3 :試合のデータ ◆azwd/t2EpE :2006/05/29(月) 00:09:09.33 ID:Bbg6S9R60
スコア
   |1|2|3|4|5|6|7|8|9|R|H|E|
ROK|1|0|0|0|1|0|0|0|-|-.|11|0|
VIP .|1|0|0|0|0|2|0|0|-|-.|6.|1|


投手成績(個人成績は試合開始前のもの)

内藤( ^ω^)
-勝 -敗 防御率-.-- 奪三振-- 投球回--- 完封-- 完投--
投球回:8 1/3 打者:38 被安打:11 被本塁打:1 奪三振:7 四死球:4 失点:2 自責点:2

畑(^・J・^)
21勝 3敗 防御率2.15 奪三振191 投球回213 1/3 完封4 完投9
投球回:8 打者:33 被安打:6 被本塁打:1 奪三振:13 四死球:5 失点:3 自責点:3
5 :試合のデータ ◆azwd/t2EpE :2006/05/29(月) 00:10:21.98 ID:Bbg6S9R60
野手成績(個人成績は試合開始前のもの)

ヴィッパーズ

一番センター 長岡( ゚∀゚) 8年目 26歳 .306 11HR 54打点
1.右安 2.三振 3.空振 4.四球

二番レフト 荒巻/ ,' 3 17年目 37歳 .288 15HR 65打点
1.犠打 2.三ゴロ 3.空振 4.右安

三番ライト 毒田('A`) 10年目 31歳 .329 28HR 111打点
1.中安 2.空振 3.右二塁打 4.中直

四番ファースト ニダ<ヽ`∀´> 3年目 29歳 .280 35HR 107打点
1.左安 2.四球 3.右飛 4.空振

五番キャッチャー ショボン(´・ω・`) 9年目 30歳 .312 18HR 115打点
1.四球 2.一ゴロ 3.中本 4.空振

六番サード 笑野( ^Д^) 13年目 36歳 .256 21HR 69打点
1.投併 2.四球 3.空振 4.空振

七番セカンド 椎名(*゚ー゚) 5年目 26歳 .275 6HR 43打点
1.二ゴロ 2.犠打 3.四球

八番ショート 津村ξ゚听)ξ 5年目 26歳 .246 8HR 31打点
1.三振 2.空振 3.空振

九番ピッチャー 内藤( ^ω^) 1年目 18歳 .--- --HR --打点
1.空振 2.空振 3.空振
7 :試合のデータ ◆azwd/t2EpE :2006/05/29(月) 00:11:21.80 ID:Bbg6S9R60
ロケッターズ

一番ショート 井蓋(◎´∵`◎) 14年目 32歳 .328 8HR 31打点
1.右本 2.中安 3.左安 4.中飛 5.空振

二番ライト 高掛(['][,]) 10年目 28歳 .276 26HR 75打点
1.左飛 2.空振 3.右二塁打 4.一ゴロ 5.二失

三番センター 近城( ´金`) 9年目 30歳 .316 18HR 61打点
1.遊ゴロ 2.左安 3.右飛 4.左飛

四番レフト 榊彡 ´ー`) 19年目 40歳 .309 45HR 124打点
1.空振 2.二併 3.左安 4.四球

五番サード 村者(ムΘラ) 8年目 26歳 .284 36HR 106打点
1.中飛 2.中安 3.中安 4.四球

六番ファースト 古者[`↓´] 7年目 25歳 .268 34HR 98打点
1.右飛 2.空振 3.四球 4.中飛

七番セカンド マムウェイ(0´く`0) 4年目 29歳 .298 21HR 89打点
1.四球 2.遊併 3.遊ゴロ 4.一ゴロ

八番キャッチャー 哀歌(^亮^) 12年目 30歳 .241 9HR 42打点
1.右二塁打 2.投内安 3.三振 4.三直

九番ピッチャー 畑(^・J・^) 13年目 31歳 .205 2HR 8打点
1.三振 2.犠打 3.空振 4.左安

8 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2006/05/29(月) 00:12:51.55 ID:Bbg6S9R60
【第12話『角逐』】

