

…………あなたなの……」


道徳の時間に習ったこと。それはここでは何の価値も持たない。

道徳。それは人を締め上げる縄。意識すればするほど、苦しめる。地獄の縄。


二人はそれを涙と共にコンクリートの地面に落とした。


二人は、また別の縄で拘束され、しばらく離れられなかった。

52極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/01/27(土) 12:56:19

その頃

( -∀-)「……危なかったよな……」

モララーは警察の網をかいくぐり、病院に来ていた。

ξ;゚听)ξ「あっ! モララーさん! 来てください!」

(;・∀・)「ど、どうしたんだい?!」



そこには、酸素マスクを着けたシャキンが横たわっていた。

(´ ω `)「…………………………」

(  ― )「……………………」

ξ;゚听)ξ「……容態が急変しまして……まだ、息はありますが……肺の機能がどんどん低下して……」

モララーはシャキンに駆け寄り、語りかける。

(  ―;)「……シャキン………………明日には、よくなるから…………な…………」

モララーはそう言うと、泣き崩れた。


何でうちの子供がこんな目に……罰と言うのなら、悪いことをしているのは私なのに……

いろんな思いが駆け巡る。

十分後

つ∀-)「…………こうしちゃいれないな………………シャキンをお願いします……」

ξ;゚听)ξ「え?! どこ行くんですか?!!」

モララーは病院を飛び出した。

53極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/01/27(土) 12:56:54

その頃

( ,, д )「……腹、減ってきたな……」

(* - )「……そうね……でも、なんか動く気になれないわ……」

涙の降るのは終わったが、それは何も流してくれなかった。

疲労感、絶望感、どれも残していった。

二人の距離は縮まったどころか0になったが、負の方向の絶対値を消すことは出来なかった。

( ,, д )「じゃあ、俺が取ってくるよ……」

ギコが立ち上がった……が、次の瞬間!!

( ,, д )「あ……れ?」

ギコの膝が折れた。極度の疲労によるものだろう。

それに、今日は動きすぎた。エネルギー保存の法則にはやはり勝てなかったようだ。

(* - )「…………一緒に行こう…………で、少し休ませてもらいましょ……」

( ,, д )「……ああ」

ギコの体がしぃに起こされる。

二人の体は、いつにも増して痩せ細っていた。

54極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/01/27(土) 12:57:24

二人は、なんとか非常階段をこけずに降り、警察にいろいろ聞かれかけたが、なんとかスルーする。

それどころではないからだ。

今考えれば、警察に追われていることを告げるのは最善の手であったような、なかったような。

いつものようにして弁当をゲットする。

やっと二人の顔にも生気が戻ってくる。

( ,,゚Д゚)「…………はあ……晩飯……やっと食えたな……」

午後10時。

(*゚ー゚)「……そうね…………」

( ,,゚Д゚)(…………あれ? 肩がまた痛み出したのかな……?……さっきは痛くなかったのに……
     いつから痛み……引いたんだっけ?)

ギコは不思議な感覚を覚えていた。

それも、今はどうでもいいことだ。

食事が終わり

( ,,゚Д゚)「すみません。少しここで休ませてもらえませんか?」

ミ,,゚−゚彡「……いきなり何言ってんですか…………どうも訳ありのようですが…………いいでしょう
      深夜はあまり人も来ませんので、裏に畳がありますから少し休んで言ってください」

(*゚ー゚)「あ、ありがとうございます」

ミ,,゚Д゚彡「だけど、朝には店長が帰ってきますので、その時には出ていってくださいね、
      店長はいろいろとうるさいですから」

( ,,゚Д゚)「……わかりました」

55極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/01/27(土) 12:58:06

店の裏

(*゚ー゚)「疲れたわね」

( ,,゚Д゚)「そうだな」

少しだけ沈黙が流れる。

(*゚ー゚)( ,,゚Д゚)「あのさ」

ハモる。

(*゚ー゚)「……先に言って」

( ,,゚Д゚)「分かった…………



…………これからも一緒に逃げよう」

(*゚ー゚)
(//ー/)「………………ええ」

( ,,゚Д゚)「…………君が言いたかったのは?」

(//ー/)「…………実は、一緒なの……」

( ,,゚Д゚)
(//Д/)「…………そうか」

あんなに抱きしめあった仲なのに。あのときは相当やられていたってことだな。

誰だ? 今勝手に分析した奴……

56極夜 ◆y1TBgQ3JzI:2007/01/27(土) 12:58:35

一時間後

眠りこける女の姿を見つめる男

( ,,゚Д゚)「…………………………」

逃げてやる。

君となら、どこまでもな……


── (  ―;) ──
誰が泣いても、誰が死んでも…………後悔しない。


気づいたよ。あの時に既に気がついていたのはそうだけど……改めて気づいた。

たった二日しか一緒にいてないのに……どうしてだろう。不思議だな。

自分は硬派だと、自負していたけど、そうでもないのかな……

これが……いわゆる運命の出会いって奴なのかもな……

……何言ってんだ俺…………でも、

(//Д/)「…………君を愛しているのは確かだからな……」

一人呟く。

あれ? 今、『愛している』なんて言ったけど、『確か』なんて言ったけど本当かな?

最初は『好き』だって言おうとしたのにな……口が勝手に……

てことはやっぱり『愛してる』んだよな……

ギコはその後もいろいろ考えた後、眠った。

眠る寸前のギコの顔は、どこか笑っているように見えた。
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