134 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 00:50:35 ID:Iec07IFQ0
Act-5 ドクオとツンデレ

-アンルーク荒原-

ラウンジ公国から西、VIP王国から東、つまり公国と王国の国境に渡り展開されている不毛の大地。

平坦な荒野は多くなく、隆起した大地や風化された岩場、水源が枯渇して久しい渓谷跡等で構成されており、公国−王国間を最短で移動する事が出来るが、地形の険しさからこの荒原の一般人の利用者はほぼ皆無と言えた。

そんな荒原が夕闇に包まれそうな時に岩場を二つの人影が足早に移動していた。

135 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 00:51:34 ID:Iec07IFQ0
('A`)「ここらでいいか、休憩も兼ねてこのポイントで設置しよう」

ξ゚听)ξ「了解」

ドクオは懐中時計を開き、時間を確認すると担いでいた背嚢から通信アンテナを取り出し、器用に組み立てて岩場に設置した。

('A`)「あー、聞こえるか?こちらフォルテ3だ。スタートポイントに到着した」

「こ…らフ……2………す…か……ルテ………」

('A`)「流石にしんどいか、ツン、出力を少し上げてくれ」

136 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 00:52:24 ID:Iec07IFQ0
ドクオの指示に従い、ツンは無言のまま無線の出力を上げる。

「……ま…すか?こち…らフ……ルテ2、聞こ…ますか?フォル…テ3、応答願います。こちらフォ」

('A`)「聞こえてるよ、フォルテ2」

「良かった……フォルテ5も無事ですか?」

出力を上げた為、先程とは違い、徐々に透き通った女性の声、しぃの声が鮮明にドクオの耳に入る。

137 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 00:53:15 ID:Iec07IFQ0
('A`)「あぁ、無事だ。フォルテ1に伝えてくれ、『ピクニックを始める』と」

「フォルテ2了解、健闘を祈ります」

('A`)「まぁ適度に頑張るわ―アウト」

すぐさま通信を切ったドクオは背嚢から地図と角灯を取り出す。

('A`)「ツンも座ってくれ。さて、今いるのは……ここら辺、ここだな。」

その場に腰をおろしながら、ドクオは地図の右側に人差し指を置いた。

('A`)「予定通り俺達はこのまま岩場地帯を抜けて渓谷跡地に入る。」

138 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 00:53:58 ID:Iec07IFQ0
指で左側へと地図をなぞりながらドクオはちらりとツンデレを見やる。

ツンデレは無言のまま真剣な眼差しで地図を見つめていた。

('A`)「もう一度確認しておくが今回の任務は斥候だ。王国第一陣の進軍状況、兵種、速度、規模」

ξ゚听)ξ「任務内容はブリーフィングでちゃんと把握しています。お話はそれだけですか?」

ドクオの言葉を遮ったツンは好戦的な眼差しをドクオへと向けた。

('A`)「…そうだな、じゃあ出発するか……」

139 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 00:54:54 ID:Iec07IFQ0
ドクオは背嚢を担ぎなおす。

顔を上げると既に出発準備が完了しているツンデレがこちらを見ていた。

ξ゚听)ξ「では私が先行します」

そう言うとツンデレは後ろを気にせずに岩場を器用に移動し始める。

(‘A`;)(気まずいぞ……くそっ、柄じゃないってのに。ギコめ、恨むぜこんちくしょう)

溜息を一つ付き、心中で悪態を呟いたドクオはそもそもこの状況になった今回の作戦を振り返った。

140 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 00:55:36 ID:Iec07IFQ0



('A`)

(,,゚Д゚)

(*゚―゚)

( ^Д^)

ξ゚听)ξ

( ><)

141 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 00:56:19 ID:Iec07IFQ0
朝日が未だ地平線から顔を出すか否かと言う早朝、ドクオ達混成科学教導班の主だった隊員はブリーフィングルームへと集合していた。

