51名無しさん:2007/04/13(金) 23:35:27
第十四話



爆発音。
ついで、ヘリコプターのローターの音が聞こえた。

(;゚∀゚)「(なんだ!?)」

屋上へと向かっていたジョルジュは突然の揺れに足を止めた。
嫌な空気が流れているような感じは、さっきからしていた。

(;゚∀゚)「(今の爆発音はC4だ……。兄者たちがなにかミスったのか?だが、それならこのローターの音は……)」

状況をうまく把握出来ないが、よくない状況なのは間違いない。
C4、ヘリのローター音。どれも、このビルの中では間違いなく非日常だ。

(;゚∀゚)「(何か……来るな)」

ジョルジュの元自衛官としての勘がそう言っている。既に背中には大量の汗が流れていた。

懐から銃を出し、いつでも撃てる体勢を取った。
壁に張り付き窓から外の様子をのぞく。

米軍の旗。

真っ先に飛び込んできたのはそれだった。

52名無しさん:2007/04/13(金) 23:35:39
(;゚∀゚)「(米軍!?なんでこんなところに……)」

米軍の兵士が、このビルを囲んでいる。そして軍用車と思われる車が数台、そこに停車していた。

(;゚∀゚)「(米軍の海兵隊か?……横須賀からか?)」

目を凝らして状況を知ろうとした。
横須賀の海兵隊がここで、一体なにをしているんだ!?

最初のC4の爆発音から考えて、恐らくこのビルは攻撃を受けている。
それだけは、判った。

(;゚∀゚)「(まずいな……)」

状況が悪い。今、自分は孤立している。
一刻も早くクーやハインリッヒと合流しなければならない。

(;゚∀゚)「(早く、屋上へ……)」

ジョルジュは思案にふけっていた。
そのため、後方からじわじわと近づいていた黒い影に気づくことが出来なかった。

ぎらり、と何かがひかり、血が舞った。

53名無しさん:2007/04/13(金) 23:35:53
*


(;^ω^)「(な、なんなんだお……?)」

ビルが突然揺れだしたと思ったら、爆発音が聞こえた。
そして、先ほどからは銃撃の音が聞こえてきている。

何がなんだかわからなかった。

(;^ω^)「(まさか……ツンかお?)」

ツンが、このビルを攻撃している。
その可能性は自分の中で否定できなかった。

手に持ったデザートイーグルを握り締めた。まだ上手に扱えないが、今、身を守ってくれるものはこれしかない。

とりあえず自動販売機の陰に隠れ、様子を見た。

しばらくすると誰かが僕を呼ぶ声が聞こえた。

川;゚ -゚)「ブーン!無事か!?」

(;^ω^)「クーさん!!」

川;゚ -゚)「よかった。無事だったか!」

(;^ω^)「く、クーさん。これは一体……!?」

54名無しさん:2007/04/13(金) 23:36:09
川;゚ -゚)「判らない!だが……」

クーはいきなり入り口に向かって発砲した。一瞬、飛び散る血飛沫。

(;^ω^)「……!!」

ばたりと、そこに居た人間が倒れた。

川;゚ -゚)「こここに居ては危険だ。早くここをでるぞ!」

(;^ω^)「……」

川;゚ -゚)「……殺してはいない。安心しろ」

(;^ω^)「……そうですかお」

倒れた人間を踏み越え、階段へと向かい、上へ。

一回のフロアに出た。周りに人影は無いが、ビルのいたるところから発砲音が聞こえる。

川;゚ -゚)「……まずいな」

(;^ω^)「とにかくジョルジュさんたちを探しましょうお!!」

川;゚ -゚)「ああ!」

M92を構えたとき、廊下の曲がり角から人が飛び出してきた。その数、五人。

その自動小銃の銃口が、こちらに向けられた。

55名無しさん:2007/04/13(金) 23:36:42
川;゚ -゚)「ブーン、隠れろ!!こっちだ!!」

クーは僕を引っ張り、近くの部屋に飛び込んだ。そして次の刹那、さっきまで僕達が居た場所を弾丸が通過していった。

弾が空気を切る音が、耳に届く。

(;^ω^)「……!!」

川;゚ -゚)「ーーっ!!」

クーは再び部屋から飛び出し、空中で狙いをつけて弾丸を放つ。そのどれもが命中し、血を噴出して五人は倒れた。

キン、キンと、空薬莢が床に音を立てて転がった。

川;゚ -゚)「……なんなんだ、一体……」

(;^ω^)「……」

理解できない。

何故技本が襲われている?

