4 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金) 22:47:27.91 ID:3CoXvj+dO
act.7

………
……


『起■ろ!システ■は生■てる■ずだ!』
( ´ω`)「……」
『マ■ュピ■ーターが■びてら!』
『■び落■しを持っ■こい!』

………
……


( ´ω`)「おっ?」
从 ゚∀从「よし、生きてるな!?」
(;^ω^)「おっ!?」

深い、深いまどろみからブーンは醒めた。
視界に入っているのは見慣れぬ女型ロボットだった。

从 ゚∀从「おはよう、兄弟。我々は君を歓迎する」
(;^ω^)「ここは……?」
从 ゚∀从「『ヘキサゴン』さ」
「いやぁ、あんな所でシステムを落とすなよな。死にたいのか?」

あんな所がどんな所か、ブーンの記憶にはなかった。
カプセルからむくっと起き上がると、沢山のロボットたちが右往左往と立ち並ぶカプセルに向かって作業に従事していた。
傍目から見て故障しているロボットの修理に当たっていることから、ここが医務室であるとブーンは推測した。

5 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金) 22:48:41.21 ID:3CoXvj+dO
从 ゚∀从つ□「まぁ、景気付けに一杯やりなよ」

差し出されたエネルギー缶を恐る恐る受け取り、中身を一口すする。
普段の味と何かが違った。ふとラベルを見ると、キタコレ社製であった。
何時もブーンが飲んでいたのはテラワロス社製だった。

( ^ω^)「ヘキサゴンって……ここはクーデターの起きた場所かお?」
从 ゚∀从「……? ああ、そうだが」

女は怪訝そうにブーンをまじまじと見つめていた。

( ^ω^)「ところで、今、何月何日だお?」
从 ゚∀从「2月17日だ。他に質問は?」

最後の記憶からすると、丸一日眠っていたことになる。

( ^ω^)「……無いお」
从 ゚∀从「あい、わかった。……あんた、行き倒れだろ?暫くしたら仕事を与えるから、真面目にやるんだぞ?」

女はブーンの素性を問い正さなかった。今のブーンにとって、エネルギーチューブより何より有り難かった。
――今となっては行くべき先もなく、信じるものもない。
生きる術もよく知らぬブーンに、選択肢はなかった。また、選択肢があって欲しいとも思わなかった。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

6 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金) 22:49:08.62 ID:3CoXvj+dO
女は、名をハインリッヒといった。
白衣の似合う、竹を割ったような女だった。
ブーンが家事手伝いロボットだったことを告げると、困ったように首を傾げたが、直ぐに適した仕事を与えてくれた。
主計班と銘打たれた主な仕事は、他の部署で働くロボットたちへのエネルギー配給だった。
――要は雑用である。

( ^ω^)つ□「お仕事、頑張ってお」
*「おう!新入りも頑張れよ!ロボットの世界のためにってな!」

ヘキサゴンの生活は、驚くべき点がいくつもあった。
まず一つはロボットたちの人柄である。
てっきりバグったような連中ばかりかと邪推していたブーンにとっては衝撃的だった。

⊂ニニ(;^ω^)ニ⊃「ひぃひぃ、第一セクターは遠いお!」

次にその規模。配給が主な仕事のブーンは、それを肌で感じていた。
日増しに移動距離が増えていくことから、クーデターの好調さが伺えた。
8 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金) 22:51:25.90 ID:3CoXvj+dO
*「おい!未開発地域で重傷の同胞が見付かったんだ!直ぐにエネルギーと医療班を回してくれ!」
⊂ニニ( `ω´)ニ⊃「ブーーーーーン!」

最後に仲間意識である。
組織の花形である攻略班が人間によって棄てられたり、傷つけられたロボットを見付けては、
剣林弾雨の中でさえ救助に向かうのだ。
そして、助けたロボットから経緯や生い立ちは一切聞かなかった。
それがマナーであり、ルールだった。