ドクオは辺りを見回す。

緊急招集で叩き起こされた割に皆眠気を顔に出さずに緊張した面立ちでいた。

一名を除いて。

('A`)(ビロード、目やにと寝癖が酷いぞ)

142 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 00:57:02 ID:Iec07IFQ0
ドクオは目線でビロードに訴えかけるが、ドクオの合図に対してビロードはただただ会釈をするのみだった。

(
'A`;)(いや何恐縮してんだよ……もういいや)

伝わりそうにない事を悟ったドクオはビロードから目線を外し、隣に座っているギコへと小声で喋りかけた。

('A`)「また何かあんのか」

143 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 00:57:48 ID:Iec07IFQ0
(,,゚Д゚)「分からん、だが昨晩は上層部の主だった奴らが遅くまで会議をしていたみたいだから…まぁ、ボヤではないだろうな」

嘆息と共に小声でギコは返す。

('A`)「ごたごたしてんな、何かの前触れとかじゃなきゃいいが…」

(,,゚Д゚)「…と言うか、お前が来ると共に事態が二転三転してるんだが……」

肩をすくめて呟くドクオをちらりと見ながらギコは呟いた。

('A`)「………………え、俺?…」

-シュイン-

144 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 00:58:41 ID:Iec07IFQ0
ドクオの自問と共にブリーフィングルームの自動扉が開く。

その瞬間、室内にいたドクオ達は一様に起立し、姿勢を正した。

現れたのはドクオの旧友であるブーンと見知らぬ将校、ハインリッヒ、そして西方面軍基地司令官のフィレンクトであった。

( ^ω^)「着席して下さい」

壇上に登ったブーンはフィレンクトと目線でやり取りをする。

145 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 00:59:28 ID:Iec07IFQ0
( ^ω^)「あまり時間もありませんから、形式的なやり取りはこの場では行いません」

敬礼をするドクオ達にそう言うと、ブーンは彼らが着席するのを待った。

( ^ω^)「では、早速本題に入ります。」

そこでブーンは手元のコンソールを操作し、室内を暗くすると共にスクリーンを起動させる。

ブーンの背後のスクリーンに映ったのは一枚の衛星写真だった。

(,,゚Д゚)「これは……アンルーク荒原…か?」

( ^ω^)「その通りです。正確には荒原の入口手前です。この写真は昨晩19:00の時点でエ二ウス3号が撮影したものです」

(,,゚Д゚)「ノイズがひどい……いや、待て」

スクリーンに映る写真の左側に無数の黒点の様なものが映っていた。

146 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 01:00:36 ID:Iec07IFQ0
('A`)「まさか……機影だって言いたいのか?」

ギコの言葉を引き継ぎ、ドクオは否定したい可能性を挙げる。

( ^ω^)「現在、地嵐がこの方面を乱吹いている為、写真の画質の悪さはあり得るものです」

( ^ω^)「と言うよりも、通常ならばその様に判断する所でしょう」

この惑星[チャネルU]では地嵐と呼ばれる電波等を阻害する粒子がチャネルU全体を乱吹いている。

前大戦以前さして気にもならないくらいの影響しかなかったが、環境破壊が激しかった前大戦中期以降、その効力は一段と強まり、現在では地嵐が乱吹いている地域では通信が出来ないほどであった。

( ^ω^)「しかし、昨日の急襲により当基地の以西との通信施設が全て破壊されているという状況を我々は考慮しなければなりません」

147 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 01:01:34 ID:Iec07IFQ0
(*゚―゚)「以西の、全て…ですか?」

西方面基地は基地内外の通信を管理する施設を東西南北に分けてある程度は固めていた。

中でも国境に面する西側は予備施設も存在しているものだが、それすらも破壊されたとブーンは語る。

無論基地内の施設の位置は機密に該当する情報であり、外部の者には把握できないようにカモフラージュが為されている。

その事実が示す事は今回の一件は非常に高確率で内通者が存在する、と言う事だった。

( ^ω^)「全てです、本部上層で既に内通者の特定作業に入っています」

( ^ω^)「脱線しましたね、話を戻します。この状況を踏まえ、更にもう一つ危惧する事実があります」

148 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 01:02:18 ID:Iec07IFQ0
( ^ω^)「VIP王国との交信が途絶えました」

