- 236 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:10:47 ID:SeXvLi8s0
- act-6 Scotch
耳を劈く轟音が戦場のあちらこちらで響き渡る。
ある所では大地に大きな穴が穿ち、ある所では無数の銃弾に捉えられたシベリアのMD・アーリータイムズが踊るようにして倒れ、遅れて爆発する。
またある所ではアーリータイムズとハイクレイドが銃剣で鍔迫り合いを行い、次の瞬間には横合いから飛んできた弾丸の雨を受け、ハイクレイドが爆散、距離をとろうとしたアーリータイムズも巻き添えをくらい吹き飛ばされる。
一日前までは緑豊かな大地であった平野は今では見る影も無く、草木は燃え、大地には数えきれない弾痕が残り、破壊された戦車やMD等の兵器が無数に横たわっていた。
そんなラウンジの南にある、ベルン渓谷から少し北のバルク平野は、ラウンジとシベリア、両軍の戦力が拮抗していた。
- 237 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:13:05 ID:SeXvLi8s0
- 「予想よりも数が多いか……」
遥か北側、銃弾や砲撃が飛んでくる危険のない位置にある地上戦艦で、ラウンジの指揮官が戦況を眺めつつ重々しく口を開く。
「現在、中央戦線は拮抗、右翼は押し上げてはいますが、左翼が少々押されぎみです」
即座に戦況を副官が報告する。
「中央にいる第8、9独立機甲小隊を左に回せ。余裕のある隊から補給に向かわせろ。どうせ向こうも増援待ちだ。一気には攻めてこない。それと地嵐がおさまり次第後方の砲撃部隊と前線のMD部隊を連携させろ」
「……やれやれ、始めてからもう9時間が経つのか、この分ではベルン渓谷まで敵を退かせるのは何時の事になるやら」
ちらりと時計を見つつ、指揮官は溜め息を吐いた。
「艦長」
その直後、オペレーターが指揮官に呼びかける。
「秘匿回線より艦長宛てに通信が入っています、どうしますか?」
「回してくれ」
- 238 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:15:10 ID:SeXvLi8s0
- 一切の逡巡も無く指揮官は応える。遅れて指揮官の座る艦長席のコンソールに一人の人物が映った。
(゚、゚トソン「こちらはラウンジ元帥府直属、Scotchです」
コンソールに映ったのは恐らくまだうら若いだろう黒髪の美しい女性だった。
「スコッチ……だと?」
美しい女性の発した言葉に指揮官は驚きを隠せずに聞き返す。
(゚、゚トソン「肯定です。元帥府からの通達で援護に参りました」
女性は事務的に受け答えをする。
「それは、有り難いが……参ったと言うが、君達は何処に居るんだね?」
艦長の疑問は最もであった。レーダーにはそれらしき光点は映っていない。
現在地嵐の為、精度の高いレーダーはその役目を十分果たせておらず戦況の確認は周囲の部隊間で連携を行った報告で補っていた。
その為、彼らScotchが何処に居るか、全く分からないからだ。
- 239 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:16:10 ID:SeXvLi8s0
- (゚、゚トソン「いえ、厳密に言うとまだ戦場に到着していませんが、直ぐに到着いたします。現在の戦況を教えていただけませんか?」
顔色一つ変えず、機械的にコンソールの向こうの女性は指揮官に問う。
「待ってくれ、君達は一体今どこに居るんだ?」
要領の得ない女性の回答に指揮官は痺れを切らし、声を荒げる。
(゚、゚トソン「現在地ですか…その問いに答えるのは少々難しいですね」
(゚ー゚トソン「高度8000メルトに位置する、と申し上げておきましょうか」
*
層雲を斬り裂き、超高速で空を駆け抜ける一機の輸送艇の中に、二機のMDが鎮座していた。
