2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 22:56:14.81 ID:aryaqsRN0
第十七話


(;^ω^)「ツン!!」

海に水柱があがると同時に視界に入ってきた。

一昨日見たそれとは比べものにならないほどの巨大な羽。
レールガンのような印象を受ける右腕。

―――ツンが、海上に現れた。

『総員!戦闘配備!』

けたましいサイレンと共に停泊している艦の砲塔が動く。
続いて響く轟音。撃ち出された弾はツンに向かって飛んでいくが、当たるはずも無く海面に落ちた。

(;゚∀゚)「来い!こっちだ!」

水際から離れ、基地の中へ。

(;´_ゝ`)「予想よりも早かった……。まさかこの時間で兵装を回復するとは」

(´<_`;)「あれの能力はまだまだ未知数だったからな」

(´・ω・`)「そんなこともありうる、と」

(;´_ゝ`)「ああ」

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 22:59:02.51 ID:aryaqsRN0
轟音と激震は基地の中にまで届いている。その音、揺れ、それぞれが僕の体をふるわせた。

(;^ω^)「……ツン」

目の前、もう少しで手が届ところにツンがいるというのに……。

(;'A`) 「ど、どうするんですか?これから」

(;゚∀゚)「……ああ、そのことなんだがな」

そういいながらジョルジュはクーを見た。
目配せ?そう思える目の動きだ。

( ゚∀゚)「お前らが寝ているうちに、俺たちで一度話し合ったんだ」

(;^ω^)「ジョルジュさん?」

話し合う?なんのことだ?

川 ゚ -゚)「……」

从 ゚∀从 「……」

( ´_ゝ`)「……」

(´<_` )「……」

(;^ω^)「は、話し合うって、何を……?」

( ゚∀゚)「……すまないな、ブーン。ここまでつれてきて、少し酷な話かもしれないが」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:00:12.24 ID:aryaqsRN0
ジョルジュが真っ直ぐに見据えてくる。ラウンジ山で僕がジョルジュをにらみつけた時に見た目と同じ目だ。

( ゚∀゚)「お前らは、ここにおいていく」

(;^ω^)「な」

おいていく?僕らを、ここに?
返す言葉を必死で探す。だがそれよりも早くジョルジュは口を開いた。

( ゚∀゚)「今までは、最後くらいはお前らに任せようと思っていた。だが、今となっては駄目だ。
     ツンの能力値が、いかんせんこちらの予想を超えすぎた。まさかここまで力を発揮するとは思わなかった」

川 ゚ -゚)「ブーン……。君は確かに上手に銃を扱えたが、それだけでは駄目だ。昨日のあの狂人との立ち回りを思い出せ。
     ツンは……あの男とは比べものにならないんだ」

从 ゚∀从 「それで、モララー司令と話し合って決めた。
     人造細胞に確実にウイルス弾を撃ち込むためには、クー、もしくはジョルジュクラスの銃の腕前でないと駄目だ。
     だから、ブーン。すまないけど、君には任せられない、ってことになった」

(;^ω^)「……つ、ツンを止めるのは僕の仕事ですお!僕がやらなきゃ駄目なんですお!」

僕がツンを止める。そう決めたのに。なのに、僕に任せられないなんて、そんな―――。

( ゚∀゚)「ブーン」

(;^ω^)「……っ」

( ゚∀゚)「……すまないな」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:01:47.18 ID:aryaqsRN0
(♯^ω^)「僕がやるって言ったら僕がやるんだお!!」

( ゚∀゚)「……」

(;'A`) 「ブーン……」

(♯^ω^)「今更になって何を言い出すんだお!このために僕らをここまで連れてきたんじゃないのかお!?
       ツンを止めるのは僕だお!僕がやらなきゃいけないんだお!……それに!」

僕はポケットに手を入れ、その中のものを取り出した。

(♯^ω^)「弾を持っているのは僕だお!これは絶対返さないお!」

( ゚∀゚)「……ブーン」

哀れむような、ジョルジュの目。

(♯^ω^)「な、なんなんだお!そんな目をしたって無駄だお!」

( ゚∀゚)「……最初の予定では、お前にそれを渡して、俺らはお前らに黙って基地を出るつもりだった」

(♯^ω^)「……何が言いたいんだお」

( ゚∀゚)「お前に任せる、と言ったのにいつまでたっても弾を渡さないとお前も不審に思うだろうからな。
    前もって 偽 物 の 弾 を渡しておけばそれもない、と思ったのさ」


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:03:00.54 ID:aryaqsRN0
(;♯^ω^)「……な」

偽物の弾?

