- 49 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:16:10.68 ID:imEh/B1X0
- 第二十一話
頭上で大きく爆発が起きた。
その眩しさと轟音に目をそむけていたところで、何かが空から降りてきた。
戦闘機との戦闘でいくらか損傷を被ったのか、その体は随所が破壊されている。
一見で、その姿のすべてを受け入れることは出来ない。余りにも普通とかけ離れた姿だからだ。
だが、それは、紛れもなくツンだった。
(;^ω^)「……ツン!」
(;'A`) (´・ω・`)「……!!」
ゆっくりと、浮遊感を漂わせながら空から降りてきた。両足を地に付け着地すると、くるんと顔をこちらに向ける。
その、あまりにも機械的な動き。
(;^ω^)「……ツン!僕だお?わかるかお?ブーンだお!」
(´・ω・`)「ブーン!駄目だ!」
(;^ω^)「お……」
ξ 凵@)ξ「……」
その顔はツンのそれそのものなのに。
まるで別人のようだ。
- 51 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:17:47.13 ID:imEh/B1X0
- (;^ω^)「……ツン……」
『 お 久 し ぶ り 』
あの声だ。
ラウンジ山でも聞いた、あの声。
『……返事はないのかしら?』
何が返事、だ。すかしやがって。僕はお前に、言いたいことがあるんだ。
( ^ω^)「……ツンの体、返すお」
『……返すって?』
( ^ω^)「その体はツンのものだお。お前が誰だかわからないけど、早く出てってくれお」
『……なに言ってるの?あなた』
( ^ω^)「言葉どおりの意味だお。さっさとツンを返すお」
『……』
不意に、空気がたわんだ。ふわっとした熱気を感じると、僕らが乗ってきていた車が突然爆発した。
(;'A`) 「うわっ!」
(;´・ω・`)「!」
- 52 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:18:54.26 ID:imEh/B1X0
- ( ^ω^)「……」
『ツンはもう居ない。あなたもわかってるでしょ?』
( ^ω^)「……それは、わかってるお。でも」
僕はデザートイーグルを引き抜き、ツン――中身は異なるが――の足元に弾を放った。
(♯^ω^)「そのことが、ツンの体をお前が使ってもいいということにはならないお!」
『……!』
(♯^ω^)「お前が居なければ、ツンは――」
再び撃とうとしたその時、手の中の銃が急に熱を持った。じわじわと温度が上がるのではなく、急激に。
とても持っていられず、僕は銃を離した。
(♯^ω^)「……っ」
『あまり、調子に乗らないで。あなたたちなんか、私がその気になればもう一秒だって生きていられないんだから』
(♯^ω^)「なにを……!」
僕が言いかけた、その時。その直後。
視界の中の、何もかもが、爆発した。
(;^ω^)「!!??」
(;´・ω・`)(;'A`) 「うああああああああああああああああああああああああああ???!!!」
- 55 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:20:36.58 ID:imEh/B1X0
- 立っていられないほどの衝撃だった。思わず前のめりになり地面に倒れこみ、そして、そこですべてが燃え尽きるのを見た。
アスファルト、防音壁、料金所、分離帯……そのすべてが。
空まで届くような火柱が上がり、僕らの蹲っているその周りすべてはもう火の海となっていた。
(;^ω^)「う……」
『……さて、次はどうしようかしら』
(;^ω^)「……くそ」
捕食者対小動物。
これはそういう構図だ。
何も出来ないままに、一方的に殺される。
火力が違う。天と地ほどの差がある。
こいつは、あの艦隊を一晩ですべて海に沈めたじゃないか。差があって当然だ。
『次はどうしてやろうかしら』
その声と同時に、僕の側のアスファルトが弾けた。
ツンの右腕の銃――既にレールガンの姿ではなくなっていたが――から放たれた弾だ。