- 240 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:16:51 ID:SeXvLi8s0
- ( ・∀・)「ははっ、聞いたかモナー」
鎮座するうちの一機のMDの薄暗い搭乗席でリラックスしていた男は声を上げて笑い、すぐ横で同様に待機しているだろう相棒のモナーへとヘッドセット越しに喋りかける。
( ´Д`)「聞いてたモナ、トソンちゃんもったいぶらずに輸送機で向かっていると言えばいいのに……」
嘆息を付きつつ、モナーは言葉を返す。
( ・∀・)「そうか?言うようになったと褒めてやりたいくらいだが……」
( ´Д`)「やめるモナ、そもそもモララの教育が変」
(゚、゚トソン「バルク平野の指揮官と連絡がとれました」
その時、コンソール越しに黒髪の美しい女性、トソンからの通信が入った。
二人はヘッドセットの無線を切り、コンソールからの通信に対応する。
( ・∀・)「あぁ、聞いていたよ。トソン、中々華麗なやり取りだった。それでこそScotchだ」
( ´Д`)「違うモナ、トソンちゃん、ああいう場合は」
(・∀・ )「黙ってろたぬき顔」
モナーの言葉を男は中傷と共に遮る。
- 241 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:17:41 ID:SeXvLi8s0
- ( ・∀・)「それで?」
(゚、゚トソン「はい、現在の戦況のデータを何とか入手しました。そちらに転送します」
トソンの言葉と同時に二人のMDに戦況のデータが送られる。
( ´∀`)「思ったより苦戦している感じだね」
別の画面に表示させた戦況を見つつモナーは気楽に呟く。
( ・∀・)「むしろもうちょっと手こずってくれないと援護のし甲斐がないだろ」
( ´Д`)「そう言う危険思考、本当にやめるモナ」
男の少々偏屈な考え方を危惧し、モナーは溜め息混じりで注意をする。
( ・∀・)「何でだ?この程度の戦況じゃ、俺達の援護はもったいない位だろ?」
自信満々、余裕綽々に男は言葉を返す。
彼にとって膠着したこの戦況は援護に値しないもののようだ。
(゚、゚トソン「特佐」
二人のやり取りを聞いていたトソンは端的に言葉を挟む。
( ・∀・)「あぁ、すまない。そうだな……ベルン渓谷から約4キロメルト北付近の地点で降下しよう」
- 242 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:18:47 ID:SeXvLi8s0
- 男の示す降下地点はラウンジ軍がいる場所ではなく、その反対、シベリア軍が陣を構えるすぐ南だった。
(゚、゚トソン「了解しました。しかし現在のダルモアUの速度では降下シークエンス前に通り過ぎてしまいます。一度迂回して降下ポイントに入りなおしますが宜しいですか?」
男の無謀とも言える言葉に対し、トソンは淡々と言葉を返す。
( ・∀・)「任す」
(゚、゚トソン「了解しました。では降下シークエンスにはいります。予定では92秒後に降下となりますので至急降下準備に入ってください」
機械的に指示を送った後、トソンは通信を切った。
直後に輸送艇−ダルモアUは斜め下に向かう。
恐らく高度を下げているのだろう。
( ・∀・)「やれやれ、うちのお姫様はどうしてあんなに頑ななんだろうね」
鎮座する自機を器用に立ち上がらせつつ、男は再びヘッドセットを用い、モナーに話しかける。
( ´∀`)「でも、大分マシになったモナ。配属直後なんて、一言も喋らなかったからね」
( ・∀・)「あー、お前喋りかけて無視されてたもんなっ」
( ´Д`)「あの時は久々にショックを受けたモナ」
( ・∀・)「まぁ、一説によればお姫様は極度のテレ屋さんらしいしな」
( ´∀`)「その情報の信憑性は高いモナ」
- 243 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:20:13 ID:SeXvLi8s0
- ( ・∀・)「へ?なんでよ」
