- 441 : ◆xkpIzaNQBI :2006/11/30(木)
19:06:05.97 ID:cebEDzoAO
- 十一話・ギャンブラー梅
(,,゚Д゚)「…まだ、見えないっ!!」
(´・ω・`)「そんな事を言う暇があったら練習をしろ!!」
二人の男が死力を出し、鍛練を始めてから1時間。
梅はその間リビングでテレビを見ていたのだが、この時間に見るようなモノもないので早くも飽きてきた所だった
「暇ーっ」
だがそう叫んでも二人には聞こえない。
仕方ないのでそのままソファーに寝転がってテレビを見続ける。
それから暫くボーッとテレビを見ていた時。梅はある物に気付いた
「ん?」
ふと机の上にあるチラシに目が止まる。
何だろうなー、と思いながらも手に取る。
昔……いや、普段ならこんなチラシ見た瞬間破って捨てるのだが。
「ちんぽっぽ杯……?」
それは競馬の案内のチラシだった。
………競馬か。暫くやってない。
いや、ギャンブル自体この数年やってない。やれなかった
- 447 : ◆xkpIzaNQBI :2006/11/30(木)
19:22:54.39 ID:cebEDzoAO
- 「げ……今日最終日!?」
その言葉を発した瞬間、梅はソファーから勢い良く飛び上がった
そして慌ただしく出掛ける準備をする
別段慌てる必要など無いのだが。
いや、その前に梅の中では、チラシを見た瞬間から競馬場に行く事が決まっていたらしい
「サイフ……!!」
最早彼女の頭からは覇道の言った事等、綺麗すっぱり忘れさられていた
「―――――あまり外に出るなよ」
だがそんな事はどうでもいい。
梅はソファーに掛けてあった覇道のコートからサイフを抜き取り、リビングを後にする
「後で倍返しにするから、ね?」
途中、叫び声が聞こえる和室を通る時に、手を合わせながらボソッと呟く
だが和室には聞こえる筈もない。
梅はそのまま玄関のドアを開け、ルンルンとスキップをしながら外に出ていった
- 454 : ◆xkpIzaNQBI :2006/11/30(木)
19:39:34.34 ID:cebEDzoAO
- 「タクシー。どこかな」
家を出た後、梅はタクシーを探していた
だがここは住宅街。こんな所にタクシーが来る可能性は低い
「………」
面倒臭いが、大通りまで出なければ。
ハァ、と溜め息を吐きながら大通りに向かって歩く。
(*゚ー゚)「………」
途中、やけにニコニコとしている笑顔の女性とすれ違った
何か楽しい事でもあったのか?まぁ自分には関係ないが
「タクシーっ!!」
大通り。そこには予想通りタクシーが大量に行き交っていた
そしてあるタクシーが梅に気付いたのか、歩道によりドアを開く。
「お馬ちゃんまでっ」
「競馬場ね?はいよ」
普段ならタクシーを使うなんて贅沢はしない。
だがサイフは自分のでもないし後で儲けてから返せばいいや、とそんな事を梅は考えていた
- 460 : ◆xkpIzaNQBI :2006/11/30(木)
20:01:33.54 ID:cebEDzoAO
- 梅が競馬場に着いた時、既にレースは始まっていた
見渡す限り客席は満員だ
「あちゃー……最終レースしか出来ねーかっ」
そう言いながらも窓口に並ぶ。ここまで来て何もしないで帰る訳にはいかない
「うーん……最近の馬の事よく知らないんだよなっ。ま、いっか。適当で」
そんな事を考えていると、いつの間にか目の前に窓口が来ていた。
すぐさま、何も考えずに馬券を買う
「2-5に8万っ!!」
8万。これは覇道のサイフに入っていた有り金全部だった
これを全て失えば家に帰る方法は歩くのみ。ここから小笠原の家まで車で30分。歩けば何時間かかるのか
だが梅にはそんな事を考える頭は無かった
昔からだった。梅はいつもその場のノリと勢いで生きてきた。
梅自身もチマチマと生きるより、そんな生き方が好きだった
