46 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 12:29:40.33 ID:KvOOzdyR0
( ^ω^)「あ、僕はこれで」

(´・_ゝ・`)「なんだね……今から私とゾンビの愛の歴史を語ろうかと」

( ^ω^)「結構です、では」

きっぱり断り、半ば逃げ去るように歩き出す。足の疲れは、大分忘れていた。

(´・_ゝ・`)「……電話か」

デミタスのズボンのポケットでバイブレーション。

(´・_ゝ・`)「もしもし……なんだ、クーか……しつこいねー、君も」

電話口から聞こえる声…――女性のようだ。ひたすら平坦に、言葉のイントネーション以外に抑揚などはなく、一切の感情は伝わらない。
だが一方、そこには、段々と口元を緩め笑い出す彼がいた。



#06 カルチベーション


47 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 12:30:24.02 ID:KvOOzdyR0
その日は一日中曇りだった。

僕らがその後、ベリャシから向かったのはザクィと呼ばれる場所だ。
一向に骨のままのツンによれば、ザクィは警察沙汰の多い街らしい。……良からぬ事に巻き込まれなければいいのだが……

( ^ω^)「凄い入り組んでるお」

ξ゚听)ξ まぁ、こうなったのにも理由があるようね

何処かの国のアリスに出てくる薔薇迷路、あんな感じに近い、ただ蔦の絡んだ高い石の壁が周りに広がっている。見上げれば、何処の国境かと思うくらい。
これを見て安心した点は、直射日光など届くハズはなさそうだという事だ。……一々太陽にビクビクして歩かなきゃならないなんて事、まっぴらですから。
逆に不安なのは、いつ何処から何が襲って来るかもわからない。

ξ゚听)ξ 私の加工、頼むわよ。まずは、そっちを優先して貰うんだから

(;^ω^)「……何処に行けばいいのかお」

とんだラビリンスに迷い込んでしまった。むやみやたらに歩こうとすると帰れなくなりそうだ。
とりあえず進んでみる。

――――――――――――――――――――

48 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 12:34:18.58 ID:KvOOzdyR0
(`・ω・´)「あ、すみません、迷子ですか?」

Σ(;^ω^)ビクッ

道はなんとなく、ツンに聞けば風の流れとかわかるだろうし、戻れるかなと思っていたが、人っこ一人いない。
そうして不安になって、しばらく人跡を探しキョロキョロしていると、人の気配に気づかなかった。
背後からの声にびっくりして降りかえれば、なんだ、ちょっとオシャレな紺のシャツに身を包んだ小柄な男
……こいつ、いつの間に背後を……出来る!……じゃなくて、田舎者みたいに思われたのかな、心外だ。

(;^ω^)「……みたいなものですお、なにせ初めて来たもので……」

それを認めたくなくて、なんとかごまかそうとした結果がこれだった。
今思えば、一応都会に住んでたんだよな、僕は。

それでも田舎臭いのは、僕のせいではないよ。

(`・ω・´)「……その骨は?」

ξ゚听)ξ 私よ、悪かったわね

(;^ω^)「……この骨の人の遺言で、死んだら綺麗なアクセサリーか何かにしろと言われまして……」

ξ゚听)ξ まだ生きてるわよ

(;^ω^)。oO(でも間違いなく死んでるお

ξ゚听)ξ あ゙ぁ゙ん?

(`・ω・´)「把握した」


49 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 12:34:44.58 ID:KvOOzdyR0
男はそう言うと、人が二人通れるか否かくらいの幅の迷路を、奥へ歩き出した。右も左もわからない、むしろ、右か左かわからない状況だ、どうせだから、「こちらへ」と手招きをする真剣そうな眉毛のポーカーフェイスについていくことにした。

