2 :試合のデータ ◆azwd/t2EpE :2006/07/13(木) 22:55:19.53 ID:jY+PyuTo0
スコア
   |1|2|3|4|5|6|7|8|9|10||R|H|E|
ROK|1|0|0|0|1|0|0|0|2| 0.||4|13|0|
VIP .|1|0|0|0|0|2|0|0|1|--||4|10|1|


投手成績(個人成績は試合開始前のもの)

内藤( ^ω^)
-勝 -敗 防御率-.-- 奪三振-- 投球回--- 完封-- 完投--
投球回:10 打者:44 被安打:13 被本塁打:1 奪三振:7 四死球:5 失点:4 自責点:2

畑(^・J・^)
21勝 3敗 防御率2.15 奪三振191 投球回213 1/3 完封4 完投9
投球回:9 2/3 打者:41 被安打:10 被本塁打:1 奪三振:16 四死球:5 失点:4 自責点:4
4 :試合のデータ ◆azwd/t2EpE :2006/07/13(木) 22:57:05.11 ID:jY+PyuTo0
野手成績(個人成績は試合開始前のもの)

ヴィッパーズ

一番センター 長岡( ゚∀゚) 8年目 26歳 .306 11HR 54打点
1.右安 2.三振 3.空振 4.四球 5.遊安

二番レフト 荒巻/ ,' 3 17年目 37歳 .288 15HR 65打点
1.犠打 2.三ゴロ 3.空振 4.右安 5.三ゴロ

三番ライト 毒田('A`) 10年目 31歳 .329 28HR 111打点
1.中安 2.空振 3.右二塁打 4.中直 5.左安

四番ファースト ニダ<ヽ`∀´> 3年目 29歳 .280 35HR 107打点
1.左安 2.四球 3.右飛 4.空振 5.三振

五番キャッチャー ショボン(´・ω・`) 9年目 30歳 .312 18HR 115打点
1.四球 2.一ゴロ 3.中本 4.空振 5.空振

六番サード 笑野( ^Д^) 13年目 36歳 .256 21HR 69打点
1.投併 2.四球 3.空振 4.空振

七番セカンド 椎名(*゚ー゚) 5年目 26歳 .275 6HR 43打点
1.二ゴロ 2.犠打 3.四球 4.空振

八番ショート 津村ξ゚听)ξ 5年目 26歳 .246 8HR 31打点
1.三振 2.空振 3.空振 4.中安

九番ピッチャー 内藤( ^ω^) 1年目 18歳 .--- --HR --打点
1.空振 2.空振 3.空振 4.中二塁打

5 :試合のデータ ◆azwd/t2EpE :2006/07/13(木) 22:58:30.95 ID:jY+PyuTo0
ロケッターズ

一番ショート 井蓋(◎´∵`◎) 14年目 32歳 .328 8HR 31打点
1.右本 2.中安 3.左安 4.中飛 5.空振

二番ライト 高掛(['][,]) 10年目 28歳 .276 26HR 75打点
1.左飛 2.空振 3.右二塁打 4.一ゴロ 5.二失

三番センター 近城( ´金`) 9年目 30歳 .316 18HR 61打点
1.遊ゴロ 2.左安 3.右飛 4.左飛 5.四球

四番レフト 榊彡 ´ー`) 19年目 40歳 .309 45HR 124打点
1.空振 2.二併 3.左安 4.四球 5.三振

五番サード 村者(ムΘラ) 8年目 26歳 .284 36HR 106打点
1.中飛 2.中安 3.中安 4.四球 5.右二塁打

六番ファースト 古者[`↓´] 7年目 25歳 .268 34HR 98打点
1.右飛 2.空振 3.四球 4.中飛 5.右飛

七番セカンド マムウェイ(0´く`0) 4年目 29歳 .298 21HR 89打点
1.四球 2.遊併 3.遊ゴロ 4.一ゴロ 5.左二塁打

八番キャッチャー 哀歌(^亮^) 12年目 30歳 .241 9HR 42打点
1.右二塁打 2.投内安 3.三振 4.三直 5.空振

九番ピッチャー 畑(^・J・^) 13年目 31歳 .205 2HR 8打点
1.三振 2.犠打 3.空振 4.左安

6 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2006/07/13(木) 22:59:33.75 ID:jY+PyuTo0
【第19話『終結』】