何故僕達が攻撃を受けている?

わからない。わからない。

自分達が立ち向かうのは人造細胞だけだと思っていた。

人間が相手になるなんて、考えもしなかった。

56名無しさん:2007/04/13(金) 23:37:11
だが自分がどう考えようと、現実は変わらない。
現に、攻撃を受けている。

それだけは、紛れも無い、事実。


川;゚ -゚)「あの装備……米軍の海兵隊か?しかし何故……」

(;^ω^)「クーさん……」

川;゚ -゚)「心配するな。君は必ず、私が守る」

(;^ω^)「……頼りにしてますお」

川;゚ -゚)「……任せろ」

カシャン、と、クーはマガジンを交換する。
その動作が、僕に戦場にいるということを実感させた。

川;゚ -゚)「行くぞ。ジョルジュたちを探そう」

(;^ω^)「……」

無言のまま、僕はクーについて行った。時折、後ろを振り返る。
曲がり角を曲がるたびに誰かが飛び出してこないかと思っては心臓が飛び出しそうになった。

少しでも物音がしようものなら、そちらに反射的に銃口を向けた。

自然と、息も上がっている。

57名無しさん:2007/04/13(金) 23:38:06
川;゚ -゚)「落ち着け、ブーン。大丈夫、大丈夫だ」

落ち着けるものか。

命のやり取りの中で、落ち着いてなど居られるわけが無い。視界も、なんだかぼやけてきた。

(;^ω^)「……は、はいですお」

苦し紛れに、返事だけはした。

川;゚ -゚)「……」

教えてもらった銃の扱い方を必死で思い出す。

弾は上方向に向かいやすいので胸の少し下の辺りを狙う。

右手で押し出し、左手で引く。

引き金は絞り込む……

よし、大丈夫だ。

そこまで、頭の中で処理をした、そのときだった。

視界の端で、何かが動いた。

58名無しさん:2007/04/13(金) 23:38:18
(兵−ゝ−)「っ!!」

(;^ω^)「!!」

川;゚ -゚)「ブーン!!伏せろ!!」

銃を持った男達が突然壁から現れた。
そこがトイレの場所だったと気づいたころには、既にその銃口が光っていた。

弾がこちらに届くーーーー

と、思ったところで弾は頭上にそれた。同時に、僕の視界も下へと移動する。

クーに足払いをかけられた。それで、弾をかわすことが出来たと気づいたのは数秒後の話。
そして、今度はこっちの反撃の番だった。

川;゚ -゚)「ああ!!」

(兵ヽдヽ)「!!」

狙いもつけずに弾丸を放ち、相手がひるんだところでクーは一気に接近した。
男達の顔に焦りの色が浮かぶ。

だが、もう、遅い。

銃を突き出していた手の下から、顎に向かっての左のアッパーカット。のけぞって倒れる男の後ろに、クーに向かい銃を構える姿が見えた。

しかしそれも無駄だった。

59名無しさん:2007/04/13(金) 23:38:40
膝を曲げ銃の射程から外れる。さらに膝を伸ばした勢いを残したままに、クーの左手が男の腹部に突き刺さる。

