95 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/07/27(火) 03:08:46 ID:dLfWLnGc0
高さ180メルトを誇るラウンジ公国最長の超高層ビル.
[エンゼリオンタワー]を筆頭に数棟の超高層ビル、多数の高層ビルで構成されるラウンジ最大都市にして首都であるエスフェタリア。

96 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/07/27(火) 03:09:39 ID:dLfWLnGc0
世界三大軍事企業のうちの一社であるオルテック社本部を筆頭に多種多様な大企業がオフィスを構えている。

所謂ビジネス街と言われる区域は都心を中心に数百メルトに渡り構成されており
数多の人間が日中忙しなく行き交っている。

97 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/07/27(火) 03:10:32 ID:dLfWLnGc0
そんなビジネス街を一歩出ると、星の数ほどの飲食店や飲み屋、風俗店が扉を開けはなっている。

仕事帰りにこの歓楽街に繰り出す者、また、歓楽街での違法行為を生業に生計をたてる者が昼夜を問わず動いており
この大規模歓楽街の灯りが消える事はない。

98 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/07/27(火) 03:11:16 ID:dLfWLnGc0
更にその先は数多のマンション、保養施設、公園
テーマパークで構成され、郊外では豪勢な一軒家が点々と居を構えている。

99 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/07/27(火) 03:12:12 ID:dLfWLnGc0
そんな世界で有数の経済都市でもあるエスフェタリアから真南数十キロメルトの位置にラウンジ公国軍本部は存在した。

初老の男、エクスト=ベルレインは静かに溜息をつき、手に持ったシルバー製のカップをゆっくりと受け皿に戻した。

100 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/07/27(火) 03:12:54 ID:dLfWLnGc0
( ,_ノ` )y「溜息、9度目だ」すぐ横で明後日の方向を向きながら書類に目を通していたシブザワは淡々と告げる。

<_プー゚)フ「胃が痛い……」どんよりと濁った眼をゆっくりと旧友であり片腕であるシブザワに向けながらエクストは告げた。

( ,_ノ` )y「コーヒー十何杯も飲んだらそうなるだろ」黙々と膨大な書類にサインをしながらシブザワは端的に応えた。

101 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/07/27(火) 03:13:51 ID:dLfWLnGc0
<_プー゚)フ「何て言うか、お前って本当にタフだよな」同じ量のコーヒーを飲みながら平然とするシブザワを感心した目で見やる。

( ,_ノ` )y「横に居るのが俺じゃなかったらお前がその台詞を言われているだろうさ」

<_プー゚)フ「そうありたいもんだよ」

エクストが首を左右に振りながら応えると同時に手元のコンソールから電子音が鳴り響いた。

<_プー゚)フ「通したまえ」コンソールにそう告げたエクストは背筋を伸ばす。

102 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/07/27(火) 03:14:53 ID:dLfWLnGc0
執務机の上に両肘を置き、両手指を交錯させた手を顎の下に置いた状態で、エクストは来訪者を待った。
ちらりと目を横にやるといつの間にかシブザワも姿勢をこちらに戻していた。

「失礼します」エクストの数メルト先にある自動扉が開き、一人の将校が入ってくる。

<_プー゚)フ「御苦労、情報部には無理をかけてすまんな」

「いえ、これが我らの仕事ですので」顔に疲弊の色が見える将校は淡々と答えた。

( ,_ノ` )y「さて、少佐を呼んだのは他でもない、2、3点確認したい事があってな。
こちらでも大体は把握しているが、錯綜している情報もいくつかある。すまんが概略を頼もう」

103 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/07/27(火) 03:15:59 ID:dLfWLnGc0
「はっ、昨夜23:15分頃西方面軍基地においてVIP王国軍と思われるMD6機による奇襲を確認。この奇襲により西方面軍基地施設の約2割が損壊、MD26機が大破、3機が中破、6機が小破との事です。
詳細はこちらの資料にまとめてあります」将校は執務机に近付くと、資料の束を2部とデータチップを渡した。