室内を重い空気が支配する。

ブーンの告げた事実はドクオが否定したかった可能性を示唆していた。

(;^Д^)「待って下さいよ、地嵐の影響でしょ?今回の濃度なら充分あり得ることなんじゃないんですか」

( ^ω^)「国交間の通信機器は現在の地嵐程度なら基本的に遮断されることなく電波の送受信が行えます」

( ^ω^)「しかし、こちらのアクションに対しVIPは反応がありません」

意図的にVIP王国は通信を無視しているとブーンは暗に告げる。
150 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 01:03:46 ID:Iec07IFQ0
(,,゚Д゚)「状況は把握した。しかしこの現状で陸戦ユニット全体ではなく俺達だけを召集したのは?」

画像の黒点を機影と判断するならその数は10や20ではきかないだろう。

西方面基地の戦力では防ぎきれない。増援を呼んでの総力戦となるはずだ。

そんな中、少数部隊である教導班のみに何をさせるつもりだと、ギコはブーンに目で語る。

( ^ω^)「ラウンジ公国軍元帥府直轄特派部隊、混成科学教導班。貴官らには偵察任務に当たってもらいます。少佐」

そう告げるとブーンは壇上から降り代わりに見知らぬ将校が壇上に立つ。

( "ゞ)「情報部のデルタ=トライアングルだ。早速だが作戦概要を説明する」

151 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 01:05:36 ID:Iec07IFQ0
デルタがそう告げるとスクリーンの映像が切り替わった。

先程のアンルーク荒原の縮尺を更に縮小させた画像がスクリーンに広がる。

デルタは言葉少なに説明を始めた。

( "ゞ)「既に東側の通信施設を一基西側に廻して国境線基地との通信を試みているが、未だ連絡がない。深夜、地嵐が弱まった時も反応がなかった」

( "ゞ)「ブーン少尉が告げた情報を考慮し、我々は西国境防衛線及び、国境線基地は既に突破されたものと判断している」

そこでアンルーク荒原の更に西にある場所に赤い×印が刻まれる。

( "ゞ)「国境線基地を突破した敵軍がとる進路はこの三つしかない」

×印の先から伸びた矢印はアンルーク荒原の入口を少し入った所で三方向に別れる。

152 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 01:08:01 ID:Iec07IFQ0
一つはアンルーク荒原を北に迂回した進路。
一つはアンルーク荒原を南に迂回した進路。
最後の一つはアンルーク荒原を直進した進路。

( "ゞ)「衛星写真が捉えた画像はアンルーク荒原の入口だ。進軍手段としてそこから北、あるいは南に迂回する可能性は低くは無い」

( "ゞ)「しかし前回の急襲を考慮すれば奴らは時間をロスする迂回路を選ぶ可能性は低いだろう。多少険しくても荒原を突破するはずだ」

( "ゞ)「貴官らにはこの荒原の偵察を頼みたい。情報部の見解としては大部隊での進軍もあり荒原を突破するのは最低で18時間は要するだろう。詳細はここにまとめてある。以上だ」

デルタそう告げると壇上を降りる。
154 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 01:08:55 ID:Iec07IFQ0
再びブーンが壇上に立った。

( ^ω^)「作戦は高難度です。通常の一般兵では務まりません。そこであらゆる技能試験を好成績で突破した隊員で構成されている教導班に白羽の矢が立ちました」

( ^ω^)「教導班は元帥府直轄ではありますが、緊急事態と言う事で、指揮権は西方面基地に移行しています」

155 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 01:10:16 ID:Iec07IFQ0
(‘_L’)「少数ユニットで従事するには少々無茶な作戦ではありますが、何と言っても貴方方は教導班です」