- 467 : ◆xkpIzaNQBI :2006/11/30(木)
20:17:10.00 ID:cebEDzoAO
- 「さーて、どこで見るかなっ」
手に馬券を持ちながら梅は辺りを見渡す。だが座れそうな場所は何処にもない
「…………立ちか」
そこまでして椅子に座りたくもない。大体、レース中は立った方が見やすいのだ
そんな事を思いながら競馬場を歩き回る。だが落ち着いて立てそうな所も無かった
「混みすぎっ!!。」
その時。その時だった。はぁ、と溜め息を吐き再び辺りを見渡した時、梅の目にあるモノが飛び込んできたのは
「………」
瞬間、梅はニヤリと口元を釣り上げながらそのあるモノに向かって歩き出す
―――紫の靄。人混みの中でもはっきりと分かる程、巨大な紫の靄―――
「………」
- 476 : ◆xkpIzaNQBI :2006/11/30(木)
20:34:49.26 ID:cebEDzoAO
- 梅はニヤニヤと笑いながらその靄の………紫の靄の主人の横に立つ。
勿論、自身も紫の靄を発生させて。その人物……ジョジョ立ちの男を挑発するように
「すごい嫉妬っ」
/^^\「……お前もだろう」
男は横にいる梅を見ずに言った。ただただ遠くを見つめているだけだ
「アタシのは嫉妬じゃないよっ」
/^^\「なら怒りか?」
「半分正解半分ハズレっ」
梅もまた、男を見ずに遠くを見ながら喋りかける。
見る必要等無い。見られても問題等無い。
/^^\「ならお前も半分正解、半分ハズレだ」
「ふーん。アンタの靄も嫉妬だけじゃ無いんだ」
そうして二人は会話し続ける。それはレースが始まっても同じ事
顔を見ずに。それでも相手を睨むように
- 483 : ◆xkpIzaNQBI :2006/11/30(木)
20:52:12.95 ID:cebEDzoAO
- 「さぁー、先ずはブーム君が先頭に踊り出る!!後を追うように………」
遠くでは馬が走っている。それに呼応するように実況が場内に響き渡る
だが今の二人にはそんな事等ただの雑音でしか無かった
「もしかして……テロリスト?」
/^^\「だとしたら?」
聞くまでもない質問。聞くまでもない返答。
梅は喋り続ける。萬田もまたしかり
「楽しい?テロ行為」
/^^\「楽しいね」
「嘘。そんな顔してない」
/^^\「…………」
瞬間、梅に対して殺気が放たれる。
だがしかし、梅もまたその殺気を受け流すように喋り続ける
「なんで童帝に従うのさっ」
/^^\「神だからだ」
「じゃ、何で神に従うのさっ」
/^^\「誰もが罵ったこの俺に、手を差し伸べてくれた。理由はそれだけだ。いや……それで充分だ」
- 496 : ◆xkpIzaNQBI :2006/11/30(木)
21:08:50.67 ID:cebEDzoAO
- レースは中盤。観客の叫び声もどんどん大きくなる。
だが二人は。二人だけは無表情のまま喋り続ける。
萬田と喋っている梅も、いつの間にか無表情になっていた
それは靄の力か。それとも萬田の雰囲気のせいか
「不器用だねっ。アンタも」
/^^\「……違いない」
萬田もまた、梅のお喋りに毒気を抜かれたのか、さっきまでの殺気は無くなっていた。
/^^\「お前、名前は?」
「金剛梅。アンタは?」
/^^\「萬田銀次郎」
「変な名前っ」
/^^\「偽名の奴に言われたくは無いがな」
「おっと、バレたかっ」
だが萬田は聞くつもりはない。梅の本名を。
偽名でも名前は名前。それで十分
- 499 : ◆xkpIzaNQBI :2006/11/30(木)
21:22:02.47 ID:cebEDzoAO
- /^^\「今、ここで始めるか………?」
再び膨らむ殺気。更に巨大になる紫の靄
だが梅は動かない。レースの様子をジーッと見つめている
「冗談。こんな所で戦えない」
/^^\「俺は戦える」
無表情でそんな事を言う萬田に、梅は呆れ気味に溜め息を吐く