( ´∀`)「だいぶ前だけど、基地の内勤の奴がトソンちゃんに告白したらしいモナ」
( ・∀・)「ほうほう」
( ´∀`)「そしたら、急だったからか、トソンちゃん顔を真っ赤にしてどもりながら走って逃げてこけて、起き上ってまた走って逃げたらしいモナ」
( ・∀・)「へー、知らなかった。お姫様の意外な一面みたりってか」
両手に専用の武装を持たせ、男とモナーは降下ハッチ前で会話に花を咲かせる。
気楽に話すその内容は、とても今から戦場に向かうものの会話内容ではなかった。
(゚、゚トソン「今から25秒で降下ポイント手前に入ります。直後に急激に減速しますが、そのままの状態ではダルモアUが墜落してしまうので30秒後にアフターバーナーを使い、一気に制御をとりつつ戦域を離脱します」
(゚、゚トソン「お二人はその間に降下をお願いします」
再びトソンから通信が入り、降下ハッチが開く。
覗く光景は未だ緑豊かな大地。
- 244 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:21:54 ID:SeXvLi8s0
- ( ・∀・)「さーて、お仕事の時間だ」
( ´Д`)「全く、毎回無茶な任務だモナ」
( ・∀・)「無茶?モナー俺を誰だと思って居やがる」
モナーの溜め息混じりの愚痴に男は心外だと言わんばかりの声を上げる。
( ・∀・)「『勝利を約束された男』、『太陽の道』、モララー=サンロードだぞ?この程」
( ´∀`)「グレンフィディック、モナー=ヒートハート、出るモナッ!」
モララーと名乗った男の声を最後まで聞かず、モナーは機体を降下させる。
(;・∀・)「こら、最後まで聞けよっ、ああもうっ」
嘆きの声を上げつつコックピットの頭上を仰いだモララーはすぐさま前方を見やる。
( ・∀・)「グレンリベット、モララー=サンロード、出撃するっ!」
*
突如、戦場に現れた二機のMDに気が付いたのはシベリア軍の後方を護るMD部隊だった。
( `ハ´)「何……だ?」
余りにも突然のその登場は、MD部隊の隊長を少なからず驚かせた。
- 245 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:22:36 ID:SeXvLi8s0
- こんなすぐ傍にいながらレーダーには映っていない。
二機の増援など聞いていない。味方なのか。
そもそも一体どのようにしてこの場所に現れたのか。
MD部隊の隊長の心の中を様々な疑問が一気に吹き上がる。
( 1`ハ´)「隊長…?」
同様に部下も驚きを隠さずに声を上げ、自分の指示を待っている事に気付いた。
( ;`ハ´)「そこの二機、所属を言えっ」
無線のチャンネルを探すがどれも眼前の二機と合う事がなく、隊長はオープンチャンネルで呼びかける。
隊長は反応を待ちながら二機を素早く観察する。
二機のMDは其々とても特徴的な形状をしていた。
- 246 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:23:42 ID:SeXvLi8s0
- 一機は純白を基調に随所で蒼天を思わせる綺麗な青を散りばめたカラーリング。
体躯は非常に華奢で、これ程華奢なMDは戦場でも机上でも見たことが無い。
両手には大型の二丁ライフルの様なものを持っていた。
専用装備なのか、ライフルのカラーリングも機体と同様であった。
背部には自機の全長ほどある何かを背負っている。
もう一機は漆黒を基調とし、鮮血を思い起こす深紅の赤が所々でアクセントとして入っている。
体躯は非常にがっしりとしており、悪く言えば鈍重にとれる見た目であった。
肩部、脚部には−恐らくはミサイルの−射出ポッドが付いている。
両手にはガトリング砲を持ち、背部には判別出来ないが、別形状の長物の武装を左右に背負っている。
更には後腰部に円状の何かを装備しているようだった。
