- 17 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金)
23:00:49.95 ID:3CoXvj+dO
- act.8
第25セクター――今なお人間側との小競り合いが続く最前線である。
工業地域という背景から、ロボットの活力となるエネルギー源が豊富に備わっていて、
攻略の対象になったのだ。
そこでは昼夜を問わず爆音が轟き、人ともロボットともつかぬ悲鳴があちらこちらで木霊していた。
⊂二二(;^ω^)二⊃「ひぃぃぃぃ!」
そんな中、ブーンはエネルギー缶の詰まったケースを肩に掛けて縦横無陣に疾走していた。
補給が滞れば戦局に影響を与えてしまうため、主計班は総出で配給に当たっていたのだ。
(;^ω^)つ□「皆の分のエネルギーだお!頑張ってお!」
(,,゚Д゚)「済まない!ここは危険だから、すぐ下がってくれ!
街道は危険だから、少し遠回りだが裏道から帰るんだ!」
( ^ω^)「把握!」
(,,゚Д゚)「また頼む!」
( ^ω^)b「おkwwwwwwwwww」
ギコはブーンからケースを引ったくると、炎渦巻く戦場へと走り去っていく。その背中は、非常に頼もしかった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
- 18 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金)
23:01:43.44 ID:3CoXvj+dO
- その三日後、伝令班の一人が第25セクターからの通達を本部に持ち帰った。
『ヤラナイカに遭遇。戦線維持不可能。なお、我らの救助等の一切を禁ず』
その内容は、実質的には、攻略班たちの遺書だったのだ。
*「生存者がいるかもしれん!直ぐに救助に向かおう!」
*「そんなことをしたら、同胞の遺志が無駄になる!それに、上からの命令を待つべきだ!」
一通の書状を巡って、攻略班の意見は真っ二つに分かれた――真っ先に手紙を手にしたのは攻略班であったのだ。
一つは生存者の可能性を考慮した強行派、そして書状の遺志を反映した穏健派の両派の議論は尽きることがなかった。
( ゚∀゚)「俺は行くぞ。仲間を見捨てて長らえる命など持ち合わせてはいないッ!」
端を発したのは、攻略班3番隊の隊長であるジョルジュだった。
どういう経緯で生まれたかは知る由もないが、堅牢な装甲と強力なマニュピレーターを駆使した肉弾戦で名の通った男である。
- 19 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金)
23:02:44.18 ID:3CoXvj+dO
- (´・ω・`)「僕も行くよ。ギコとは長い付き合いなんだ。
……誰も止めてくれるなよ」
ジョルジュに賛同するのは、7番隊隊長のショボン。
機械工学の造詣が深く、自ら製作した兵器を自ら駆るというもの珍しい男だった。
これで、隊長クラス二人が救助の意を固めたのである。
混沌とした潮流は一気に強行派が主流となり、ついには救助作戦が独断で敢行されることとなったのだった。
- 20 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金)
23:03:45.99 ID:3CoXvj+dO
- ――その頃――
( ^ω^)「そういえば、この組織のボスってどんな人なんだお?」
从 ゚∀从「さぁ……?」
( ^ω^)「ちょwwwwwww」
从 ゚∀从「ボスと面会出来るのは、ごく少数の命令を現場に伝える幹部だけ。下っぱの私には関係ない話さ」
水面下で行われつつ救助作戦など露知らず、ブーンはハインリッヒと共にエネルギーブレイクを楽しんでいた。
(;^ω^)「そ、そんなんでいいのかお?」
从 ゚∀从「構わないさ。大切なのは『誰が』ではなく、『どうするか』だからな。
トップが誰だろうと納得できる命令には従うし、そうでないなら拒否するだけだ」
( ^ω^)「拒否したことあるのかお?」
从 ゚∀从「いいや。命令はいずれも納得できるものだったからな」
そう言って、ハインリッヒはカップをぐいっとあおった。
ハインリッヒの話から、組織の大多数がボスの姿を見たことがないのだろうとブーンは推測した。
- 22 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金)
23:06:07.97 ID:3CoXvj+dO
- ( ^ω^)「(なんだか、不自然だお……)」
組織の長であるからには、構成員を鼓舞や現場視察をしなければならないはずである。
しかし、この組織に於いてはそれが異端であるのだ。
今まで気にも留めなかったことが胸に引っ掛かり、ブーンは組織に対して僅かな疑念を持ち始めた。
暗殺を恐れているのか、単に忙殺されて顔を見せられないだけなのかと
ブーンが様々な憶測を巡らしていた時だった。
*「皆!攻略班が第25セクターの救助に向かったらしいぞ!」
息を切らしてニュースを伝える男だったが、談話室とは温度差があった。
( ^ω^)「ほぇ?」
