4 名前:第十九話 ◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土) 11:36:54.18 ID:imEh/B1X0
第十九話




窓の外の風景が通り過ぎる。

前方のものが一瞬で近づいてまた去っていく。これの繰り返し。

が、この場合、この速度が如何せん異常だった。


(´・ω・`)「〜〜♪」

(;^ω^)(;'A`) 「「おおおおおおおおおおおおおおおっ!?」」

速い、速すぎる。車というのはこんな速度が出せたのか?

運転席に座り車を操るショボン。助手席に座って手すりに必死でつかまっているドクオ。
そして僕はと言えば、後部座席に座って震えていた。

(;'A`) 「し、ショボン!もっと、もっとスピードを……」

(´・ω・`)「ん?まだ飛ばせって?まいったなぁ。いくら僕でもこれ以上は出せないよ。でもドクオの頼みなら……」

( ;ω;)(;A;)「いやあああああああああああ!!」


5 名前:第十九話 ◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土) 11:37:59.25 ID:imEh/B1X0
車が更に速度を上げる。

(´・ω・`)「……横羽線は過ぎたな。ここは、新環状か?」

僕達の悲鳴など気にもせずにショボンは言う。言いながら、窓の外をちらりと見て道路標示を確認していた。

(;'A`) 「……新環状なら、もう高速は降りたほうがいいんじゃ……」

(´・ω・`)「そうだね。この辺で降りるとしようか」

車は速度を下げていく。
右側の車線に寄り、路の分岐を待つ。

当然だが、避難勧告が出ているため僕ら以外に車はいなかった。スムーズに車線変更できた。

(´・ω・`)「……でも、なんとかなったね」

(;^ω^)「そうだおね……」

(;'A`) 「ショボンにあんなスニーキング能力があったなんて知らなかったぜ」

(;^ω^)「おかげでうまく車を盗めたお」

(´・ω・`)「ん。千葉の駐屯地でジョルジュさんと行動してきたときに色々覚えたのさ」

(;'A`) 「スパナをぶつけるのもか?」

(´・ω・`)「そうさ」

6 名前:第十九話 ◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土) 11:40:00.78 ID:imEh/B1X0
横須賀基地をでる。

そうは決めたものの、僕らには基地を出るための手段が何もなかった。

じゃあ車を奪おう、と言い出したのはショボンで、僕らが反対する間もなく基地の中に入っていった。
僕らは慌ててついていき、自衛官の目を盗みながら車庫まで向かっていった。
危険なところもいくつかあったが、いずれもショボンが解決した。

(´・ω・`)「駄目なときは何をやっても駄目なのさ。これで失敗したらこの先はないって考えてみなよ」

その言葉も、ジョルジュの請け負いらしい。
車庫は結局見つからなかった。そういうわけで表の駐車場に出た。
運良く、ちょうど車から降りて来る自衛官が居た。その自衛官に対して、ショボンは基地の中で拾った鉄のスパナを遠投、見事気絶させた。
と言うわけで、ショボンの運転する車で、僕達は都内まで来ることが出来た。

('A`) 「それにしてもショボン。お前運転できたんだな。普段原付しか乗ってなかったから知らなかったわ」

(´・ω・`)「いや自動車免許は持ってないよ。GT4と頭文字Dで鍛えた腕前だけが頼りさ」

(;'A`) 「ちょwwwww」

(;^ω^)「……なんかもういちいち驚いてられないお……」

車は環状線に入り、下路に出ようとしたその時、ショボンが急に車を止めた。

それも、急ブレーキで。

(;^ω^)「うわっ!」

(;'A`) 「なんだよ、急に止めるなよ」

7 名前:第十九話 ◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土) 11:41:32.18 ID:imEh/B1X0
(´・ω・`)「……おかしい」