僕は手の中の弾を見る。
これが、偽物?

(;^ω^)「に、せ、もの……?」

川 ゚ -゚)「そういうことだ。本物の弾は」

从 ゚∀从 「これだ」

ハインが右手を上げて何かを掲げた。
黒光りする何か。僕のもっているものと似ている。

( ゚∀゚)「これが、本物のウイルス弾さ」

(;^ω^)「……な」

( ゚∀゚)「……そういうわけだ」

言い残して、ジョルジュは背を向ける。

川 ゚ -゚)「……すまないな」

从 ゚∀从 「……さ、兄者、兄者。早く車を回してくるんだ」

( ´_ゝ`)「りょーかい」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:04:07.73 ID:aryaqsRN0
ふざけんな、僕も行く、僕もつれていけ―――。

(  ω )「……僕は」

(;'A`) 「……ブーン」

(´・ω・`)「……」

車の車輪が地面をこする音が聞こえた。

僕らの前に現れる二台の車。

ドアの開けられる音。

(;'A`) 「ジョルジュさんっ……!俺達は本当に……!」

( ゚∀゚)「……」

(´・ω・`)「……最後の最後で、ブーンの気持ちを裏切るんですか?あなたは」

( ゚∀゚)「……すまない」

すまない、そんなことはもう聞きたくない。
謝らなくていいから、僕を、僕をツンのところに連れて行け。

だが無常にも、再びタイヤが地面をこする音が聞こえ、車は走り去っていった。

ツンを殺しに。

僕達を残して。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:05:06.08 ID:aryaqsRN0
(;'A`) 「……ブーン」

(  ω )「……」

ここまできて、何も出来ない。
そんな、ふざけんな。

僕がツンを止めると、決心したのに。

(  ω )「……ふざけるのも大概にしろお」

あんたたちの都合でツンはこんな運命を背をわされて、あんたたちの都合で殺されて……。

どうしても殺すのならせめて僕がやると決めたのに。

それすらも、あんたたちは許してくれないのか。

(  ω )「……う」

力が抜けた手の中から、弾丸が音を立てて落ちた。



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:06:04.57 ID:aryaqsRN0
*


(;実・_ゝ・)「ご覧ください!少女が!少女が空を飛んでいます!
     そして、昨日今日で緊急に配備された自衛艦隊と米艦隊がその少女と交戦しています!これは!これは一体何事なのでしょうか!?
     一昨日の横須賀基地の爆発事件と何か関係があるのでしょうか!?これに対し、政府はいまだノーコメントを示しています!」

ラジオからは叫ぶような実況の声が響いてくる。

从;゚∀从 「この事件が世間に明るみになったら……内閣総辞職くらいじゃすまないだろうね……」

助手席に座ったハインがつぶやくように言った。

(;゚∀゚)「ふん。人造細胞を甘く見て、俺達を冷遇してきたツケが回ったんですよ!」

(;゚∀゚)「おら!クー、お前の運転はそんなもんじゃないだろぉ!もっと飛ばせ」

川;゚ -゚)「けが人だぞ私は!」

从;゚∀从 「いいから急ぎな!クー!東京までもうすぐだよ!」

川;゚ -゚)「なんという鬼畜……。で、兄者たちはついてこれているか?」

(;゚∀゚)「ああ、少し離れたが。なんとか」

がたがたとゆれる車の中で、三人が言い合う。
乗る車の後から、兄者の運転するもう一台の車がついてくる。
避難の完了した市街地は車もなく、クーの運転する車はとんでもない速度で、北へと向かう。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:06:53.97 ID:aryaqsRN0
さっきから海の方より、爆発音が次々と聞こえてくる。その音に、クーは思わず身震いした。