(兵;−д−)「ーーーーーー!!」

男が、声にならない声を上げた。顔は目を背けたくなるような形相だ。

まだ、クーは止まらない。右手に持ったM92を指で回転させバレルを握る。
最後に残った男をめがけて、そのグリップが振られた。

右側から振られたグリップは男の頭に向かいーーーーそして、空を切った。

(兵@д@)「っ!!」

川;゚ -゚)「ーーーーーー!!」

ボクシングで言えばダッキング。男は下に屈んだのだ。
そしてクーはといえば、グリップを振るのが力任せすぎた。その勢いのままで、体が流れていた。

今度はクーの腹部ががら空きになる。

男は手に持った銃をクーの腹部へと向けた。

川;゚ -゚)「!!」

だが、そのままクーは体を流し、そのまま前回り受身を取る。
予期せぬ動作に、男は対応できなかった。

60名無しさん:2007/04/13(金) 23:38:57
回転の勢いで起き上がったクーは、振り返って再び銃を構え、引き金を引いた。
パン、と乾いた音とともに、男の足から血が噴出した。自分の体重をその足が支えられるはずも無く、男は成すすべなく倒れた。

落とされた男の銃を、クーは足で蹴り飛ばす。




ーーーーーとりあえず、終わった。




その場には、気を失った男と悶絶している男、そして足から血を流している男の三人。


川;゚ -゚)「……ふぅ」

(;^ω^)「お見事ですお」

相手も素人ではないのだろうが、クーは強かった。

ラウンジ山でミサイルを銃で撃ち落したときもそう思ったが、この人はいったいどんな訓練を受けてきたんだろう。

61名無しさん:2007/04/13(金) 23:39:34
川;゚ -゚)「来い。行くぞ」

(;^ω^)「はいですお」

悶えている男たちの横を通って、クーの元へ。
確かに、男達は死んではいない。アッパーを食らった男は気を失っているし、ボディを食らった男は悶絶して蠢いていた。足を打たれた男も、また然り。

クーは僕に銃を渡したとき、撃つときは躊躇うな、と言った。生きることを最優先にしろと言った。
クーほどの技術がある者であれば、生きのびるために相手を傷つける程度の扱いが出来るかもしれない。

でも、僕はどうだ?

褒められたとはいえ、銃の扱いは全くの初心者。
急所を外して、殺さずに戦えなくするなんて出来るはずが無い。

僕が、銃を使う時、それは、人を殺すときなんだ。

ツンを止めること。それは、人を殺すことだ。
磐石だったはずの決意が揺らいでいく。

川 ゚ -゚)「ブーン」

僕の心を読んだのか、もしくは顔に表れていたのか。クーは僕の思案に答えるように言った。

62名無しさん:2007/04/13(金) 23:39:47
川 ゚ -゚)「……引き金を引くことに必要なのは、技術でも、指の筋力でもない」

( ^ω^)「……」

川 ゚ -゚)「必要なのは、勇気だ。引き金を引くことが、どんな結果になるのか。それを考えて、判断して、決意を持って撃つんだ。
     ……特に、君はな。それが、必要だ」

( ^ω^)「……把握しましたお」

川 ゚ -゚)「……まぁ、君なら出来ると思う」

クーが僕にそう言った。そのときだった。

鳴り響く銃声とともに、クーの肩から血が噴出した。

63名無しさん:2007/04/13(金) 23:40:01
*



(;´_ゝ`)「敵さんもなかなか」

(´<_`;)「やりますねぇ」

从;゚∀从 「なに悠長なこと言ってんだよ!!」

(;´_ゝ`)「悠長っていってもねぇ……」

ハインと兄者、弟者、ドクオ、ショボンの五人は非常階段の前に居た。
すでに占領されていた表階段から引き返してきたところだった。

(´<_`;)「まさかここもすでに確保されてるとはなぁ……」

廊下の壁の影に隠れながら、弟者はつぶやくように言った。

キン、と弾が跳ねる音が間近で聞こえ、同時に壁に弾痕が付く。

(´<_`;)「うおっ、あぶね」

(;'A`) 「どうするんですか?」

(;´_ゝ`)「待て待てドクオ。こういうのは落ち着けば結構なんとかなる……ってうわっ!!」

急に飛んできた弾丸に、兄者は頭を下げる。

64名無しさん:2007/04/13(金) 23:40:22
撃ち終わりを確認したハインは壁から飛び出し、手に持った拳銃を数発放った。
そして二、三人倒れたのを確認するとすぐに体を引っ込める。

