102 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:32:33.60 ID:hvKNCeZT0
第三話


真っ暗で何も見えない。

真っ暗な空間に、私だけポツンと一人。

ξ゚听)ξ「…ここは…?」

どこ?

周りは暗闇しかない。

どこまで続いているかわからない黒い空間が、ずっと。

ξ゚听)ξ「……」

……
104 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:33:45.27 ID:hvKNCeZT0
夢?

だとしたらどこからが夢?

この夢から覚めれば、明日もまた学校に行く用意をして、髪を整えて、
ブーンの家に行ってブーンを起こして、いつもの1日が始まる?

頭痛に苦しむ必要もない、体にも異変はない。
…伊藤先生を殺したりもしない。

そんな普通の1日がまた始まる?

『残 念 だ け ど』

ξ 凵@)ξ「……っ!!」

不意に、頭に響く声。

背後に人の気配を感じ、さらに声が響いた。

『それはないわね』

振り返ると、そこには暗転した世界で見た、

(*゚ー゚)

少女がいた。

105 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:35:17.07 ID:hvKNCeZT0
*

(*゚ー゚)『……』

ξ゚听)ξ「…また、あなた」

(*゚ー゚)『……』

ξ゚听)ξ「あなたは一体なんなの?」

(*゚ー゚)『しぃ』

ξ;゚听)ξ「…しぃ…?」

しぃ。

多分この少女の名前なのだろう。

でも、私が聞きたいのはそんなことじゃない。

ξ;゚ー゚)ξ「…しぃ、あなたに聞きたいことがあるの」


106 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:35:46.24 ID:hvKNCeZT0
(*゚ー゚)『なぁに?』

吐き出せる相手は、この子しかいない。

怒りの矛先を向けられるのも、この子しかいないんだ。

ξ♯゚听)ξ「あなたは一体何者なの!?ここは一体どこなの!?
       何であなたはここにいるの!?
       あたしにとりついて、一体何がしたいの!?」

力の限り叫んだ。

まだ、これだけでは終わらない。

ξ♯゚听)ξ「あたしの体はどうなったの!?あなたが何かしたんでしょ!?
       あの手はなに?あたしは先生に何をしたの!?」

何故私がこんな目にあうのか。どうして普通の明日を迎えられないのか。

涙がこぼれる。
108 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:37:20.44 ID:hvKNCeZT0
ξ;;)ξ「なんで、あたしなの…!?どうしてあたしがこんな目にあうの…!?」

(*゚ー゚)『…』

ξ;;)ξ「答えてよ……!」

(*゚ー゚)『…ごめんなさい、今は言えないわ』

ふざけんな。

人の体に勝手なことしておいて、何も言わない?

ξ;;)ξ「なにを…勝手なことを…!」

(*゚ー゚)『あなたとはまた会うわ。段々と話していってあげる』

ふわっと、しぃの体が浮く。


109 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:37:43.29 ID:hvKNCeZT0
ξ;;)ξ「…!」

(*゚ー゚)『また会いましょう、ツン。そうだ、お別れの前にあなた、自分の
     右腕を見て御覧なさい』

ξ゚听)ξ「…右腕?」

(*゚ー゚)『じゃあね』

ξ゚听)ξ「ちょっと…!待ちなs…」

そう言いかけたところで、しぃの姿が消えた。

私は、暗闇の中に一人残された。

ξ゚听)ξ「…」

右腕…

しぃが言っていた。

恐る恐る左手を動かして右腕を触ってみる。


110 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:38:22.75 ID:hvKNCeZT0
ξ 凵@)ξ「…!」

…私の腕の感触じゃない。

もっと、なにか、別の。

もっと固くて鉄みたいな…

ξ゚听)ξ「…っ!!」

思い切って、見てみる。




ξ 凵@)ξ「…あ、ぁあ」

見たくなかった。

一瞬で目を背けてしまったが、もう脳裏に焼き付いてしまった。

ξ 凵@)ξ「…ぁあぁ」


111 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:38:46.35 ID:hvKNCeZT0
黒光りする長いバレル。

