47 名前::2010/03/14(日) 22:22:44.03 ID:5ocRh4Cs0

事件は、非公開にされていた感想&点数公開の時に起こった。

川;゚ -゚)「うーむ……点数はそこそこだが、上位には食い込めなかったな」

私の作品の評価は、悪くはなかったがよくもなかった。
曰く、よく書けているけど意外性がない。以上。

川;゚ -゚)「やっぱり宇宙人を入れた方がよかったかな?」

なんて思いつつ、点数欄を見ていて

川 ゚ -゚)「うわ! 何だこれ!」

ものっそい赤を見つけた。
(赤は総点数がマイナスの場合のみ表示される)

川;゚ -゚)「マイナス112点ってどんだけだよ」

その作品は、予想通り――

( ><)作 『勇者VS萌え魔王!!!やべぇ魔王さん超可愛いへん!』

52 名前::2010/03/14(日) 22:26:16.38 ID:5ocRh4Cs0

・感想欄

感想を書く気にもなれません。基礎からやり直した方がいいのでは?
一行目で読むのをやめた。
これは……過去最低レベルです。文章のルールを学んで下さい。
人に見せていいものではないね。
品評会の面汚し。評価に値せず。
これはマイナスでしょ。
作者のためを思ってマイナス。読んでないけど。

川;゚ -゚)「あーあーあー、やっぱ皆そうなるわな」

誰もが予想した通り、マイナス祭りである。
恐らく、今、この瞬間も他の書き手は「やっぱり」と笑っているだろう。

ま、厳しいようだが仕方ない。
品評会は、批評しあって切磋琢磨するのが目的だ。
可哀相だが、同情は出来ない――っと。

一つだけ
たった一つだけ、+点数をつけている人物が、いた。

川;゚ -゚)「え?」

それは

从 ゚∀从「面白かった」

京アンの――作者。ハインだった。
57 名前::2010/03/14(日) 22:29:11.51 ID:5ocRh4Cs0

川;゚ -゚)「え? え? 嘘だろ?」

私は何度も見直す。
偽物か? 自作自演か?
IPを確認する。

川;゚ -゚)「……ホンモノだ」

私は慌てて、品評会専用雑談チャットをクリックした。

(;'A`)「おい、どうなってんだ?
     あのハインさんが、あんな作品に点数入れてるぞ」

ζ(゚ー゚;ζ「何かの間違いじゃないの? 誰か聞いてみてよ」

ξ;゚听)ξ「どうやって? メールアドレスは公開してるけど
      何を送っても返事は返ってこなかったのよ?
      私なんて、三通もラブメール送ったのに!」

いや、それは迷惑メールだろう。
60 名前::2010/03/14(日) 22:33:32.72 ID:5ocRh4Cs0

チャットは、その話題でもちきりだった。

同じマンションから接続した偽物説。
感想を入れる作品を間違えた説。
超天才ハッカーのイタズラ。
これぞリアルミステリー。

などなど、色々な案が出たし、
メールで問い合わせた人もいたが――結局、答えがでないまま、
品評会の最後、チャットでの批評会へともつれこんだ。

ξ゚听)ξ「デレさんの描写は綺麗だったわ。けど、後半が少し駆け足気味かな?」

ζ(゚ー゚*ζ「そっかぁ。書いてる時は気付かなかったなぁ」

('A`)「僕はいいと思いましたよ。やっぱり文章力は大事ですね。
    ビロードは論外ですけど」
ξ゚听)ξζ(゚ー゚*ζ「あははは」
62 名前::2010/03/14(日) 22:37:05.43 ID:5ocRh4Cs0

ひとまず、くだんの件に関しては
『何らかの間違い』という事で落ち着いたようだった。

が、私は納得していなかった。

川 ゚ -゚)(なんでだろう……?)

間違い、と片付けるのは簡単だ。
だが、私はハインさんは、間違いでも何でもなく、純粋に

从 ゚∀从「面白かった」

そう、評価したのではないかと思った。

ちなみに、品評会では、作品の投稿者は批評会に絶対参加だが
参加しなかった人々に関しては、単発感想だけでオーケーとされていた。

以降、ハインさんは相変わらず感想返しもレス返しもしなかったし
他の作品に感想を書いたのは、それが最後だった。

65 名前::2010/03/14(日) 22:40:56.92 ID:5ocRh4Cs0

それから半年が過ぎた。
京アンは絶賛の中、完結を迎えた。

ζ(゚ー゚*ζ「感動しました……ああ、次回作がたのしみ!」
ξ゚听)ξ「ハインさんはパラパラの星です! 私の目標です!」
('A`)「これは書籍化いけます!」

そんな声があがっても、ハインさんは際後まで無言を貫き通した。
あとがきも無し。
次回作はまだかまだかと皆待ちわびたが

結局、それからハインさんはパラパラには戻ってこなかった。
ちなみに、ビロードもあきたのか、パラパラから姿を消していた。

輝かしい天才を失ったパラパラは、まるでキャンプファイヤーの
火が消えたかのように、どよん、とした空気になってしまった。

ξ゚听)ξ「ああ、ハインさん戻ってこないかなあ。不作ばっかり」
ζ(゚ー゚*ζ「新作は文章力いまいちなのばっかだしー」
('A`)「僕達がしっかり育ててあげないとね」