从;゚∀从 「駄目だ駄目だ。キリがねぇ」

(´<_`;)「……仕方ない。この際非常階段はあきらめよう」

(´・ω・`)「あきらめるって……じゃあ一体どこから逃げるんですか?」

(´<_`;)「屋上も駄目だったからな。正面にも多分敵さんはいるんだろうな」

(;´_ゝ`)「だろうな」

(;'A`) 「……ど、どこからも逃げられないじゃないですか」

(;´_ゝ`)「諦めんな!必ず何か方法がある!!」

その時。

コツン、という間の抜けた音。

音がした方向を見やる。

黒くてボコボコした塊。これは一般的にはアップルと呼ばれる、

65名無しさん:2007/04/13(金) 23:40:37
―――手榴弾だ。




脳が瞬時にそう判断した。


反射的に叫んだ。

从;゚∀从 「離れろぉおお!!」


手が詰まったときは必ず手榴弾を使う。これは定石だった。

そんなことに気づかなかったくらい、自分は動転していたのかと、ハインは思った。

从;゚∀从 「とにかく走れ!!」


走る。場を離れる。


手榴弾の爆発が届かないところまで。

だが、足を急がせても、体は思うように進まない。

駄目だ、間に合わない―――。

66名無しさん:2007/04/13(金) 23:40:51
(´<_`;)「ダスターシュートだ!!飛び込め」




爆発する弟者の叫び声。


直後、背中を誰かにつかまれたような感じがした後、視界が暗くなった。



从;゚∀从 「ああああああああああああっ!!」


目の前を壁がものすごい速さで走っていく。胃が持ち上がっている感じがする。

自分が落ちているのだと、ハインは気づいた。

どれだけ時間がたった?
数秒のことだったのだろうが、ダスターシュートの中を落ちている時間は数分のいように長く感じた。長すぎるほどだった。

ドサリ、と、音がして、ハインは体に衝撃を感じ、接地感を覚えた。

ツンとしたごみの臭い。目を開けて一番最初に目に入ったのは、黒いゴミ袋だった。

ここはダスターシュートの果て。
ゴミ収集室。

67名無しさん:2007/04/13(金) 23:41:04
从;゚∀从 「……助かったのか?」

周りを見渡す。

(;´_ゝ`)「いてててて……」

(´<_`;)「……ふぅ」

(;'A`) 「シヌカトオモッタ……」

(´・ω・`)「……」

兄者、弟者、ドクオ、ショボン。
全員、無事のようだ。

从;゚∀从 「……よかった」

(´<_`;)「全くだ」

ゴミ袋の山から起き上がる。どうやらこれがクッションになってくれたお陰で、助かったらしい。

(;´_ゝ`)「ダスターシュートに飛び込むなんざ、これから先経験することもないだろうな」

从 ゚∀从 「いい経験じゃないか。……ドクオ、ショボン、大丈夫かい?」

(;'A`) 「マリオ64のスライダーを思い出したぜ……」

(´・ω・`)「……大丈夫です」

从 ゚∀从 「大丈夫ならいいんだ」

68名無しさん:2007/04/13(金) 23:41:21
(´<_` )「しかし、どうします?完全にジョルジュたちとはぐれてしまいましたよ?」

( ´_ゝ`)「ふむ……」

从 ゚∀从 「……無事なことを祈るしかないね。連中なら、きっと大丈夫さ」

(´<_` )「とりあえずここを出ましょう。いつまでもゴミにまみれていたくない」

ハインリッヒと弟者が先頭に立ち、出口へ。まさかダスターシュートの出口まで張っているとは思えないが、念のためだ。

从 ゚∀从 「……開けるよ」

ここを出た先にあるのは技本ビルの駐車場。だが、ここには普段はゴミ収集車しかやってこない。
相手も、まさかここまで兵を回してはいないだろう。

ドアを、開けた。

きれいな空気が入ってくるのが判った。ゴミの臭いが充満していたところから出たのだから当然といえば当然だが空気がおいしく感じる。

そして、顔を上げた先にあったのは、銃口だった。


从;゚∀从 「ーーーーーー!!」