「わかんないかなあっ。まだ戦う時じゃないのっ。それにギャンブラーとしてのマナーを守らなきゃ。
ここにいる人間、全員アタシ達と同じくギャンブルを楽しんでんだからさっ」
/^^\「………」
その言葉に納得したのか否か。萬田を取り巻いていた紫の靄は段々と小さくなる
/^^\「今は見逃してやる。だが、今度会った時は………我等の……神の邪魔をするならば……殺す」
「そりゃコッチのセリフ。アタシだってアンタ達が暴れだしたら全力でアンタ達を殺すよ」
- 506 : ◆xkpIzaNQBI :2006/11/30(木)
21:35:55.68 ID:cebEDzoAO
- そしてレースは終盤。客の興奮が一番高まる瞬間
残るはあと一直線の道。それを馬は全力で走る
/^^\「お前、何に賭けた?」
「2-5」
その言葉を聞き、萬田は梅を鼻で笑う
その様子を見て梅はムッと萬田を睨む
「何さっ」
/^^\「真のギャンブラーというのはな、負ける戦はしないもんなのさ。2-5?当たる筈無いね」
「はん。そりゃ只の臆病者のやる事だよっ。一か八か、てのがギャンブルなんだよっ」
/^^\「違うね。ギャンブルは臆病になればなる程、勝つんだよ」
そうして二人は再びレースに目を移す
残るは後僅かの距離。
「さぁー!!!4番のブーム君が独走!!それに続くは1番のヒホウデン!!!」
萬田は手に持つ馬券を見て、不適に笑う。
萬田が買った馬券は4-1。このまま行けば勝利は間違いない
- 511 : ◆xkpIzaNQBI :2006/11/30(木)
21:49:19.78 ID:cebEDzoAO
- 萬田は横目で梅を見る。だが梅は、余裕たっぷりの表情でレースを見つめていた
/^^\「……」
「………」
当たる筈が無い。このレースはガチガチの本命レースだ。
ましてや2-5等、来るはずがない
そんな事を萬田が思っていた時だった。不意に実況が……観客が騒だしたのは
「おーっと!!先頭の馬を猛追する馬が2馬!!!2番のデリホウライと5番のクッソスレー!!!!」
/^^\「!?」
その実況を聞いた瞬間、思わず萬田は梅を見る。
そこにはニヤニヤと笑いながら自分を見つめている梅の姿があった
その目はどうだー、と自分に語りかけていた
/^^\「ふん!!まだレースは終わっていない!!!」
- 525 : ◆xkpIzaNQBI :2006/11/30(木)
22:05:53.63 ID:cebEDzoAO
- そうして萬田は再びレースに目を移す
だがそこにはゴール直前に、先頭の馬を追い越した二頭の馬が目に入った
/^^\「………!!」
「ふふんっ!!」
何故だ?ガチガチの本命だぞ?倍率は1.1だぞ?
それが何故―――――
「キタァァァァ!!!!2-5!!!!本命のブーム君を押し退けて!!!!今!!!ゴールイン!!!!!!!!」
/^^\「何故負ける――――――?」
そうして呆気に取られた萬田に上から声がかかる。
萬田がその方向に振り向くと、そこには上の段で自分を指差しながら不適に笑う梅の姿があった
「いくら臆病になろうともっ!!博打に絶対は無いんだよっ!!!」
/^^\「――――――――」
そう言い、梅は踵を翻す。そして颯爽と自分に背中を見せながら去っていった
/^^\「………」
- 533 : ◆xkpIzaNQBI :2006/11/30(木)
22:12:07.33 ID:cebEDzoAO
- その後ろ姿を萬田は見えなくなるまで見つめていた
それと同時に萬田を取り巻く紫の靄も増大する
嫉妬?それもある。憧れ?まさか。じゃあ何だ?
/^^\「…………面白い奴に出会えた。………だが」
梅の姿が見えなくなった所で萬田は拳を握る。
そして呟く。
誰にも聞こえないように。だが、あの女に聞こえるように
/^^\「お前は………危険だ――――――――」
計画の妨げになる。絶対に。ならばどうする?
