29 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 20:48:40 ID:YlrbT5fg0
Act2-強襲

( ゚ω゚)「ブレンテッドだ!至急北側B4から9までのエリアと以北の哨戒レベルを上げろっ、今からそっちに行く!」
執務机にあるコンソールにそう告げると、ブーンは慌ただしく部屋を出ていった。

(,,゚Д゚)「お前の勘は?」
慌ただしく出て行くブーンを見ながらギコは尋ねる。

('A`)「もう現役じゃないから当てにならないだろうが………嫌な感じはする」

(,,゚Д゚)「根拠としては十分すぎるな」

('A`)「いやいや、昔みたいにあてすんなって。だが、現実問題として可能なのか?」

(,,゚Д゚)「そうだな、一般兵と標準MDでは厳しいだろう。あの崖を迅速に降下して、強襲をかけれるレベルの機装兵なんて……そうはいな…い」
少し歯切れ悪くギコは言い切る。

('A`)「心当たりが?」

(,,゚Д゚)「ヴィッパーならあるいは…」

('A`)「VIP王国特務機関ね。あらゆる技能を高水準で行使できるVIP王国生え抜きのエリート騎士で編成されたあの部隊か……でもあり得るのか?」

(,,゚Д゚)「わからんが、お前の勘も告げているようだし可能性としては低くない。俺もチームを緊急招集させて格納庫で待機するとしよう」
 そう言うや否や、ギコも足早に部屋を後にした。

('A`)「おいおい、俺はどうしたらいいんだよ……」
 思いつきで言った言葉が段々と現実味を帯び、不安を掻き立てる。ドクオはその不安を拭うかのように天井を仰いだ。

30 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 20:49:51 ID:YlrbT5fg0


( ´_ゝ`)「あー、さっさと終わらして録画してある魔法幼女マリンちゃん第163話みたいわ」
 西方面軍基地の北にある崖上に潜伏している男の一人がMD内でポツリと呟いた。

(´<_` )「あれまだ続いていたのか、と言うか作戦前でもアニメの事を考えるアニジャの脳は手遅れだな。一度爆竹で脳を洗浄する事を推奨する」
 独り言のつもりが、オープンになっていた回線を拾われた挙句、容赦ない毒舌を返される。

( ´_ゝ`)「いや、オトジャ、それ死ぬから。て言うかどうでもいいけど乾燥ひどい、肌がピリピリする」

(´<_` )「ヒート、緊張していないか?」
 オトジャと呼ばれた男はその声を無視し、違う人物に呼びかける。

31 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 20:51:25 ID:YlrbT5fg0
ノパ听)「あ、ははははい、大丈夫でふっ!!」
 呼びかけられた女性は即座に返答するが緊張を隠せないでいた。

( ´_ゝ`)「はい噛んだー、ヒーちゃんアウトー」

(・∀ ・)「あー、なんだって名誉あるヴィッパーにこんなどん臭い女がいるんだよ、しかも新兵とかウザってーな。勝手に死ぬのはいいが足引っ張んなよ。このまんこ」

(´<_` )「またんき」

( ∵)「彼女は公正な選抜試験においてトップクラスの実力を示している。君の発言はただの中傷だ。発言を撤回しろナガタ二等魔装騎士」
 オトジャの声を遮り、別の厳めしい声が淡々と叱責する。

(・∀ ・)「はいはい、ビコーズ副隊長。すんませんね、て事でー、今度ベッドの上でお詫びさせてちょーだい、ひゃははっははは」

(´<_` )「またんき、いい加減にしろよ」
 またんきの下卑た発言にオトジャは静かに怒りを露わにする。

(´・ω・`)「お喋りはそこまでだ。」

32 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 20:53:32 ID:YlrbT5fg0
−騒動起こりそうだった空気が、しょぼくれた顔の男発言、急速に鎮まる。

(´・ω・`)「またんき、そこまで言うからにはその実力を彼女に見せろ、アタックは君がトップだ。右にオトジャ、左にアニジャ、中央にビコーズとヒート。殿は僕が引き受ける」
 それまで騒然としていたオープン回線が嘘のように静まり、男の声だけが流れる。