(*T-゚)「ゴメンね、ゴメンね……指が……ボールから……離れなくて……」
(;´∀`)「大事に行こうとしすぎたんだな……仕方ないさ、椎名……」
(;^Д^)「誰だってエラーはするさ……優勝がかかった打球なら、尚更その確率は高い……」

 ショボンは内藤の表情を確かめた。
 ほとんど、話を聞いていないように見えた。

(;´∀`)「……ランナーは溜まってしまったが、大丈夫だ。まだゲッツーも狙えるし、犠牲フライが出る場面でもない。落ち着いてアウトを重ねよう」
( ´∀`)「頑張ってくれ、内藤……――――内藤?」

 内藤がはっとして、喪名と眼を合わせた。

(;^ω^)「分かりましたお……頑張りますお」
(´・ω・`)「大丈夫か? 本当に投げられるか?」
(;^ω^)「大丈夫ですお。あとたった二つのアウトくらい、取れますお」
( ´∀`)「よし……お前に任せたぞ、内藤!」

 内藤の肩を軽く叩いて、喪名はベンチに戻っていった。
 ショボンは、その場を離れて良いのか、分からなかった。

(´・ω・`)「……近城でアウトを取ろう……榊に回っても、ツーアウトなら何とかなるはずだ……」
(;^ω^)「分かりましたお」

 同じような言葉しか、繰り返さない内藤。
 焦燥感に駆られる、ショボン。
 士気が高まったロケッターズ、不安が生じたヴィッパーズ。
 流れが、動いていた。
11 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2006/05/29(月) 00:13:59.52 ID:Bbg6S9R60
(実・Д・)『ピンチを迎えた内藤、この近城で何としてもアウトが欲しいところです』
(解´Д`)『あわよくば、ゲッツーですね。榊に回すと、大変なことになりますよ』
(実・Д・)『さぁ、ショボンはどんな球を要求するのか! 内藤、抑えられるのか!』

 近城が左打席に入る。表情は穏やかで、落ち着いていた。
 ショボンは、更なる焦りを掻き立てられる。

(´・ω・`)(俺が焦ってどうする……! 一番辛いのは内藤なんだ……俺がしっかりしないと……!)

 ショボンは、はっきりと、堂々とサインを出した。
 初球で、ストライクが欲しい。打者不利なカウントで勝負していきたい、とショボンは考えていた。

(実・Д・)『初球――――カーブ、外れてボール!』

 低目に、外れた。
 近城は冷静に見逃した。この勝負は、苦しくなる。ショボンは一瞬でそう悟っていた。

 二球目のストレート、三球目のカーブ。
 いずれも、ボールになる。
 そして、四球目。スライダーが、指にかかりすぎた。
 ホームベースの手前で、ワンバウンド。

(実`・Д・)『ボール!! フォアボール!! ワンナウト満塁ッ!!』

 ストレートのフォアボール。
 内藤の眼が、再び虚ろになっていた。

(解´Д`)『最悪ですね……よりによって、この場面で……』
(実・Д・)『さぁっ、打席には四番榊!! ロケッターズの主砲、チャネラーリーグが誇る大砲、榊!! 内藤、今日最大のピンチを迎えています!!』

12 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2006/05/29(月) 00:16:11.35 ID:Bbg6S9R60
彡 ´ー`)(……ワンナウト満塁……)

 軽くスイングしてから、右打席へ。
 この場面で、打席が回ってくる。榊は、変な気負いもなく、幸福とすら感じる瞬間に立ち会っていた。
 ロケッターズナインが、回してくれた打席だった。

彡 ´ー`)(今年は……今年は、大丈夫だ……)