(実`・Д・)『わずか、わずか左!! レフトポールのほんのわずか左を、打球は駆けてゆきました!!』

 1センチにも満たないような微妙な差。
 それさえ埋まっていれば、打球は、ポールを直撃していた。

(解´Д`)『喪名監督が抗議に出ましたね。ポールに当たったのではないかということでしょうが……』
(実・Д・)『確かにかなり際どいところでしたが、しかし……』
(解´Д`)『……当たってないでしょうね』

 数分の抗議を続けたが、喪名監督は引き下がった。
 笑野が全くその抗議に加わろうとしなかったことが大きかった。

(実・Д・)『サヨナラならず!! カウントはツーストライクワンボール、ツーアウトランナー一塁!!』

 笑野は中々打席に入ろうとしなかった。

 全てを込めた打球だった。力と、運と、期待と、責任。
 そしてファンの声援。

 掴めるはずだった優勝。
 あまりに遠すぎる優勝。

 太陽を背にしたときの自分の影のようで、どれだけ歩んでも、その影を踏めることはない。
 陽光を眼にすることもない。眩しすぎて、眼がやられてしまいそうだった。

7 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2006/07/13(木) 23:02:04.97 ID:jY+PyuTo0
 重しを付けられたような笑野の足がゆっくりと打席の白線の中に入る。
 畑はすぐに五球目を投げた。

(実・Д・)『ストレート外角に外れてボール。平行カウントとなりました』

 笑野の眼は、元に戻っていた。
 ただのストレートが、明らかに揺れ動いている。
 畑の姿も、陽炎のようにぼやけていた。

(;^Д^)(ダメだ……もう、もう奇跡は起きねぇ……あんなにハッキリ見えることは、もう……)

 静止することのない視界。
 自分の手さえ、笑野は震えているように見えた。
 それが本当に視界のせいなのか、笑野は分からなかった。

 畑が一球牽制を入れる。
 再び、笑野のほうに向き直った。

(実・Д・)『さぁ、畑がボールをグラブの中に隠しました。第六球―――――』

 畑がセットポジションから、素早くボールを投じた。
 抜いたボール。カーブ。
 笑野は、全くタイミングが合っていなかった。

(実`・Д・)『あぁぁーっと!!! 引っ掛けてしまったぁぁぁぁぁ!!!』

 サードの正面に、力なくボールが転がった。
 笑野は、全力でファーストベースへと向かう。
 無我夢中で。
9 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2006/07/13(木) 23:04:35.20 ID:jY+PyuTo0
(;^Д^)(くそっ……くそっ!!!)

 光のない闇の道。
 あの一塁ベースが、これほど遠いものとは知らなかった。
 どれだけ駆けても、足踏みしているようにしか感じられない。

 三塁手のほうに、眼はやれない。
 いつ捕球されたのか。いつ送球されたのか。
 分からない。一塁までの距離さえ。

 どれだけ走っても、自分の影は踏めない。
 踏み出せば、逃げる。どれだけ進んでも、あと一歩のところで、届かない。
 やがて、走り疲れる。


( ^Д^)(……あれ……?)