(´・ω・`)「Bラインまではそのまま密集形態で突入する。ライン到達と同時に各員で独自に遊撃開始だ。基地機能を可能な限り停止させろ。」

( ´_ゝ`)「了解だい」
(´<_` )「了解しました」
(・∀ ・)「了解了解ー」
( ∵)「承知です」

(´・ω・`)「ヒーちゃん、リラックスしていこう、いいね?」

ノパ听)「は、はいっ、了解です。ショボン隊長」

(´・ω・`)「ん、いい返事だ。よし、じゃあ行こうか」
 静かな駆動音と共に六機のMDが、その体躯を起こす。立ち上がった六機は纏っていた反光学外套を着脱する。彼らヴィッパー第三部隊によるラウンジ西方面基地への強襲が闇夜と共に開始された。

33 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 20:55:12 ID:YlrbT5fg0


初めに異変に気付いたのは、崖から少し離れた監視塔を訪れた哨戒兵だった。

彼はいつも通り異常なしの定時連絡を入れると、いつも通り野戦服に隠していた携帯ゲームを手に取り、いつも通り遊び始めた。
監視塔から見える傾斜角80度前後の切り立つ崖は西方面軍一有名な要塞として知られている。この崖を降下してこようとする人間は気が狂っているか、自殺者かのどちらかでしかない。そしてそんな人間はこの近辺には存在しないと彼は自分に言い聞かせた。

それもそのはず、彼が哨戒任務についてはや半年、何一つ異常が無かったからだ。

34 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 20:56:20 ID:YlrbT5fg0
( ・3・)「はぁーだりーなぁ……と、クソッ、ゲームオーバーかよ」
単なる気まぐれだった。

携帯ゲームの液晶にゲームオーバーの文字が現れると、彼は舌打ちをしつつゲームの電源を切り、空を眺める。
普段は夜空を眺める事などしないが、何となく気分転換で見上げた。爛々と夜空に輝く星々を暫く眺め、たまには悪くないなと思いつつ、視線を元に戻す。

その時だった。彼の視界に一瞬か細い光源が入る。不審に思った彼はすぐさま光学双眼鏡で辺りを見回した。しかし反応はみつからず、ただの思い過ごしだったのかと首をかしげる。何気なしに一応と、崖の方も見てみるとそこには単眼のMDが六機存在していた。

( ・3・)「あ、え?えぇ?」
先程崖上を確認した時は何も反応が無かったのに。
一瞬思考が止まるがすぐさま敵襲である事を理解した彼は腰部にある無線に手を伸ばす。

( ・3・)「本部、こちらB-7監視塔、崖うびゃっ」
無線に緊急事態を伝えようとした刹那、彼の肉体は、すぐ横を通過した巨大な銃弾の衝撃波を一身に受け千切れ飛んだ。

35 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 20:57:14 ID:YlrbT5fg0

「駄目です。反応ありません」
「呼びかけ続けろ、それと周辺を哨戒中の兵士に至急B-7監視塔に行くように指示するんだ」
「了解」

ラウンジ西方面軍基地司令塔本部司令室は騒然としていた。いつも通りの夜勤のはずが、定時連絡の後に兵士の一人から音信が入るもすぐに途絶。おぼろげながら緊急事態であると皆感じていた。

36 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 20:58:01 ID:YlrbT5fg0
( ゜ω゜)「ふぃーふぃー、しんどー……」
そんな中、勢いよく司令室に入ってきたのはブーンだった。余程急いできたのか、肩で息をしながら早歩きで部屋の中央へと歩み寄る。

( ^ω^)「どうなっている?」

「はっ、B-7エリア哨戒中の兵士から音信が入るも、すぐに途絶。それから反応がありません」
傍にいた通信兵が現状を伝える。

(;^ω^)「遅かったか、つか、やっぱドックンの勘はマジ当たるお」
肩を落としつつブーンはぼそりと呟く。

37 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 20:59:31 ID:YlrbT5fg0
「少尉?先ほどの通信なんですが」