- 247 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:25:04 ID:SeXvLi8s0
- 「所属か、そうだな。我々はラウンジ元帥府直属、特殊機甲分遣隊Scotchだ」
純白の機体からオープンチャンネルで気さくに通信が入る。
( ;`ハ´)「なっ!スコッチだとっ!?」
ラウンジの切り札であり最強のMD部隊Scotch。
国力は隣国に遥かに劣るラウンジ共和国が前大戦において戦勝国と成り得たのはSctochの非凡な活躍の結果といっても過言ではない。
ただのMD部隊としての機能を大きく超えたその部隊は、時に敗戦必至の戦場を覆し、時に単独で敵戦線に穴をあけ、時に敵軍の名だたる武人を複数屠ってきた。
彼らの降り立つ戦場に負けは無しとまで言われる程であった。
「うん、そう。出来れば降伏してほしいんだけど、そうはいかないんだよなっ、やっぱり」
すでに純白のMDの言葉を聞かず隊長は無線で本隊に連絡を送る。
次いですかさず純白と漆黒の二機のMDへと銃撃を見舞った。
横に並列する部下5名の機体からも同様に銃弾が見舞われる。
その反応を見越していたのか、いつの間にか純白の機体の前に立ちはだかった漆黒の機体が歪む。
否、漆黒の機体を中心に半径数メルトの空間が歪んでいた。
彼らが放った銃弾の嵐は漆黒の機体に到達する事無く不自然に逸れていく。
- 248 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:26:32 ID:SeXvLi8s0
- 「今の射撃は戦闘開始の合図ととらしてもらおう。貴官らの善戦を祈る、では」
オープンチャンネルでの通信をきった直後、漆黒の機体の後ろから飛び出した純白の機体が両手に持つライフルを怪しく光らせる。
その刹那、シベリアの隊長機の両脇にいたMDアーリータイムズが音も上げずに崩れ落ちた。
隊長の本能が危険を察知し、回避運動をとろうとした瞬間、隊長の意識は消失していた。
*
(;´∀`)「いつもいつも、無駄に呼びかけたり、応対するの、止めるモナっ!!」
純白のMD、グレンリベットの前に立ち、敵機の銃弾を防いだ漆黒のMD、グレンフィディックからモナーは鋭い叱声をモララーへと浴びせる。
( ・∀・)「怒鳴るなよ、さぁ夜会の始まりだぜ、モナー」
モナーの叱声をあしらいつつ、モララーは周囲を見渡す。
次々とこちらに集まり始めるシベリア軍を睥睨しつつ、モララーは1つのボタンを押し、パスコードを素早く入力した。
瞬時にモララーの乗る機体‐グレンリベットが反応し、出力ゲージが跳ね上がる。
遅れて超高音がコックピットブロックに響き渡った。
- 249 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:28:20 ID:SeXvLi8s0
- 動力炉にある、高光度エネルギー体である[Fusiansan]がうねりを上げて回転し始めたのをモララーは実感しつつ操縦桿を捌く。
( ´∀`)「今は昼間だモナ」
モララーの眼前でモナーの乗るグレンフィディックは腰だめに両手のガトリング砲『アンバサター』から弾丸をばら撒き始める。
その無慈悲な鉄塊の飛来を受けた数機のアーリータイムズが紙屑のようにひしゃげ、穴があき、爆散していく。
(;・∀・)「言葉のあやってやつだろ、真面目に突っ込むなよ」
機内に膨れ上がる大量のエネルギーをモララーはグレンリベットの手に持つ二丁エネルギーライフル-『グレイヴァ』から射出させる。
こちらに向かってくるシベリアのMD、アーリータイムズの手に持つMD用機関銃の射程外から射撃を行い、一機、二機と素早く撃破をしていく。
( ´∀`)「モララが真面目じゃないからモナーが真面目にするしかないモナ」
そう返しつつ、モナーはアンバサターを前方に構え、弾丸の雨を放出させる。
- 250 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:30:02 ID:SeXvLi8s0
