5 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 13:10:25.09 ID:pq8GnJEQ0
#07 インダクト

眠らない街、大都市マグニア。
しかし、路地裏へ一歩足を踏み入れれば、そこもゾンビ達の住み処だ。
表は電飾が眩し過ぎるらしく、街はこれによりゾンビ達を路地裏に追いやる事に成功した。
ちなみに、ゾンビを追いやる事により、女性に対する生犯罪行為も激減したそうだ。
その真意? 路地に連れ込んだらゾンビに襲われるため、やるなら表でやるしかないけれど、表は表で人目につきすぎるから、だそうだ。
つまり、この街は例外として、ゾンビ大歓迎ということだ。

| ,'っノVi「あんたら、そっちは危ないぞー」

(´・ω・`)「承知の上です、ご心配なく」

そんな路地に入って行こうとするのだ、誰がみすみす死にに行くのを見過ごそう。頭にネクタイを巻いたサラリーマンは必死に彼らを止める。
このやりとりも気にせず、再び酒を手に入れたジョルジュが瓶を振り回しながらずんずん奥へ入ってゆく。

( ゚∀゚)「来いよー」

('A`)「……お留守番じゃ駄目ですか?」

一方、表の壁ギリギリにへばり付き、動こうとしないドクオの様子に、ショボンは溜息をつく。



6 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 13:12:09.74 ID:pq8GnJEQ0
('A`)「いきなり実践は嫌ぁぁぁぁ」

引っぺがされ、また首元を摘まれる。

これからドクオはゾンビと戦う。

何故こうなってしまったかというと、
このままついていっても何も出来ない、そう考えたドクオは、まずゾンビとの戦いに慣れよう、そう考えたのが大元。それを呟いたら、他の二人は悩むことなく、すぐさま決行に移る。
しかし、いざとなると、足が竦みまくりんぐで、なさけない限りです。

| ,'っノVi「お、おい、本当にやめろよ……嫌がってんじゃねぇか」

伸びきったシャツのリーマンの手を振り解き、ショボンはドクオを引きずりながら路地に入ってゆく。

(´・ω・`)「自分からやると言ったんです……行くぞー」

('A`)「み゙ゃ゙ああああああぁぁぁぁぁっ」

そして、叫び声はこだまして消えてゆく。

7 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 13:19:53.52 ID:pq8GnJEQ0
――――――――――

ノハ#゚听)「うおぉぉぉぉっ!私は疲れている!疲れているぞおおぉぉぉぉっっ!!!」

ヒートは下着のまま、自室の真白なベッドへダイブしていた。言葉遣いは乱暴でも女の子ですもの、部屋は意外と清潔なのです。
……途中仕事から抜け出して来たのか、煤や埃に塗れた作業衣が外に脱ぎっぱなしですが。
枕に顔を埋め、しばらくずっとこの調子……
じたばたして奇声を発し続けている。

川 ゚ -゚)「私だ、入るぞ」

ノパ听)「あ……クーか」

ヒートは、その声でやっとその存在に気付いた。
中から声はするものの全く反応はない……が、とりあえず中にいるのはわかるので、彼女は静かに、許可もなく扉を開けた。
クーと呼ばれた女は、ストレートの長い黒髪に、何処かのブランド物……ではないにしろ、高級感溢れる長いコートに多少肌と生地との間にゆとりのあるズボン、そして深く、顔を隠すようにつばの大きい黒い帽子を被っていた。
全身真っ黒な姿は、名探偵を子供の姿にしたアレとは、また違うが、似たような感じで、ちょうど、ドクオ達のようなコーディネイト。
彼女は落ち着いた声で用件を話し始める。

川 ゚ -゚)「……デミタスとの連絡がとれた……明日、ここに来るそうだ」

ノパ听)「それは凄いじゃないかぁぁぁぁ!! よくやった!!」

ヒートがクーの背中をバシバシ叩くと、眉間を歪ませる。
二人は全く逆のタイプの人間のように見える。気が合わないかのようには見えるが、それなのに、間には特別な言い争いも存在しないくらいだ。
それから仕事をする上でもとても都合が良いとか。
もっとも、その仕事のほとんどはクーが行っており、ヒートはだいたい報告を聞くだけだが。