(;^ω^)「おかしいって、何がだお?」

ショボンは辺りを見回す。無いものを、探すような目つき。

(´・ω・`)「……都内には避難勧告が出ているよね」

('A`) 「そうだな」

(´・ω・`)「じゃあ、路上封鎖くらいされていてもおかしくは無いはずだよね……。ここは、首都高なんだし……」

( ^ω^)「考えすぎなんじゃないのかお?警察も逃げるので精一杯だったんだお」

(´・ω・`)「……いや。横羽線に乗れたときも妙だとは思っていたけど、ここまでくるとやっぱり……」

('A`) 「おかしい、と?」

(´・ω・`)「うん」

ショボンはドアを開けて外に出る。僕とドクオもいっしょに外に出た。もう、陽は落ちていて外は暗かった。

ショボンはあちこちを調べて回っている。

('A`) 「だから心配しすぎだって。早く行こうぜ」

(´・ω・`)「……ブーン、ドクオ」

( ^ω^)('A`) 「「?」」

8 名前:第十九話 ◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土) 11:42:35.65 ID:imEh/B1X0
(´・ω・`)「……どうやら、路上封鎖はされてたみたいだね」

といってショボンは僕らに見えるように何かを掲げた。

暗くてよく見えない。近づいて見ると、それが何かの破片だということがわかった。

(;'A`) 「……ショボン、これ……」

(´・ω・`)「……うん」

「警視庁」。

破片にはそう記されていた。

(´・ω・`)「これはバリケードの一部だったんだろうね。多分」

(;^ω^)「じ、じゃあなんでばらばらなんだお?」

(´・ω・`)「さぁ……それは僕にはわからない。……けど」

(;'A`)「けど?」

(´・ω・`)「なにか想定外のことが起こっているような気はするよ」

(;^ω^)「……想定外……?」

想定外のこと。
それが何かはわからなかったが、僕はそれが逆風だとうっすらと感じた。
11 名前:第十九話 ◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土) 11:44:45.79 ID:imEh/B1X0
バリケードが壊れている。警察も居ない。
確かに、そのお陰で僕達は都内に入ることが出来た。だが、今感じているこの胸騒ぎはなんなんだろうか。
なにか、とてもよくないことが起きている感じがする。

(´・ω・`)「想定外のこと……例えば……」

(;'A`) 「……おい、ショボン、ブーン……」

ショボンの言葉をドクオが遮った。ドクオは携帯電話の明かりを頼りに手の中の何かを見つめている。

(;'A`) 「こいつは、いよいよやばいかもしれないな……」

ドクオが手の中を僕たちに明かす。黒くて光っている何か。

(;^ω^)「……!」

僕はこれを知っている。この二日間で何度も見る機会があった。

(;^ω^)「……それは」

(´・ω・`)「……空薬莢だね」

銃弾を打ち出した後に残る弾丸の残りかす。
言ってみればそんなものなのに。こんなに恐怖を与える鉄くずなんて他にあるのだろうか。

(´・ω・`)「何者かが、ここを突破したんだね。それも、強行突破だ」

(;^ω^)「……一体誰が」

(´・ω・`)「……さあ」

12 名前:第十九話 ◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土) 11:46:03.35 ID:imEh/B1X0
ショボンが、首を横にふる。そしてでも、と付け加えて言った。

(´・ω・`)「……急ごう」

( ^ω^)「……そうだおね」

('A`) 「……ああ」

言うが早いか、ショボンと僕達は再び車に乗り込んだ。

(;^ω^)「ところで、ジョルジュさんたちはどこにいるんだお?」

('A`) 「……確かに。どこに行けばいいかわからないよな」

(´・ω・`)「うーん……」

(;^ω^)「とりあえず、目的地を決めようお」

僕が口を開いたその時。上空を轟音と共に何かが通過した。

(;'A`) 「なんだ?」

慌てて空を見上げる。

(;^ω^)「……あれは……」

何かがそこで飛び回っていた。目を凝らして、見た。そして判った。

ツンと、戦闘機。
すぐそこで戦っていた。
14 名前:第十九話 ◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土) 11:48:01.93 ID:imEh/B1X0
*