 ふと、頭にとある考えが襲来した。
 そうだ、今まで何故気付かなかったのか。

 こんなに簡単なことに。

(実`・Д・)『笑野、ヘッドスライディングッッ!! 判定は―――――!?』

 手で一塁ベースに触れた。
 しかし、間違いなく一塁手も送球をキャッチしている。

 そして、審判のジャッジが下されるまでに、大した時間はかからなかった。

10 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2006/07/13(木) 23:07:04.11 ID:jY+PyuTo0
(実`・Д・)『セーフ!! セーフ!! 笑野、内野安打!!!』

 倒れこんだまま、笑野は右手を握り締めた。

 今は夜。背にしているのは、太陽ではなく月。
 影が踏めないなら、倒れこんでしまえば、全身で影を捕まえられる。

 あまりに単純な答えが、出せなかった。あるいはそれが、視界を揺るがせていたのか。


(実・Д・)『さぁ、笑野がチャンスを広げました!! ツーアウトランナー1・2塁!! 打席には七番椎名!!!』

 ネクストバッターズサークルで、静かに、俯きながら、待つ選手。
 その場から、中々動こうとしなかった。

(; - )(回ってきちゃった……回ってきちゃった……!)

 小刻みに震える体。
 足に力が入っていなかった。

(実・Д・)『先ほどまさかのエラーで優勝を遠ざけてしまった椎名。しかしこの打席でヒットが出ればもちろんサヨナラです!!』
(解´Д`)『毒田ならワンヒットで還ってくるでしょうね。とにかく椎名は打たないと……』
(実・Д・)『しかし、今日の椎名はノーヒットですね』
(解´Д`)『悪くはないんですがね……しかし、今の心境的に……厳しいものも、あるかも知れません』
(実・Д・)『……動きも硬いように見えます……』

11 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2006/07/13(木) 23:09:17.41 ID:jY+PyuTo0
 打席外での素振りが、波打った。
 足だけでなく、腕にも、力が入らない。
 ライトスタンドからは責め立てるような声援が続いている。
 それが空気の軋みを生み出して、椎名の背に乗っかっていた。

(; - )(打てないよ……こんな場面で……打てるわけない……! 何をどう狙っていいか分かんないよ……!!)

 プロにあるまじきことだと、椎名は自覚していた。
 しかし否応なく、足は震えている。
 審判が打席に入るように呼びかけるも、椎名の耳にはほとんど入っていなかった。

(実・Д・)『緊張……でしょうか?』
(解´Д`)『……恐怖かも知れませんね……』

(実・Д・)『……あっと、ベンチから喪名監督が出てきました』

 駆け足で喪名が椎名に近寄る。
 椎名は思わず身構えた。

(;゚ -゚)「ダメです、監督……私、打てません……」

 その言葉しか、椎名の頭には浮かばなかった。
 弱音が、本音だった。

12 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2006/07/13(木) 23:12:27.67 ID:jY+PyuTo0
( ´∀`)「……代打を出してほしい、とでも?」
(;゚ -゚)「そのほうがチームのためになります……だって、優勝がかかった打席なんですよ……?」
( ´∀`)「あぁ……」
(;゚ -゚)「優勝のかかった打球を……私は、エラーしました。同じことがきっと繰り返されます……」

 弱音しか出てこない椎名の言葉。
 喪名は、表情を変えずにその言葉を聞いていた。

( ´∀`)「……そうかも知れないな」
(;゚ -゚)「ですから……私に代打を」
( ´∀`)「しかし、そんなことは、やってみなければ分からない」

 喪名が椎名の肩を引き寄せた。
 耳元に口を近づけ、極めて小声で、椎名に言葉を向ける。

( ´∀`)「お前に代打は出さない。お前が決めろ、椎名。逃した優勝を、お前が捕まえるんだ」
(;゚ -゚)「無理です……! 私には……!」
( ´∀`)「不確実なことは聞きたくないな。いいか、畑は津村に回したくないんだ」
(;゚ -゚)「え……?」

 不意な一言に、椎名は逆に気持ちが落ち着くのを感じた。
 喪名の口調が真剣味を増させていた。

13 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2006/07/13(木) 23:17:14.30 ID:jY+PyuTo0
( ´∀`)「さっき津村は畑のフォークを完璧に打ち返している。そしてお前は今日ノーヒット。つまり、四球を出したくないんだ」
(;゚ -゚)「…………」
( ´∀`)「お前にフォアボールを与えて津村に回すと怖い……間違いなく、お前でアウトを狙ってくる」
(;゚ -゚)「それは、もちろんそうでしょうけど……」
( ´∀`)「しかもフォアボールを出したくない。つまり、初球でストライクを取ってくるはずだ」