8 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 13:27:27.22 ID:pq8GnJEQ0
ノパ听)「照れるなよっ!? なっ!?」

川 ゚ -゚)「照れてはいない……いや、まずは服を着なさい」

ノパ听)「サーセンwwwwwww」

確かに用件を伝えたクーはその調子のまま、また扉を開く。
脱ぎ捨ててある作業着の埃をはたき、ヒートへ渡すと、

川 ゚ -゚)「毎度毎度、お前のテンションは疲れる……」

そう呟きながら赤い絨毯の廊下の上を、静かに歩きだす。

ノパ听)「ゆっくりしてかないのかぁぁぁぁぁぁっ!? 茶くらい出してやるぞっ!?」

川 ゚ -゚)「まだ仕事は……ある……」

クーは振り向かずにそれだけ言うと、そのまま真っ直ぐ行ってしまった。
多少仕事をサボり気味のヒートにたいする厭味でもある。

ノパ听)「仕事かぁぁぁぁぁぁぁ……」

ヒートは頭をボリボリと掻き、開きっぱなしの口で綽然としていた。


9 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 13:30:44.77 ID:pq8GnJEQ0
――――日の明けるを待って、人は準備をする。



会議室―――王立研究所内、数十、数百もの人数が収容出来る広さの部屋に、女二人だけが立っている。
普段、研究所とはいえども、宗教団体に近いとまで言われるここでは、定期的に人が集まる。ほとんどそのために作られた場所だ。
実際、会議など滅多に開かれはしない。

ノハ#゚听)「……遅っせええええぇぇぇぇぇ!!!」

その無駄に広い空間に、ヒートの声がハウリング。
数秒の余韻が消えるくらいに、クーが落ち着いた様子でこう言う。

川 ゚ -゚)「慌てなくても来るさ」

ノパ听)「……本当に来るのか?」

川 ゚ -゚)「あぁ……」


10 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 13:35:02.73 ID:pq8GnJEQ0
しばらくして、静かな部屋にノックの音が響いた。
そして、ゆっくり開く扉から現れたのは、皺の深い、紳士姿の大きな顔だった。顔だけじゃない、身体も大きい。
多少汚れてはいる服からは、普通の人なら鼻を摘みたくなるような不快な匂いが漂う。

(´・_ゝ・`)「この度はどうも…」

川 ゚ -゚)「ようこそ、デミタス氏。私がクーです」

ノパ听)「ヒートだぞ」

デミタスは汚い手で帽子をとり、深々とお辞儀をし、それからクーに歩み寄り、いきなり肩に腕を回す。

(´・_ゝ・`)「それにしても無防備だな君達……私が現役だったらどうにかしてるぞ?」

川 ゚ -゚)「ご心配なく……私達がそんな隙だらけとでも?」

クーはすぐに腕を掴み、柔道の如く回して固め、懐から出した十二口径の銃をデミタスの頭に突き付ける。
すると、デミタスはすぐにお手挙げし、参った参った、と笑みを浮かべる。

(´・_ゝ・`)「……しかし、そこの彼女は隙だらけだがな」

ノハ*゚听)「好きって私の事かあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


11 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 13:35:56.90 ID:pq8GnJEQ0
ヒートに大きな声で咳込みながら高笑い、デミタスは近くにあった鉄パイプの椅子をひく。その腕も相当な大きさで、今でこそ老いぼれ爺だが、昔はかなりいい身体つきをしていたであろう。

川 ゚ -゚)「無理をしてはいけないぞ、御老体」

(´・_ゝ・`)「……まだまだ若いじゃないか……で、用件は?」

ノパ听)「わたしいいいいいいいいいいいのおおおおおお ルーチン・ワアアアアクウウウウウウ WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!」

(´・_ゝ・`)「……Routine Workね……君は開発、だっけ?」

川 ゚ -゚)「……まぁ、つまるところ、意思を持って動くゾンビの開発だ」

(´・_ゝ・`)「だから私を呼んだのか」

長机上で腕を組み、デミタスが険しい顔付きに変わる。
それは仕事の目だった。皺の奥の瞳は、どんどん黒く染まってゆく。

川 ゚ -゚)「貴方は過去、人をゾンビにしたんだったな」

(´・_ゝ・`)「そうだ」

川 ゚ -゚)「そして、研究所を追放された」

(´・_ゝ・`)「あれは傑作だった……愛し合う若い二人の死体が動き出した時は何とも言い難い気分だった……」


12 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 13:37:45.33 ID:pq8GnJEQ0
煙草に火を点け、背もたれに身体を預けたデミタスは笑う。白煙を吐き出しながら、また表情を戻す。

