- 30 名前:第二十二話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
20:59:10.41 ID:IZTySI4u0
最終話 「光」
- 37 名前:第二十二話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
21:01:12.90 ID:IZTySI4u0
- ( ;ω;)「……つ、ツン?」
いま、確かに聞こえた。
出会ってからずっと、聞き続けてきた声。
僕を怒鳴りつけた声。僕にやさしく語りかけてきた声。
そして、ずっと聞きたかった声。
ξ;゚ー^)ξ「……ブーン?大丈夫?」
ああ。
本物だ。
さっき夢のなかで見たような偽物なんかじゃない。
本物のツンだ。
( ;ω;)「ツン!」
ξ;゚ー^)ξ「ばっか……なに泣いてるのよ」
( ;ω;)「な、泣いてなんか……」
ξ;゚ー^)ξ「はいはい」
腕の中で、ツンは大きく深呼吸をした。そして僕の目を上目遣いで見て言った。
ξ;゚ー゚)ξ「ごめんね……色々迷惑かけて」
( ;ω;)「迷惑なんか……ツンのためなら僕はなんでもするお!」
- 39 名前:第二十二話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
21:02:33.66 ID:IZTySI4u0
- ξ;゚ー゚)ξ「ふふふ、ありがとう」
苦しそうなのに、笑ってみせているツン。その体を強く抱きしめようと思い、僕が彼女を引き寄せると、何かが音を立てて落ちた。
ごとり、と、音がした。
ξ;゚ー゚)ξ「……もう、駄目ね」
ツンの右腕、機関銃になっていた右腕が、根元から崩れていた。パラパラと、珪素の破片が地に落ちていく。
僕は思わず目をそらした。
なんでだ。
僕は心の中で叫ぶ。
やっぱり駄目なのか?僕はもう、ツンといっしょに居させてもらえないのか?
( ;ω;)「ごめんお……ツン。僕のせいで」
ξ;゚ー゚)ξ「何言ってるのよ。あたしは、ブーンに感謝したいくらいなんだよ」
あたしにこれ以上人を殺させないでくれてありがとう。しぃから、体を取り返してくれてありがとう。
彼女はそう言った。
ξ;゚ー゚)ξ「あたしの意志じゃなくても、あたしの体が人をどんどん殺していく様子を見るのは、本当に嫌だった。
体の中で、ずっと、ずっと謝ってた。ごめんなさい、ごめんなさいって」
( ;ω;)「ツン……」
ξ;゚ー゚)ξ「だから泣かないでよ。ばか」
- 42 名前:最終話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
21:04:01.90 ID:IZTySI4u0
- ツンは左手で僕の顔をさわる。
まだ、暖かい。人間の肌の感触。
ξ;゚ー゚)ξ「このチョーカー……付けててくれたんだね」
( ;ω;)「当たり前だお!僕の宝物だお」
ξ;゚ー゚)ξ「ありがとね。気に入ってくれたんだね」
大きく息を吐くツン。
ξ;゚ー゚)ξ「ブーン?メール、見てくれた?ごめんね、変なメール送っちゃって」
( ;ω;)「そんなことないお」
ξ;゚ー゚)ξ「ねぇ、あたし、ブーンに聞きたい事があるの」
( ;ω;)「な、なんでもいいお。どんなことだお!?」
ξ;゚ー゚)ξ「あたしは、ブーンが好き。ずっと好きだった。いつもいつも、ブーンのこと考えてた。
ブーンといっしょに居られる時間が、一番幸せだった」
( ;ω;)「……」
ξ;゚ー゚)ξ「ブーンは、あたしのことどう思ってる?好き?」
弱々しい声で聞いてくるツン。そんなこと、決まっていた。
( ;ω;)「好きだお」
僕ははっきりと言った。
- 44 名前:最終話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
21:05:40.38 ID:IZTySI4u0
- ( ;ω;)「もうどうしようもないくらい好きだお。今までもずっと好きだったお。
これからもツンとお話したいし、遊びに行きたいお。また手をつないで歩いたりしたいお」
ξ;゚ー^)ξ「……ありがとう。あたしも、これからもブーンといっしょにいたかった」
( ;ω;)「そんな、もう生きられないみたいなこと言うなお!」
ξ;゚ー゚)ξ「ごめんね。……もう、駄目なの。あたし、わかるの」
ツンは荒い呼吸を、また深呼吸で整えた。
ξ;;)ξ「あたしもブーンといっしょに生きていきたかった。だけど、駄目なんだよ。もう、あたし、駄目なんだよ。
ブーンといっしょに、もういられないの」
涙でくしゃくしゃの顔を、僕の胸に押し付けてツンは声を上げて泣いた。
肩を上下させながら、ごめんね、ごめんね、と繰り替えし謝った。
ξ;;)ξ「ごめんね。泣いてばっかりで。ああ、ブーン?好きだよ?ほんとに。
ブーンもあたしのことが好きだなんて、ほんとに嬉しい。ねぇ、ブーン、好きだよ?」
( ;ω;)「ツン……」
気丈だった彼女がこんなにまで取り乱しているなんて、信じられなかった。
腕の中の、小さな肩をしっかりと抱きしめた。
しばらくすると落ち着いたのか、ツンは顔を上げた。目が、あった。
ξ;゚ー゚)ξ「目、真っ赤だよ?ブーン」
( つω;)「ツンもおなじだお」