( ^ω^)「ん、すまない。基地内全域に通達。基地内に敵がMDで侵入した可能性あり、全員レベルAで対応だ」

「少尉!?」
いきなり部屋に入ってくるや否や、厳戒態勢の指示を出すブーンに、司令室に詰める隊員達は困惑の顔色を浮かべる。

( ^ω^)「早くしろっ!これが予想通りなら時間の勝負になるぞ」

「第三司令塔より入電!C-6エリアより敵MDを確認。その数6機!!」

ブーンが言葉を言い終わらないうちに別の通信兵が悲鳴のような声をあげた。

その言葉を聞き、ブーンはすぐさま手元のコンソールを操作し、地図を出す。敵の移動スピードの速さに内心驚愕しつつも応戦の指示を出す。

38 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:01:01 ID:YlrbT5fg0
「C-5南エリア警備中のアズクッド機の反応消失!」

「8番格納庫待機中のカバル隊が敵機と戦闘に入ります」

「D-3,4エリア警備中のホーテッド隊、及び6番格納庫待機中のグイン隊も出撃。応戦に入る模様!」

「A-8エリア警備中のバルク機もC-5に移動中」

「第三司令塔との交信が途絶!!」

「レイモンド隊、増援に向かっています」

「駄目です!カバル隊4機反応消失しました」

「グイン隊も撃破された模様!」

「6番格納庫との音信が取れません!」

「E-7エリアより入電、敵機は密集形態のまま南下中との模様」

「ホーテッド隊全滅です!」

39 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:02:54 ID:YlrbT5fg0
( ^ω^)「くっ、なんちゅー奴らだ。出撃できるMDから随時出撃させろ!恐らくここが本命だ。何としても足止めするんだ!0番格納庫の教導班との通信は?」
異常な進軍スピードと戦闘能力に、ブーンは戦慄を覚えた。

「今繋がりました」

( ^ω^)「こっちに廻してくれ」
そう言うと同時に手元のコンソールに見覚えのある女性が現れた。

ξ゚听)ξ「こちら0番格納庫。少尉、この警報は一体…」

( ^ω^)「ツン君、敵襲だ。ラインハルト特務大尉は傍に居るか」
ブーンはコンソールに映る女性の声を遮り、用件を伝える。

ξ゚听)ξ「隊長ですか?ええと、あっ」

(,,゚Д゚)「こちらラインハルトだ。ブレンテッド、どうなっている?」
コンソールから女性の姿が消え、見知った顔が現れる。

( ^ω^)「どうもこうも『どんぴしゃ』です」

(,,゚Д゚)「ちっ、言っとくが『ドール』を含む教導班の機体は全機整備中で動かせん、演習用のクレイドを使わしてもらうぞ?」

40 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:04:28 ID:YlrbT5fg0
( ^ω^)「承知しました。予想が正しければ10…いえ、6、7分以内に0番格納庫付近を通過します。応戦していただけますか」

(,,゚Д゚)「…了解した。俺達が足止めしている間に戦力を立て直せ」

( ^ω^)「はい……大尉、非常に申し上げにくいですが、混成科学教導班が現在事実上の最終防衛ラインになります。何とか凌いでください」

(,,゚Д゚)「ちっ、相手が凄過ぎるのかこっちがザルなのか…まぁ任しておけ」

(,,゚Д゚)「と、言う事だ」
通信を切るとコンソールから顔を上げギコは振り返る

( ^Д^)
ξ゚听)ξ
( ><)
(*゚―゚)

41 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:05:24 ID:YlrbT5fg0
そこには見知った部下達が直立して指示を待っていた。

(,,゚Д゚)「細かい事は分からんが敵は精鋭部隊のようだ。各員演習用クレイドの搭乗許可が下りた。時間が無い、起動させた者からB装備で出撃、プギャーはロケットランチャーも携帯しろ。連中の足を止めるぞ。詳しくは追って指示する。教導班、出撃だ!」

「了解!!!!!!」
返事と同時に皆、走り去る。

(,,゚Д゚)(しかし、突撃速度が速すぎる、技量云々以前に機体性能が桁違いだろう、あいつも居れば…いや……とにかくしんどい数分間になりそうだ)

42 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:07:43 ID:YlrbT5fg0


雲一つない澄んだ夜空の下、けたたましい警報の中6機のMDが高速で移動しつつ、ラウンジ西方面軍基地を蹂躙していた。

(・∀ ・)「あっはっはー、死ね死ね!!どいつもこいつもおおおおおお、ラウンジの蛆虫は死ねぇえええええ!ひゃははははは!」
両足のフットペダルをフルスロットルで踏み込みつつ、奇声を発しながらまたんきは操縦桿を巧みに捌く。目まぐるしく変化する視界に映るモノ全てに照準を合わせ、破壊の限りを尽くしていた。