川;゚ -゚)「……く」

(;゚∀゚)「ここからでもまだツンを確認できる……。やはり彼女も北上しているな」

ジョルジュが振り返り、空に浮かぶ点を見つめて言う。その点から、今度は大量の点が発射された。
次いで何かが爆発するのがわかった。遅れて届く爆音。

川;゚ -゚)「……く」

从;゚∀从 「なんとか、もってくれよ……!!」

(;゚∀゚)「……大丈夫、きっとモララー司令がなんとかしてくれてる」

『……ザー、僚艦がやられた!一隻、いや、二隻、燃えてるぞ!』

『こちら『たかゆき』!ザー……被弾したぁ!浸水してるぞ!』

『も、もう駄目かもしれない……!!』

自衛隊の周波数に合わせられた無線機からはずっと叫びが聞こえている。

(;゚∀゚)「多勢に無勢だってのに……なんて火力だ……!」

川;゚ -゚)「なぁ、ジョルジュ」
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:08:01.40 ID:aryaqsRN0
(;゚∀゚)「なんだ?」

川;゚ -゚)「北に向かうのはいいが……この後どうするんだ?その弾だって、ツンがあんなところにいたらどうしようもない」

(;゚∀゚)「……ま、まぁな。だけど、あのまま基地にいて何もしないままじゃどうにもならないんだぜ?」

川;゚ -゚)「……作戦はないのか?」

(;゚∀゚)「作戦なし作戦だ!」

川;゚ -゚)「……ジョルジュ、お前少し自重しろ」

从;゚∀从 「まったく、作戦もへったくれもないね」

(;゚∀゚)「……手厳しいよ。お二方」

と、ここでジョルジュの懐から携帯の着信音が鳴った。

『ジョルジュ。これから一体どうするんだ?』

聞こえてきたのは、弟者の声。

(´<_` )『自衛隊、米軍は完全にジリ貧だ。このままではいずれ突破される。我々も、何か行動を起こさないと』

(;゚∀゚)「……あ、ああ。今その談義をしていたところさ」

(´<_` )『……じゃあ、話はまとまったのか?』


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:09:00.19 ID:aryaqsRN0
(;゚∀゚)「……それが」

从 ゚∀从 「作戦なし作戦だってよ」

(´<_` )『……そんなことだろうと思ったぜ』

電話の向こうで、ため息をつく音が聞こえた。

(´<_` )『で、だ。ひとつ提案があるんだが』

(;゚∀゚)「なんだ?」

(´<_` )『電磁波を使いたい』

(;゚∀゚)「電磁波?」

(´<_` )『ああ。左手のほうを見ろ』

ジョルジュは左の方向を向く。視界に入ったのは、林立している巨大なビル。
そして、その中に一際目を引く建物を発見した。

赤い、鉄の塔。東京タワー。

(´<_` )『東京タワーだ。あれを使って、ツンを一時的に行動不能にする』

(;゚∀゚)「どうやって?」


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:09:47.90 ID:aryaqsRN0
(´<_` )『人造細胞は所詮は機械。それはお前も知っているな?』

(;゚∀゚)「ああ。結局は0と1の羅列に過ぎないんだよな……」

(´<_` )『そうだ。いくら珪素細胞と言っても、結局は機械。そこを突かせてもらう』

(;゚∀゚)「…っていうと?」

(´<_` )『ECM(妨害電波)を流すんだ。それも、とびきり強力なやつをな』

从;゚∀从 「そうか……!その手があった!!」

川;゚ -゚)「どういうことです?」

从;゚∀从 「人造細胞は常にレーダーを張り巡らせて自己位置の特定と他者の認識をしているんだ」

(´<_` )『妨害電波によってレーダーが狂えば、それが出来なくなる。
       そうなれば、人造細胞は地上に降りてくるしかなくなる。安全のためにも、修復のためにもな』

(;゚∀゚)「……ほんとに、可能なのか?」

(´<_` )『東京タワーは半径100kmをカバーする電波塔だ。十分過ぎるほどだ』

川;゚ -゚)「そして、ウイルス弾の出番という訳か」

(;゚∀゚)「……なるほどな。把握した」


15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:11:02.86 ID:aryaqsRN0
しばらく間のあいた後、ジョルジュは再び口を開いた。