- ( ・∀・)「俺はいつだって真面目だっつーの、モナっ三時!」
モララーはグレイヴァで次々と敵機を撃墜しながらちらりとモナーの乗るグレンフィディックを見やる。
すると、モナーの右横の方から6機のアーリータイムズが手に手にミサイル砲を持ちモナー狙っていた。
寸での所でその存在に気付いたモナーはRBを起動させ、見た目とは裏腹に素早く回避運動に入る。
射出された4発のミサイルを大きく旋回しながらそのロックを外していくが、逆方向から迫っていた2発のミサイルがグレンフィディックを捉える。
直後に爆音が響き渡り、ミサイルが爆発。
遅れて、複数のミサイル銃弾がグレンフィディックに殺到し、爆発と爆煙でグレンフィディックがいた場所は見えなくなる。
( ・∀・)「おいおい、ぽかるなよ」
すでにグレンフィディックから目を離し、左右と正面からの三方向から放たれる銃火を俊敏な機動で回避しつつ、事も無げに応射し、敵を破壊しながらモララーはモナーへと言葉を投げる。
( ´Д`)「ぽかってないモナ、グレンフィディックは元々回避運用は考慮されてないモナ」
爆煙の中から現れたのは全くの無傷なグレンフィディックであった。
機体にミサイルが直撃する直前にグレンリベット同様に機体内の動力炉に搭載されてある[Fusianasan]を起動させ、その高濃度なエネルギーを使いグレンフィディックの半径数メルトの範囲の空間に干渉し防御壁を展開。
爆発エネルギーと衝撃を相殺し、銃弾は強力な斥力により逸らしていた。
- 251 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:31:04 ID:SeXvLi8s0
- (#´Д`)「でもちょっと焦ったモナ、お返しモナッ」
無傷で現れたグレンフィディックに、ミサイル砲を持ったMD部隊は数瞬動きが止まる。
その瞬間を逃さず、脚部のミサイルポッド『アウォード』を一斉に射出させる。
6機のMDへと迫るミサイル群の弾頭が同時に開き、その中から更に複数の小型ミサイルが現れ、シベリアのMDへと到達する。
重なる爆発の中を容赦なくアンバサスターを掃射させ、モナーはその結果をみる事も無く別の敵機へと向き直る。
爆煙が晴れた後に残ったのは原形を留めていないMDの残骸だけであった。
( ・∀・)「モナー、きりが無い。『フィンドレーター』を使う」
既に十数機を撃墜していたモララーは後方へと大きく跳躍する。
その動きを見てとったシベリアのMDの一部隊が空中のグレンリベットへと銃弾を放つが、モララーはクイックブースターを作動させ、右横へと空中でグレンリベットを移動させる。
(;´∀`)「痺れをきらすのが早いモナ、もうちょい数を減らしても」
( ・∀・)「飽きた、つまんない」
モナーが諌めようとするが、有無を言わせず文句を放ち、モララーはモナーを従わせる。
( ・∀・)「押されているのは左翼だったな」
- 252 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:32:42 ID:SeXvLi8s0
- 右上の戦況を示す画面をちらりと見やり、モララーは機体を西側へと高速で移動させる。
その動きにシベリア軍はもはやついてはいけなかった。
( ´∀`)「ちょっと早いモナ」
動きについていけないのはシベリア軍だけでは無く、モナーの乗るグレンフィディックもどんどん離されていく。
( ・∀・)「大丈夫大丈夫、早く追いついてくれ」
モナーへと気楽に言葉を返しつつモララーはグレンリベットの背部にマウントしてある高濃度エネルギー体射撃超長距離砲『フィンドレーター』を右脇から回転させ前方へと突き出させる。
左手にもつグレイヴァの銃床部分を収納させ、フィンドレーターの前方部分へと装着させ、フィンドレーター中央部のコネクタと連結させる。
作業が終わると次いで右手のグレイヴァを後部に装着させ、中央のコネクタと連結させた。