(;^ω^)「ひ……」
『情けない声なんか出して。みっともないわね』
(;^ω^)「……」
- 57 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:22:51.14 ID:imEh/B1X0
- ただ、なんとか立ち上がり、対峙する。
最後の強がり。
『まだ、やるのね』
絶望的に響く声。
『お友達に、あなたが燃え尽きていく様を見せてあげるわね』
ツンの周りの空気が変わった。
ああ。
……駄目なんだ。やっぱり。
僕にはできなかった。ツンを止めるなんて、そんなこと。ツンを救うなんて。
僕が、ツンを殺す。そう決めたのに。
( ω )「……駄目かお」
力なくつぶやいた。
殺すはずだった相手に殺される。滑稽もいいところじゃないか。
- 58 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:23:38.77 ID:imEh/B1X0
- 『さよなら』
最後に聞く言葉にふさわしい、別れの挨拶。
( ω )「ツン……それでも僕は……」
足元に、熱を感じた。
……そうか、僕は、これで全身を焼け爛れさせて、死ぬんだ。
次の瞬間、僕の目の前は真っ暗になった。
- 60 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:25:27.78 ID:imEh/B1X0
- (’e’) 「……」
セント・ジョーンズは部隊を集めて、何をするでもなく、ただぼーっとしているだけだった。
基地に帰っても、反逆者としてつかまる。除隊程度じゃすまないだろう。
かといって、他にいくところもない。だから、セント・ジョーンズは立っていることしか出来なかった。
(’e’) 「(どうすっかなァ……)」
電波障害が直れば、じきにこの場所も見つかる。そうなれば、自分は捕まる。
執行猶予のようなものだった。この時間は。
(兵бЭб)「……セント・ジョーンズ大尉」
(’e’) 「ん?どうしたァ?」
兵が一人、無線機を持って駆けてきた。
(’e’) 「……もう、繋がるのか?」
(兵бЭб)「ええ。プギャー中将です」
(’e’;) 「……よりによってあいつかよ」
取り逃がした。なんて言ったらなんと言われるか。
(’e’) 「セント・ジョーンズです。どうぞ」
( ^Д^)『……どうだ?研究者連中は拿捕できたか?』
- 61 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:26:42.61 ID:imEh/B1X0
- (’e’) 「……いえ」
( ^Д^)『しくじったのか?』
(’e’) 「……はい」
無線機のむこうで、息を吸い込む気配を感じた。
(♯^Д^)『貴様!どういうつもりだ!あの連中に罪を押し付けないと、私の首が危ないのだぞ!早く捕らえろ!』
(’e’) 「……申し訳ありません」
(♯^Д^)『使えんやつめ。何をぼさっとしている!早く行け!早く探しに行け!私を軍法会議にかけさせるつもりか?!』
ああ、めんどくせぇ。なんだか馬鹿らしくなってきた。
こんなときにまで、自分の保身かよ。
(♯^Д^)『おい、セント・ジョーンズ!聞いてるのか!?』
(’e’) 「……せぇんだよ」
(♯^Д^)『?』
(’e’♯) 「ゴチャゴチャうるせぇんだよ!いつもいつも自分のことしか考えてやがらねぇでよお!てめぇの身くらいてめぇで守れってんだ!」
(♯^Д^)『……なに?』
(’e’♯) 「てめぇなんざくそくらえ、っていったんだよアホが。てめぇの言うことなんて聞いてられねぇ。勝手に死ね!」
(♯^Д^)『貴様……!私を裏切るのか?』
- 63 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:29:14.65 ID:imEh/B1X0
- (’e’♯) 「裏切る?笑わせんな。元からてめぇなんざ信用してねえよ。俺が興味があったのはあのジョルジュとクーの二人だけだ!