彼ら6人が搭乗するMDは皆同じ姿形をしていた。
中世の騎士の甲冑を連想させるそのMDは全体的に細身である。
騎士の兜を模した頭部の奥から、怪しく光る6つの単眼が疾走しつつ基地を睥睨していた。

(´<_` )「またんき、先行しすぎだ。」
コクピットの右端に映ったラウンジのMDへとオトジャは照準を合わせ、トリガーを引き絞る。

43 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:08:38 ID:YlrbT5fg0
遅れて爆発音。すでに次の標的へと照準を合わせながら、一人突出するまたんきへと呼びかける。

(・∀ ・)「はっ、オトジャ、この程度の速度についてこれないのか?サスガル兄弟は名ばかりの一級魔装騎士だな」

( ´_ゝ`)「階級とかどうでもいいけど、お前のおかげで密集陣系崩れかけてんの。空気読めよjk」
格納庫と思われる建物を掃射しつつアニジャが呆れた声をあげる。

(・∀ ・)「あぁ?どっちみちもうBラインだしいーだろーがよー」
眼前に迫るMDを右にかわすと同時にまたんきの搭乗するMDは器用に敵機の足を掬い、転がす。

44 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:09:55 ID:YlrbT5fg0
( ∵)「集中しろ、ナガタ。そろそろ敵も対応してくる、今までの様には行かんぞ」
またんきを咎めながら、ビコーズは即座に転倒した敵機へと容赦なく銃弾を見舞う。

絶えず口論を交わす彼らではあったが、その連携は迅速かつ華麗であり、応戦するラウンジのMDは為す術もなく撃破されていく。

( ∵)「隊長」
ビコーズは視界右端に映る立体地図を見る。

(´・ω・`)「ん、Bライン到達だね、各機予定通り頼…またんき!!」
ショボンが各機に分散の指示を出そうとしたその時、またんきのMDの居た大地が爆発した。

45 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:11:21 ID:YlrbT5fg0


( ^Д^)「外したか」
クレイドを起動させたプギャーは真っ先に格納庫を飛び出し、機体を走らせる。機体の脚部に収納されていた回転車輪が展開されると、足裏からも車輪が展開される。『RB(ローラーダッシュ)』と呼ばれる高速移動方法を使い、プギャーは真っ先に戦場へと向かった。

移動を開始して直ぐ、未確認の機影が眼に入った。

反射的にろくに照準もつけず、自機が携帯するロケットランチャーを放つと、すぐさま近くの建物へと姿を隠した。

ξ゚听)ξ「ちょっとプギャー、先走らないでよ」
遅れてツン機も現場に到着する。

( ^Д^)「ツン!旋回しながら、隠れろ」
ツン機への集中砲火を危惧したプギャーは建物から機体を現すと再びロケットランチャーで射撃体勢に入るが、プギャーがトリガーをひくよりも先にロケットランチャーが爆散する。

(;^Д^)「ッ、やりやがる」
ロケットランチャーが狙い撃たれた事をすぐさま理解したプギャーは、機体を立て直す。爆発の煙で視界が塞がったため後方に跳躍した瞬間、プギャーのクレイドが元居た地を、煙の中から現れた敵MDが手に持つ戦斧で荒々しく砕いた。

その流れのまま、敵機はプギャー機へと肉薄し、横薙ぎに戦斧振う。

ξ;゚听)ξ「プギャーッ」
(´・ω・`)「ひと…ちっ」

46 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:12:43 ID:YlrbT5fg0
必殺の一撃がプギャーの乗るクレイドを捉えようとしたその刹那、横手から現れた別のクレイドがMD−ショボン機を蹴り飛ばす。

寸での所で気付いたショボンは操縦桿をひねり、自ら蹴られた方向に飛んで威力を殺した。

(,,゚Д゚)「プギャー、いけるか?」
部下の窮地を救ったギコは今蹴り飛ばした敵機の肩に描かれたエンブレムを確認し、内心舌打ちをする。

以前見た時とは少しデザインが違うが中世の騎士を模ったその外観は忘れようもない。
VIP王国が誇る第三世代型最新軽量MD『アークナイト』。
エース級の兵士にしか支給されないその超高性能な機体と肩のエンブレムはギコを憂鬱な気分にさせた。