(´・_ゝ・`)「……さて、意思のあるゾンビ、といったな? 私の時代には聞いた事がないが」

ノパ听)「アンタが好きそうじゃないかぁぁぁぁ!」

(´・_ゝ・`)「うむ……確かに、人を殺め我に還った時の絶望の表情が見てみたいがな」

ヒートは部屋のブラインドを全て開ける。ただし、そちらには外の風景などはない。そこから見えるのは、

川 ゚ -゚)「ZV-02型は役に立つな……水分さえ与えてやれば従順だ」

(´・_ゝ・`)「……素晴らしい!」

そこから見えたのは、透明のカプセル内の培養液の中でゾンビにされている人々だった。苦しみの中息絶え、そして次の瞬間なら化け物へと姿を変える。
それを見張っているのもほとんどがゾンビである。

ノパ听)「このままだと解雇されんじゃないか? 私は嫌だぞぉぉぉぉぉ!」

川 ゚ -゚)「……意思のあるゾンビが完成したら、人間など必要ないからな」

(´・_ゝ・`)「最終段階だな……昔なら研究員みんな追放されてるんじゃない? これ」

ノパ听)「国のためでもあるとか言われたけど、そんなの言い訳だろ!?」

川 ゚ -゚)「……確かにな、敵を作り出す奴が仲間のためだと言い張るような言い訳に過ぎん」

クーは鬱蒼な顔で吐き捨てた。
ブラインドを閉め、背中で語る。


13 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 13:43:00.99 ID:pq8GnJEQ0
川 ゚ -゚)「世界最強の力が手に入るんだ、どれだけ犠牲が出ても、最終的にはお釣りがくる」

(´・_ゝ・`)「そうしたら悲痛な顔をした世界の人類を見られるのだな?」

ノパ听)「……いいんですかね」

川 ゚ -゚)「私達がこれに意見しても無駄だ……」

煙草の火を消し、デミタスはまた、玩具を与えられた子供のように楽しそうな顔をする。
声だけを聞いたら、まだまだ若々しいような、本当に楽しそうな笑い声。
やがて、ヤニ臭い口からこの件についての答えが出される。

(´・_ゝ・`)「久しぶりですが、がんばりましょうか! いや、いい時代に生きていると実感したよ!」

悍ましい高笑いはこだまし、三つの影を飲み込んでいった。
帽子で顔を隠したクーの横で、ヒートは思わず震え上がった。
15 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 13:48:27.90 ID:pq8GnJEQ0
―――――あれから何十分か経っただろう。消えたままの三人を心配したか、さっきのリーマンが警察で騒ぎ出した頃だった。

(´・ω・`)「……そうかい、捕まえたかい」

『何故だろう、さっきとは違い、全く喋らなくなった……』

(´・ω・`)「ふむ、水は飲ませたかい?」

『飲ませたよ。あと、さっき凄い形相をしてたんだよ』

(´・ω・`)「……まさか、もう彼には意識がないのかい!?」

『焦らないでよ……大丈夫さ、意識はハッキリしてるみたいだ』

(´・ω・`)「そうか……」

( ゚∀゚)「どうだ?」

ショボンは携帯を畳み、背後からの声に答える。

(´・ω・`)「お友達、見付かったよ」

('A`)「…本当ですか?」

死体の山の上、ジョルジュの横で息を切らしていたドクオは、その朗報に嬉しそうな声をあげた。

全力でゾンビの中にほうり込まれ、まさに火事場の糞力を発揮、全ての攻撃を躱しきった。

……まぁ、逃げるのに精一杯で、倒すに倒せないその様子を見た二人が全部処理したのだが。
18 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 13:51:56.54 ID:pq8GnJEQ0
(´・ω・`)「じゃあ、向かいますか」

表では眠らない街に溢れる人の山、そして裏では動かなくなった頭のないゾンビの山だ。
あまりの臭いに鼻をつまみたくなるだろうが、ドクオ疲れきったはそれをも忘れていた。