 マウンド上の畑が焦れたように何度か足を動かした。
 グラブの中のボールは土もなく白いままだった。

( ´∀`)「変化球では抜ける可能性がある……そして、ここにきて球威が上がっているストレート……」
(;゚ -゚)「ッ……!」

( ´∀`)「初球のストレートを狙え、椎名。初球を思い切り叩くんだ」

 右翼席の声援が、透き通って椎名の耳に響く。
 体が、浮かび上がりそうなほど、軽かった。

14 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2006/07/13(木) 23:19:17.32 ID:jY+PyuTo0
(実・Д・)『椎名が打席に入ります。随分長く監督と話をしていましたが……』
(解´Д`)『……しかし、先ほどとはまるで別人のような顔つき……』
(実・Д・)『さぁ、ヴィッパーズファンの声援を受けて、椎名、サヨナラを決められるか!!』

 キャッチャーズボックスの哀歌が、ゆっくりサインを繰り出す。
 決めかねている様子はなかった。

(^亮^)(フォアボールは厳禁だ。ストライク先行で攻める必要がある)
(^亮^)(カーブでストライクを取りに行ってもいいが、緩い球で入るのは怖いな……シンカーは博打になるし……)
(^亮^)(……やっぱり、ここは……)

 手を二度開いて、人差し指を立てる。
 畑が、しっかりと頷いた。

(^亮^)(多少甘めでもいい。とにかくストライクを取ることが重要だ)
(^亮^)(……畑さん、渾身のストレート、お願いします!)

 空気の質が、変わり始めていた。


(*゚ -゚)(……監督の言葉……)

 左打席で静かに佇む椎名。
 畑が、フォームを構え始めた。

(*゚ -゚)(四年前か……まだ二年目だった僕に眼をかけてくれて、色んなこと教えてくれたなぁ……)
(*゚ -゚)(たくさんの言葉が今の僕を形成してる……全部、監督のおかげだ……)

 左足を、上げた畑。
 全身が、前に傾いていく。

15 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2006/07/13(木) 23:22:52.30 ID:jY+PyuTo0
(*゚ -゚)(……いつもありがとう……監督……)

(*`゚ -゚)(チームのため、ファンのため……そして、監督のために……!!)

 ボールが、右手から、離れた。
 18.44mを、一瞬で、埋める。
 哀歌のミットが、動いた。


 そして、白球の軌道を遮る、木目のバット。


 快い音を耳に残して、打球が、一本の線となって駆けて行く。
 セカンドのマムウェイがグラブを目一杯伸ばしてジャンプする。しかし、はるか頭上。
 ライトの高掛、センターの近城が、必死に打球へと走る。
 しかし、あまりに遠すぎた。


 そして、打球が、右中間に、落ちた。


(実*`・Д・)『サヨナラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!! ヴィッパーズ優勝ォォォォォォォォォォォォォォ―――――――――――――――――!!!!!!』


 椎名が、一塁ベースを過ぎたところで膝をついた。
 涙がとめどなく溢れ出していた。

16 :第19話 ◆azwd/t2EpE :2006/07/13(木) 23:24:37.34 ID:jY+PyuTo0
 真っ先に内藤がベンチから飛び出した。続いて津村が飛び出し、しかし長岡が俊足を飛ばす。
 ヴィッパーズの選手が椎名に駆け寄る。ホームを駆け抜けた毒田もすぐに歓喜の輪に加わった。
 優勝。あまりに待ち望んだ、優勝。
 掴み取った優勝。


 ヴィッパーズ、優勝。
 喪名監督が、高々と宙に舞った。














 第19話 終わり

     〜to be continued
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