殺す。クリスマスに。邪魔をしようとした、その瞬間に
そうして萬田は消える。新たな敵の存在を神に伝える為に。
その危険を神に伝える為に――――――
- 582 : ◆xkpIzaNQBI :2006/11/30(木)
23:35:28.25 ID:cebEDzoAO
- 梅が小笠原の家に着いた時、もう既に日は落ちかけていた
「おいすーっ」
ルンルン気分で鼻唄を唄いながら梅はドアを開ける。
何しろ8万が40万。五倍になったのだ。
覇道のサイフに10万程入れて、後は全部自分の取り分。2万も増えたんだから覇道も喜ぶだろう
「………?」
ふと、玄関に見慣れない靴があるのに気付く。女物の靴だ
「お客さんかなっ?」
そう思いながら梅は靴を脱ぎ、リビングへと向かう
途中、和室を覗いたが既に鍛練は終わったのか和室には誰もいなかった
「終わったのかなっ?」
よく見るとリビングのドアから光が漏れている。
リビングにいるのだろうか
- 591 : ◆xkpIzaNQBI :2006/11/30(木)
23:46:59.16 ID:cebEDzoAO
- それにリビングからは何やら声が聞こえる。
三人。覇道の声に、小笠原の声。そしてもう一人は聞き覚えの無い声だった
「誰だっ?」
そして梅は勢い良くリビングのドアを開けた。
そこには…………
(;゚ー゚)「ごめんなさい!ごめんなさい!」
(,,゚Д゚)「目が、目がぁぁぁ……………」
(´・ω・`)「………」
そこにはソファーにうなだれながら横になっている小笠原。それに謝るように土下座を繰り返す女性。
そしてその様子を呆れながら見ている覇道がいた
「………」
梅は何が起こっているのか理解出来ずにドアの前で唖然としていると、梅に気付いた覇道が梅に近寄ってきた
「どしたの、これっ?」
(´・ω・`)「………はぁ」
覇道が呆れながら溜め息を吐く。そして梅に語り出した。少し前の出来事を………
- 599 : ◆xkpIzaNQBI :2006/11/30(木)
23:58:26.42 ID:cebEDzoAO
- それはしぃが小笠原の家に上がった時であった
(*゚ー゚)「…………」
しぃが上がると同時に、家の中いっぱいに響く二人の叫び声
「アッーー!!!アッーー!!!!!出すぞぉぉぉ!!!!!覇道っー!!」
「まだだっ!!!!!!まだ早いっ!!!!!」
「もう、我慢出来ない!!!!!」
「よぉし!!イけ!!俺も一緒にイくっ!!!」
(*゚ー゚)「ふ……ふふ………」
二人は気付かなかった。小笠原は忘れていた
彼女の存在を
「ふんばれぇぇぇぇ!!!!!!!小笠原ぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
和室に忍び寄る存在も知らず、二人は叫び声を上げ続ける
そしてしぃは笑いながら和室へと向かって行ったのだ。
- 608 : ◆xkpIzaNQBI :2006/12/01(金)
00:09:13.53 ID:wtk6oySJO
- 運が悪い事に二人は上半身裸であった。
服が汗で濡れるから脱いだ方がいい
そう思い、二人は上の服を脱いでいた
(,,゚Д゚)「クソッ……まだ、靄は見えない……」
(´・ω・`)「………焦りは禁物だ。体勢も大事だぞ?こう腕をだな……」
覇道が後ろから小笠原の両手を掴みながら体勢を整える。
それは端から見れば覇道が後ろから小笠原を抱いている格好だった
その時。その時だ。和室の襖が開いたのは
(´・ω・`)「?か……じゃなくて梅?」
(,,゚Д゚)「ん?」
覇道と小笠原がそのままの体勢で襖に振り返る。
そこには。そこにはしぃがいた。
そしてニコニコと笑いながらしぃは言った
(*゚ー゚)「お楽しみ中ごめんねぇ!邪魔しちゃって!」
(,,゚Д゚)「………はぁ?」
- 621 : ◆xkpIzaNQBI :2006/12/01(金)
00:20:30.60 ID:wtk6oySJO
- (*゚ー゚)「言ってくれれば良かったのに。そんなに仲良い おホモ達 がいるって事」
呆気にとられていた二人はその言葉を聞き、慌てて離れる
(´・ω・`)「な、何を言っているんだ君は!!!」