( ・∀・)「エネルギー装填開始、グレイヴァを繋いでいるから、流石に装填速度早いけど……それでも遅いな」
グレンリベットを腰だめの構えにさせたまま、モララーは計器を見る。
フィンドレーターへのエネルギー充填率はまだ10%にも満たない。
( ´Д`)「全く……先に先にと急ぎ過ぎモナ………どんな感じ?」
ようやく到着したモナーは開口一番に愚痴を放つ。
( ・∀・)「まぁそう言うなよ、まだ充填率が30%も超えてない」
( ´Д`)「おっそ、早くするモナ、機体へのエネルギーカットしろモナ」
- 253 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:34:27 ID:SeXvLi8s0
- (;・∀・)「分かった分かった。……熱いからやなんだよなぁ」
溜め息をつきつつ、モララーはコンソールを作動させ、必要な動作以外の機体へのエネルギー供給をカットし、フィンドレーターへと回す。
すぐさまコックピット内は薄暗くなり、内部の気温が上昇していく。
( ・∀・)「あっちー、66%」
( ´Д`)「あー、敵さん来たモナ……」
モナーの声を聞き、モララーは計器類から目を離し前を見る。
そこにはまだ遠方ではあるが、こちらに向けて急接近してくるMDが複数機存在していた。
( ・∀・)「お前の出番だ。後約35秒、任したよー」
( ´∀`)「気楽に言ってくれるモナね」
そう言うと同時にモナーはグレンフィディックの右背部に背負っていた130ミリメルトロケット砲『バークレイ』を迫り出させる。
ろくに照準もつけず、モナーは勘のみでバークレイを発砲、爆音と共に130ミリメルトの砲弾が超高速で射出されていく。
その強烈な反動はグレンフィディックを襲い、転倒しそうになる所をモナーが卓越した操縦技術で防ぐ。
放たれた巨大な鉄塊は過たず、こちらに向かうMDを捉える。
直撃したMDはその余りの威力に機体の上部を消失させていた。
直ぐ近くにいた遼機は衝撃波を受け、吹き飛ばされる。
( ・∀・)「いつ見ても恐ろしい威力だな、モナー、二時方向、…後15秒」
- 254 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:35:48 ID:SeXvLi8s0
- ( ´∀`)「余裕モナ」
別方向から迫りくる敵MD部隊へとアンバサスターを掃射するが、敵機のうちの何体かはその射撃を回避し、手に持つ機関銃、ロケット弾、ミサイル砲等で各々攻撃をしてくる。
( ´∀`)「残念モナー」
すでにグレンリベットが射撃体勢に入っている為回避運動はとらず、モナーは先程と同様高エネルギー防御システム『タリスカ』を作動させる。
迫りくる死の群れを発生させたエネルギー防御壁で防ぎつつ、敵機を近付かせないために牽制射撃を行う。
( ・∀・)「…充填完了だ。モナー、サンキュ」
モナーへと礼を言いつつモララは頭上から下がってきたスコープへと右目を覗かせつつ、射撃角度を調整する。
−この角度なら自軍に当てずに敵左翼を撃てる。
( ・∀・)(あ、ついでに敵の指揮官も倒しとくか)
先程よりほんの少し射撃角度をずらしてモララーは右手の操縦桿のボタンを押し込む。
モララーの動作に反応したグレンリベットは瞬時に右手に握るフィンドレーターと接続されたグレイヴァのトリガーを引いた。
供給された[Fusianasan]のエネルギーがフィンドレーター内で高密度に圧縮される。
うねりを上げる長大な銃身から一気にエネルギーの奔流が放射された。
( ・∀-)(1,2……)
二秒を経過した辺りでモララーは銃身を右側へと振る。
( ・∀-)(3,4…)
四秒を経過したところでまた銃身を右側へと振る。
- 255 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 15:47:59 ID:SeXvLi8s0
- 「警告、機体温度が急上昇しています。警告、機体温度が急上昇しています。このままでは機体が自壊します。警告−」