とにかくここから脱出しなくてはならない。

周りは一面に広がる敵敵敵……どうやって逃げるかなんて考えている場合じゃなかった。
考えるより先に行動した。米兵がのぼってくる前に、階段を駆け下りた。


从;゚∀从 「残弾は?!」

(;´_ゝ`)「俺はあとマガジン一つ分だ!」

(´<_`;)「俺も同じくらいだ!」

从;゚∀从 「……これはまずいかもね……」

手持ちの武器は、拳銃が三丁。スタンが二個。
どうみても火力がたりない。

从;゚∀从 「タワーをのぼる手段は二つ。エレベーターか、外の階段のどちらかだ」

(;´_ゝ`)「敵はおそらく両方から来るだろう。エレベーターの連中は、すぐにでものぼってくるだろうな」

(´<_`;)「それとああいう人海戦術じゃあ、隠れても無駄だろう」

从;゚∀从 「……状況は芳しくないね……」

(´<_`;)「ですが」

从;゚∀从 「ああ」

15 名前:第十九話 ◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土) 11:48:49.83 ID:imEh/B1X0
覚悟を決めろ。自分達の仕事はもう終わった。この後ろに守るものは何もない。強いてあげるとすれば自分の命か?
まとまって、固まって、突破する。それしか生き延びる方法はない。

从;゚∀从 「要するに正面からいけってことだろ!いくぜ!あんたたち!」

(´<_`;)「了解です!行くぞ兄者!」

(;´_ゝ`)「ああ!」

階段を降りきるとそこは特別展望台。東京タワーの、一番上の展望台。

从;゚∀从 「来たぞ!撃て撃て!」

エレベーターから出てきた米兵に銃弾を何発か見舞う。
そのうちの数人は血を出して倒れるが、如何せん数が多い。

(´<_`;)「おらぁ!……って、あぶねっ!」

从;゚∀从 「こりゃ無理だ!逃げるぞ!」

(;´_ゝ`)「いきなりwwwでも、逃げるって、どこへ……」

(´<_`;)「外へ、だよ!」

弟者は白衣の中から、ケーブルを数本取り出した。普段、PCと機材をつなぐときに使っていたものだ。末端にはUSBがついている。
それを、100円で動く望遠鏡の取っ手に引っ掛けた。そして、銃を窓に向け放った。

(;´_ゝ`)「まさかそれで飛ぶのか?!」

(´<_`;)「ここから、外枠の階段に飛ぶんだ。みんな、俺につかまれ!」

16 名前:第十九話 ◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土) 11:50:37.91 ID:imEh/B1X0
(;兵@д@)「!!」

言葉はわからなくても、何をするのか米兵はわかったらしい。阻止しようと銃をこちらに向けてくる。

从;゚∀从 「ち!」

(;´_ゝ`)「らぁっ!」

兄者の銃が火を吹き、米兵が一人、倒れる。銃を構えたまま兄者は叫んだ。

(;´_ゝ`)「局長!弟者!早く!今のうちに!」

从;゚∀从 「……兄者!」

(´<_`;)「何をしてるんだ!ケーブルは一つしかない!!早くこい!」

(;´_ゝ`)「……」

(´<_`;)「兄者!」

兄者は背を向けたまま答えた。

(;´_ゝ`)「……そのケーブルじゃあ大人三人分の重さには恐らく耐えられない……だったら、局長、弟者!あんたたちが行くんだ!」

从;゚∀从 「な、ならあたしが残るよ!」

(;´_ゝ`)「あんたは早くジョルジュのところに行くんだ!こんなところで死んでる場合じゃないだろ!」

背中を向けたまま叫ぶ。その背中から、血が一筋噴出した。
19 名前:第十九話 ◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土) 11:51:39.95 ID:imEh/B1X0
从;゚∀从 「兄者!」