( ゚∀゚)「とりま第一段階クリアだな」

(*'A`)「えへへ…」

動けないドクオは安心しきったか、死体の上だと言うことも忘れ、大の字で寝そべった。

(´・ω・`)「さ、行くよ」

電話の相手はシャキン。
自分の意思で行動するゾンビを捕まえた、簡単に連絡はそれだけだった。
……恐らくブーン少年だろうと、だいたい予想はついた。

念のため、敵全ての首を落とした後、表の世界に歩を進める。

ドクオ?
勿論、疲労で動けなくなって、また首ねっこを掴まれています。


19 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 13:53:40.43 ID:pq8GnJEQ0


両手両足、それから腹や腰の周りにきつく、椅子と僕とを縛るロープ。
暴れればゾンビの力もあるんだ、簡単に千切って抜けられるだろう。
しかし、誰だ、こんな仕掛けをこの店に施したのは?
少しでも暴れると電流が流れるとか、シャレにもならないんじゃなかろうか。
つうか、どんなドMが来る店なのだろう、ココは。
……死んでる僕でも、痛いモンは痛いんですよ。


20 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 13:54:16.21 ID:pq8GnJEQ0

( ^ω^)「……解剖でもするのかお?」

(`・ω・´)「こんな弛んだ腹かっ捌くなんてごめんだよ」

そう言いながらシャキンはコップや食器を磨くだけ。
さっきから二人はずっとこの調子。
そうこうしているうちに時間はどんどん流れていく。
どのくらい縛られていただろう、僕にもMの激情が訪れるかと思われた時だった。

確かに、表で聞き覚えのある声がした。
……あれ、これ、ほんの数日前まで聞いていた声だよな。

('A`)「おはこんばんちはー……」

(´・ω・`)「やあ、ようこそバーボンハウスへ」

( ゚∀゚)「弟のじゃなかったのかwwwwwww」

( ^ω^)「あれ……ドクオ?」

ヨレヨレの服ではないが、確かに血色が悪く、これ以上ないくらいのヘタレ顔が見える。

('A`)「探したぞー……久しぶりね」


21 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 13:55:46.77 ID:pq8GnJEQ0
あぁ……確かにドクオだ。

そこでやっとロープが解かれた。
やはり、逃げ出す機会を伺って神経を研ぎ澄まされていては、解くに解けなやしなかったのだろう。

( ^ω^)「服、似合わないお……ネクタイおかしいし」

(*'A`)「う、うるさいなー…」

久しぶりに見た彼は、以前とたいして変わってはいない。
そりゃ、たった数日だものね。
……けれど、そのたった数日で、こうも変わるのか、というくらいの変化も感じる。

(´・ω・`)「君がブーン君か……しかし、全くゾンビには見えないがね」

……誰だよ。
僕は突然、こんなことを目の前で言われ、眉間に皺を寄せ不機嫌な顔をする。
確かに、服はボロボロになってはいたが、見た目は普通の人間と変わらない。しかし、心臓は動いていない、僕はゾンビです。

(`・ω・´)「しかし血流無しで、よく活動出来ますね」

(´・ω・`)「未知のウィルスだけあるよ、全く」

そのままシャキンがその男に僕についての説明を始めた。
恐らく、その男が兄という奴だろう、話す内容はほとんどが兄から聞いたと思われる既出の事実だ。
そして、それはあらためて確認しているようにもとれる。

……この人達は色々詳しいみたいだ。
自分が何なのか、それもついでに分かるかもしれない。


22 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 13:58:14.81 ID:pq8GnJEQ0
ということで、聞いてみるとしようか。

( ^ω^)「え……っと……」

( ゚∀゚)「俺ジョルジュ、こいつショボンな」

陽気な彼は、親指で自分の胸辺りをトントン。

( ^ω^)「ジョルジュさん? 僕はいったい何者だお?」

( ゚∀゚)「わかったらゾンビ減ってんじゃないの?」

疑問に疑問で返される質問でもないような気がしたが……まぁいいか。
……それもそうかもしれない。
かなり稀なケースだからこそ、僕の持つ抗体の正体もわからなければ、無論、それを利用してウィルス達を従える事も叶わない。

