26 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/05(月) 22:19:08.21 ID:3Hd7NIpOO
act.2

西暦2X21年――ロボット工学は栄華を極めていた。
原子炉、僻地、宇宙探査、レスキュー、警備といった人間にとって危険な分野で活躍するだけでなく、
大幅な低コスト化により、それまで国や企業、一部の金持ちにしか手にされなかったロボットが、一般人にも手に届くようになったのである。

从'ー'从「ハッピーバースデー!」
( ´_ゝ`)「もう俺らもおっさんだな」
(´<_` )「嫁さんは居ないがな」

テラワロス社では、流石兄弟の誕生日会が慎ましやかに執り行われていた。
木々は紅潮し、夜長ゆえか、夕方にも関わらず辺りは薄暗かった。秋の到来である。

( ^ω^)「だったら、可愛いロボット造って嫁にすればおk」
( ´_ゝ`)(´<_` )「天才あらわる」

ブーンは、普段、流石兄弟宅にて家事手伝いをしていたが、この日ばかりは流石兄弟の誕生日ということでテラワロス社のラボに足を運んでいた。

27 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/05(月) 22:19:45.12 ID:3Hd7NIpOO
从'ー'从「ところで、プレゼントがあるんですよ」
(´<_` )「なになに?」
从'ー'从「研究員一同で造ったロボットです。内緒で造るの大変だったんですよ?」
(*´_ゝ`)「もしやこの流れは……」

兄者は喜色を浮かべてプレゼントに期待を持っていた。
メイド型?女中型?はたまたお姫様型?と妄想は尽きない。

从'ー'从「入っていいよ〜」

渡辺の声に呼応するかのように擦りガラスが填め込まれたドアのノブがゆっくりと回った。

( ´_ゝ`)(´<_` )( ^ω^)「wktk」

そして――

('A`)「♪やらなーいか♪お前と俺でー♪俺の胸に〜飛込んで来いよ〜♪」
( ´_ゝ`)(´<_` )( ^ω^)「orz」

――妄想はうち砕かれたのだった。

28 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/05(月) 22:21:03.35 ID:3Hd7NIpOO
現れたロボットの容姿は少年で、少し人生を諦めたような悲壮感漂う顔立ちだったのだ。
その上、不気味この上ないくそみソングをひっ下げての登場である。

( ´_ゝ`)「……」
('A`)「ドクオです。よろしくお願いします」
(´<_` )「……」
('A`)「家事全般出来ます。一応、警備の真似事もプログラムされてます」
( ^ω^)「……」
(;'A`)「……ねぇ、渡辺さん?俺、いらない子?」
从'ー'从「ううん。皆さん、ドクオにどう接していいか戸惑ってるだけだよ。初対面だから」
( ´_ゝ`)「……帰ろうか」
(´<_` )「……ああ」
( ^ω^)「今日の夕飯はカレーにするお」
( ´_ゝ`)「イィヤッホォォォ!」
从'ー'从「戸惑ってるだけだよ……多分ね」
('A`)「シノウ……」
(;´_ゝ`)(´<_`;)(;^ω^)「正直、スマンカッタ……」

微妙な空気が流れたまま、ドクオは渡辺の手を離れ、流石兄弟に貰われて行った。
そして誕生日会はそのまま終り、一同は帰路に付いた。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

29 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/05(月) 22:22:48.21 ID:3Hd7NIpOO
流石兄弟たちは、テラワロス社近郊の閑静な住宅街に居を移していた。
以前の住まいとは対照的に、新築から何年も経っていない小綺麗な家だった。
内装も清潔感溢れ、ブーンの掃除が行き届いているのが目に見えてわかるようだった。

('A`)「へへっ……俺なんて……」

流石家に着くやいなや、リビングにてドクオはしゃがんで固まり背を向けながら、心の一つも分かり合えない自分自身を睨んだ。
周囲と上手くやって行けそうにない――家事ロボットとしてのアイデンティティに関わる問題である。

( ´_ゝ`)「おーい、ドクオ」
('A`)「ブツブツ」
( ´_ゝ`)「わっ!!」
('A`)「ごめんなさいすいませんごめんなさい」
(;´_ゝ`)「何を謝っているんだ?こっちへ来なさい」

兄者に手を引かれながら、ドクオはリビングを出た。二階に上がり、ある一室に通された。
その部屋には家具が一切置いておらず、人の息吹というものが皆無であった。
31 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/05(月) 22:23:58.19 ID:3Hd7NIpOO
(((('A`)))))「か、監禁」
( ´_ゝ`)「換金?何のことだ?」

震えるドクオの言葉に、兄者は首を傾げて訝しがった。

( ´_ゝ`)「この部屋が、お前の部屋だよ」
((((('A`))))))「ガクガクブルブル」

――ああ、自分はやっぱりいらないロボットなんだ。
しばらくここで監禁された後、思考回路を初期化され、燃えないゴミに出されるんだ――

( ´_ゝ`)「今は何も無いけど、今度の休みに家具を買いに行こう」
('A`)「へっ?」
( ´_ゝ`)「それと、仕事の内容はブーンから聞いてくれ。仲良くやるんだぞ」
('A`)「……」
( ´_ゝ`)「今、弟者とブーンがお前の歓迎会の準備の買い物に行ってるから、リビングで寛いでてくれ」
('A`)「……」
( ´_ゝ`)「あ、そういえばお前の誕生日っていつだ?カレンダーに丸を付けておいてくれ」
('A`)「……」
33 : ◆WzasUq9C.g :2007/02/05(月) 22:25:21.29 ID:3Hd7NIpOO
( ´_ゝ`)「それに、体におかしい所があったら直ぐ言うんだぞ?我慢するんじゃないぞ?」
('A`)「うっ……ううっ」
( ´_ゝ`)「どうした!?早速何処か悪いのか!?」

――いらないロボットじゃ、なかったんだ――

('A`)「熱いです……」
(;´_ゝ`)「そりゃいかん!冷却器の故障かもしれん!直ぐに研究室に」
('A`)「違うんです……」
( ´_ゝ`)「へ?」
('A`)「心が熱いんです……」

――俺は、人間として扱われているんだ――

( ^ω^)「ただいまだお。あっ、兄者さんまたいじめたおね!」
(´<_` )「流石にやりすぎだろう……。見損なったぞ……」
(;´_ゝ`)「勘違いだ!」
( ^ω^)「ドクオ。いじめられたら、いじめられたって言うんだお?」
('A`)「違うんだ……違うんだよ……」

――これから流石さんたちのために、人間のために頑張っていこう――

――つづく

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