(,,゚Д゚)「奇妙な縁ですなぁ、バランタイン卿」
照準を眼の前の機体に合わせたまま、ギコはオープンチャンネルで呼びかける。

(´・ω・`)「これはこれは、いい動きをするクレイドだと思えば、ラインハルト卿でしたか、お久しぶりですね。しかしこんな片田舎で何をしているんです?」
対するショボンはアークナイトを棒立ちにさせたまま、応対する。

47 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:13:54 ID:YlrbT5fg0
(,,゚Д゚)「相変わらず癇に障る野郎だ。だがこれ以上は好き勝手させん!!」
ギコがトリガーを引くと、クレイドの手に持つMD用の短機関銃から射出された弾丸が、アークナイトを襲う。

(´・ω・`)「相変わらずの直情型だね。まぁ旧式のクレイドでどこまでやれるか楽しませてもらおうか。またんきとヒートは施設の破壊。サスガル兄弟とビコーズはこいつらの相手をしろ。こいつらはさっきまでとは違う、一応油断するな」
俊敏な動作でアークナイトは横に跳躍し、軽々とギコの射撃を回避する。

(,,゚Д゚)「各員、機体の性能が違いすぎる。近接戦闘では手も足も出んぞ。とにかく距離を保ち、近寄らせるな。すぐに援軍が駆けつけてくる」
両隊長が指示を出すや否や、銃弾が飛び交い、目まぐるしく機体が交錯する。

本日一の激戦今、開始された。

48 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:15:22 ID:YlrbT5fg0


('A`)「あー、どっちに行きゃいいんだよ」
ギコ達が出撃する数分前、ドクオは迷子になっていた。

警報と共に敵の侵入が基地内に全域に伝達される。自分の勘の良さを嘆きつつも、敵が攻めてくるのにのんびりしているわけも出来ず、ドクオは部屋を飛び出した。

あても無く彷徨うドクオだったが、そもそも兵士でも無い自分には何もすることが無い事に今更気付く。
軽い徒労感と焦燥を感じながら、ドクオは途方にくれていた。

从 ゚∀从「おおーい、あんた、あんただよあんた!!」
不意にハスキーな声に気付き、ドクオは振り返る。そこには片眼を前髪で隠し、白衣をきたスレンダーな美女が立っていた。

('A`)「…?俺?」
自分を指さしドクオは答える。

从 ゚∀从「あんた以外にこの通路に他に誰がいんだよ」
小走りで駆け寄ってきた女性はずい、とドクオに顔を近付ける。

(*'A`)「なななん、なんすか」

从 ゚∀从「あんた、見たとこ軍の人間じゃないけど、MD操縦できるか?」

('A`)「MD?」

从 ゚∀从「そう、で、操縦できるの出来ないの?どっち!?」
更に顔を近付けてくる女性に対しドクオはその分だけ後ろに下がる。

(;’A`)「でで、出来るけど」

49 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:18:38 ID:YlrbT5fg0
从 ゚∀从「ラッキー、言ってみるもんだな。付いてきて」
それだけ言うと顔を引っ込め、女性は駆け出した。

('A`)「あのー、良くわかんないんすけど、」
横を走りながらドクオは尋ねる。

从 ゚∀从「あぁ、ちょっとどうしても行きたい場所があるんだ。でも今敵が攻めて来てるらしいじゃん?流石に生身じゃ怖いからMDに乗っけてってもらおうと思って」

('A`)「はぁ、でも勝手に良いんですか、俺部外者だよ?」

从 ゚∀从「あたしゃ、この基地内ではそこそこ権力あるから、MDの一機位なら拝借してもいけるはず…多分」

(;’A`)「多分て……」

从 ゚∀从「そこ右だ、まぁ、非常事態だし大丈夫だろ」
ハインの言葉を聞き右に曲がったドクオはさらに奥へと向かった。

从 ゚∀从「よし着いた」
ドクオ達が辿り着いたのは大きな扉の上に12番格納庫と書かれた場所だった。

50 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:21:07 ID:YlrbT5fg0
从 ゚∀从「こっちだ」
いつの間にか横の小さな扉に移動していた女性は扉に設置されている機器にカードキーをかざしていた。