途中、沈黙が続くと思っていたが、彼は意外によく話しかけてきた。

(`・ω・´)「そういえば名前を聞いていませんでしたね」

( ^ω^)「ブーンだお」

(`・ω・´)「シャキンです、よろしく」

シャキンは話が続かなくなると、また新しい話を始める。

(`・ω・´)「出身は?」

( ^ω^)「ヌソックだお」

(`・ω・´)「私もです、奇遇ですね……ここまで来るのに怪物に襲われませんでした?」

( ^ω^)「一匹返り討ちにしたお」

(`・ω・´)「……み、見掛けによらず、強いんですね」

( ^ω^)「それほどでもないお」


50 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 12:35:18.43 ID:KvOOzdyR0
……淋しいのか?
シャキンは、どんな言葉で切り返しても対応出来るようで、ある程度の知識もあるようだ。
知識もあってお喋りだという事は、僕にとってはとてもありがたい。情報はいくらあってもいらなくなることはない。

( ^ω^)「ヌソックでは、大人達はゾンビについて全く教えてくれなかった、何故だお?」

(`・ω・´)「最近は街から出してもくれなくなったでしょう……ムスロが危ないから」

そこでシャキンは立ち止まった。そこに見えたのは、ネオンで飾られたブリキの看板―――

(`・ω・´)「僕の店……といっても、元々は兄のでしたが」

ξ゚听)ξ バーボン……ハウスねぇ……

(`・ω・´)「ようこそ、バーボンハウスへ」

彼はそう行って客を招き入れる。
罠であろうとか、そんな事を全く気にしてないのはどうかと思ったが、ツンが何も騒がないので、とりあえず入るだけ入ってみることにした。

――――――――――――――――――――



51 名前:フェンリル ◆Fenrir/gaQ :2007/02/19(月) 12:36:46.97 ID:y54Oub050
         /⌒ヽ
  ⊂二二二(                ^ω^)二⊃
        |    /       ブーン
         ( ヽノ
         ノ>ノ 
     三  レ



52 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 12:37:26.65 ID:KvOOzdyR0
( ^ω^)「中々洒落た店だお」

中に入る。元々が地味な店だった名残もあり、カウンターは引っ掻き傷のような涙の跡のようなもののついた木製の古いもので、またそれもレトロな感じを醸し出している。

(`・ω・´)「このテキーラは……って、未成年だよね? ミルクでいい?」

( ^ω^)「そんな事より、さっきの話」

忘れたとはいわせない。

(`・ω・´)「ここまで来た君になら話してもいいか……」

シャキンは器にミルクを注ぎながら、こう話した。

(`・ω・´)「王立研究所が原因なんだ」

ξ゚听)ξ あ、あれね…

(`・ω・´)「政府にお咎め喰らっても反省なし…それでも、むやみやたらに潰せない」

( ^ω^)「なんでだお?」

(`・ω・´)「研究所だからだよ。仕事だけは人一倍、いや十倍は熟すからな……」

それが、いったいどうしたんだと言うのだろう。

53 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 12:39:40.09 ID:KvOOzdyR0
(`・ω・´)「だけどやってる事は非道だ……どれだけ死者が出てると思ってんだ」

怒りにまかせ、器を僕の前に叩きつけ叫んだ。表面張力のなくなった部分のミルクは、微妙に零れシミを作る。

(`・ω・´)「でも研究がなくなると、病を治す薬も作れなくなるからな……仕方ないかもしれない」

切ない声。相変わらず無表情だが、喜怒哀楽が激しいのが言動でわかる。

( ^ω^)「それは酷い」

研究所が、一般的にあたり知られてない理由がわかった。むしろ、内輪からはそういった情報を知らせてないみたいだ。
つまり、街の大人達は隠していたのではなく、知らないだけなのではないか。

(`・ω・´)「本当だよね……あ、ミルクはサービスにしといてあげる」

全く、ありがたい。やはり、優しい人にあうと、心が豊かになるよね。
話しているうちに段々と打ち解けてきた僕は、彼に次々質問を浴びせる。

( ^ω^)「あ、なんでシャキンさんは色々知ってるお?」

(`・ω・´)「この店の元の店長……つまり、兄が研究所の内部の人だからです」


54 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 12:40:04.31 ID:KvOOzdyR0
成る程。内輪の人の身内だから知ってるワケなのか。
僕は渇いた喉にミルクを流し込み、わなわなと震えているシャキンに質問を続けた。