- 47 名前:最終話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
21:07:16.04 ID:IZTySI4u0
- そして、そのまま唇を合わせた。
後ろにドクオやショボン。ジョルジュやクーまでも居たが、まったく気にしなかった。
涙でしょっぱい味がした。唇を合わせながら、ツンはまた涙を流した。
二回、三回と接吻を繰り返し顔を離すと、真っ赤になったツンの顔があった。
ξ////)ξ「……」
( つω;)「ツン、顔、真っ赤だお」
ξ////)ξ「ばか」
そして、また抱きしめあった。
もう、離れないことを願うかのように。
ξ;゚ー゚)ξ「じゃあ、ブーン。あたし、最後にやることが残ってるの」
( つω;)「……お?」
僕の手を離し、ツンは立ち上がった。
右腕がない分バランスが悪いのか、一度、右によろめいた。
( つω;)「ど、どこにいくんだお?」
ξ;゚ー゚)ξ「……ねぇ、ブーン。あたしは、たくさんの人を殺したの」
( つω;)「それはツンがやったんじゃないお!やったのはしぃだお!」
ξ;゚ー゚)ξ「同じことだよ」
- 50 名前:最終話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
21:11:13.11 ID:IZTySI4u0
- ツンはわずかに微笑んだ。
ξ;゚ー゚)ξ「天国に行くために、最後にいいことをしようと思うの」
( つω;)「?」
ξ;゚ー゚)ξ「これで、お別れね」
『ツン!やめなさい!あなたが今考えてることがわかるわ!』
ξ;゚ー゚)ξ「……しぃ。あなたまだ……」
『駄目!絶対に駄目!そんなことしたら、あなたもあたしも……』
ξ;゚ー゚)ξ「しぃ。これはあたしの体なの。もう、あなたの好き勝手にはさせない」
『ツン!』
ξ;゚ー゚)ξ「……じゃあ、これが最後の仕事よ。しぃ」
そう言うと、ツンは目を閉じた。
ツンの体が輝き始め、背中の羽根が広がった。
( つω;)「ツン!!」
ξ;゚ー゚)ξ「ばいばい。大好きだった」
それだけ言うとツンは飛び上がった。暗い、夜空へ向かって。
そして、あっという間に見えなくなった。
- 51 名前:最終話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
21:12:27.64 ID:IZTySI4u0
- ( ;ω;)「つーーーーーーーーーん!!!」
僕は叫んだ。声の限り。
見えなくなっても、ずっと。
僕の叫びは、ツンに届いていたのだろうか?
視界の隅に、何かが映った。
暗い夜空に、ツンと同じように光っている。
(;゚∀゚)「……あれは」
从;゚∀从 「……ああ」
すべてをなかったことにする火。人が生み出した、最も愚かな火。
川;゚ -゚)「……核だ」
クーがつぶやいた。
- 55 名前:最終話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
21:14:49.57 ID:IZTySI4u0
- 東京の空に二つの光が飛んでいた。
一つは火を噴出して。一つは羽根を生やして。
前者の光は禍々しさを感じるほどの光であったが、後者の光はこぢんまりとした、弱々しい光だった。
羽根を付けた光が空中で静止した。そこで、光は強くなる。
その光は留まることなく大きくなり続け、最終的には東京全域を照らし出すほどの光となった。
その光は何もかもをさらけ出した。
暗い夜の世界は、明るい昼の世界に変わった。
やがて、もう一方の光が放つ光を食らいつくし、その姿を露にさせた。
その光の正体は、核ミサイル。なにもかもをゼロに戻す火だ。
太陽とでもいえる程に成長した光は、核ミサイルを受け止めるような形となった。
そして次の瞬間、その光から、白い、巨大な羽が現れた。
片方の羽だけでも1000m。あわせて2キロはあろうかというその羽。
核ミサイルはまるでそこに何もないかのように、光の中心に直進していった。
ミサイルが、光に完全に包み込まれた瞬間、広がっていた羽が急速に収縮をはじめ、光を押し込んでいった。
見る見るうちに光は小さくなっていく。
そして、光が完全になくなったとき。
爆発が起きた。
- 59 名前:最終話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
21:17:21.59 ID:IZTySI4u0
- 爆発といっても、物理的な破壊をもたらす爆発ではない。言うならば光の爆発。
再び闇に染まっていた世界を、また白い光で染め直した。
そしてその光を見ていたものは、例外なく息を呑んだ。
光の爆発と共に、何かが東京へ降り注いでいく。
白い、羽だ。
細かくなった羽、一つ一つが街に降り注いでいった。
誰もいないビルの屋上、車の走っていない道路。
そのすべてが、降り注ぐ羽によって白く染まっていく。
光の爆発が終わったとき。
そこには核ミサイルも、ミサイルを包み込んだ光の姿もなく、ただ、羽が降り続けているだけだった。
- 61 名前:最終話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
21:18:17.70 ID:IZTySI4u0
- (;・∀・)「……これは……」
モララーは今目の当たりにしている光景を信じられない様子で見つめていた。