(,,゚Д゚)「馬鹿!!!気持悪い事言うんじゃねぇ!!」
だがそんな二人を見てもしぃは笑顔のまま、額に青筋を浮かべていた
(*゚ー゚)「いや、別に趣味の領域だからさ。いいんだ。いいんだよ。でも出すぞぉー……とかイクゥーとか……そういうのは……」
(,,゚Д゚)「お、おい!!お前何か勘違い……」
小笠原がそう言い、しぃの肩に手を掛けようとした時。
小笠原が何かが切れる音を聞いたような気がした
そして。そしてその瞬間。
(*゚ー゚)「触るんじゃねぇぇぇぇ!!!!!!!!!ホモ野郎ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
その瞬間、小笠原の顔に。小笠原の目に向かってラリアットが放たれた―――――――
(,,゚Д゚)「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!目が、目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
- 635 : ◆xkpIzaNQBI :2006/12/01(金)
00:30:07.07 ID:wtk6oySJO
- (´・ω・`)「で、その後暴れる彼女に事情を説明し……と言ってもテロリストの事は言っていないが
まぁ、こんな所だ」
「………」
その話を聞き、梅もまた覇道と同じく溜め息を吐いた
「何でそんな紛らわしい叫び声出したのさ……」
(´・ω・`)「仕方ないだろう。アッーー!とかイけー!!が一番紫の靄が発生しやすい……というか感情が高まりやすい叫び声なんだから」
「………あー、そう…」
再び梅は小笠原としぃを見る。そこにはまだ土下座をしているしぃとソファーで唸り声を上げている小笠原がいた
「まったくっ」
(´・ω・`)「で、お前はどこに行ってたんだ?」
「ぶっ!!!」
- 18 : ◆xkpIzaNQBI :2006/12/01(金)
00:50:05.36 ID:wtk6oySJO
- 「あー……ははは。少し散歩に」
ふーん、と相槌をうつ覇道をよそに、梅は生きた心地がしなかった
早くサイフを覇道のコートに戻さなくては――――
そう思い、梅は小笠原のいるソファーに近寄る。
勿論小笠原の事等どうでもいい。そしてソファーに掛っているコートに近付き―――
「(やたっ!覇道は見てない!!)」
覇道がよそ見をしている時を見計らい。一瞬でコートのポケットにサイフを戻した
「…………ん?」
(*゚ー゚)「………?」
ふと、梅はそんな自分をジーッと見つめるしぃに気付いた
………何だ?まさか今のを見られたのか?
(*゚ー゚)「あの、どちら様?」
あぁ、そんな事か
そう思い、梅はホッと胸を撫で下ろし、笑顔でしぃに向かって挨拶をする
「アタシ、神倉由利恵。よろしくっ!」
(*゚ー゚)「あ、覇道さんが言ってた人ですね。でも………名前は確か梅さん、とかだったような………」
「―――――あ」
- 32 : ◆xkpIzaNQBI :2006/12/01(金)
01:01:52.92 ID:wtk6oySJO
- その瞬間、梅の顔がサーッと真っ青になった。
そして恐る恐る覇道の顔をチラリと見る
そこには鬼の様な形相で自分を睨んでいる覇道の姿があった
「…………!!!!!」
終わった。その場でヘナヘナと崩れる梅。
それを見て、覇道は慌ててしぃに弁明をする
(´・ω・`)「すいませんね。コイツは時々ありもしない名前を言うんですよ。
医者は自分の名前によるコンプレックスが引き起こす症状と言っているんですが……」
(*゚ー゚)「まぁ……それは……」
最早梅は言い返す気力もなく、床に寝転んでいた
一方小笠原も未だにソファーで唸り続けていた
「………」
(,,゚Д゚)「うぅぅ……うぅぅーっ………殴られたぁ…しぃに………」
- 37 : ◆xkpIzaNQBI :2006/12/01(金)
01:10:33.71 ID:wtk6oySJO
- 差出人:フッジサーン
件名:無し
本文:神よ。ご報告致します。今日ある場所で、女に出会いました。
我等と同じく紫の靄を纏った女です。名を金剛梅。恐らくは偽名でしょうが、消した方がよろしいでしょうか?