( ^ω^)「…ゾンビについては、何か知っていますかお?」

(`・ω・´)「兄から聞いたのは、意思を持たない、疲れない、直射日光に弱い、身体能力が高い、くらいです」

( ^ω^)「そうかお…」

この件については、あまり役に立たなさそうだ。そう思った矢先、シャキンはこう漏らした。

(`・ω・´)「いや、意思がない、は違ったか……」

(;^ω^)「いいいいい今なんて言ったお!?」

(;`・ω・´)「……い、いや、意思がないってのは違ったな、と……」

これはどういう事だ。ゾンビというのは通常、ウィルス感染により生まれる物、肉体の死語、脳を洗脳し、死体を操る物ではないのだろうか。いや、そのような事を聞いた。
では、僕のようなケースが、他にも存在するのか。

( ^ω^)「とりあえずkwsk」

(`・ω・´)「兄に聞いたことはあるが、イマイチはっきりしない言い方だったんだ」

56 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 12:40:40.83 ID:KvOOzdyR0
ξ゚听)ξ でも情報は少なからず必要よね……

( ^ω^)「kwsk」

(`・ω・´)「……確か、研究所では人工でゾンビを作り出したらしいんだ……」

ξ;゚听)ξ な、なんだっt

(`・ω・´)「……僕はそんなの赦さない」

シャキンはそれだけ言うと黙り込んだ。それっきり数分沈黙が流れた。これは、お喋りにとっては、かなりの長い時間になる。
いつの間にか外は夕闇が迫る頃だった。結局、愚痴に愚痴を重ねただけだった気がするが、シャキンにはまだまだ知りたい事を聞けそうな気がする。

( ^ω^)「この際、全て腹を割って話すお」

(`・ω・´)「……そうだね」

そうだ、ここに来た時から不思議に思った事があったんだ。
僕は、それをそのまんまシャキンに話した。
するとシャキンは、表情は相変わらず、腕を組んで、片手で顎を支える形で唸った。
58 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 12:46:50.57 ID:KvOOzdyR0
(`・ω・´)「この街の迷路はね……まぁ、警察避けかな」

正直、これだけでは意味がわからない。

(`・ω・´)「殺人が多発した件で、警察がここらを嗅ぎ回ってる……何故か昔からここいらはよくそういう被害にあってね、それで怪しいとか」

( ^ω^)「それはねぇよwwwww」

(`・ω・´)「あるんだよ! あんな頭の固い連中に捕まってみろよ! 帰れないぞ! ……だからココ、罪人に都合よく出来た街、などよく言われるけどね」

ここは中々手厳しい世界だなぁ。
結局は、犯人が名乗りを揚げるまで捕まえた奴を折檻でもして、死んだらかそいつが犯人です、って事ですか?……
ますますこれは酷い、警察は何をやってるのでしょうか。

国も何もかも、これは\(^o^)/オワタ

何がって、さっきから聞いていれば、研究所だとか警察だとか、人の命より仕事優先だと言う、それを国で止められないんじゃ、本当おしまいですよ。



59 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 12:47:05.89 ID:KvOOzdyR0
(;`・ω・´)「そういえば怪物さん一匹返り討ちにしたと言ってたね? ど、どうやったんだい?」

一転、彼は前のめりになりながらカウンター越しに僕の顔を覗き込む。

( ^ω^)「どうって…身体が軽くなってバチコーン……みたいな?」

ξ゚听)ξ わかりにくい……

(;`・ω・´)「身体が軽くなる?」

まじまじと聞いてくるシャキン。
・・・顔近づけすぎですって。

( ^ω^)「あぁ、僕はゾ……」

仕方がなしに、僕が口を開きかけた途端、ここでまた彼女ですよ。

ξ゚听)ξ STOPSTOPSTOPSTOP!!!!