(;´_ゝ`)(´<_`;)(;'A`) (;´・ω・`)「!!」

銃を持った米兵が何人もそこに立ちふさがっていた。その銃口はどれもこちらを向いている。

状況を把握するのに数秒必要だった。

69名無しさん:2007/04/13(金) 23:41:40
???「ダスターシュートを使ったのはいい考えだった。だが、我々もプロだ」

列を作った米兵の真ん中を割いて、男がコツコツと靴を鳴らせて歩いてきた。
もちろん、その手には銃が握られている。

???「そこまでだ。銃を捨ててもらおうか」

从;゚∀从 「……プギャー……中将……」

( ^Д^)「ほお、私が誰だかわかるのか」

名前を呼ばれたプギャーは意外そうな顔をした。
もとい、意外そう、では済まされない。自分以外のものをすべて見下しているようなそんな顔だった。

(´<_`;)「わかるさ」

(;´_ゝ`)「あんたほど嫌われている人もいないしな」

( ^Д^)「ほう」

プギャーは銃を下げ、肩を竦めて見せる。兄者の皮肉を、あざ笑うかのようだった。
そして、すぐに銃を向けなおした。

(♯^Д^)「……自分達の立場がわかっていないようだな……!!さっさと銃を捨てろ」

从;゚∀从 「(従う、しか、ないな……)」

舌打ちをしつつも、ハインは銃を捨てた。
それを見た兄者と弟者も銃を捨てる。

70名無しさん:2007/04/13(金) 23:42:58
( ^Д^)「お前らもだ」

(;'A`)(;´・ω・`) 「……」

ドクオとショボンはゆっくりと地面に銃を置いた。

すべての銃が捨てられたのを確認して、プギャーは口を再び開いた。

( ^Д^)「技術研究本部。あの人造細胞を作り出した組織のようだな」

从;゚∀从 「……まぁね。過去の負債さ」

( ^Д^)「第七艦隊及び横須賀米軍基地の壊滅。この責任は人造細胞を作り出したお前達にある」

(;´_ゝ`)「なにを……!!」

反論しようとした兄者の頭に。プギャーの銃口が鋭く向けられた。

( ^Д^)「……誰が喋って良いと言った?話してンのはこっちなんだよ。てめぇらテロリストに話す権利なんてねぇんだよ……!!」

(;´_ゝ`)「……ぐ」

口元まででかかった言葉が押し戻される。

何がテロリストだ。
あんたの無能な指揮のせいで、昨日一体何人死んだと思ってるんだ。

71名無しさん:2007/04/13(金) 23:43:13
从;゚∀从 「ふざけんな!あんた、昨日の戦闘でいくら死んだと思ってるんだ!?」

( ^Д^)「……なんだと」

ハインが叫んだ。それはまさに兄者の考えの代弁だった。

从;゚∀从 「何が徹底抗戦だ!モララー司令官の避退勧告も聞かないで。あんたの無能な指揮で、死ななくてもよかった人間がたくさん死んだんだ!」

(♯^Д^)「女……!!いい加減に……!!」

从;゚∀从 「それで今度はあたし達がテロリストだぁ?!ふざけんのも大概にしやがれ!いつでも自分だけが正しいと……!!」

(♯^Д^)「……!!」

直後、発砲音。

乾いた音が響き、ハインの足元で火花が散った。

从;゚∀从 「……!!」

プギャーの銃の銃口が煙を吹いていた。空薬莢が音を立てて落ち、プギャーは銃をおろした。

( ^Д^)「お前達を連行する。抵抗しようなどと思わんことだな」

(´<_`;)「くそ……」

( ^Д^)「連れて行けpgr」

72名無しさん:2007/04/13(金) 23:43:29
このまま、連れて行かれるのか?
なにも出来ないままに。

嫌だ。嫌だ。

この腑抜けた野郎の顔を一発でいいから殴ってやりたい。
弟者はそう思い拳を握りしめた。

だが、その力もするすると抜けていく。

歯がゆい。本当に歯がゆい。

(´<_`;)「くそ……」

(;'A`) 「……弟者さん」

(;´・ω・`)「……」

後ろで手を縛られ、米兵に背中を押された。歩け、と、耳元で言われた。

(;'A`) 「ちきしょう……」

ドクオが毒づいたその時だった。