<_プー゚)フ「たった6機にMD35機、施設の約2割が破壊されたか……」資料にざっと目を通しながらエクストはやりきれない声音で声を絞り出す。

104 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/07/27(火) 03:16:45 ID:dLfWLnGc0
( ,_ノ` )y「あの崖からの奇襲か…」
「敵MDの移動痕、並びに崖上にMD用の反光学外套がパージされてあった事から確定で間違いないようです」

( ,_ノ` )y「ふむ、しかしそれをやってのけるとは……」

<_プー゚)フ「VIPと推測した根拠は?」

「迎撃に当たった混成科学教導班所属のギコ=ラインハルト特務大尉が敵機と交信しており、内一機の搭乗者をショボン=バランタインと確認した為です。尚、監視塔等の記録施設は破壊されている為データとしては残っていません」

105 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/07/27(火) 03:17:30 ID:dLfWLnGc0
( ,_ノ` )y「教導班が迎撃に当たりながらこれ程の被害を許したのか」将校から語られた事実は少なからずシブザワを驚かせた。混成科学教導班の創設にはシブザワも関与していた。
中でも隊員の選抜にはシブザワ自ら関わっていた為、その期待の分だけ失望感があった。

「確かに教導班は迎撃に当たった様ですが、搭乗機体は演習用のクレイドT型だった模様です。」

( ,_ノ` )y「どういう事だ?」混成科学教導班にはそれなりの予算を割いており、またオルテック社からの援助も決して少なくはない。
型遅れのMDを使う理由がシブザワには見当がつかなかった。

106 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/07/27(火) 03:18:12 ID:dLfWLnGc0
「教導班は同日12:10より試験機の機動力テストの為基地を出立、その後α-18ポイントでVIPのMDと遭遇、交戦に入りこれを殲滅。突発的な戦闘であった為、帰投後に念を入れて機体のオーバーホールを行ったようです」
( ,_ノ` )y「全機共か」

「はっ、X-04ドール1機、OT-03bインコグニト5機のオーバーホールが承認されています」

( ,_ノ` )y「タイミングが悪すぎるな」かぶりを振りながらシブザワはため息を吐く。

<_プー゚)フ「……その通りだ」数瞬後、エクストは重々しく口を開いた。

107 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/07/27(火) 03:19:29 ID:dLfWLnGc0
「……?」

( ,_ノ` )y「どういう意味ですかな」意味ありげなエクストの言葉にシブザワは疑問の声を投げる。

<_プー゚)フ「悪すぎる、機が悪すぎる。シベリアが動いた今、このタイミングで動くVIP。まるで示し合わせたかのようだ」

( ,_ノ` )y「……VIPとの外交は?」

「外交官は否定しています、VIPの機体ではないと」

108 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/07/27(火) 03:20:20 ID:dLfWLnGc0
( ,_ノ` )y「昼の件は?」

「確認した所、三日前に東前線基地へ移送中に強奪された機体番号と一致した模様だとの事です。会話した感触で言うと、あちらも何が何だか、という所の様です。」

( ,_ノ` )y「ふむ、真か嘘か」

<_プー゚)フ「だがなんにせよ、これでお終いと考えるのは楽観的過ぎるだろうな」

重苦しい空気の中、ラウンジ公国軍総司令官、エクスト=ベルレインは今日10度目の溜息を吐いた。

Act-4 復隊
114 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:23:40 ID:sMbwYSVQ0
(‘_L’)「で、どうします?」

少し首をかしげ、手に持つ書類をひらひらとはためかせながら、西方面軍基地司令官フィレンクトは正面に立つドクオに尋ねた。

('A`)「………」
その問いには答えず、ドクオはちらりと横に目をやる。
( ^ω^)
(,,゚Д゚)
少し離れた場所で直立する旧友は、共にフィレンクトの後の壁に貼り付けられてある地図を凝視していた。
分かってはいたが、旧友から何一つ援護が無い事を確認するとドクオは内心で盛大に溜息を吐いた。