(;゚∀゚)「だが、ツンがどこに降りてくるのか。それが判らないんだろう」

(´<_` )『……ああ。そこなんだ。ECMを発生させてもすぐに効果が出るわけではないしな。
       その上、あまり時間をかけすぎると抗体を作られる可能性がある』

(;゚∀゚)「賭け、か?」

(´<_` )『俺は、お前とは違う。そんな不確定なものに頼る気はない』

(;゚∀゚)「……じゃあ、どうするんだ?」

空を飛ぶツンの動きを止める。止められずとも、一箇所にとどめる。それが出来れば、ツンの着地の地点も大体の想像がつくというのに。

(;゚∀゚)「……モララー司令に、協力してもらうしかないか……?」

自衛隊の攻撃でツンを一定の場所にとどめて置いた後、ECMを発生させる。それが、最も確実な方法だと思った。
ハインはしばらく悩んでいたが、仕方が無い、というように頷いた。

从;゚∀从 「……それしかないか。厚木の空自に、協力を要請してもらおう」

ハインは携帯電話を取り出し、どこかへと電話をかけ始めた。


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:11:50.39 ID:aryaqsRN0
*


最初から戦況は不利だった。

一昨日と同じく奇襲を食らってしまった上に、入港したばかりであった自衛艦隊は戦闘配備にかなりの時間を要してしまった。
加えて、少女の火力・機動力は一昨日のそれを遥かに超えていた。こちらからの攻撃は、その巨大化した羽に防御されるまでもなくまず命中しなかった。


『こなゆき』など同時索敵能力を有した艦が少女の発射したミサイルの撃墜にあたるが、それでも不十分だった。
撃ち漏らしたミサイルが次々と味方の艦を襲い、戦力は削られていく。

その上、プギャー中将が独房から消えた、という情報が入った。
プギャー中将の配下将校だったセント・ジョーンズ大尉とその部隊の一部が独房を抜け出してプギャー中将を助け出した、ということだ。
その後、プギャー中将の部隊の一部も基地から消えたという連絡も入り、セント・ジョーンズの部隊と合わせて一個連隊程度の兵力が集まったと推測された。

(;・∀・)「手の空いている者は全員、プギャー中将を探せ!」

手の空いている者などいるのだろうか、とモララーは言ってから思った。
さっきから司令室にはひっきりなしに入電が続き、休む暇など全く無い。

(;-@∀@)『モララー司令官!』

(;・∀・)「アサピー中将、ご無事ですか?」

(;-@∀@)『今のところは』

アサピーは第五艦隊の旗艦ダルシムで指揮を執っていた。
第五艦隊はその火力たるや半端のないものがある。アーレイバーク級ミサイル駆逐艦を数隻有し、防衛能力も申し分ない。
その艦隊が苦戦を強いられるほどの相手なのだ。
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:14:05.98 ID:aryaqsRN0
(;-@∀@)『そんなことより、モララー司令官。プギャー中将とセント・ジョーンズ大尉が消えたというのは本当ですか?』

(;・∀・)「……事実です」

(;-@∀@)『あの二人の部隊なら……彼らに賛同したのが部隊の一部だけとしても、一個連隊クラスの兵力があります』

(;・∀・)「……」

(;-@∀@)『くっそ……よりによってこんな時に……!!』

(;・∀・)「と、とにかく!今はあの少女の攻撃をなんとかしましょう!あの少女が狙っているのは恐らく東京です!
     やられるわけにはいきません!」

(;-@∀@)『……了解です。ご武運をお祈りします』

受話器を置き、モララーはレーダーを凝視した。
味方識別表示の出ていない、たった一つの点がレーダー上に表示されている。これだけで、こちらの大艦隊が押されている。
化け物め、とモララーは心の中で毒づいた。