どこかで聞いた、聞き覚えのある声が、辺りに響いた。

73名無しさん:2007/04/13(金) 23:43:50
*



(;^ω^)「クーさん!!」

川;゚ -゚)「あぐ……」

一瞬の出来事だった。

僕に顔を向けていたクーの肩から、いきなり血が噴出した。クーは肩を抑えて膝をつき、持っていた銃を床に落とした。
その床の上に、クーの血が流れていく。

(;^ω^)「クーさん!」

川;゚ -゚)「ブーン、来るな!」

走り寄ろうとした僕をクーが制する。
その時、蹲っているクーの向こうから人影が歩いてくるのが見えた。

コツコツと、床を鳴らせてこちらに来る。

???「引き金を引くのに必要なのは勇気だァ?腑抜けたこと言ってんじゃねぇよ。引き金を引くのに勇気なんていらない」

コツン、と足音が鳴り止んだ。

(’e’) 「甘ぇこと言ってんなァ。引き金を引きゃあ、人が死ぬ。ただそれだけのことさァ」

74名無しさん:2007/04/13(金) 23:44:05
軍服を着た、大きな男。
将校の階級賞を付けていたが、周りに護衛はいなかった。

手に持った銃からは煙が出ており、それでクーを撃ったのだと、すぐに判断できた。

川;゚ -゚)「……」

(’e’) 「なんだその顔はァ?文句あんのかァ?」

顔をにやけさせて、ククっと、男は笑う。

(’e’) 「俺はセント・ジョーンズ。大尉さァ」

川;゚ -゚)「……大尉だと?要の指揮官が、護衛もつけずに何をしているんだ」

(’e’) 「護衛?そんなもんいらねぇさァ。なんでこんなところに居るんだってェ?」

(;^ω^)「……」

口が裂けているのかと見紛うほどに、セント・ジョーンズと名乗った男は口を歪めてニヤリと笑った。

川;゚ -゚)「指揮官が前線まで出てくるなど馬鹿げている。大尉なら後方で指揮をとっているはずだ」

(’e’) 「まぁ、そうなんだろうなァ」

川;゚ -゚)「……判っているなら何故だ」

75名無しさん:2007/04/13(金) 23:44:21
(’e’) 「そんなこと知ったところで、どうせてめぇらは死ぬんだけどなァ」

川;゚ -゚)「……」

(’e’) 「いいぜェ。死ぬ前に教えといてやるよォ」

セント・ジョーンズは手に持った拳銃をくるくる回しながら言った。

(’e’) 「 人 を 殺 す た め さ ァ 。大体、俺が軍に入ったのは、公然と人を殺せるのは軍しかないと思ったからさァ」

(;^ω^)「……!!」

人を殺すため。

平然と言ってのけたが、人を殺すためだって?
家族や恋人、友人を守るため、ではない。国のため、でもない。

ただ、自分の欲求を満たすため。

人を殺すため。

そんなことのために、軍に入り訓練を受けて、こうやって戦場にやってきているというのか?

(’e’) 「実際いいぜァ。軍人なんてのは戦場じゃあ殺人許可証を貰ってるようなもんさァ」

(;^ω^)「……」

76名無しさん:2007/04/13(金) 23:45:42
(’e’) 「俺は薬も金も女も酒もいらねぇ。ただ人を殺す。それだけでいいのさァ」

川;゚ -゚)「……狂人め」

片手に残った銃を握り締めながら、クーははき捨てるように言った。

肩を押さえながら立ち上がり、銃口をセント・ジョーンズに向ける。

(’e’) 「なんだァ、女ァ。俺とヤんのかァ?」

ポタポタと、クーの腕から血が落ちる。
クーの顔には脂汗が浮かび、顔は真っ青だった。

(;^ω^)「クーさん!!」

川;゚ー゚)「安心しろ、ブーン。ちょっとこの狂った男に正義を教えてやるだけだ」

(’e’) 「正義を教えるだァ?俺に勝つつもりかぃ。その腕で」

川;゚ -゚)「お前など、片腕だけで十分だ」

(’e’) 「言うねェ。……んン?」

セント・ジョーンズの目が細くなる。クーの握る銃を見た後、床に落ちているもう一方の銃を見つめた。
しばらく何かを考えているようだったが、数秒後、納得したように頷きながらセント・ジョーンズは口を開いた。