(‘_L’)「即決出来ないのなら、考える時間を与えましょうか?」

('A`)「……いえ、先程提示して頂いた前者の方を謹んでお受けします。」

(‘_L’)「と、言う事は」

('A`)「ラウンジ軍復隊の許可を…願います。」
-タンッ-小気味よい音と共にフィレンクトの持つ書類に判子が押される。

115 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:25:29 ID:sMbwYSVQ0
(‘_L’)「よろしい、現時刻を持ってドクオ=ロックベルの復隊を許可します。貴官の所属、階級は本日中に通達します。]

(‘_L’)「それまでは基地内施設を見回ってください。案内人を一人付けましょう、それまでは中央食堂で待機。以上です、解散」

('A`)( ^ω^)(,,゚Д゚)「はっ!」

三人の敬礼を見る事も無く、フィレンクトは視線を落とす。
眼下の執務机に散逸する無数の書類の内から一つを取り上げ目を通し始めた。
敬礼を解いたドクオ達は踵を返し部屋を出ようとする。

(‘_L’)「あぁ、一つ言い忘れてました、ロックベル君」
書類から目を上げ、フィレンクトはドクオへと言葉を投げかける。

('A`)「は、何でしょうか」
再び踵を返したドクオはフィレンクトを直視した。

(‘_L’)「ようこそ、西方面軍基地へ」

116 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:26:34 ID:sMbwYSVQ0


('A`)「狸じじぃめ…だいたい………だ。」
広々とした無機質な廊下を歩きながらドクオは毒づいた。

('A`)「昨夜は有無を言わさず営倉にぶち込まれて、頼みの綱の旧友からはその存在を忘れ去られ」
そこでじろりと左を見る。

(,;゚Д゚)「いや、その…だ、始末書がだな……だって被害でかかったし…」
ダッテデモデモと言い訳を始めたギコから視線を外し、前方を見ながら独白を続ける。

('A`)「一夜明けて、やっと解放されたかと思ったら、これまた有無を言わさず執務室、しかも司令官の」
ドクオの声と足音のみが廊下に響き渡る。

('A`)「入るや否や、『さて、ドクオ=ロックベル君』だ。」
そこでじろりと右を見た。

(;^ω^)「いや、まさか、ばれてたとは……だってドクオだし…」
ダッテデモデモと同様に言い訳を始めたブーンから視線を外し、ドクオは再び前方を見る。

117 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:28:01 ID:sMbwYSVQ0
('A`)「今すぐ復隊するか、内偵疑惑、機密情報閲覧etcで拘束されるかどちらがいいだと?」
そこで三人はエレベータに到着した。

( ^ω^)「いや、まぁ、ついていないのがドックンだし、そう考えるとこれも人徳のなせる技と言うか……」

( ^ω^)「あ、ブーンはこっちだお、じゃ」
白々しく手を上げるとブーンは逃げるように去っていく。

(,,゚Д゚)「まぁ、何と言うか……気の毒だな、お前は」

(,,゚Д゚)「あ、俺はこっちだ、それじゃな。」
こちらも白々しくポンとドクオの肩を叩くと、ギコは足早に去って行った。

-チーン-無機質な音と共にエレベーターが開く。

('A`)「欝だ死のう」
ポツリと呪いの言葉を吐きながらドクオはエレベーターへと吸い込まれていった。

118 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:29:10 ID:sMbwYSVQ0


「ドクオ=ロックベル!」
甲高い声で自分のフルネームが呼ばれたドクオは、手に持つフォークで突いていたハンバーグから目を上げ音源を探した。

ξ゚听)ξ「ドクオ=ロックベルはいないか!?」
再び名前が叫ばれ、その方向にドクオは目をやる。

音源は食堂の入口。一人の美しい女性がいた。
好奇の目線、うんざりした目線等、様々な目線を尻目にドクオは席を立ち手を上げる。

('A`)「俺だ。」
立ちあがったドクオは食べ残した食事を返却口に返しながら、その女性へと近付いた。

ξ゚听)ξ「自分は混成科学教導班所属ツンデレ=リリエッタ機装上等兵です。先程司令部よりあなたの基地案内人を頼まれたのでお迎えに来ました。」
間近で見るとツンデレと名乗った女性は控えめに言っても美人だった。