(‘_L’)「期待していますよ」

ブーンの言葉を引き継ぎ、横手からフィレンクトが喋る。

( ^ω^)「何か質問は?」

室内に無言の静寂が訪れる。

( ^ω^)「では、我々は退出します、教導班は至急ブリーフィングを行ってください」

156 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 01:39:22 ID:Iec07IFQ0
ブーンの言葉と共にドクオ達は再び起立し、敬礼をする。

-シュイン-

最後にブーンが退出してから、暫くの間、ドクオ達は敬礼を解かなかった。

('A`)「随分と買われてるじゃないか、教導班は?」

一番初めに敬礼を解いたドクオが皮肉と共にギコを見る。

(,,゚Д゚)「司令は外部である俺達の事をあまり良くは思ってないからな、お前の得意な皮肉だよ」

('A`)「なるほど…」

憮然とした面持ちでギコは壇上に昇る。

157 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/19(木) 01:53:40 ID:Iec07IFQ0
(,,゚Д゚)「やれやれ、畑違いの任務だがさて…………………作戦内容は至ってシンプルだ…な………」

壇上で視線を右左に奔らせつつギコは呟く。

ξ゚听)ξ「大尉、説明願えますか?」

(,,゚Д゚)「VIP軍の進軍状況の偵察だ。速度、兵種、規模。まぁこの三点を抑えればいいだろう。だが、どのように遂行するか、だな」

( ^Д^)「空輸で手前まで送ってもらや、いいんじゃないすか?サポートと情報の交信はしぃさんに任せて」

(,,゚Д゚)「……」

プギャーの提案にギコは押し黙る。
161 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:12:18 ID:MWSugyyk0
('A`)「ショボンの野郎たちを気にしてるのか?」

そこでドクオとギコ以外の者達ははっと顔を上げる。
各々の脳裏には騎士を模した一つ目のMDが浮かんでいた。

('A`)「奴らも補給が必要だ。結構暴れまわったし、くたくただと思うぜ?」

(,,゚Д゚)「それは分かっている。だが奴らが補給、報告組と残留組に別れると仮定した場合、全員で斥候に当たるのは危険が高すぎる」

アンルーク荒原を進軍するVIPの大部隊とショボン率いるヴィッパーに挟まれ、MDすら無しでは生存の可能性は皆無だと言えるだろう。

162 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:13:15 ID:MWSugyyk0
(,,゚Д゚)「……ドクオ」

('A`)「了解だ、俺が行く」

(,,゚Д゚)「いや、お前一人じゃない。ツンも同行してもらう」

('A`)「………は?」

偵察任務はとてもデリケートだ。接敵してバカスカ銃や砲弾を打つわけではない。
この任務は俺だなと感じ、ドクオはすでに頭の中で踏破ルートを模索していた、単独偵察を念頭に。

(,,゚Д゚)「お前は復隊したばかりだ、一人では任せられん」

('A`)「いやいや、本気で?」

163 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:14:02 ID:MWSugyyk0
確かに、一人より二人で行動する方が作戦行動の範囲も増え、任務の遂行確率も上がる。
しかしこの場合、おそらく待ち伏せているだろう敵を出来る限りやり過ごしていかなければならない。
それを、自分を毛嫌いしている者と組む、
しかも初めて。
ドクオには正気の沙汰とは思えなかった。

(,,゚Д゚)「何か不服かな?ロックベル軍曹」

そこでギコは口調を事務的なものに変える。

('A`)「…ツーマンセル(二人一組)で行動する理由が分かりません、大尉」

ギコが口調を変えたという事は、決定事項なのだろうと理解しながら、ドクオは尚も反論する。

164 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:15:07 ID:MWSugyyk0
(,,゚Д゚)「ツンは手広く何でも出来る。能力の落ちているお前をサポートするには丁度いいと判断した。……勿論、お前が以前と変わらないなら単独遂行を許可する。」