(’e’) 「M92の二挺拳銃……お前、データにあった元WACのクーって女かァ?」

川;゚ -゚)「ああ」

77名無しさん:2007/04/13(金) 23:46:09
クーは片腕で銃を構えた。その銃口は、セント・ジョーンズの頭をむいている。

にもかかわらずセント・ジョーンズは笑っていた。

ククク、と、耳に障る笑い方で。

(’e’) 「そうかそうか。お前がクーか。ようやく面白そうなやつに出会ったなァ……」

川;゚ -゚)「……」

(’e’) 「プギャー中将からは研究員以外で邪魔をするものがいたら殺しても構わないと言っていた。
     お前は研究員じゃないよなァ?」

川;゚ -゚)「……」

クーはいきなり弾を撃った。
銃声と共に飛び出した弾はセント・ジョーンズの頭の横を斜めに通って天井の照明を破壊した。

パラパラと、割れた照明のガラス片がセント・ジョーンズに降りかかる。

川;゚ -゚)「殺せるものなら、殺してみな」

セント・ジョーンズは顔中を歪めて笑う。

(’e’) 「……ククク。それがお前の返事か。どうやら、ほんとに死にたいみたいだなァ。じゃあ、お望みどおりに殺してやるだけさァ」

川;゚ -゚)「ブーン!ここから離れてろ!!」

(’e’) 「じゃあ、イきますかァ!!」

両者の銃が火を吹いた。

78名無しさん:2007/04/13(金) 23:46:32
本当に一瞬だけ遅れて初弾が共々命中する。クーの頬に血が走り、セント・ジョーンズの頬にも血が走った。

川;゚ -゚)「……!!」

(’e’) 「……!!」

恐らく両者とも頭を狙ったのだろう。銃撃戦では胴を狙うのがセオリーだとクーに教わったが、二人とも余程自信があるのだろうか。

(’e’) 「やるなァ。女」

川 ゚ -゚)「私がこの距離で外したのは久しぶりだな」

(’e’) 「なぁに。次もそうさ」

川 ゚ -゚)「よく言う」

すぐに二人は距離をとった。後方に跳躍し、物陰へ。

(’e’) 「じゃあ、こいつはどうだァ?」

セント・ジョーンスは懐に手を入れ何かを取り出し、クーに向かって投げた。

黒くてゴツゴツした何か。

(;^ω^)「(手榴弾……かお!?)クーさん!!」


放物線を描きながら、手榴弾はクーの隠れる物陰へ向かい飛んでいく。

79名無しさん:2007/04/13(金) 23:46:49
川 ゚ -゚)「ーーーっ!!」

クーは銃を空中へ向け、引き金を絞った。

鳴り響く銃声。弾丸が撃ちだされる。

銃口から飛び出した弾丸は手榴弾に届き、貫通し、砕いた。

一際大きな爆発がした。


(;^ω^)「うわっぁぁああ!!」


耳障りな音をたてながらフロアのガラスが爆風により割れていく。

手榴弾を弾丸で撃ちぬいた。まさに神業だった。
いや、ラウンジ山で十八発のミサイルを撃墜したクーにとっては、若干的が小さくても一発だけの手榴弾を撃ち落すなど造作の無いことなのかもしれない。