 プレイングマネージャーも、今年で二年目。
 他球団を圧倒するような打撃陣を誇り、投手力もリーグトップを争うほどだった。
 優勝は充分可能、いや、当然とすら言われた去年。
 ヴィッパーズにあっさり優勝を持っていかれた。

 監督には不向きだ、と批判された。
 打者に専念すべきだ、兼任監督は相応しくない。
 毎日のようにテレビやファンから浴びせられる言葉に、耐えた。
 どうすれば優勝できるのか、ということだけを考え続けた。

 パンチ力のある高掛を二番に、足のあるマムウェイを七番に持ってくる、奇抜なオーダーを組んで挑んだ今季。
 シーズン途中、近城が怪我で離脱したのは痛手となったが、それでもナインは腐らずに試合を戦った。
 二番の高掛と七番のマムウェイはそれぞれ成績を上げ、勝利に大きく貢献し、つられるかのように、村者や古者がホームランを量産した。

 それでもヴィッパーズは強かった。
 レギュラーに怪我人が出ず、1番から8番まで全員が規定打席に到達。
 椎名、津村の二遊間を筆頭に、レフトの荒巻やライトの毒田など、ゴールデングラブ賞の常連がおり、守備力は抜群。
 打撃でも毎年首位打者争いに絡んでくる毒田、チャンスに強いショボン、年々成績を上げているニダなど、不振の笑野を補ってあまりある活躍を見せた選手が多かった。
 投手陣ではダブルエースの斉藤と白根がともに15勝、擬古が14勝、比木が11勝を挙げるなど先発が安定しており、シーズン終盤までは苦戦を強いられていた。

13 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2006/05/29(月) 00:18:21.11 ID:Bbg6S9R60
 それでもヴィッパーズの負けた試合を逃さぬよう勝ち続け、遂に逆転首位。
 ヴィッパーズは当然食い下がり、最終決戦にまで縺れ込んだが、榊は充足していた。
 例えどんな結果になろうと、ファンやフロントは納得するはずだ、という思いがあった。優勝決定戦には、それだけの価値があった。

 そして、今、九回表、ワンナウト満塁のチャンス。
 これほど恵まれた瞬間があるだろうか、と榊は感動に打ち震えていた。


(実・Д・)『さぁ、初球を投げ込んだ! 内角、僅かに外れてボール!!』

 ショボンはゆっくり内藤にボールを返した。急かしたくなかった。

(´・ω・`)(内角高目のストレートと、スライダー……榊が苦手とするこの二つで、打ち取りたい……)

 ショボンがサインを出す。内角高目の、ストレート。
 しかし、これも僅かに外れて、ツーボール。
 苦しいカウントになった。

(実・Д・)『おっと、ショボンがマウンドに向かいます。この試合三回目』

 内藤の球は、極端に悪くなったわけではなかった。
 しかし、榊を打ち取るに、充分といえる球でないのも事実だった。

(´・ω・`)「辛さは分かる……お前には、あまりにも辛いことが多すぎた」
(;^ω^)「そんなことないですお! 大丈夫ですお!」
(´・ω・`)「聞いてくれ。榊は、今年優勝しないと、クビになるかも知れない」
(;^ω^)「……お?」

 内野手もマウンドに集まる。椎名の表情は、曇ったままだった。

14 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2006/05/29(月) 00:20:00.34 ID:Bbg6S9R60
(´・ω・`)「圧倒的な戦力を保持しながら、二年連続で優勝を逃せば、監督の責任と言われても当然だ……」
(;^Д^)「おい、ショボン……お前、こんなときに何の話を……」
(´・ω・`)「ロケッターズも優勝したいんだ。当たり前だ。そして俺たちも、一年間応援してくれたファンのために、優勝しなきゃいけない」