66 名前::2010/03/14(日) 22:44:42.79 ID:5ocRh4Cs0

私も、パラパラから少し距離をとっていた。
書く事が嫌になったわけじゃない。
ただ、パラパラの何ともいえない形式感に、飽き飽きしたのだ。

川 ゚ -゚)「暇だ」

私は漫画を放り投げて、パソコンのスイッチを入れる。

川 ゚ -゚)「あー……そういえば、ビロードの作品。
     あれ、ちゃんと読んでなかったな」

ふと、そんな事に気付き、私はパラパラの祭り特設ページに飛ぶ。
私はビロードの作品を読み始めた。

川 ゚ -゚)「相変わらず酷いな」

そこには、小学生の落書きのような小説もどきがあった。
読み進める。

川 ゚ -゚)「……」

カチリ。

川 ゚ -゚)「……ぷっくく」

カチリ。

川 ゚ -゚)「こ、これは……ぷぷっ」
68 名前::2010/03/14(日) 22:47:33.98 ID:5ocRh4Cs0

川 ゚ -゚)「だははははっ! こ、こいつ馬鹿だ! ほんきで馬鹿だ!」

私は声をあげて笑ってしまった。
あまりにもあり得ない展開。
バカバカしいやり取り。

なんというか、全力で馬鹿をやっている。
そんな小説もどきだった。

川;゚ -゚)「いや……なんだこりゃ。ほんきでやばい。
      乳首プテラノドーンおぉーんってレベルじゃないぞ」

確かに、この作品は色んな意味で酷い。
しかし……

川 ゚ -゚)「文章だけで人を笑わせるとは……」

あれ? これって、凄くないか?

私は他の作品をもう一度読み直した。
描写はうまい。
オチも伏線も申し分ない。破綻もしていない。

けど

川 ゚ -゚)「物足りない……」
70 名前::2010/03/14(日) 22:49:18.18 ID:5ocRh4Cs0

この作品も。

川 ゚ -゚)「高得点だが、今見ると別にって感じだな」

この作品も。

川 ゚ -゚)「描写が重すぎて、逆にストーリーがわかりにくい」

この作品もッッッッ! あれも、これもッッッ!

川 ゚ -゚)「……」

――ああ、なるほど。

私はそこでようやく理解した。

この品評会の点数は、作品の面白さではなく――

川 ゚ -゚)「文章力に、つけられているんだな」

72 名前::2010/03/14(日) 22:52:42.37 ID:5ocRh4Cs0

思い返してみれば、パラパラは

『基礎の文章力を鍛える事こそ創作の近道』
『正しい小説作法こそ至高』
『破綻なくまとめてこそ一人前』

そんな暗黙の価値観が、蔓延っていた。

誤字を出せばぐちぐち注意される。
突っ込みどころがあればすぐ文句をつけられる。

だから皆、描写や設定の整合性にこだわった。
だから品評会で、ビロードの作品は読まれもしなかった。

川 ゚ -゚)「けど……」

違うんじゃないか?
小説っていうのは、決まり事とか整合性とかも大切だけど、何よりも

面白いか否かが、重要なんじゃないのか?


73 名前::2010/03/14(日) 22:54:44.20 ID:5ocRh4Cs0

私はハインさんにメールを送る事にした。
別に返信を期待しているわけじゃない。

ただ、伝えたかったのだ。

川 ゚ -゚)「ハインさんへ」

余計な言葉はいらない。ただ、一言だけ

川 ゚ -゚)「ビロードの作品、私も面白いと思いました。ていうかリアルに笑った」

かなり砕けた文体で、私はメールを書き送信した。

何だか、すがすがしい気分だった。

肩にのしかかっていた重荷を、ようやくおろせた気分だった。

77 名前::2010/03/14(日) 22:57:12.70 ID:5ocRh4Cs0

ピコン。

川;゚ -゚)「え? へ、返信がきたぞ?」

私は慌ててメールをチェックする。
ハインさんからだ。

川;゚ -゚)「一体何が……?」

初めてのコンタクトである。
私はごくりとつばを飲み込み、覚悟を決めてメールを開いた。

そこには、URLが張り付けられているだけだった。


件名:無し
本文:
http://yutori.2ch.net/news4vip/

80 名前::2010/03/14(日) 23:00:34.21 ID:5ocRh4Cs0

川;゚ -゚)「何だろう? このURL……」

私はウイルスか? と一瞬疑ったが、それでも好奇心の方が勝り
URLをクリックした。
すると

川 ゚ -゚)「うわっ、何だこれ。見にくっ!」

そこは……恐らく、掲示板だった。
幾多ものトピックが立ち並んでいた。
しかも、どのトピックも

うんこが語りかけてきたんだけど(3)
夜行バスだが乗客がうんこもらした(322)
1000いったら妹のおっぱいうpします(1001)

川;゚ -゚)「荒らしばっかり……」

これでもか! というほど荒れている。
管理人は何をやっているんだろうか?
……というか、ハインさんは何故、こんな掲示板のURLを?
82 名前::2010/03/14(日) 23:02:56.25 ID:5ocRh4Cs0

川 ゚ -゚)「……ハインさんの事だ。何か意図があるに違いない」

私はそれから、その掲示板について調べてみた。
どうやら、ここは悪名高い掲示板『2ちゃんねる』の
ニュー速VIPという掲示板らしかった。

2ちゃんねる、というのは名前だけ聞いた事があった。
何でも、犯罪者とかがいっぱいいるヤバイ掲示板だとかなんとか。

川;゚ -゚)「ハインさん、何故、そんなところに私を……?」

とりあえず、グーグルでVIPについて調べた。
すると

川 ゚ -゚)「まとめ、ブログ……ニャー速……?」

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