差出人:童帝
件名:Re
本文:いや、放っておいていい。邪魔をするようなら消せばいいし、邪魔をしなければ別段害は無い。―報告ご苦労
- 44 : ◆xkpIzaNQBI :2006/12/01(金)
01:22:16.48 ID:wtk6oySJO
- ここは暗闇?否
では光?否
ここはどちらでもない。ただの空間。
その空間に、彼は存在していた。ただ座り。ただ目を閉じ。ただ考える
( ^ω^)「………」
紫の靄を纏った女。間違い無い。神倉だ
萬田からそのメールが来た時。思わず口元を釣り上げた
予定が、少し狂っている?いや、違う。狂うのもまた、想定内。
狂わなくても、想定内。
神は笑う。その空間で
誰かに聞かせるような、笑い声。………誰に?
( ^ω^)「…………」
覇道に?神倉に?それとも自分?
――――――全員だ。
再び、神は瞑想を始める。クリスマスまで、延々と。
裁きの日まで、延々と
- 49 : ◆xkpIzaNQBI :2006/12/01(金)
01:35:03.11 ID:wtk6oySJO
- 家中に広がるカレーの匂い。何故か懐かしい気分になるのは何故だろう
「何故?」
(,,゚Д゚)「ん?」
外が既に暗くなった時。三人は食卓に座っていた
(´・ω・`)「すみませんね、飯までご馳走になって」
(*゚ー゚)「いいえ。これからクリスマスまで泊まるんでしょ?遠慮はしないでください」
そうですかー、と返す覇道。そんなやりとりを小笠原は不思議そうに見ていた
(,,゚Д゚)「……おい、彼奴になんて説明したんだ?」
「何でもアタシ達はアンタの従兄弟で、覇道は格闘技の師範。アタシは覇道の妹。」
(,,゚Д゚)「………従兄弟ぉ?」
「うんっ。それでもって覇道はアンタに格闘技を教える為ここに泊まり込みで鍛練を……」
小笠原は梅の話を呆れながら聞いていた。
よくそんな嘘で騙せた………いや、しぃだから騙せたのか?
- 52 : ◆xkpIzaNQBI :2006/12/01(金)
01:48:23.52 ID:wtk6oySJO
- 「と、言う訳でアンタもボロを出さないようにっ」
(,,゚Д゚)「へいへい」
小笠原はそんな気の抜けた返事をし、膝をテーブルにつきながらテレビを見る
そこにはアメリカの大統領が写っていた。どうやら何か演説をしているらしい
(,,゚Д゚)「……偉い奴の言う事はよく分からん。」
勿論字幕が下に出ているが、それを見てもチンプンカンプンだ。
偉い人ってのは一般人と思考が違うのか?回りクドイ言い方をして。
瞬間、小笠原の脳裏に仮面の男の姿が浮かんだ
(,,゚Д゚)「………」
小笠原がボケーッとそんな事を考えていると、考えを見透かしたように覇道が喋りかけてきた
(´・ω・`)「偉い人もただの人間だ。俺には理解出来るがね」
(,,゚Д゚)「ほぉ。じゃあ、あの大統領が何て言いたいのか分かるのか?」
(´・ω・`)「そうだな……世界最強のアメリカ様に喧嘩売ってんじゃねーぞ、て所か」
違いねぇ、と笑いながら小笠原が言った。
だがその瞬間、ゴンっと小笠原の頭に何かが炸裂する
- 54 : ◆xkpIzaNQBI :2006/12/01(金)
01:57:32.33 ID:wtk6oySJO
- 小笠原が上を向くと、そこにはカレーの皿を持ったしぃの姿があった
(*゚ー゚)「そんな事言ってないでしょう」
しぃはそう言いながら全員の前にカレーを差し出す。
「やっと飯かっ!!」
(´・ω・`)「待て」
「No」
覇道が止めるのも聞かず、梅は一人でムシャムシャとカレーを食べ始める
(´・ω・`)「……犬以下か、お前は」
(*゚ー゚)「いいんですよ」
そうして他の三人もカレーを食べ始める。
(,,゚Д゚)「………」
明日からまた鍛練だ。ここで気を抜いてはいけない。
気を抜いたら救える者も救えない。
そんな事を考え、小笠原はカレーを食べながら気合いをいれる。
大切な人を助ける為に。友人を助ける為に