プギャー中将の放った核ミサイルは、間違いなく東京に落ちるはずだった。
(;・∀・)「奇跡だ……」
司令室から外に出て、その羽の一つを拾った。
羽そのものが光を放っている。手に持ったとたん、ばらばらになって落ちてしまった。
( ・∀・)「……」
そして、砕けた羽根は、地につく前に消えてしまった。
( ・∀・)「……」
モララーは黙ったまま空を眺め続けた。
- 62 名前:最終話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
21:19:26.11 ID:IZTySI4u0
- ( ,,゚Д゚)「……」
(官゚ゝ゚)「……これは、なんなんでしょうか」
( ,,゚Д゚)「わからねぇ」
ギコはブリッジの窓から見える光景に目を奪われていた。
東京に降り注ぐ、羽。
( ,,゚Д゚)「……だけど、これだけはわかる」
(官゚ゝ゚)「?」
( ,,゚Д゚)「俺たちは、助かったんだ」
ブリッジから外に出て、甲板にたまる羽の一つを拾ってみる。
ぱらぱらと砕ける羽根を見て、ギコはつぶやいた。
( ,,゚Д゚)「……ミサイル、痛かっただろうな……ごめんな」
肩に積もる羽などかまわずに、ギコはその場に立ち続けた。
- 64 名前:最終話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
21:20:29.16 ID:IZTySI4u0
- (’e’) 「……」
煙草を口にくわえながら、セント・ジョーンズは降り注いでくる羽根を見つめていた。
(’e’) 「……この煙草、うまくねぇな」
ジタンが廃柄になってなかったらなぁ……と、セント・ジョーンズは毒づく。
(’e’) 「まぁいいか」
この白い光を見ていると、なんだかそれも許せるような気がしてくるのだ。
大きく、煙を吸い込んだ。そして吸殻を捨てた。
吸殻に、羽根がつもっていく。
(’e’) 「……」
なんとなく、セント・ジョーンズは吸殻を拾う。
そして、その辺から缶を拾ってきて灰皿にした。
(’e’) 「……」
そしてもう一本、煙草に火をつけた。
煙草の煙よりも白い羽は、途切れることなく振り続ける。
- 69 名前:最終話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
21:21:31.99 ID:IZTySI4u0
- (;゚∀゚)「……これは」
川;゚ -゚)「……羽?」
从;゚∀从 「ミサイルは……?」
降り続ける羽を全身に受けながら、信じられないような顔つきで立ち尽くす。
(;´_ゝ`)「……」
(´<_`;)「こんなの、データにはなかったぞ」
(;゚∀゚)「……データ云々の世界じゃないってことだな……」
川;゚ -゚)「ああ」
透き通るような真っ白な羽。
まるで雪が降っているかのように、その羽は降り続ける。
( ゚∀゚)「……ツンが、最後の最後になって、俺達を助けてくれたんだ」
川 ゚ -゚)「……」
ジョルジュの言葉にも、クーは黙ったまま。
- 71 名前:最終話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
21:23:12.15 ID:IZTySI4u0
- ( ^ω^)「……」
肩に、頭に、白い羽はどんどん降り積もっていく。
涙は自然と止まっていた。
('A`) 「……」
(´・ω・`)「……きれいだね」
ドクオとショボンも同じように、空を見上げている。
白い羽は、街を、雪のように白く染めていく。
( ^ω^)「……ツン」
('A`) 「ああ」
(´・ω・`)「……この羽ひとつひとつから、ツンを感じるよ」
( ^ω^)「……僕もだお」
('A`) 「奇遇だな。俺もだ」
僕は地面に積もっている羽根を取り上げた。
- 74 名前:最終話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
21:24:42.60 ID:IZTySI4u0
- ツン、僕は大丈夫だお。
君がいなくても、この先もきっと生きていけるお。
大丈夫、頑張れるお。
君が救ってくれたこの命、大事にするお。
最後に想いが通じ合えて、本当にうれしかったお。
……でも、やっぱりさびしいお。
また、いっしょに登校、したかったお。
また、人が居ないところで手をつないだりしたかったお。
またいっしょにカラオケ、いきたかったお。
下手だけど、一生懸命に歌ってあげたかったお。
勉強、おしえてほしかったお。
- 75 名前:最終話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/24(日)
21:25:35.85 ID:IZTySI4u0
- ツン。
大好きだったお。
また、天国で会おうお。
その時まで、すこし待っててほしいお。
それまでに、ツンが驚くような男に成長してやるお。
……だから、それまで、さよならだお。
手にもった羽根がぱらぱらと砕けた。
その破片は、風に吹かれて、空に消えていった。
〜〜( ^ω^)がξ゚听)ξを止めるようです〜
おしまい
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