扉が開くと、女性は勢いよく中に入る。ドクオも続けて入るが、中は真っ暗闇だった。

「ここら辺に……」近くの壁から先程の女性の声が聞こえ、ドクオがそちらに向かおうとした矢先に何かが作動した音が聞こえてきた。
−ガシャン
数瞬後建物全体に明かりが灯される。

从 ゚∀从「うわっちゃー、外したぁー」

('A`)「おお」
女性の嘆きの声とドクオの驚きの声が同時に上がる。

彼らの眼前には6台のMDが体育座りの要領で鎮座していた。
ドクオは良く見知ったその機体を眺める。オルテック社製第二世代型MD『トロル』。寸胴体系と、その腕部の長さ、太く無骨な脚部が特徴的であり、不格好さと粗暴に見える外観から、トロル名づけられたMDだった。

前大戦時はラウンジ公国の主力MDとして配備されていたがしかし、第三世代型が普及した現在は日の目を見る事は無くなっている。

51 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:21:59 ID:YlrbT5fg0
从 ゚∀从「くっそー、おいあんた、悪いが別の格納庫に行く。付いてきてくれ」
そう言って駈け出そうとした女性をドクオは呼びとめた。

('A`)「待って」

从 ゚∀从「はぁ?何?」

('A`)「一刻も早く行きたいんだろ?別の場所に行って、そこから出るよりこいつで出た方がずっと早いはずだ」
くいと親指で後方のトロルを指しながら、ドクオは告げる。

从 ゚∀从「こんな旧式のポンコツ、第一こいつらが整備されたのはもうだいぶ前だぞ?まともに動くとは思えん」

('A`)「大分って?」

从 ゚∀从「あー確か前回の総合演習だから一か月弱だな。演習後に整備されてっきりのはずだ」

('A`) 「なら大丈夫だろ。トロルは機体性能こそ決して高くないが内部の頑丈さだけは全MDの中でもピカ一の機体だ。ろくに整備をしなくても致命的な損傷さえなけ れば連続戦闘に耐えうる。その突出した強度で他のオルテック社のMDを差し置いて公国主流となった機体だからな」

从 ゚∀从「へえ、詳しいね。乗った事あるのか?こいつに」
すらすらと一部の者しか知らない事実を告げるドクオに女性は訝しむ。

52 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:22:40 ID:YlrbT5fg0
('A`)「あぁ、昔、少しね……」

从 ゚∀从「ふうん、まぁ、操縦するあんたがこれでいいならそれでいいよ、言うのが遅れたけどあたしはハインリッヒ。あんたは」

('A`)「俺か?……俺は、ドクオだ」
一瞬、本名を言う事をためらうが、ここで隠す必要性を感じず、正直に告げる。

从 ゚∀从「ドクオ………ね、頼りにしてるぜ、ドクオ」
遅い自己紹介を終えた後、二人は足早に一機のトロルに乗り込んだ。

53 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:23:56 ID:YlrbT5fg0


ξ#゚听)ξ「くそっ、ちょこまかとっ!!」

( ´_ゝ`)「当たるか、ばーか、かーば」
ツンの乗るクレイドがアニジャのアークナイトに向かい射撃を行うが、跳ねまわるアニジャ機を一向に捉えらずにいた。

(´<_` )「もらった」
(;^Д^)「ちっ」

プ ギャー機を足止めしていたオトジャは素早くアークナイトを移動させ、ツン機の死角に回り込む。プギャーのクレイドとオトジャのアークナイトにツン機が挟ま れる形になり、プギャー機は一瞬攻撃が出来なくなった。その隙をつき、オトジャはフットペダルを乱暴に踏み抜く。その動作に反応したアークナイトは力強く 大地を蹴り、一瞬でツン機へと接近した。

(*゚―゚)「ツンちゃん!!」
寸での所で間に割って入ったしぃ機が盾をかざし、オトジャ機の振う銃剣を間一髪防ぐ。

(´<_` )「無駄なんだよ」
しかし、圧倒的な出力差を見せつけるかのように、オトジャは銃剣を振りぬき、盾を弾かれたしぃ機は機体のバランスを崩す。

ξ゚听)ξ「男なら正々堂々来なさいっ」
振り向きざまにツン機は辺りを掃射するがオトジャ機は既に斜め後方に跳躍し、射撃の範囲外に機体を移動させる。

54 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:25:49 ID:YlrbT5fg0
( ´_ゝ`)「よそ見しちゃっていいのかい」