(`・ω・´)「とりあえず、血液を採取させてもらうしかないね……」

一方、愉快な面で適当なジョルジュとは相違い、ずっと同じ表情のシャキンはしきりに抗体を気にする。
縛られていた時から、そればかり。焦っているというか、なんというか……逃げないから安心しろ。
……しかし、先程の話からして、別に必要ないのでは? 件(くだん)の意思のあるゾンビ、そっちから採ってあるのではないのか?
痛いのやだ、注射嫌い。
採るなら、そっちからどうぞってんだ。

(´・ω・`)「作った事はあったよ」


23 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 13:59:11.08 ID:pq8GnJEQ0
ξ゚听)ξ ……は?

僕のようなゾンビを作る?
ツンがつい口に出すくらいなんだ、おかしいったらありゃしない。元が分かってない物を作るなんて可能なのだろうか?
その疑問はすぐに解決する。

(´・ω・`)「ただし、君のように完璧じゃなくてだね……最後には暴走してしまったさ」

暴走……
確かに暴走らしき事は、僕にもある。恐らく、僕の場合だと、引き金は水分の欠乏だ。欠乏すると、自分を客観的な位置から見なければならなくなる。何処の3Dゲームだ。

( ^ω^)「僕も…そういう事あるお」

( ゚∀゚)「おまえも失敗作かよwwwwwww」

ジョルジュは笑う。
酒が入ったため、さらに陽気だ。
……僕が失敗作とは、また的確な表現だ。いわば、僕も作られた存在であろうか。

('A`)「あの…蚊帳の外からで悪いんですが」

その時、背を丸めて座っているドクオが、その場みんなに聞こえるよう大きめな声で自らの沈黙を破った。次いで、申し訳程度の声で呟く。

('A`)「ゾンビを作るってどういう事なんですか……?」

( ゚∀゚)「あ、それは説明してやるよ」

その問いにジョルジュは笑いながら答えた。
シャキンに出された酒を豪快に飲みほし、それから一息ついて、失敗作について語りだした。


24 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 14:02:00.17 ID:pq8GnJEQ0
それは簡潔に語られた。
ほんの、僕がまだ小学生くらいの時代に、ゾンビウィルスに対抗出来る抗体を持つ者がいて、その抗体を別の人へ注射しゾンビ化を食い止めようとしたところ、偶然出来たという。
どうだ、死んだ身体がゾンビのように復活を遂げるとは。
しかし、それにはまだ意思がある。
その抗体は、宿主の身体ではない体内での作動中に、その新しい宿主の体内の何かと反応した。
嬉しい誤算、不老不死の実現―――そう思われた。
だが、そう上手くはいかないもので、血液中での反応は抗体を激減させ、最後はそのまま、普通のゾンビになってしまったそうだ。

('A`)「へぇ……つうかゾンビってそんな前からいたのね」

(´・ω・`)「ヌソックは閉鎖的だったからね……あの廃屋に閉じ込めたのはいいが、外界からの侵入を防ぐため、進入を極力減らした結果だ」

( ゚∀゚)「新米研究員用の生け簀みたいな? ゾンビは頭悪いから扉が開けられないんだ」

街にゾンビが溢れかえらなかったのも、研究所の管理があってだという。
何人か研究員が犠牲にはなってるが、それしきの弱者ではいらない、これからは体力だ、とのこと。

本当かよ。

25 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 14:02:59.54 ID:pq8GnJEQ0



( ゚∀゚)「……ところでだが」

今までふざけた笑いを浮かべていたジョルジュが、突然神妙な顔を浮かべ、寸毫、僕につめより胸ぐらを掴み上げる。

( ゚∀゚)「君は人を殺しましたか? 素直に答えなさい」

あ、そういえば、あのランタンの……

(;^ω^)「……」

詰め寄るその形相に、あまりに惰弱な僕は咄嗟に黙りを決め込むようになった。

( ゚∀゚)「シャキン、どうかな?」

(`・ω・´)「おっしゃるとおりで」

(#゚∀゚)「黙ってんじゃねぇよ!」


26 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 14:03:53.27 ID:pq8GnJEQ0
そのまま壁に僕を叩き付け、何度も何度も罵声を浴びせる。むなぐらを掴む腕が何度も何度も揺すれる度に、僕にも怒りが込み上げてくる。