119 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:29:58 ID:sMbwYSVQ0
('A`)「ドクオ=ロックベルだ。ドクオでいい。後。敬語もいらない。君の事は何と呼べばいいかな?」

ξ゚听)ξ「ツンデレでもリリエッタでも呼びやすい方で結構です、ロックベルさん。

ξ゚听)ξ「まずは着替えてもらえるかしら?」
差し出したドクオの手を一瞥するとツンデレは手に持つカーキ色の野戦服をドクオに差し出す。

('A`)「…了解」
握手の為に差し出した手でドクオはその野戦服を受け取った。

120 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:31:02 ID:sMbwYSVQ0


ξ゚听)ξ「ここが中央管制塔。基地内のMDの状況等は全部ここが管理しているわ」
簡略な説明を述べるとツンデレは踵を返し、来た道を戻る。

('A`)「……」
そのすぐ後ろをドクオは無言のまま付き従った。

基地内の案内が始まって小一時間が経つ。
その間、会話らしい会話は一つたりとも発生していなかった。

('A`)(えー、何かしたっけなー、ぜんっぜん分からんぞ)

前を行くツンデレが自分を敵視している事は分かっていた。
しかし、敵視される理由が見当たらなく、ドクオは途方に暮れていた。

('A`)「次は何処に案内してくれるんだ?」
かろうじて言葉を捻りだし喋りかける。

ξ゚听)ξ「次は情報部ね、基地の東側まで移動するわ」

('A`)「了解」

121 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:32:23 ID:sMbwYSVQ0
しかし、ドクオのコミュニケーション能力ではそれ以上の会話を続ける事は不可能だった。

ξ゚听)ξ「……やめましょう、変更して第一格納庫と西の演習場の方を案内するわ」
沈黙のまま数分が経つと、唐突にツンデレは行き先の変更を口にした。

('A`)「?まぁ別に何でもいいが、何かあるのか?」

ξ゚听)ξ「いいえ、何かあるというより、情報部何て位置とその存在の認識以上は必要なさそうだと思っただけだわ」

ξ゚听)ξ「……ロックベルさんにとってはね」

('A`)「………含みのある言い方だな」
切れ長の眼でこちらを見るツンデレに対し、ドクオは肩を竦ませて反応する。

ξ゚听)ξ「突然教科書に名前の乗っている人物が眼の前に居るんですもの。色々と思う事もあるのが普通じゃないかしら?」

('A`)「そうかな?随分と俺の事を敵対視している様に感じるんだが?」

122 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:33:33 ID:sMbwYSVQ0
ξ゚听)ξ「……前大戦開戦時、第13独立強襲中隊に所属。中隊解体後、激戦区である北方戦線へ編入され、801国に無視できない損害を与え続けたラインハルト隊のドクオ=ロックベル。」

ξ゚听)ξ「どんな人物かと期待していたら、貴方みたいな覇気のない人で、正直がっかりだわ。」
歩みを止め、ツンデレは好戦的な眼差しを向け、言い放つ。

('A`)「そりゃ、悪かったね。」

ξ゚听)ξ「まぁ、でも尻尾をまいて逃げるように除隊した人物だし、想像通りと言えば想像通りね」

('A`)「…言いたい放題だな」

ξ゚听)ξ「戦争は終わっても、その後は終わってないわ。貴方は戦後処理の責務を放棄した。そしてまたふらりと復隊。そんな責任感のない人物とは仲良くなれそうにない、それだけよ」