( ^Д^)「お前がなッ」

( ∵)「アニジャ!!」
プギャーとけん制しあっていたビコーズ機は駆けつけた増援のクレイドの銃弾を回避するため、プギャー機から一瞬視線を外す。どの隙をプギャーは見逃さず、振り向きざまにアニジャ機へと銃弾を見舞う。
背を向けたツン機へとアニジャは照準を合わせていたが、ビコーズの声を聞き、反射的に機体を移動させた。即座にビコーズ機がプギャー機を狙い撃つがプギャー機は盾を構え、飛来する銃弾を弾く。

(・∀ ・)「まだやってんのかよ、お前ら」
プギャー機が放ったロケットランチャーの初弾を回避したまたんきは、近隣の施設をひとしきり破壊しつくしていた。
戻って来たまたんきが横手から射撃を行うが、予め分かっていたかのように、プギャーはステップを踏み、最小限の動きで回避した。

( ∵)「中々やる奴らじゃないか」

(´<_` )「少しは楽しめたな」

( ´_ゝ`)「ちょっとマジやばかったんですけどー。かすったし、音したし」

55 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:26:45 ID:YlrbT5fg0
(´<_` )「真面目にやれよアニジャ…しかし、そろそろ外野が集まりだしてきたな」
遠方から飛来する銃弾を掲げた盾で防ぎながらオトジャは周りを見渡した。

( ∵)「外野は私とナガタで対応する。サスガル兄弟はそいつらを頼む」
そう告げるとビコーズ機は集結する増援軍へと向かった。

(・∀ ・)「また、外野かよ。俺もこっちがいいっつーのー」

( ∵)「命令だ。」
簡潔なビコーズの指示に従い、またんきも別の増援軍へと向かう。

( ´_ゝ`)「だって」

(´<_` )「まぁ、いいけど…ヒート、戻って来い!遊びは終わりだ。そろそろ全力で仕留める」

ノパ听)「了解ですっ!」

56 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:27:36 ID:YlrbT5fg0

( ^Д^)「ツン、射撃時も常に周りを見ろって言ってんだろうが、しぃ姐がいなかったらやばかったぞ!」

ξ゚听)ξ「うるさいわね!あんただって真っ先にやられそうになってたじゃない」

( ^Д^)「あれはお前が…」

(*゚―゚)「二人とも、痴話喧嘩は後よ、ビロード君、大丈夫?」
二人の言い合いを諌めるとしぃはビロードへと呼びかける。

(;><)「だ、大丈夫です。」

ξ゚听)ξ「て言うか、あんた何もしてないじゃない。まぁでもそれでいいわ、視界に現れないでね、邪魔だからどいてなさいよ」
吐き捨てるように言うと、ツンは射撃を開始した。

(*゚―゚)「ツンちゃん!!」

( ^Д^)「いや、しぃ姐、今回ばかりは流石にビロードを気にする余裕ないっすから、ビロード、お前は隠れとけ、まだ死にたくないだろ?」

(*゚―゚)「プギャー君まで!」
ツンに続き、プギャーも戦闘に入る。

57 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:39:12 ID:YlrbT5fg0

(,,゚Д゚)(クソっ、早くあいつらと合流しないと)
統制の取れていない動きで戦う自分の部下達を一瞬見やり、ギコはすぐに駆けつけたい衝動にかられる。

(´・ω・`)「おや、よそ見する余裕があるなんてね」
オープンチャンネルで語りかけつつ、ショボンのアークナイトはギコ機を攻め立てる。その猛攻を、装甲を削られながらもかろうじてギコは攻撃を回避する。

お互い相手の動きをある程度知っている為、機体の性能差がそのまま実力差に表れていた。

(´・ω・`)「一つ言っておくけど、この基地内で一番危険なのは僕とアークナイトの前にそんな型遅れの機体で立つ君だよ?」
戦斧を構えるアークナイトに対し、ギコはただただ焦りを覚えた。

