1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/04(金) 00:48:24.64 ID:FGIZM5UQ0


( ^ω^)「はじめましてだお!内藤ホライゾンと言いますお。ブーンと呼んでほしいお」




2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/04(金) 00:49:41.82 ID:FGIZM5UQ0

転校初日の初めての休み時間、ブーンの机を中心に数人の人だかりが出来る。
やや小太りな体型と平均を若干下回るその容姿から、一目見て彼への興味を
失った生徒もいたが変わり映えの無い毎日を送る高校生にとって、転校生と言うものは
やはり大きな興味の対象だった。


男子A「内藤君ってさ、前はどこ住みだったの?」

( ^ω^)「東京だお。お父さんがこっちに転勤になったから家族で引っ越してきたんだお」

男子B「マジ?東京?え、ずっと東京?」

男子A「てか出身はどこなの?」

( ^ω^)「? 東京だお。今までずっと東京に住んでたお。あ、東京って言っても都心からは
      大分外れてたしこっちと大差ないお」


東京と言う地名は地方に住む学生にとってはやはり特別なものなのだろうか?
ブーンが以前住んでいた街は彼が言う通り郊外のいまいちぱっとしない住宅街だったのが、
転校初日のクラスメイトからの質問攻めというシチュエーションもあり、彼は少し得意気な気分になった。



3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/04(金) 00:50:43.29 ID:FGIZM5UQ0


男子A 「あ…そう。じゃあさ、何でそんな喋り方なの?」


ああ、そう言う事か。彼らの質問の意図に気付いたブーンは少し気恥ずかしくなった。

( ^ω^)「これは方言じゃないおw。子供の頃からのクセなんだお。
      自分でもなんでか分からないけどこう言う喋り方になっちゃうんだお」

物心がつく前からブーンはこの独特の喋り方をしていた。
もし彼を良く知る人間が、正しい日本語を喋る彼を見たらその誰もがこう思うだろう
『こんなのブーンじゃない』と。

勿論今までブーンが出会った人間の中には彼の喋り方に戸惑いや嫌悪感を感じる人間も
いたのだが、彼は全く気にしなかった、と言うより出来なかった。
周囲の人間の心情に鈍感、いわゆる空気が読めない。と言うのが彼の長所でもあり短所でもあったのだ。

現に今も気付いていない。



4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/04(金) 00:51:54.39 ID:FGIZM5UQ0

男子A「…へー、変わってるね。名前も変わってるけど」

( ^ω^)「お、僕の名前かお。そうなんだお、親に理由を聞いてもVIPがどうとか
      訳の分かんない事言って教えてくれないんだおwwww」

男子B「ふーん」

( ^ω^)「あ、でも僕を呼ぶ時はブーンって呼んでほしいお。これも子供の頃からのあだ名なんだお」

男子A 「……」


ブーンはまだ気付かない。


( ^ω^)「そうだ!あだ名の由来なら知ってるんだお。僕はいつもこうやって…」

ブーンは喋りながら席を立ち廊下に出た。


⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーン

男子B「うわ……」


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/04(金) 00:52:54.14 ID:FGIZM5UQ0


( ^ω^)「いつもこうやって走ってるからブーンって呼ばれてたんだお!」


廊下の端から端までを全力疾走したブーンが息を切らしながら教室に戻ってくると、
彼の机の周りにもう人影は無かった。


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/04(金) 00:56:16.29 ID:FGIZM5UQ0


昼休み


( ^ω^)「木下君」

ブーンは先程の休み時間の時に彼に一番初めに話しかけてくれた生徒に話しかけた。

( ^ω^)「よかったら木下君達と一緒にお弁当を食べさせてほしいお」

木下は周りの数人と顔を見合わせてから、やや申し訳なさそうに言った。

木下 「内藤君、わりぃ。俺ら内輪だけでちょっと大事な話するからあんま他人に聞かれたくないんだわ」

( ^ω^)「…そうかお、残念だお。じゃあまた今度お願いするお」

木下 「ああ、また今度な」


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/04(金) 00:58:08.53 ID:FGIZM5UQ0

ブーンは自分の席に戻って弁当を広げた。休み時間に彼が話をした生徒は皆木下と一緒の
グループだったし、一度相席を断られてすぐまた他のグループに、と言うのもなんだか少し
気が引けた。一人で食べ始めればもしかしたら誰かが一緒に食べようと誘ってくれるかも
知れないとも期待したが、結局ブーンが弁当を食べ終わっても彼に話しかける生徒は誰もいなかった。

( ^ω^)(ま、初日はこんなもんかお)

転校生はきっとチヤホヤされるに違いない、と言う彼の前日までの予想とはかけ離れた結果だったが、
自分の妄想癖は今に始まった事ではなかったので彼は大して気にしなかった。


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/04(金) 01:00:44.81 ID:FGIZM5UQ0


学校が終わり、ブーンが自分の部屋で制服を着替えていると携帯にメールが入った。
差出人は前の学校のクラスメイトのドクオからだった。

『うぃーす。元気でやってるか?確か今日から学校だったよな。お前がいなくなってツンが寂しそうしてかはたな』

( ^ω^)「…してかはたな?なんかメールの最後が変だお」



15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/04(金) 01:01:55.44 ID:FGIZM5UQ0

しばらく液晶を見つめていると今度はツンからメールが来た。

『今ドクオから訳の分かんないメールが来たかも知れないけど無視していいからね!』

( ^ω^)「なんだ、そういう事かお」

学校、もしくは下校途中なのだろう。ドクオがツンをからかうようなメールを打って、
ツンが慌ててそれを止めている、もしかしたらショボンも一緒かも知れない。
数日前まで幾度と無く繰り返してきた仲間達との日常の風景が、ブーンの頭に鮮明に浮かんできた。

(;^ω^)「きっとドクオは今頃ツンにフルボッコされてるおw」

ブーンは苦笑しながらドクオとツンにメールを返信した。



16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/04(金) 01:05:30.39 ID:FGIZM5UQ0


転校して一ヶ月、ブーンを取り巻く状況に変化は全く無かった。


登下校や休み時間に話をするような友達もいないし、弁当も相変わらず一人で食べていた。
何度か木下達のグループに相席をお願いしたのだが、彼等の言う『内輪だけ大事な話』
というのが全く終わる気配を見せないので、ブーンもその内に頼むのをやめた。

「ウザくない?」

最後に頼みに言った時、どこからか小声でそんな言葉が聞こえたような気がしたが、
声の主を確かめる気にはなれなかった。

ブーンは機会があれば積極的にクラスメイトに話しかけた。

けれどどうも勝手が違う。会話が続かないのだ。ブーンは話題を変え、口調を変えて
何度もコミニュケーションを試みたが、返って来るのはいつも「うん…」とか「へー」とか
曖昧な相槌ばかりだった。


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/04(金) 01:07:11.27 ID:FGIZM5UQ0

( ^ω^)(…なんか楽しくないお)

今までのブーンにとって、友達と言うものはまるで水や空気のような存在だった。
気付けばいつもそばにいる。学校でも外でも、自分がそれを望まなくても当たり前の
ように周りには友達がいて、いつも笑ったり泣かされたりバカをやったりしながら
日々を過す、それが今までブーンが暮らしてきた世界だった。

それはある人間から見ればとても恵まれた環境だったのかも知れない。
ブーンにとっては水や空気のような存在であっても、それを得られず羨望と
劣等感に苦しむ人間もいる。しかし今のブーンはそれに気付く事はない。
ただ漠然とした違和感だけが彼の中で少しづつ膨らんでゆくのだった。

( ^ω^)(ドクオ達はどうしてるかお…)


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