(#゚∀゚)「お前は立派な犯罪者だぞ!? そんなキンタマみたいな顔しやがって、わかってんのか!?」

(#^ω^)「キンタマ言うな! そっちかて、どれだけの悪事を働いてるかわかってんのかお!?」

犯罪者だって? あぁ、そうかもしれないな。
まだ生きていた人間を殺したんだ。
だが研究所でやってる事、僕は知ってるんだぞ?
自分達のしていることを棚にあげてなんだよ。
僕は必死に吠えた。
それを聞いてびっくりした顔のジョルジュと、彼の腕を外した僕との間に瞋恚のほむらがぶつかり合う。
ばつが悪そうに、帽子を被り直し、

( ゚∀゚)「ソレ……知ってるならいいや。よく聞け」

荒げた声を何ごともなかったかのように平坦なものに戻し、呼吸を調え、そのまま彼はこう言った。

( ゚∀゚)「研究員として俺らに同行しろ」


27 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 14:04:46.30 ID:pq8GnJEQ0
……は?

( ゚∀゚)「もし警察が来ても、俺らなら顔がきく……」

大人の事情って奴か。しかし、それを易々と呑むハズがない。
僕はきっぱりと断ります。

(´・ω・`)「いいのか? 最近の警察の荒み方といったらないぞ」

( ゚∀゚)「だが研究所には権力がある……その前では法律がいかに役に立たずか」

そうだった。研究員とでも言えば、謀にかけられる事なく見逃される。
僕は悩んだ。あれは完全に過失だ、不注意だ。そんなつまらないことで捕まりたくはない。
甘える気持ちじゃない、本当に。

( ^ω^)「……しかし、何故だお? 何故僕を?」

( ゚∀゚)「一つ目、お前の力が魅力的だから」

制御が上手く出来ないようだが、自分達のしたいことにはそれでも足りる、ジョルジュは振り返り、またカウンターへ向かう。

( ゚∀゚)「二つ目、お前の身体の研究だ」

実は仕事が大変だと言う。意思のあるゾンビがあれば、どれだけ楽か、そう漏らして、また出された酒をぐいっと飲む。


28 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 14:05:09.11 ID:pq8GnJEQ0
( ゚∀゚)「三つ目、ドクオ権限」

('A`)「えっ?」

( ゚∀゚)「将来研究所で働くって言ったじゃなーい」

小動物のように部屋の隅で震えていたドクオは、こちらを見て恐る恐る尋ねる。

('A`)「……さっきから聞いてましたが、違法団体じゃないんですか?」

(`・ω・´)「確かに研究所は違法団体ですが……兄達は違います」

カウンター越しから眺める彼らに、相変わらず表情をかえず、シャキンは机にまた掌を叩きつけそう答えた。

(´・ω・`)「私達が研究所を変えるんだ」

ξ゚听)ξ ……したら権限なくなるじゃない

( ^ω^)。oO(そりゃそうだけど……


29 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 14:07:17.48 ID:pq8GnJEQ0
蠱惑の夜だった。
驚いた、研究所内にもちゃんと正義面する人がいたんだ。あくまで他人なので、正義面ですが。

惰性で続けてきたような人じゃなくて、行動する人がいたのは予想外だ。
目的はどうであれ、こちらにも利はあるみたいだし……
僕の迷いはだいたい消えた。
ジョルジュの座る横の椅子に腰をかけ、彼の黒帽子を拝借、

( ^ω^)「決めた! 呑ませていただくお!」

僕はそれを被り、決意を言葉にする。
……つうか僕には小さいな、この帽子。

( ゚∀゚)「はい、酒」

(;^ω^)「は?」

( ゚∀゚)「飲むんだろ?」

(;^ω^)「いや、まだ未成年ですお」

( ゚∀゚)「のむ前に」

(´・ω・`)「ノム」

ほとんど意思とは関係なく、僕の喉をアルコールが流れ、もやもやして消えなかった大患ごとつまらない脳を連れ去る。


※未成年の飲酒は(ry

30 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 14:07:42.06 ID:pq8GnJEQ0
そのままほろ酔いの夜更けがやってくる。
いつの間にか寝てしまっていた店主が目を覚ませば、カウンターに雑に置かれた小銭だけが目に入る。もう彼らはいってしまった。