研究者なんて最初から眼中にもなかったんだよ!」
(♯^Д^)『……貴様……!!』
(’e’♯)「何が貴様だグズ野郎が。研究者なんててめぇで探せ。俺はもう降りる」
(♯^Д^)『……いいだろう。それ相応の覚悟は出来ているんだろうな……!』
(’e’♯) 「ククク!てめぇ一人じゃなんもできねぇ奴が何ほざいてんだよ!……って、切れやがった」
無線機を投げ捨てる。
(兵бЭб)「……大尉」
(’e’) 「ああ?心配すんな。あんなやろう、口先だけさ」
(兵бЭб)「……」
(’e’) 「大丈夫さ……」
大丈夫、そう、セント・ジョーンズが言ったその刹那。
轟音が聞こえた。
何かが爆発するような音。同時に、ここからでも確認できるほどの水柱があがっていた。
- 65 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:31:13.32 ID:imEh/B1X0
- (’e’;) 「なんだ!?」
セント・ジョーンズは思わず声を上げた。音は海のほうから聞こえてきた。
周りにいた部下も同じく海の方向を見つめる。
(’e’;) 「(何故?あの少女は海には居ない……まさか!)」
セント・ジョーンズは投げ捨てた無線機を再び拾い上げ、周波数を合わせると叫んだ。
(’e’;) 「誰でもいい!誰かこの声を拾え!じゃないと、とんでもないことになる!」
- 68 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:32:12.37 ID:imEh/B1X0
- *
(;,,゚Д゚)「どうした?!」
(官゚ゝ゚)「米艦『ソニータイマー』が何者かに攻撃を受けました!……傾斜していく!あれは沈みます!』
(;,,゚Д゚)「救助用意!一体何があった!?」
(官゚」゚)「ソナーに反応!水中に何か居ます!」
(;,,゚Д゚)「……アクティブソナーを打て!」
(官゚」゚)「ノイズが多すぎて、正確な測定は出来ませんが……」
(;,,゚Д゚)「構わん!打て!」
カーン、という音叉を叩いたような音が海中に響いた。
ソナーを担当する自衛官は、その反響してくる音に耳を澄まし、そして叫んだ。
(;官゚」゚)「三時の方向に何かがあります!」
(;,,゚Д゚)「なに?」
(;官゚ゝ゚)「魚雷注水音確認!」
(;,,゚Д゚)「―――!」
- 69 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:34:27.13 ID:imEh/B1X0
- 魚雷――潜水艦だ。それも、こんな近くに。
(;官゚ゝ゚)「潜水艦、魚雷を発射。その数、二発。……米艦『ダルシム』に向かっています!」
(;,,゚Д゚)「!!」
ブリッジから、旋回する米艦『ダルシム』の姿が見えた。アサピー中将の乗る、第五艦隊の旗艦。
(;,,゚Д゚)「中将!」
(;-@∀@)『面舵一杯!対雷爆防御!』
魚雷のコースから外れるため、『ダルシム』はその巨体を右に傾けた。
その真艦尾真後ろを、一発目の魚雷が通過する。
(;官゚ゝ゚)「あと一発……!」
二発目の魚雷が『ダルシム』に迫る。
水面に描かれる白い尾。その先端にの部分である魚雷は、『ダルシム』の必死の回避行動をあざ笑うかのように右腹に直撃した。
立ち上がる水柱。そして同時に響く轟音。
(;官゚ゝ゚)「命中しましたーーーー!直撃です!」
窓から、『ダルシム』の右腹から黒煙が上がっているのが見える。更には段々と傾斜していく。
(;,,゚Д゚)「救助用意……あ」
その立ち上る炎が、『ダルシム』の搭載するミサイルに誘爆した。二回、三回と爆発が起きる。
- 71 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:35:52.91 ID:imEh/B1X0
- (;,,゚Д゚)「ブリッジが……!」
爆発の衝撃で、『ダルシム』のブリッジの根元が折れた。轟音が立て続けに聞こえる。
爆発は爆発を呼び、遂にはブリッジの原型は無くなった。
遂には艦を支えるキールが折れたらしい。『ダルシム』は真ん中から折れて海中へ沈んでいった。
(;、、゚Д゚)「……中将……!」
あれは助からない。
どうあっても、あれで生きていられるはずがない。
あそこまで艦が四散した様は初めてみた。
呆然としているギコ。そのギコを、自衛官の声が現実に引き戻した。
(官゚」゚)「先ほどから無線が混線しています。……この周波数は、米軍?」
( ,,゚Д゚)「……つなげ!」
(官゚」゚)「はっ」
ブリッジに搭載されたスピーカーから、その音声は流れはじめた。
- 72 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:36:42.21 ID:imEh/B1X0
- 『……ザー俺は米……のセン……ジョー……ズ……尉……プ……ギャー……将は……横須……賀の……水艦を奪って……ちらに向……っている……
ザー……その…弾頭は……常にあ……ず……その弾……は通……に……らず……くそっ、誰か聞……てねぇ……か?頼む、誰か繋がっ……くれ…・・・』
無線では荒すぎて聞き取りにくい部分が多々あったが、おおよその内容は理解できた。
脱走したプギャー中将が潜水艦を奪って、ここにいる。
そして最後の行……その弾頭は通常に非ず。
( ,,゚Д゚)「こちら海自護衛艦『こなゆき』!貴殿の無線をキャッチした!」
『早……撃沈しろ!……いつは東京……ごと……の少女を吹き……ば……気だ!』
(;、、゚Д゚)「!」
東京ごと、少女を吹き飛ばす。
無線の向こうで、誰かが確かにそう言った。
- 73 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:38:33.89 ID:imEh/B1X0
- *
そこは何も無い世界だった。
僕以外に誰も確認できないような、そんな世界。
( ^ω^)「……お?」
ここは?どこだ?