(;´_ゝ`)「ぐっ……!」

(´<_`;)「兄者!」

(;´_ゝ`)「早く行け!ここは、俺に任せろ!……簡単に死にはしない。すぐに追いつく!」

(´<_`;)「……兄者」

从;゚∀从 「兄者!だめだ!そんなの絶対に駄目だ!」

(;´_ゝ`)「必ず、後で追いつきます。……弟者、局長を頼む」

(´<_`;)「……兄者」

(;´_ゝ`)「早く行け!弟者!お前が局長を連れて行くんだ!お前がそんなんでどうする!」

(´<_`;)「……」

(;´_ゝ`)「早く!」

(´<_`;)「わかった……。だが、必ず、必ず後でちゃんと来いよ!約束だぞ!こなかったらぶっ殺すからな!兄者!」

(;´_ゝ`)b「……ああ、必ず戻る。約束する」

兄者は横目で弟者とハインを見た。そして、口元で微笑んだ。

(´<_`;)「約束だぞ!」


20 名前:第十九話 ◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土) 11:52:25.92 ID:imEh/B1X0
从;゚∀从 「兄者、あにじゃーーーーーー!!」

叫ぶハインを脇に抱いて、弟者は窓から外に飛んだ。視界がいきなり開け、真下に対するGがすぐに襲い掛かる。
手に縛り付けたケーブルが食い込み、激痛で涙が滲む。

痛くなんかない、こんなもの。俺がこれでどうるする。
弟者は自らを鼓舞した。兄者に任されたんだ。絶対に、離すものか。

望遠鏡を支点にしてケーブルは大きくタワーの内側にしなった。外枠の階段が真下に来て、弟者はケーブルから手を離した。

階段の手すりに体を叩きつけられながらも、なんとかハインを庇いながら着地することが出来た。
激痛の中で、弟者は身を起こす。

ハインは泣いていた。

从;∀从「……うう……あに、じゃ……」

(´<_`;)「泣いている場合ではありません!局長!早く、急ぎましょう!」

ハインの手を引いて、弟者は階段を駆け下りる。

頭上で、銃声が鳴った。自分の持つ銃と同じ銃声だ。
そして直後に響いたのは連続した発砲音。自動小銃の音。
それも一挺だけの音ではない。二つ、三つ。そのくらいの音だ。

応える拳銃の銃声は、もう聞こえなかった。
22 名前:第十九話 ◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土) 11:53:06.84 ID:imEh/B1X0





       「弟者、見ろ。時計型麻酔銃だ」
 
                「また、兄者はそんなもの作って……」

       「遊び心は大切だ。こういう発明の中から、新しい考えというものは生まれてくる」
 
                「……そういうものか」
       
       「弟者。お前は目的に対して一直線になりすぎなんだ。すこし回り道をするくらいが、ちょうどいい」

                「兄者が言うと説得力はないが、共感できる部分はあるな」
 
       「……素直に納得しろ、馬鹿弟」

                「普段は馬鹿兄だから、素直になれないんだよ」

       「……ふん。何を言おうと、お前は結局俺の弟なんだ。弟が兄を超えるなんてありえないんだぜ」

                「……またそんなこと言うから、馬鹿に見えるんだよ」





23 名前:第十九話 ◆GoKuglY1Jo :2007/06/23(土) 11:53:47.79 ID:imEh/B1X0
(´<_`;)「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


弟者は叫んだ。

普段は馬鹿にしていたが、兄者、あんたは確かに俺の先を行っていた。
兄として、立派だった。あんたは誇れる兄だった。

俺にあんたを超えることなんて、多分出来やしなかったんだろうな……。
教えてもらいたいこと、まだまだたくさんあったのに。

ふざけんなよ、兄者。まだ俺はあんたに追いつけていないのに。
こんなところであんただけ幕引きなんて、絶対俺は認めない。

約束、絶対果たせよな。帰って来いよ、約束したんだからな―――。

自分の頬を伝うものは何だろうか。
それを考えながら、弟者は階段を駆け下り続けた。



ーーーーーー第十九話「約束」完

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