(`・ω・´)「客もいなくなったし……飲むか、乾杯」

シャキンがカラのコップに酒を注ぎ、陽の入らない一人の空間で呟く。

それは、未来からの前借り。
それは、見えない彼らへのエール。
それは、祈願。

(`・ω・´)「……あれ? 代金足りない」

それは、ツケ。


31 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 14:08:26.26 ID:pq8GnJEQ0
( ^ω^)「お、出られた」

(´・ω・`)「私をなめてもらっては困るよ……」

迷路街出口。
ショボンが導くままに歩いてくると、そこは開けた草原だった。


wwwwwwwwwwwwwwwwwwww

( ゚∀゚)「やはり気持ちがいいな」

風が吹き抜ける、まだ暖かくなりかけの空。もうすぐ、春なんですね。僕は、真っ先にその緑に向かって駆け出します。嗚呼、歓天喜地、ぽかぽかと、心地が良

( ゚ω゚)「みぎゃあああぁぁぁぁぁっっっ」

ξ;゚听)ξ ばっ、馬鹿!!

それが全然良くなかったんですよ。太陽光を浴びた僕の身体からどどめ色の煙がもくもく。それはまるで、汚いドライアイスの如く。

(´・ω・`)「……弱点だな」

(;'A`)「いったん迷路に戻れよ!」

ξ;゚听)ξ ……

言われるがまま、壁と壁の間に戻る。したら、光があたらない。
身体から出る煙は止まったが、身体がとろけそうなくらい熱い。
しかし、いつまでこうしてろというのか。


32 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 14:08:53.74 ID:pq8GnJEQ0
(´・ω・`)「車か何か呼ぶか?」

( ゚∀゚)「やっぱりコイツ、戦力的にならねぇかもなwwwww」

笑い事じゃありません。こっちにとって、春風がやってきて蝶々が舞いを披露する昼下がりに昼寝ができない身体なんです。生前、最後の贅沢がぁぁぁっ!
はぁはぁと艶かしいよな息使いでひたすら、草原を眺めます。

(´・ω・`)「もしもし、クーかい? 迎え、頼むよ」

背中をドクオに摩られうずくまる僕は、ショボンの呼んだ迎えをひたすら待ちました。
やはり春が近いといえど、風のみだと骨身に染みるなぁ……


33 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 14:09:23.51 ID:pq8GnJEQ0
―――――――――――――――

川 ゚ -゚)「わかった、すぐ行く」

黒帽子で顔を隠した彼女は、呟くようにそう答えた。
ここは研究所ではなく、野外、それもほとんど何もない、開けた砂漠のような場所。黄塵万丈の土煙を上げて、クーの車は行き先を変える。
と、その前に別に電話を繋ぐ。予定とまではいかないが、帰りが遅くなる場合は連絡を入れなければならない。
予定が守れないなら、最初から予定なんて入れるんじゃねぇよ、とか言われたら言い返せない性分、彼女は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。とりあえず、言い訳だけでも伝えなければ気が済まない。
通話ボタンをプッシュ、携帯が鳴る。

川 ゚ -゚)「……ヒートか?」

『なんだぁぁぁぁぁっ!?』

川 ゚ -゚)「ちょっと寄り道して帰るからな」

『……もしかして、鯛焼きか!? 鯛焼き買ってくるのか!?』

川 ゚ -゚)「あ、いや……」

『チーズ入りで頼むぞぉぉぉぉっ!!!』ブチッ

川 ゚ -゚)「……」


34 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 14:09:50.47 ID:pq8GnJEQ0
真面目に一瞬悩んだ。
眉間を歪ませ、ゆっくりと、そして律儀に財布の中身を確認し、溜息。
遅れる罰だ、と自分に言い聞かせ、財布を閉じる……これは深読みしすぎである。
それから、さらにショボンへ連絡を入れる。
勿論、さらに帰りに寄り道の予定が入ったからである。

川 ゚ -゚)「……ショボンか? 帰りに鯛焼き買って帰るんだが、それでもいいか?」

誰もいない砂漠を滑るように走る一台の車。彼女は、次のショボンの一言に、また財布の中身を確認して、さらに深い溜息をついた。

―――――――――――――――


35 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 14:10:18.13 ID:pq8GnJEQ0
(´・ω・`)「僕らの分もよろしくね」

3のボタンの上をプッシュ、彼女の心配いざ知らずで通話は切れる。

ξ゚听)ξ これから何処にいくのかしら?