(,,゚Д゚)「どうなんだ、『ロックベル機装伍長』と『ロックベル機装軍曹』は何ら変わらず、遜色ないんだな?」

('A`)「……いえ、仰る通りです。自分が浅はかでした。」

(゚Д゚,,)「ツン、そう言う事だ、お前はドクオと共に偵察に当たってもらう」

ξ゚听)ξ「了解しました」

了承の返事の後にツンはドクオを見る。
好戦的なその瞳をどのように受け止めれば良いか分からず、ドクオは視線を逸らした。

165 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:16:19 ID:MWSugyyk0
( ^Д^)「ギコさん、俺らはどうするんですか?」

ビロードの肩を強引に引き寄せつつ人差し指で自分達を指す。

(,,゚Д゚)「プギャーとビロードは俺と共にMDに搭乗して待機だ。先日のヴィッパー部隊が立ちはだかる可能性がある」

(,,゚Д゚)「また、アンルーク荒原を移動中のVIPの先遣隊を相手にする事になるかも知らん。今度は言い訳は出来ん、出てこればきっちり仕留めるぞ」

( ^Д^)「了解っす」

( ><)「了解なんですっ」

(,,゚Д゚)「しぃは後方で支援と情報の伝達を頼む」

(*゚―゚)「了解しました」

(,,゚Д゚)「タカオカ博士」

そこでギコがハインリッヒへと言葉を投げた。
ハインリッヒは険しい顔をしつつ一歩前へ出る。

166 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:18:30 ID:MWSugyyk0
从 ゚∀从「んー、全く……あたしらは『どんぱち』の相手なんかしてる場合じゃないって言ったんだがなー、移送手続きもしてたのに…まぁ指揮権が移っちまっちゃしょうがない」

从 ゚∀从「曲がりなりにもあたしらは精鋭部隊だからな。あんた達の搭乗機体の整備、調整は万全にしてある」

从 ゚∀从「もう一回言うぞ?あたしらは下らない『どんぱち』に付き合ってる暇なんかないんだ」

从 ゚∀从「『ドール』一機にしたって取らなきゃいけないデータが山ほどある。開発中のプログラムはたくさんある」

从 ゚∀从「とっとと行ってVIPだか何処だか知らんが、奴らのケツ蹴りあげて追い返してきなっ!!」

(,,゚Д゚)('A`)( ^Д^)「「「「「「イエス、マムッ!!」」」」」」ξ゚听)ξ(*゚―゚)( ><)

怒声のように最後は声を張り上げたハインリッヒに対し、ドクオ達も威勢よく返事を返す。

(,,゚Д゚)「各員、作戦内容に目を通し、可及的速やかに装備と搭乗機体の確認、点検を行え。データは今送信しておいた」

167 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:19:28 ID:MWSugyyk0
ギコの指示を最後に各々が足早に部屋から退出していく。

(,,゚Д゚)「ツン、お前もインコグニトの点検をしておけ、必要になるかも知らん。ドクオ、お前は残れ」

ξ゚听)ξ「了解しました」

最後にツンが退出し、室内にはドクオとギコとハインリッヒの三名だけになる。

(,,゚Д゚)「さてと、随分と不服そうだが、そんなに俺の采配が気に入らないか、軍曹?」

先程とは打って変わってギコはからかうような口調でドクオに尋ねる。

('A`)「いくら演習で好成績でも、実戦経験はほとんどないんだろ?それにツンは俺の事すげー嫌いっぽいからな……」

愚痴るように答えるドクオ。

(,,^Д^)「ああ、お前嫌われてるなー、何かしたのか?」

168 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:20:09 ID:MWSugyyk0
('A`;)「て言うか笑い事じゃないぞ。会った瞬間から敵対心剥き出しで批判してくるし」