 内藤は、意識をライトスタンドに傾けた。必死の応援が続いている。

(´・ω・`)「それぞれの思いがあるし、それぞれの辛さがある……みんな、色んなものと戦って、ここに居るんだ」

 笑野が押し黙った。何かを思い出すかのように、俯いていた。

(´・ω・`)「あとちょっと、それと戦うだけで、優勝できる……内藤、みんなそれと戦っているんだ……あと少しだ……お願いだ……」

 懇願するような、ショボンの切なる声。
 ショボンが何を言いたいのか、何を伝えたいのか、内藤には分かった気がした。
 みな辛いのだから、お前も我慢しろ、などという単純なものではなかった。
 そして、ある意味では、単純な内容だとも言えた。

( ^ω^)「……頑張りますお」

 曲折した、励まし。
 それが、今の内藤には、最も効果的だった。

(実・Д・)『さぁ、試合再開です。カウントはノーストライクツーボール。ピッチャー不利のカウントです』
(解´Д`)『次でストライクを取らなきゃいけませんからねぇ。榊は当然、狙ってくる』
(実・Д・)『ということは、空振りの取れる球が必要ですね』
(解´Д`)『そういうことです。スライダーを低目に投げられるかどうかでしょう』

15 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2006/05/29(月) 00:21:58.31 ID:Bbg6S9R60
 ショボンがサインを出し、内藤が頷く。
 三球目。
 回転のかかった球が、低目に落ちる。
 榊のバットが、ストライクゾーンを横切った。

(実`・Д・)『空振りッ! ワンストライクツーボール!』

 榊が一瞬、地面に視線を落とした。
 ショボンはボールを返球してすぐ、サインを出した。

(´・ω・`)(さっきとは違う。ここは一気呵成に攻める場面だ!)

 内角高目の、ストレート。
 榊は反応できずに、ツーストライク。追い込んだ。

(´・ω・`)(ここで三振が欲しい……スライダーなら、空振る可能性は高い……)

 ショボンがサインを出す。内藤は、ゆっくりサインを飲み込んだ。

(;^ω^)(スライダー……)
(´・ω・`)(三球目と同じように投げてくれ。三振を取るぞ!)

 内藤が頷いた。
 第五球。低目に落ちるスライダー。
 しかし、榊のバットはぴくりとも動かなかった。

(実・Д・)『見ました! よく見ました榊! 見逃してフルカウント!!』
(解´Д`)『一転、ヴィッパーズは苦しくなりましたね』
17 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2006/05/29(月) 00:24:03.91 ID:Bbg6S9R60
 ショボンは困惑した。
 連続でスライダーは危険すぎる。しかし、インハイに直球を放らせるのも博打だ。何度も上手く決まるコースではない。
 カーブを詰まってくれれば最上だが、抜ける可能性も低くない。高めに浮けば、直球と同じリズムで打たれる。
 何が最善か。ショボンは、分からなくなった。答えが、見つかる気もしなかった。


 ギリギリまで考えた末、ショボンが要求した球は、ストレート。
 アウトロー。それしか、なかった。

(実・Д・)『内藤、サインに頷きました。九回表、ワンナウト満塁、フルカウント! さぁ! 勝るのは内藤のピッチングか、榊のバッティングか!!』

 内藤が、振りかぶった。
 力強く踏み出した左足。地を蹴る右足。
 しなる右腕。放たれた、ストレート。

 鳴り響く、ミット音。

 榊のバットは、動いていなかった。
 アウトローに構えたショボンのミットに、ボールは、確かに収まっていた。

18 :第12話 ◆azwd/t2EpE :2006/05/29(月) 00:26:41.80 ID:Bbg6S9R60
 しかし、それがストライクなのか、ボールなのか。
 球場にいる誰にも、それが、分からなかった。


 榊がミットを見、そして、球審を見た。
 ショボンはミットを微動だにさせず、ただ、審判からのコールを待った。
 内藤は、祈るような瞳で、球審を見つめている。

 実況すら、息を呑んでいる。
 球場全体が、静まり返った。

 そして、そこにいる全員の視線が、球審に注がれていた。











 第12話 終わり

     〜to be continued
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