それが数本同じ方向を向いて固定されている。
腕の根元には、恐らくマガジンであろう四角い箱がついていた。

私はこれを映画とかで見たことがある。

もう一度、恐る恐る見てみる。

目は背けられなかった。

間違いなかった。

ーーー私の腕が、機関銃ようになっていた。

ξ;凵G)ξ「いやぁあぁあぁああああああああああああ!!!!」

暗闇の中で、私の叫び声だけがこだました。

頭を抱えようにも、抱える腕が私にはないのだ。


113 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:39:11.79 ID:hvKNCeZT0
*

『…現在、電波の届かないところにいるか、電源が入っておりません…』

(;^ω^)「つながんNEEEEEE!!!」

街中で大声をあげてしまった。
人々の視線が僕に集中する。

でも、そんなことに構っていられなかった。

僕はツンを探さなければならない。

でも、ツンはどこに?

(;^ω^)「携帯つながらねぇんじゃどうしようもないお…!!」

焦る。


114 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:40:15.56 ID:hvKNCeZT0
(;^ω^)「ツンが行きそうなところに手当たり次第行くしかないお…」

ツンが好きな場所・・・行きそうな場所…

(;^ω^)「たくさんありすぎるお!!」

それでも行くしかない。

本屋…百円均一…ドラッグストア。

(;^ω^)「いないお!!」

マクドナルド…モスバーガー…ケンタッキー。

(;^ω^)「ここもいないお…!!」

帰りにいつもいっしょに寄っているコンビニ…長話をする公園のベンチ。

(;^ω^)「ツン…どこにいるんだお…」

115 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:40:51.01 ID:hvKNCeZT0
走り回りすぎて、疲れた。ひざがもう笑っていた。

(;^ω^)「(日ごろの運動不足が祟ったお…こんなことならもっと
      運動しとけばよかったお…)」

思わず僕は地団駄を踏んだ。一体、どうすればいい?

(;^ω^)「歯痒いお…」

もう一度電話をしようと発信履歴を開いたとき、バイクのエギゾーストノートと共に、
どこからか僕を呼ぶ声がした。

('A`) 「ブーン!!」

(;^ω^)「ドクオ!!」

スカイウェイブに乗ったドクオが、改造マフラーの音を鳴らしてやってきた。

(´・ω・`)「やぁ、お待たせ」

(;^ω^)「ショボン!」

その後ろからはZXに乗ったショボン。

117 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:41:36.28 ID:hvKNCeZT0
('A`) 「…ツンを、探しに行くんだろ!?」

(;^ω^)「…!なんでそれを…?」

(´・ω・`)「何年間友達やってると思ってんのさ。
      事情はわからないけど、僕たちもいっしょにツンを探すよ!」

('A`) 「ほら、乗りな!…本来は女の子を乗せるためのシートなんだがな…
    今日は特別だ!ほら、40秒で仕度しな!」

投げられるヘルメット。

(;^ω^)「…二人とも、すまないお…!
      恩に、きるお!」

ヘルメットを受け取ると、僕はドクオのバイクに飛び乗った。

('A`) 「で、どこに行けばいいんだ?」

(´・ω・`)「確かに。ツンはどこにいるのか検討はついているのかい?」

( ^ω^)「それは…」

今までずっと探しても見つからなかった。

あと、僕が知っているツンが行きそうな場所は、ひとつしかない…!


118 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:42:03.97 ID:hvKNCeZT0
( ^ω^)「僕とツンがはじめて会った場所…十年以上前に、
     引っ越してきたばかりで迷子になっていたツンに、僕がはじめて会った
     場所があるお!」

('A`) 「おお!!で、そこはどこだ!?」

思い出す。

十年以上前、迷子になっていたツンと、虫取りに来ていた僕がはじめて
会った場所。

( ^ω^)「ラウンジ山の、展望台だお!」

('A`) 「おk!!まかせな!!」

ドクオが操るスカイウェイブは、このときだけはフェラーリよりも
確実に速いように、僕には感じた。

120 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:43:09.57 ID:hvKNCeZT0
*


ξ 凵@)ξ「……ぁぁぁああああ!!」

飛び起きた。

ξ;゚听)ξ「はっ…ゆ、夢…?」

反射的に、右腕を見る。

ーーーちゃんと、普通の右腕がついている。

ξ;゚听)ξ「夢…だったの?」

私は確か、ラウンジ山の展望台までやってきた。
そして、ベンチに座って町の様子を眺めていた。

そして、眠ってしまった…?