(,,゚Д゚)「ツンは少し癖がある。自分の正義を信じる事は悪くはないが、あいつはそれが極端でな。お前、終戦後すぐに退役して無責任だっとか言われたんじゃないか?」

('A`)「どんぴしゃですよ大尉」

肩をすくめて返答するドクオ。

(,,^Д^)「だろうな」

(,,゚Д゚)「分かるな?つまり、そういう子だ。」

('A`)「敵なら楽なんだけどなぁ」

从 ゚∀从「まぁ、モノをはっきりと言うツンと、言葉足らずで行動で示すドクオじゃ、ちょいと噛み合わせは悪いと思うぜ?」

そこで最後まで部屋に残っていたハインリッヒが会話に加わり、ドクオに助け舟を出す。

169 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:21:02 ID:MWSugyyk0
(,,゚Д゚)「只の我が儘に付き合っていたら埒が明かない。こいつは作戦前は何時だって不平不満を垂らすんだよ」

从 ゚∀从「だ、そうだぜ、ドクオ」

('A`)「……て言うか、そこはタメ口なんだ」

ギコのハインリッヒに対する喋り方が先程とは変わっている事に気付き、ドクオは素朴な疑問を口にする。

从 ゚∀从「あぁ、元々階級だか何だかあたしはどうでもいいんだけどよ、一応あたしが隊の責任者?だからギコが体面はきちんとしとくべきだって」

(,,゚Д゚)「規律や階級が全てじゃないが、必要だからあるんだ。あまりくだけ過ぎてもいいとは思わんからな」

从 ゚∀从「まぁ、そう言う事だ、ドクオもタメ口でいいぜ」

170 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:21:54 ID:MWSugyyk0
(,,゚Д゚)「こういう奴だ、頭の中はMDの事しか考えていないマッドサイエンティストだが、26にもなってたまに自分の事を『ハインちゃん』とか言う痛い奴でいたっ、殴るな、ちょっとした冗談だろ、やめろ、脛を蹴るな脛をっ」

酒の席の話だろうが、等と言いながらギコに攻撃を加えるハインリッヒを眺めながらドクオは更に疑問を口にする。

('A`)「夫婦漫才は後でしてくれ。で、俺を残したのはこれだけの為か?」

(,,゚Д゚)「ツンを付けたのは、と言うより、お前一人ではない理由がもう一つある。ブーンは偵察でいいと言っていたが、あの数を相手にすれば現状のこの基地はもたん」

(,,゚Д゚)「増援が来るまで時間を稼ぎたい」

('A`)「………難しいな、かなり厳しい……としか言いようがない」

ギコの言いたい事を汲み取り、ドクオは慎重に言葉を選ぶ。

171 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:23:34 ID:MWSugyyk0
(,,゚Д゚)「分かっている。本当は俺が行くつもりだったが、この場合、お前の勘の方がよほど役に立つと思うからな」

('A`)「出来る限り善処はする。だが、現場で俺が無理だと判断すればそのまま撤退するからな、て言うか、それならツンにも居てもらえば良かったんじゃないか?」

(,;゚Д゚)「厳密に言えば、任務内容とは少し違う。ツンはそういうところが俺以上に几帳面と言うか、融通利かんからな。黙ってた方が都合がいい」

(,,゚Д゚)「それと、恐らく先遣隊かショボンと交戦する。任務終了後、続けてMD戦に移行する可能性が高い」

从 ゚∀从「って事であたしの登場だ。ちゃっちゃと適性やら何やら見てお前用に機体をカスタマイズしてやるから、行くぞっ」

ハインリッヒはそう言うと目を輝かせながらドクオの腕をとり、強引に部屋の出入口へと向かう。

('A`;)「え、ちょ、何かハインの眼が怖いんだけどっ!」

172 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:24:36 ID:MWSugyyk0
尋常じゃないハインの様子にドクオは危険を感じギコへと救援の視線を投げる。