(;,,゚Д゚)(何とか、しないと……)既に戦闘が開始されて十分以上が経つが、未だに現れない増援にもどかしさを感じながらギコは策を巡らせる。

58 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/17(木) 21:41:52 ID:YlrbT5fg0
「クオだ、ギコ、聞こえるか?ん、このチャンネルであってんの?」

「合ってるから、これがラインハルト大尉直通の回線だ」

そんな時、不意にインカムに二つの声がギコの耳に届いた。しかも、どちらもギコの良く知った声である
(,,゚Д゚)「ドクオ!?それにタカオカ博士」

('A`)「あー、あってんのな。じゃ、気をつけて」
恐らくタカオカ博士に喋りかけているのだろう。ギコはすぐさま問いかける。

(,,゚Д゚)「どういう事だ?」

('A`)「ハインリッヒが0番格納庫に行きたいって言うからアッシーやっただけだ。」

(,,゚Д゚)「…馬鹿が……」

('A`)「いやいや、お前らが思ったより頼りにならないせいだぞ?後でもみ消してくれよ、大尉なら出来るだろそれくらい。で、ギコ、俺はどうしたらいい?」

(,,゚Д゚)「ふん、手を貸せ!」
戯言を口にするかつての戦友に頼もしさを感じるが、ギコはぶっきらぼうに応えた。




−続く−

 

62 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/18(金) 16:03:45 ID:6YN1nvik0
人物紹介2
( ^Д^)プギャー=ルーンテッド 22歳
ラウンジ公国軍、混成科学教導班所属。テストパイロットを務めるギコの補佐を担当する。
全体的に軽く、適当だがMD操縦技術は目を見張るものがる。
階級は機装上等兵。

ξ゚听)ξツンデレ=リリエッタ 22歳
ラウンジ公国軍、混成科学教導班所属。プギャーと同じくテストパイロットを務めるギコの補佐を担当する。
勝気な性格で理想主義者。教導班きってのトラブルメーカでもある。
プギャーとは同期であり、ライバル視している。
階級は機装上等兵。

(*゚―゚)しぃ=マツナガ 24歳
オルテック社の社員。現在はオルテック社とラウンジ公国とのMD共同研究開発チームである混成科学教導班に派遣されている。
オルテック社を代々支えてきたマツナガ家の娘。演習時はMDに搭乗し、試験機の計測を担当している。
ギコとは許嫁の関係。
オルテック社の派遣員である彼女に階級は無いが下士官以上の権限を与えられている。

( ><)ビロード=オルスター 19歳
ラウンジ公国軍、混成科学教導班所属。
臆病で、小心者。能力も決して高くない。
故人であるワカッテマスの弟でもある。
階級は機装二等兵。

从 ゚∀从ハインリッヒ=タカオカ 26歳
オルテック社の社員。MD開発、主に動力面での開発の第一人者。第一世代MD開発に多大に貢献したタカオカを祖父に持つ。
美人ではあるがマッドサイエンティストでもある。
混成科学教導班統括し、実質は教導班のトップである。
現在は機動力の限界を追求したX−0シリーズの開発に力を注いでいる。

63 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2010/06/18(金) 16:16:38 ID:6YN1nvik0
人物紹介3
(´・ω・`)ショボン=バランタイン 25歳
VIP王国皇室専属の特務機関『ヴィッパー』第三部隊隊長にしてバランタイン子爵。
ギコとは過去、戦場で何度も戦っている。
階級は特務魔装騎士

( ´_ゝ`)アニジャ=サスガル 24歳
ヴィッパー第三部隊隊員でオトジャの双子の兄。
変態。
階級は一級魔装騎士
(´<_` )オトジャ=サスガル 24歳
ヴィッパー第三部隊隊員でアニジャの双子の弟。
常識人。
階級は一級魔装騎士

ノパ听)ヒート=スナオ 22歳
ヴィッパー第三部隊隊員。
新兵であり、ラウンジ西方面軍基地強襲作戦が初陣。
おっぱいでかい。
階級は三級魔装騎士

( ∵)ビコーズ=ヴァンデルセン 25歳
ヴィッパー第三部隊副隊長。
生真面目。
階級は二級上魔装騎士。

(・∀ ・)またんき=ナガタ 24歳
ヴィッパー第三部隊隊員。
粗暴で下衆だが、その実力は性格、言動を差し引いてもお釣りがくる。
階級は二級魔装騎士

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