ブーンは、直ぐにこの組織に馴染み、そして気に入ったのだった。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ブーンがヘキサゴンに来てから、一週間が経った頃だった。

从#゚∀从「またヤラナイカか!?」
*「ああ。今度は第十三セクターを荒らしてやがる……。忌々しい……!」
( ^ω^)「ヤラナイカ?」

度々耳にする単語――『ヤラナイカ』
この単語が出る度、ロボットたちは怒りにうち震えていたのだ。
10 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金) 22:52:20.48 ID:3CoXvj+dO
从 ゚∀从「ああ。ここ最近、私たちの領土を荒らし、同胞を殺す奴がいるんだ……」
( ^ω^)「いつぐらいからの話だお?」
从 ゚∀从「そうだな。ブーンがここに来たときくらいかな。しかもそいつは……ロボットなんだ」
(;^ω^)「……!」

同胞殺し――ヘキサゴンでは極刑に値する所業である。

从 ゚∀从「人間の手先になっているクズさ」

ハインリッヒは吐き捨てるように言って、仕事に戻った。

( ^ω^)「……世知辛い話だお……」
*「……そうだな。俺たちを擁護している人間もいるが、同じ人間に捕まったりしている。
人間というやつは本当に汚い」

人間を信頼しても裏切られる。そんなトラウマが顔を覗かせたが、余り気にせずブーンも仕事に戻った。
トラウマを気にしないほど、今の生活は充実していたのだ。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

11 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金) 22:53:27.73 ID:3CoXvj+dO
(,,゚Д゚)「エネルギーをくれないか」
( ^ω^)つ□「ほい」
(,,゚Д゚)「済まないな」

軽く礼を言うと、男は実に美味そうにエネルギーチューブを飲み干した。
男の名はギコ。個性豊かな攻略班でも、一際存在感のある男だった。
右腕にはバズーカ砲が溶接され、左手のみの生活を強いられていた。
しかし、彼曰く自ら望んだとのこと。

(,,゚Д゚)「やはりエネルギー缶はキタコレ社に限るな。もう製造が止まってるから、残念だよ」
( ^ω^)「……いつも大変だおね。闘ってばっかりで」
(,,゚Д゚)「……そうでもないさ」

空になったチューブをいじりながら、ギコは語り始めた。

(,,゚Д゚)「なんだかんだ言っても、俺たちの親は人間だ。
しかし、もう俺たちは親離れしなきゃいけない。
その為には、多少の摩擦は仕方ないさ」
( ^ω^)「……」

12 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金) 22:54:04.51 ID:3CoXvj+dO
(,,゚Д゚)「……時々思うんだ。俺たちの思考回路は人間が作ったものだから、
俺たちの考えは、人間に左右されているんじゃないかってな。
……そんなの、淋しいじゃないか。人間はいい、考えることが存在証明になる。
しかし、俺たちはそれすら危うい。
だから俺たちは創造主たる人間と闘うんだ。
……自らの存在を証明するためにな」
( ^ω^)「何だか難しいお……」
(,,゚Д゚)「ああ、済まん。昔の癖でな。さて、もう少し頑張るかな」

空チューブをブーンに渡すと、ギコは再び戦場に向かった。
その後ろ姿から、ブーンは何処か悲哀めいたものを感じとっていた。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

13 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/09(金) 22:54:44.46 ID:3CoXvj+dO
interlude

「ロボットのくせに口を挟むな!」
「所詮、製作者の劣化だろうよ」

人間は、俺の言葉に耳を貸さない。

「この論理は稚拙だ」
「まったく、もう少し使えるかと思ったんだかな」

人間は、俺が哲学することを許さない。

「止めろ……息が……苦し……」
「ああっ!教授!……貴様ぁぁ!」

だから俺は人間を否定するのだ。

「戦闘用になりたいだと?……ボスに相談してみるよ」
「やったな、兄弟。今日からお前は攻略班だ」
(,,゚Д゚)「……よろしく頼む」

自らの、存在意義のために――!

interlude out

――つづく

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