計器は、グレンリベットが耐え得る温度を遥かに上回っていた。
モララーはすぐさまコンソールを片手で操作しつつボタンを1つ押す。
そのボタンに反応し、グレンリベットの体躯は少し変化する。
機体頭部から、銀色の放熱索が展開され、さながらくくっていた長髪が宙を舞うかの様である。機体の肩部、脚部、胸部は冷却スラスターが展開され、機体の放熱を行っていた。
計器を見やると、機体温度が緩やかに下降している。
( ・∀-)「5,6…はいっと」
6秒を少し経過した辺りで、充填してあったエネルギーは全て放出されきった。
眼前に映るのは荒野と化したバルク平野の大地。
[Fsianasan]の高密度エネルギーを利用した射撃は、シベリアの後方から左翼を貫き、その大半のMDを消滅させていた。
( ・∀・)「おーし、これだけやっときゃ後は何とかなるだろ、撤退するぞ、モナー」
( ´Д`)「気楽に言うけど、どうせ殿は僕モナー。大変なのは僕だって分かってる?」
嘆息と共にモナーは愚痴を呟く。
( ・∀・)「ははっ、まぁそう言うなよ、よし、このまま東に廻って消滅した左翼から味方と合流しよう」
そう言うと同時にモララーはグレンリベットのRBを起動させ高速で荒涼と化した戦場を一直線に突き抜ける。
- 257 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 16:14:39 ID:SeXvLi8s0
- ( ´∀`)「はぁ、所で、作戦前に聞いたんだけど、どうやら西方面基地もやばいらしいモナ」
グレンリベットの後を追いながらモナーはモララーに話題を振る。
( ・∀・)「あぁ、何かVIP攻め込んで来てるらしいなー」
( ´∀`)「て事はやっぱこの後はそっちに救援かな?」
( ・∀・)「西方面っていや、今ギコがいるだろ?大丈夫じゃね?」
( ´∀`)「偵察部隊の報告によると戦力差は二倍以上らしいモナ」
( ・∀・)「……えー、俺休みたいんだけど」
二倍さの戦力と聞き、モララーは必ず自分達に増援指令が下ると確信し、溜め息を吐く。
( ´∀`)「まぁ正直、僕もモナ」
同様にモナーも溜め息を吐いた。
( ・∀・)「て言うか、暫くグレンリベットは使い物にならないぜ?」
- 258 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 16:19:35 ID:SeXvLi8s0
- ( ´∀`)「まぁ、先にここを掃討してからだろうからどのみち明日以降モナ」
(*・∀・)「まっ今度こそは攻め立てられて陥落しかけている時に助けに入りたいぜ」
弾んだ声でモララーは不謹慎な言葉を紡ぐ。
(;´∀`)「普通に増援に駆けつけるのが一番モナ、て言うかなんで陥落しかけのシチュエーション?」
モララーの危険思考に呆れかえりながらモナーは疑問を口にした。
(・∀・ )「だって、そっから盛り返したら目立てるしかっこいいじゃん」
( ´Д`)「……」
当然のように馬鹿な事を言う自分の親友であり、上官の言葉を聞きモナーの視界は一瞬暗転する。
( ・∀・)「どうしたモナー?」
そんなモナーの気持など露知らず、モララーは呑気に言葉をかける。
( ´Д`)「今…モナを含めて後3人の将校のサイン集めて、モララーを部隊長から解任する決心をしたモナ」
(;・∀・)「何でだよっ」
- 259 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/09/05(日) 16:20:20 ID:SeXvLi8s0
- ( ´Д`)「自分の胸に聞くモナッ、呪われろこのナルシストッ!!」
精一杯の怒声を返してモナーは溜め息を吐く。
自分の心労はまだまだ続くのだろうと考えると、モナーの口から自然と盛大な溜め息が付いて出た。
‐続く
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