(,,゚Д゚)「言っただろう、マッドサイエンティストだと。大丈夫だ、取って喰われる訳じゃない、ちょっとの間モルモットになるだけだ」

首をすくめながらギコは無慈悲に言葉を返す。

「いやいや、それってどうなんだよ……って待てハイン、こける…おいっギコッ!!」

(,;゚Д゚)「はぁ………何か、失敗しそう」

引きずられる様にして部屋を出て行ったドクオの声を聞きつつ、ギコは不吉な溜め息を吐いた。

173 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:25:19 ID:MWSugyyk0




ドクオの頭の奥を僅かな電流が奔る。

('A`)「……ツン、止まれ」

頭の中を廻った違和感に注意を向け、ドクオは回想を中断しつつツンの肩に手をかけ、小声で話しかける。

ξ゚听)ξ「…何ですか?」

('A`)「気配がする。お前はここで待機だ」

174 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:26:27 ID:MWSugyyk0
そう言うや否やドクオは姿勢を更に低くし、音をたてずに岩場の影から影へと素早く移動する。
その動きは猫のようにしなやかで、復隊したばかり兵の動きではなかった。
比較的凹凸のない岩の合間を縫うようにしてドクオは進む。
下は砂利道で、僅かでも集中を切らせば砂利と靴との接触で音が鳴ってしまう。
そんな中ドクオは自分の右にある岩に身体を預けつつ、肩越しに岩の先を覗いた。
自分の脳が鳴らす警鐘が正しければこの先に−

(((( `ハ´)

−いた。
距離にして約20から25メルト。数は1。装備はアサルトライフル。
それだけ確認するとドクオはすぐその場を移動する。

('A`)(まぁ、そんな簡単にはいかんよなぁ。ってもまだまだピクニックの範囲内だが…)

175 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:29:20 ID:MWSugyyk0
ドクオは過去に行った偵察任務を思い出しながら自分に言い聞かせる。
この程度はまだまだお散歩の範囲内、そう言い聞かせ、同時に来た道を戻る。
ドクオは来た道を半分ほど戻った所で、恐らく進んできたのだろうツンと遭遇した。

('A`)「………何をしている?」

自分の身体が段々と熱くなるのを実感した。抑えきれない感情の爆発を、ドクオは何とかやり過ごそうとする。

ξ゚听)ξ「軍曹が先に先にと行くので付いて来ただけです」

ツンは変わらず愛想のない返答をする。

('A`)「そんな事は聞いていない。ツン、俺は待っていろと言ったはずだ。聞こえなかったのか?」

ξ゚听)ξ「……聞こえていました。でも、気配がって、もし敵なら…」

駄目だ、こいつは何も分かっていない。

176 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:31:56 ID:MWSugyyk0
('A`)「いいか、よく聞け上等兵」

ツンの声を遮り、ドクオは声を荒げそうになるのを懸命にこらえ、声量を絞り、しかし迫力のこもった声音で言葉を紡ぐ。

('A`#)「上等兵、お前が何を勘違いしているのか知らんが、俺が待機だと言えば待機だ」

('A`#)「遭遇戦になっていたらどうする?友人の戯言か、お願いか何かだとでも思ったのか?俺とお前は何だ?友達か?学校の先輩後輩か?近所の知り合いか?…違う」

ξ;゚听)ξ「………」

177 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/28(土) 15:34:29 ID:MWSugyyk0
ツンデレはドクオの迫力に圧倒されただただ沈黙を貫く。

('A`#)「お前が俺の事を嫌いなのは構わない、そんな事はどうだっていい。まぁ正直お前の態度はかなり不愉快だ。だがそれは任務とは関係ない。俺とお前が任務を理解して、完遂できればいいんだ。

('A`#)「だがな、これ以上お前の安っぽい自尊心を満たすために、命令を無視して勝手をされちゃ上手くいくものもいかない」

('A`#)「命の値段がどんどん安くなる」
ドクオは徐に後ろ越しのホルスターに差している自動拳銃を引き抜き、次の瞬間には銃口をツンデレの額へと合わせていた。
レーザーポインタの光点がツンの額を捉え、赤く光る。

('A`)「知っているか上等兵?戦場での味方の誤射による死亡率は決して低くはない」

('A`)「俺の勘が言っているんだよ、お前は邪魔だって」
茫然とするツンデレに照準を合わせたまま、ドクオは身動ぎ一つせずツンデレを無感動な瞳で眺める。
日は地平線に落ち、アンルーク荒原を暗闇が包もうとしていた。



−続く−

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