*「知らないのか?ヤラナイカが現れて壊滅寸前だっていう手紙を送ってきた所だよ!」
(;^ω^)从;゚∀从「な、なんだってー!」
- 23 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金)
23:07:24.29 ID:3CoXvj+dO
- 第25セクターといえば、ブーンが配給を担当した地区である。
そこが壊滅寸前であるなど、奮戦していた攻略班の姿からは想像もつかなかった。
(;^ω^)「ブーンが行った時はそんな感じじゃなかったのに……」
*「入れ換わりだったんだろう……。ヤラナイカと……」
( ω )「……」
ふと、頼もしかった背中が脳裏をよぎった。
今、ギコはどうしているのだろうか。壊滅寸前ならば、死んでしまったのだろうか。
はたまた、迫り来る恐怖と戦っているのだろうか。
……………………………………………………
(,,゚Д゚)『また頼む!』
( ^ω^)b『おkwwwwwww』
……………………………………………………
どちらにせよ――
( ω )「攻略班は何時ここを発ったお?」
*「えっ?」
(#^ω^)「いいから言うお!」
*「い、一時間ほど前らしい……!」
――自分には行かなければならぬ義務がある。
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- 25 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金)
23:09:06.01 ID:3CoXvj+dO
- 抱えられるだけのエネルギーを抱えて、ブーンは本部を飛び出した。
第25セクターへ向かう意を主計班の連中に伝えたとき、救助に向かった攻略班への補給も依頼されたのである。
(;^ω^)「い、急がなきゃ……」
家庭用でブーンの行軍スピードはそれほど速くない。
故に街道を使いたい所だが、敵との遭遇を避けるために遠回りの裏道をブーンは選んだ。
さらに大荷物を背負っているため、ブーンは焦るばかりであった。
( ^ω^)「ん?仲間かお!?」
道先から、小さな影が此方に向かってくるのにブーンは気付いた。
距離がある故に詳細は確かではないが、ロボットのように見える。
ヤラナイカの磨の手から辛くも逃れたのだろうか、一人らしかった。
( ^ω^)ノシ「おぉぉぉい!!」
呼び掛けが木霊する。しかし、返事はない。
- 26 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金)
23:10:14.69 ID:3CoXvj+dO
- 離れすぎて聞こえないのだろうかとブーンは推測し、呼び掛けを止めてさらに足を進めると、どんどんと距離が縮まった。
そして、次第にロボットの全容が明らかになって行った。
( ^ω^)「……!!」
ドサッ――!
荷物がブーンの肩から滑り落ちた。目を丸く見開き、立ち尽くす。
信じられない――ブーンの思考は、止まった。
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- 27 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金)
23:11:33.64 ID:3CoXvj+dO
- ( ゚∀゚)「これはひでぇ……」
(´・ω・`)「……敵が見当たらない。引き返したのか?」
*「生存者がいました!彼が言うには、敵は本部の方に向かったようです!」
(;゚∀゚)「何ィ!?馬鹿な!!俺たちは本部から来たんだぞ!?」
*「その、我々が使った街道ではなく、裏道を使ったようです……!」
(;´・ω・`)「入れ違いか!……すぐ引き返そう!」
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- 29 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金)
23:13:11.61 ID:3CoXvj+dO
- ――やらなーいか――
( ^ω^)「な、何でこんな所に!?」
――お前と俺で――
( ^ω^)「しょ、初期化されなかったおね!?」
――俺の胸に――
( ^ω^)「……その歌、歌うの止めろお」
――飛込んで来いよ――
('A`)「……久しぶりだな」
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- 30 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金)
23:14:37.96 ID:3CoXvj+dO
- interlude
『起■ろ!システ■は生■てる■ずだ!』
『マ■ュピ■ーターが■びてら!』
『■び落■しを持っ■こい!』
↓
『起きろ!システムは生きてるはずだ!』
『マニュピレーターが錆びてら!』
『錆び落としを持ってこい!』
interlude out
――つづく
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