(;官゚ゝ゚)「モララー司令!」

(;・∀・)「どうした?!」

(;官゚ゝ゚)「技本の高岡局長から入電です!」

(;・∀・)「出る!つなげ!」

从;゚∀从 『司令官!よくご無事で!』



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:15:31.44 ID:aryaqsRN0
渡された受話器から聞こえてきたのはハインの大声。
こんなに大きな声が出る人だったか、と、モララーは心の中で思った。

(;・∀・)「君こそ。今どこにいるんだ?」

从;゚∀从 『自衛隊の車両を二台程勝手に拝借しました。今は……湾に沿って北上しています』

(;・∀・)「北?東京か?ではの少女が目指しているのもやはり……」

从;゚∀从 『おそらく』

東京です、という言葉が自然と補完された。モララーは身震いをして、やはりしくじれないな、と思った。

(;・∀・)「……我々はどうすればいい?」

从;゚∀从 『……我々に考えがあります。そのために、お力添えを頼みたいのです』

(;・∀・)「ほう」

从;゚∀从 『厚木の空自にスクランブル発進の要請をお願いしたいのですが』

(;・∀・)「F−4の編隊なら東京上空で待機しているが?」

从;゚∀从 『いや、支援戦闘機程度では、おそらく勝負にならないでしょう』

(;・∀・)「……そうか。了解した。では、F−15のスクランブルを要請しよう」

从;゚∀从 『感謝します』

モララーは一度席を立ち、近くにいた自衛官にスクランブルを要請するよう指示を出し、そしてすぐに受話器に戻った。
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:19:44.32 ID:aryaqsRN0
(;・∀・)「……では、その作戦の旨を聞かせてもらおうか」

从;゚∀从 『はい』

ハインは話し始めた。ハインが作戦のの大筋を話すと、モララーはなるほど、と頷いた。

(;・∀・)「あと五分で、厚木からF-15スクランブル発進する。それまでに、我々はあの少女を陸地に追い込もう」

从;゚∀从 『お願いします』

(;・∀・)「不本意だが、この際建物のひとつやふたつは諦めよう……。君たちも気をつけろ」

从;゚∀从 『はい。では、ご武運を』

といって電話は切れた。モララーはそのあとしばらく受話器を見つめていた。

(;・∀・)「(まったくなんて作戦だ……)」

この作戦の代償は東京。
大きすぎる代償だ。東京が破壊されればどれだけの損失が出るか。

しかも、それを守っているのは自分達ときたもんだ。まったく、この職についてから、これだけの責任を感じたのは初めてだ。

しかし、やるしかない。今、出来る作戦の中で最も確実な方法だということは、モララーもわかっていた。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:24:10.56 ID:aryaqsRN0
( ・∀・)「(じゃあ、いっちょやるとしようか)」

( ・∀・)「司令官より達する。全艦、少女を陸へ追い込め。空自と挟撃して、あの少女を陸地に降りさせるんだ!」

( ・∀・)「ギコ、聞こえるか?!」

( ,,゚Д゚)『はい!』

( ・∀・)「『ひろゆき』の弔いだぞ!気合入れろ!F−15が到着するまで後五分だ!それまでなんとか持ちこたえろよ!!」

( ,,゚Д゚)『はっ!了解しましたぁ!!』

( ・∀・)「全艦、ミサイルの出し惜しみはするな!一発でウン千万ってことは、この際忘れろ!!東京を守れ!!」

『了解!』

『了解っ!』

『了解』

( ・∀・)「頼んだぞ」

司令室の中にモララーの声が響き渡った。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:25:09.77 ID:aryaqsRN0
*


(´・ω・`)「ここを出よう」

ずっと黙っていたショボンが口を開いた。

ここを出よう、とショボンは言った。

だが、残されたのは僕とドクオとショボン。とてもじゃないが戦場へいける面子ではない。

(´・ω・`)「でも、ここにいるよりかは遥かにマシさ」

( ^ω^)「……でも、この弾は」

地面に落ちた弾丸を拾い上げる。
重さは、まさしく銃弾のそれだった。

でも、

( ^ω^)「……偽物なんだお……」

(´・ω・`)「……そうだね」

( ^ω^)「土台、無理だったんだお。結局、僕らには……。ただのしがない高校生なんだお。特別な力も持ってない!アルファベットを武器に戦えるわけでもない!
       ……今までだって、ジョルジュさんたちがいてこそ生き残ってこれたんだお。
      そんな僕らがいったって、どうしようもないお」