それで、夢を見ていた…?

ξ゚听)ξ「…」


121 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:43:29.84 ID:hvKNCeZT0
性質の悪い夢。

私をどこまで追い詰めれば良いのだろう。

体を起こし、乱れた髪をなおした。

そのとき、コツン、と言って靴に何かが当たった。

ξ゚听)ξ「…?」

屈んで拾い上げてみると、それは黒くて冷たい鉄の塊だった。

形は、口紅のようだったがまったく違うものだと、私でもわかった。

ーーーこれは、弾丸だ。

ξ 凵@)ξ「…やっぱり…」

夢なんかじゃ、なかったんだ。

……

123 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:44:16.86 ID:hvKNCeZT0
……


バララララ……

不意にヘリコプターの音が耳に入ってくる。

そうだ、この辺は自衛隊の駐屯地があるところだった。

耳を押さえる。

もう、何も聞きたくない。

車の音も、クラクションの音も。

風の音も。飛行機の音も。

ξ 凵@)ξ「……………い…」


124 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:44:53.47 ID:hvKNCeZT0
バラララララララララララララ……

ξ 凵@)ξ「…………さい…」

バララララララララララララララララ…………

ξ 凵@)ξ「………るさい…」

バララララララララララララララララララララララ…………

ξ 凵@)ξ「…うるさい」

もう、なにも。

ξ 凵@)ξ「聞きたくない!!」

『じゃあ
  こ わ し ち ゃ え ば い い ん じ ゃ な い?』

ξ 凵@)ξ「!!!!!」

少女の言葉を脳裏に聞いた直後、意識を残したまま私の体は私の支配下を離れた。

126 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:45:34.96 ID:hvKNCeZT0
*


副操縦士「あれ、なんなんですかね?」

操縦士「ん?」

ラウンジ山の展望台付近で、何かが光っているのに副操縦士は気付いた。

操縦士はちらりと見て、

操縦士「おおかた、夏にあまった花火を見つけて冬の花火も良いとかいって
    楽しんでるやつらだろ」

副操縦士「そんな!市販の花火の光がこんな遠くから見えるわけないです!」

操縦士「おいおい、そんな熱くなるなよ…」

操縦士は渋々とその光を眺めてみる。

そして、目を疑った。

あれは…

127 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:46:43.37 ID:hvKNCeZT0
操縦士「おい!双眼鏡!」

副操縦士「は、はい!」

操縦士「冗談じゃねぇぞ…あれは…」

人だった。

体中から光を発して、右腕には空母搭載の機関銃のようなものがついている。

そして、その背中から、羽のようなものが生え始めていた。

副操縦士「…まるで天使だ…」

副操縦士が感嘆の声を漏らす。

操縦士「…おい」

副操縦士「はい?」

操縦士「全力で逃げるぞ」
129 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:47:47.51 ID:hvKNCeZT0
副操縦士「何故です?これは上に報告するべきです!」

操縦士「…あいつ、俺を見て『逃げて』って言いやがった!!!」

次の瞬間、光に包まれた人間は大きく飛び上がり、上昇。

その右腕の機銃をこちらに向けた。

直後、連続した光が見えたかと思うと、機体に大きく衝撃が走った。

操縦士「ぅぁあ!!」

副操縦士「ひ、被弾しました!!ろ、ローターをやられました!
     …これは…落ちます!!」

操縦士「ま、まだ諦めるな!!…まだ飛べる!!民家には絶対に落とすな!」

副操縦士「操縦不能です!!」

130 : クリエイター(千葉県):2007/03/17(土) 19:48:11.99 ID:hvKNCeZT0
コックピットのウインドウに何かが落ちる音がして、彼らは顔を上げた。

そこにいたのは、右腕に機銃を装備し、背中には羽を生やした…

操縦士「…女の子…?」

副操縦士「…泣いて、いる…?」

そして、それが彼らの最後の言葉となった。

ウインドウに突きつけられた右腕の機銃から、連続して弾丸が射出された。

それは機体を引きちぎり爆散させ、彼らの肉体を破壊した。

その女の子の口が最後に、『ごめんなさい』と言っていたのを彼らは見ることが
出来なかった。

ーーーーーー第三話「そして、彼女は」完

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