(;^ω^)「(どっちにしても、めちゃくちゃだお……)」

煙と舞う埃のせいで視界がはっきりしない。今、何処にクーが居るのか。そもそも自分の位置もわからない。

その煙の中で何かがぶつかりあう音が聞こえた。鋭利な何かと、固い何かがぶつかるような音。
そしてクーとセント・ジョーンズの声。

(’e’) 「らぁっ!!」

川;゚ -゚)「うぐっ!!」

80名無しさん:2007/04/13(金) 23:47:11
煙がはれると、そこにはセント・ジョーンズのナイフを銃で受け止めるクーの姿。

ギチギチと、金属同士がこすれあう音が響く。

(’e’) 「手榴弾を撃ち落すやつなんざァ初めて見たぜ」

川;゚ -゚)「朝飯前さ。しかし、ナイフとは一体どういう了見だ?」

(’e’) 「なァに。爆風のせいで銃を落としただけさ」

川;゚ -゚)「よくあることだ」

(’e’) 「そうだ。……なァッ!!」

掛け声とともにセント・ジョーンズはナイフと受け止めている銃を下に弾き、がら空きになったクーの顔を狙う。

(’e’) 「もらったァ!!」

川;゚ -゚)「ーーーーっ!!」

向かってきたナイフをスウェーバックでかわした。弾かれた銃を回転させセント・ジョーンズの腹に銃口を押し付けた。

(’e’) 「!!」

川;゚ -゚)「終わりだ!!」

クーの叫びと共に銃声がこだました。直後に、セント・ジョーンズから鮮血が噴出す。

(’e’;) 「ぐ…は」

81名無しさん:2007/04/13(金) 23:47:27
飛びのいて距離をとった。

川;゚ -゚)「(急所を外した……?いや、あの瞬間に急所をずらしたのか?)」

血は噴出したものの、恐らく腹部をかすっただけだ。まだ、勝負がついたわけではない。

(’e’) 「甘く見ていたなァ……。やっぱり本気を出さないと駄目かァ」

血の滲んだ軍服の上に着たアーミージャケットを脱ぎ捨てた。
そして見えたものは、体中にくくりつけられたナイフだった。

川;゚ -゚)「やはりな。お前、そっちの使いか。ナイフの扱いが普通と違った」

(’e’) 「ああ。銃よりも、こいつのほうが俺はいい」

言いながら、セント・ジョーンズはもう一本ナイフを取り出した。両手に構え、体勢を低く取った。

(’e’) 「それにしても、やるなァ、女。さっきの男とは大違いだ」

川;゚ -゚)「…・・・男?」

(’e’) 「白衣は着てなかったから研究員じゃないんだろうなァ……」

川;゚ -゚)「……」

(’e’) 「なかなかうまくやるようだったが、駄目だったなァ。他人を庇って俺のナイフを食らって、それで終わりさァ」

(;^ω^)「……ま、まさか」

82名無しさん:2007/04/13(金) 23:47:41
クーの言葉を思い出す。

……自己犠牲を最も尊いものとする。そういうやつなんだ、あいつは。

(’e’) 「お前みたいな銃の扱い方をしてたなァ。まァ、今となっちゃぁどうでもいいことだがなァ」

川;゚ -゚)「…・・・」

(’e’) 「確か名前は……」

川;゚ -゚)「ぁぁああああああああああああああ!!!!!」

セント・ジョーンズの言葉が終わる前に、クーは連続して引き金を絞った。
痛々しいほどの叫びと共に、弾丸は鋭い速さで向かっていく。

だがセント・ジョーンズは軽く跳躍して、弾をかわす。ジャケットがなくなった分身軽になったとでもいうのか?と思わせるほどの跳躍力。

次の刹那には、ナイフが届く間合いまでクーに接近していた。

川;゚ -゚)「あああああああ!!!」

空中のセント・ジョーンズに向かい引き金を絞る。
だが、聞こえたのはカチン、という弾切れを告げる音だけで、銃声は聞こえなかった。

川;゚ -゚)「……!!」

狼狽するクーにナイフを投げつけながら、セント・ジョーンズはささやくように言った。

(’e’) 「ジョルジュ、って言ってたな……」

言葉が発せられると同時に、ナイフはクーの体に突き刺さった。


ーーーーーーー第十四話「襲撃(2)」完
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