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:25:53.42 ID:aryaqsRN0
(´・ω・`)「……本当にそう思うのかい?」

( ^ω^)「……思うお」

(´・ω・`)「そうかい」

じゃあ、とショボンは言った。

(´・ω・`)「このまま、ツンを放って置くんだね」

( ^ω^)「……」

(´・ω・`)「ツンが街を壊しても、艦隊を壊しても。ツンが攻撃されても」

( ^ω^)「……」

(´・ω・`)「ジョルジュさんたちがツンを殺しても、黙ってみてるというんだね」

( ^ω^)「……それは」

違う、と心では思っていても口に出せなかった。
結局、僕らは何も出来ないという絶望感が、僕の心をいっぱいにしていたから。

( ^ω^)「……無理だお。やっぱり」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:26:36.26 ID:aryaqsRN0
(´・ω・`)「そうかい。……じゃあ、ドクオ」

('A`) 「ああ」

黙って僕とショボンの言い合いを聞いていたドクオが、始めて口を開いた。

つかつかと、僕の前に歩いてくる。

('A`) 「ブーン」

(;^ω^)「な、なんだお」

瞬間、火花が散った。

強い衝撃を顔に受けた。そして、気づいた時には僕は空を向いていた。

ドクオの右拳が、僕の頬を捉えたのだ。

('A`) 「てめぇ……いつまでも甘えたこと言ってんじゃねぇぞ……!!」

僕の胸をつかんで、ドクオはその顔を寄せて言う。

('A`) 「そんなもんだったのかよ?!お前の気持ちはよぉ!?技本のビルで俺は言ったよな?
    悩んで悩んで結論を出せと。それがお前の出した結論なのか?ああ?」

(;^ω^)「ち、違うお!!」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:28:12.31 ID:aryaqsRN0
僕はドクオを突き飛ばした。

(;^ω^)「悩んで悩んで、悩みぬいたお!ツンを止めると、僕は決めたんだお!!」

でも、と僕は言った。

(;^ω^)「こんなんじゃもう何も出来ないお!!ジョルジュさんたちありきの僕らだったんだから、ジョルジュさんたちがいなくなったら、もう……」

('A`) 「もう、なんなんだよ」

(;^ω^)「それは……」

('A`) 「ジョルジュさんたちが居なくたって、俺たちに出来ることがあんじゃねーか」

(;^ω^)「……!」

(´・ω・`)「いいかい?ブーン」

(;^ω^)「……」

(´・ω・`)「僕達はツンの友達なんだ」

('A`) 「そうさ。お前に関して言えば、友達以上だろ」

(´・ω・`)「友達が大変なとき、普通は助けに行くだろう。何も出来なくても、駄目だとわかっていても、何かしようとするだろう」

('A`) 「……ブーン、お前は今ツンを見捨てようとしてたんだぜ」


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:30:22.74 ID:aryaqsRN0
(;^ω^)「……!!」


そうだ。
諦めること。

それはツンを見捨てることなんだ。

ツンは今も、あそこで助けを求めているんだ……!!


(´・ω・`)「わかったかい?」

('A`) 「お前がすべきこと、わかるよな?」

(;^ω^)「……お」

僕がすべきこと。

そんなのもう決まっている。

ウイルス弾なんてなくたって構わない。そんなもの、どうでもいい。

どんなことをしてでも、ツンを止めてやる……!!


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/05/17(木) 23:31:30.91 ID:aryaqsRN0
(´・ω・`)「……判ったようだね」

('A`) 「じゃあ、行こうかねぇ」

(´・ω・`)「そうだね」

(;^ω^)「行くって、どうやって?」

(´・ω・`)「なぁに」

ショボンは僕にウインクして見せた。

(´・ω・`)「こういうときは、映画でも漫画でも、車とかバイクとかは奪えるもんなのさ」

不敵に笑うショボンの目は、何故かいつも以上に頼もしかった。



ーーーーーー第十七話「Go!」完

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