('A`)「そりゃ、残念だ」

一瞬、二人の視線が交錯する。

ξ゚听)ξ「……案内を続けるわ。付いてきて」

('A`)「了解」
険悪な雰囲気のまま、案内は続いた。

123 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:34:32 ID:sMbwYSVQ0


ξ゚听)ξ「これで、基地施設の大方は案内したわ。何か質問、疑問はある?」
再び中央食堂へと二人が戻ってると、既に日は傾き始めていた。

('A`)「特にな…俺は何処に寝泊まりすればいい?」

ξ゚听)ξ「それは知らされていないわ。所属と階級が決定されてからじゃないかしら」

('A`)「それは分かるが……それまで俺はここで待機って事か…」

(,,゚Д゚)「その必要はない」
不意に後ろから声がかかった。

ξ゚听)ξ「ラインハルト大尉!」

(,,゚Д゚)「案内役、ご苦労だったな、ツン」

('A`)「必要ないって事は?」

(,,゚Д゚)「ドクオ=ロックベル、貴官の所属が決定された。」

(,,゚Д゚)「所属は混成科学教導班。階級は機装軍曹だ」

('A`)「軍曹?俺が?随分と羽振りの良い待遇だな」

124 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:35:25 ID:sMbwYSVQ0
(,,゚Д゚)「お前の皮肉には付き合わんぞ。現時刻より貴官は私の指示に従ってもらう。何か質問は?」

('A`)「有りません、大尉殿」

(,,゚Д゚)「よし、では早速だが教導班はこれよりブリーフィングルームで昨日の反省を行う。」

(,,゚Д゚)「ツンは勿論だがロックベル、お前もだ。付いて来い」

('A`)「了解です………またギッコの我が儘に付き合わなきゃいけないのか」

(,,゚Д゚)「ギッコ言うな。お前みたいな根暗を抱える俺の心労を考えてから喋ってくれ」

ξ゚听)ξ「…………」

辞令を下した後、軽口のやり取りをする二人を無言のまま見つめつつ、ツンデレは二人の後を付いて行った。

125 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:36:32 ID:sMbwYSVQ0


辿り着いたのは司令部や情報部等の基地中央区間より幾分か離れた場所にある混成科学教導班専用のブリーフィングルーム。
入るとすぐに檀上があり、その裏手には大きなホワイトボードが設置されていた。
後は手前から奥へと横2列、縦に5列ほど長机が設置されているだけであった。

( ><)「あ」

( ^Д^)「ちーす」

(*゚―゚)「………」

簡素な造りではあるが、広々としている室内とは裏腹に利用者は三人だけだった。
ドクオ達の入室に一番に気付いた気弱そうな青年が声を上げる。
被せるように横に座っていた軽薄そうな青年が反応する。
少し離れた所では端正な顔立ちの女性が電子機材と格闘していた。
余程集中しているのか、ドクオ達の入室に気付いていないようだった。

(,,゚Д゚)「タカオカ博士は?」

( ^Д^)「[人形]いじり終わったらこちらに向かうそうですよー」

ξ゚听)ξ「あんたね、口のきき方に気をつけなさいよっ、ラインハルト大尉は上官よ!!」
ギコの問いに軽い調子で応えた軽薄そうな青年に対し、ツンデレは語気をを強めて非難する。

126 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:37:51 ID:sMbwYSVQ0
( ^Д^)「っせーな、ギコさんが良いって言ってんだから一々絡むなよ、そんなんだから鉄仮面女だとか近寄りがたいとか言われんだよ。」

( ^Д^)「ところで隣の見慣れない方は?」
ツンの非難の声を軽くかわし、青年はドクオへと注意を向ける。

(,,゚Д゚)「本日付で教導班に配属されたドクオ=ロックベルだ」

('A`)「ドクオ=ロックベルです。本日より混成科学教導班に配属されました。階級は軍曹です。よろしくお願いします」
ギコの言葉を受け継ぎ、ドクオは簡単な自己紹介を行う。

( ^Д^)「ロックベル?……もしかして」

(,,゚Д゚)「ああ、お前の想像通りだ、プギャー」
ドクオのファミリーネームを聞き思案する青年、プギャーにギコは先回りして応える。

( ^Д^)「昨日といい今日といい、サプライズばっかすねー、自分はプギャー=ルーンテッドと申します。」

( ^Д^)「階級は機装上等兵、よろしくお願いします」

127 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:38:40 ID:sMbwYSVQ0
('A`)「よろしく」
自己紹介を終えると、プギャーは隣に座る青年へと目線を向ける。