( ^ω^)「……」
おk。整理しよう。
ツンと対峙した。そして、視界の中の物すべてが吹き飛んだ。
そして、足元の地面が急に熱くなって……視界がブラックアウトした。
( ^ω^)「……」
あのツンに、殺された?それで、今ここにいる。
……あの世?
あの世だとしたら、随分味気のないところだ。いや、あの世なんてそんなものなのかもしれない。
僕に信じる宗教はないし。浄土教とかならここは極楽だったのだろうか。
( ^ω^)「……」
とりあえず、歩いてみることにする。
しかし、行けども行けどもあるのは真っ暗な空間だけ。
- 74 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:40:23.12 ID:imEh/B1X0
- (;^ω^)「……」
どうしようか。いったいここは何処で、僕は何をすればいいのか。
(;^ω^)「まいったお……」
見回しても、やはり黒い空間しかない。
途方にくれたその時。
暗闇の中から、何かがこちらに歩いてくるのがわかった。
しかも見覚えがある。
僕の通う高校の制服。縦に巻かれたロール髪。
(;^ω^)「……ツン?」
ξ゚?听)ξ「……」
それは、ツンだった。
ξ゚ー゚)ξ「や、ブーン」
ツンは、笑って言った。
- 75 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:41:46.16 ID:imEh/B1X0
- どうみても不自然な状況。
なんでこんなところにツンが居るのか、とか、消えたはずのツンがどうして、とか。
(;^ω^)「……」
ξ゚ー゚)ξ「ようやく、会えたね」
(;^ω^)「……ツン」
ξ゚ー゚)ξ「会いたかった……」
近くに寄ってくるツン。
何も出来ないまま僕はツンに抱きしめられる。
その、匂い、感触。
どれも、ツンのそれそのものだ。
( ^ω^)「……ツン」
これは、本物のツンなんだろうか?
例えば、あの、人造細胞に乗っ取られているツンに殺された場合、この世界に送られてくるとか、そういうものだったとしよう。
本物のツンはある意味で人造細胞のツンに殺されている。だから、ここにいる。
そして、僕も同様に人造細胞のツンに殺された……殺されたのかどうかは定かではないが、そういうことにしよう。
だから、ここにいる。ツンにも会える。
ξ゚ー゚)ξ「ブーン……」
- 77 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:44:24.77 ID:imEh/B1X0
- 僕を抱きしめながら、彼女は僕の胸に頬を摺り寄せる。
本当に、ツンなのか?
僕の体に密着してもぞもぞと動く彼女は僕から見れば確かにツンで、もうこのツンが偽物だとか、本物だとか、どうでもよくなってしまった。
僕も、同様に彼女を抱きしめようと、背中に手を伸ばした。
ξ゚ー゚)ξ「ブーン……?ふふふ、嬉しい……」
もう、いいんだ。どうせ僕は死んだんだ。これはきっとアレだ、僕を余りにも不憫に思った神様が、最後僕の願いをかなえてくれたんだ。
( ^ω^)「……」
その時不意に、カツン、と響く音。
なんだ、と思い、地面を見てみると、銀色の何かが落ちている。
( ^ω^)「……!」
シルバーチョーカー。
ツンが、僕にくれた誕生日プレゼント。
僕はツンを突き飛ばす。そしてチョーカーを拾い上げ、胸に抱きしめた。
ξ゚ー゚)ξ「……ブーン?」
突き飛ばされたツンが困ったような顔で僕を見てくる。
違う、こいつは、ツンなんかじゃない。
理屈じゃない。僕の本能が全力でこのツンを拒絶していた。
- 78 名前:第二十一話
◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土)
12:45:50.59 ID:imEh/B1X0
- ( ^ω^)「……お前は、誰なんだお」
静かに言い放つ。
ξ゚ー゚)ξ「……」
( ^ω^)「お前は、ツンなんかじゃないお」
『……よく、わかったわね』
また、あの声が響いた次の瞬間。目の前に居たツンの姿が変わっていった。
その様子はビデオのスローモーションのよう。
( ^ω^)「……!」
(*゚ー゚) 「……や」
そこに現れたのは、ツンと比べて一回りほど小さい、女の子だった。
―――第二十一話「くらやみのなかで」完
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