酒を飲むジョルジュに、そのままそっくり、ツンの言葉を代弁。

……つうかどんだけ飲むんですか

( ゚∀゚)「とりあえずだな、上に直接連絡しなきゃならんのだよ」

(´・ω・`)「身分証明、いるだろ?」

そりゃそうだ、絶対必要ですよねー。
……にしても、こうも流れる雲の影が迷路にのまれ消えてゆくのをずーっと見ているだけってのも、なんだかなぁ。
待ち時間が暇だし、他にも何か聞いておくか。


36 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 14:10:47.29 ID:pq8GnJEQ0
( ^ω^)「なんでみなさん真っ黒な服なんですお? 研究員って白衣っぽいイメージが……」

(´・ω・`)「私達は『タスクフォース』と呼ばれててねぇ……研究所内でも特別な位置なんだ」

( ^ω^)「kwsk」

( ゚∀゚)「戦闘なんかも熟せるようになった研究員、って言えばわかるかな?」

研究員にそれは皆無だと思ったが……最近の研究員は戦闘員でもあるんですか。

話は変わりますが、ショッカー達がいた地獄の軍団、改造人間とか作るぐらいだから、研究員とかいるんでしょうかね。いるんだったら、この世界の研究員とどちらが強いんでしょうか。

……話逸れました、すいません。


37 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 14:11:11.67 ID:pq8GnJEQ0
( ゚∀゚)「『タスクフォース』なら多少バカでも許されるぜー……お前も配属は一緒になるかもな」

ズバリ、肩を叩かれそう言われる。まぁ、自慢じゃないが頭は微妙だ。偏差値は60もなかったし。
……つまりは、研究所に『タスクフォース』って団体がさらに分けられてて、そこの人は黒服でFA?

ξ゚听)ξ FA

簡潔にありがとう、ツン。

ξ゚听)ξ いや、そのままじゃない。

( ^ω^)。oO(イマイチわからなくて悪かったお……


日影から空を見上げれば、ブロックの間から碧空が覗いている。それに思わず目を瞑ってしまう。
そういえば、空を飛ぶ鳥達はゾンビになったりしないのだろうか? 圧倒的に人より数が多いだろうに、姿を見ないのは、ねぐらが森の中とか、そういう場所にあるからだろうか。
一回は鳥になりたかったが……鳥に生まれなくてよかった。


38 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/03/02(金) 14:11:46.83 ID:pq8GnJEQ0
しばらくして、例の迎えが到着した。彼らと同じように、真っ黒な服装で身を纏う女性が運転している。
……ほほぅ、ゲキマブって奴か? やはり、ナウなヤングにバカウケの服装なんでしょうかね、彼女も。

川 ゚ -゚)「……クーだ、よろしく」

ξ゚听)ξ ブーン?

目線がクーのほうばかりに向いていたのがわかったか、ツンは何処ぞの地鳴りのような、もうそれはとても恐ろしく恨めしい声を僕の脳へ送り込む。僕の背筋が凍り付くように、びきびきびき……
嫉妬ですか? それなら嬉しいのですが。
……それにしても、クーの顔が一瞬引き攣ったかのように見えたのは気のせいだろうか。

( ゚∀゚)「さ、行こうぜ」

ジョルジュが真っ先に乗り込み、そう言って手招き。次いでショボン、ドクオも乗り込む。

……ヌソックか。

僕はツンの頭をぎゅっと抱いたまま、壁と壁の間から全力疾走で(最小限光に当たらないように)、煙を出しながら(しかし、多少は当たるのです)、そのまま開いたドアへダイブ。
それを確認した彼女は、ハンドルを握ったままこう言います。

川 ゚ -゚)「……なぁ、本当に」

(´・ω・`)「勿論、全員にですよ」

物凄く深い溜息とともに車が出る。
あらためてミラーに映ったクーのその顔を見ると、なんだかわからないけど、申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになりました。

('A`)「その煙臭ぇぇええええええゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑっっ!!!!」

……こっちも申し訳ない。

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