( ><)「あ、はっ初めましてです!じ、自分はビロード=オルスターです。階級は機装一等兵ですっ、よっよろしくお願いします。」

プギャーの目線に気付いた気弱そうな青年、ビロードは慌ただしく立ち上がり、詰まりながら自己紹介をする。

('A`)「オルスター……?」

ドクオはギコへと視線を向ける。

(,,゚Д゚)「そうだ。ワカッテマスの弟だ」

('A`)「そうか………君のお兄さんには随分と助けてもらった。これからよろしく。」
ドクオの言葉を聞き、何故かばつの悪そうな顔をしながらビロードは椅子に座りなおす。

ドクオ達の視線は自然と残る一人、電子機材と格闘している女性へと向けられる。
全く気付いていないのか、沈黙する空間の中で女性は目線を上げずに作業に没頭していた。

(,,゚Д゚)「…えーと、しぃ?」

128 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:39:40 ID:sMbwYSVQ0
恐る恐る、作業を続ける女性、しいへとギコは言葉を投げかける。

(*゚―゚)「ん?始めるの?………」
やっと目線を上げたしぃは状況が分からずに固まる。

(,,゚Д゚)「あー、本日付で教導班に配属されたドクオ=ロックベルだ」

(*゚―゚)「あ、ごめんなさい、え、えーと、教導班所属のしぃ=マツナガです。」

(,,゚Д゚)「彼女はオルテック社からの特派員だ。厳密に階級は設けられていないが准尉相当の権限を持っている。」

('A`)「成程……よろしくお願いします」

(,,゚Д゚)「後は……分かっていると思うが、お前の基地案内をしていたのがツンデレ=リリエッタだ。」

ξ゚听)ξ「ツンデレ=リリエッタです。階級は機装上等兵。改めてよろしくお願いいたします」
ギコの言葉を引き継ぎ、ツンデレは完璧な敬礼と共に自己紹介を行った。

(,,゚Д゚)「さて、とりあえず皆座ってくれ。昨晩の反省を行う。」

そう言うと共にギコは壇上へと上がり設置されてあるコンソールを操作し、背後にあるスクリーンを起動させた。
130 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:54:26 ID:sMbwYSVQ0
同時刻・西方面軍基地司令部会議室

会議室は異様な空気が流れていた。
尉官、佐官十数名が円卓を囲み、皆、手元にある1枚の資料を凝視しながら何一つ喋らずに沈黙を保っていた。

(‘_L’)「ブレンテッド君、君の見解を聞かせてくれ。」
その沈黙を破り、西方面軍基地司令官であるフィレンクトはブーンへと視線を向ける。

( ^ω^)「はっ、……間違いないと思います」
何とか絞り出すかのように口を開け、ブーンはそれだけを述べた。

再び沈黙が場を支配する。

「しかし、そんな事が有りえるのか?」

将校の一人が皆の考えを代弁するかのように呟く。

131 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/08/09(月) 16:58:24 ID:sMbwYSVQ0
( ^ω^)「あり得ない、でしょう。」

( ^ω^)「地嵐(アースストーム)が激しく乱吹いている為、衛星画像は当てにならない。ノイズであると、そう判断したいところです。昨晩の奇襲が無ければ、の話ですが」

( ^ω^)「昨晩の奇襲。無差別に施設を破壊したように見せかけて、奴らは巧妙に西方面の通信施設だけは全て破壊していきました。」

( ^ω^)「おかげ様で我々はこの粗い衛星画像以外では数百キロメルト西の状況が一切分かりません。」

ブーンの声を聞きながらフィレンクトは視線を下に落とす。
視線の先にはモノクロの写真があった。
写真は酷くぶれており、一見しただけでは何の画像なのか分からない程画質は悪い。
しかし、写真内の地理に精通するものであれば、その画像は容易に見てとれるものである。
その写真の左側には無数の黒い斑点が映っていた。

( ^ω^)「予測換算ではMD100機以上」

( ^ω^)「VIPの大規模攻勢で間違いないかと…」

ブーンの最悪の予想は重苦しい空気を振動させ、室内の全将校の耳に入った。


−続く−

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