STOPをかけるツン。彼女がこうも脳を媒介して叫ぶもんだから、僕はまた思わずビクッとしてしまった。
61 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 12:50:39.53 ID:KvOOzdyR0
(;^ω^)「な、なんなんだお!?」

(`・ω・´)「なに? え?」

(;^ω^)「あ、いや…ン゙ン゙ッ」

勿論、この骨と会話してる事がバレたら、また顔を近づけてくるかもわからない。
それはゴメンなので、この場は咳ばらいをしてごまかす。

…で、今度はなんなのでしょうか。

ξ゚听)ξ そうポンポンと自分がゾンビだとばらさないでよね

( ^ω^)。oO(なんでだお? 向こうはぽんぽん招待とかばらしてんだお?

ξ゚听)ξ シャキンは相当ゾンビを憎んでいるように見受けられるわ……たとえブーンであろうとバチコーンされるかもよ?

可能性としてはあるにはある。だが僕は、シャキンが敵だとか、そのような類とは思っていない。
彼に対してちょっとした親近感なら湧いていたが、ツンが言うには、実際信頼出来るかは別問題。
つまり、そういうこと。

( ^ω^)「えっと…内緒だお」


62 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 12:53:07.11 ID:KvOOzdyR0
(`・ω・´)「ドーピングかい? それとも君はアンドロイドか何か?」

(;^ω^)「一応人間、水しか飲んでないお」

(`・ω・´)「……そ、そうかい?」

その様子にツンは、多分身体が全部あったら『よしよし』と頷いていただろう。
……しかし、彼なら話してよかった気もしたが、どうしても駄目なんですかね。

( ^ω^)「あ、そうだ」

(`・ω・´)「ん?」

( ^ω^)「僕は喉がすぐ渇いてしまうから、水筒に水を入れさせてくださいお」

そういえば、彼が述べた話には『喉が渇く』ような項が全くなかった。これなら大丈夫、僕がゾンビだとはばれやない。

(`・ω・´)「……いいよ、水道はこの奥だ」

シャキンはそう言うと、カウンターの奥を指す。綺麗に磨かれた金属光沢の輝きが、確かに見える。

( ^ω^)「サンキューだお」

とりあえず席を立つ。そして、流しまで行き、水筒を蛇口に近付ける。


63 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 12:55:11.92 ID:KvOOzdyR0
ξ゚听)ξ ブーン、あと1分以内にこの店を出て……

( ^ω^)「え?」

ξ゚听)ξ そして逃げて!

蛇口を締めた時、ツンの声がきんきんと頭に響く。また唐突に何を言い出すのか。
……いや、しかし、ツンが言う事は素直に聞いておいたほうがいいかもしれない。

(;^ω^)「シャキンさん、お邪魔しました」

(`・ω・´)「あれ? 遺骨の加工業者はいいの?」

(;^ω^)「またの機会に!」

僕は頭を抑えつつ全力で扉を蹴り、ツンを片手に来た道とは逆に走る。光るネオンサインを背に、身体が暗闇に呑まれてゆく。だが、足はひたすら地面を点々と捕らえ続ける。
今は見えなくても、次第に目は慣れるだろう、曲がり角に何度もぶつかりながら、僕は夢中で走った。


(`・ω・´)「……兄さん? うん、意思のあるゾンビ、いたよ」


64 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 12:56:58.95 ID:KvOOzdyR0
バーボンハウス入口、そこには携帯片手にその姿を見送る彼がいた。その電話口では、元店主が何か話している。

(`・ω・´)「ここは彼らのテリトリーだ……素直にここにいればいいものを……それに、鬼ごっこなら得意だ……」

携帯を折りたたみ呟く、ポーカーフェイスだった彼から笑みが漏れた。睨みつけたこの街の闇は、自分に道を譲る、そうとでも言いたそうな彼の目は、確かに僕の行路を睨み続けていた。
ようやく月明かりで道がうっすら見えるようになってきた頃、辺りからは不穏な空気が漂いだす。



65 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 13:03:32.42 ID:KvOOzdyR0
ξ゚听)ξ ブーン、右よ!

(;^ω^)「おっ」

突き当たりにぶつかり、その度ツンが指令を出す。波動がわかるという、風の波形を感じるくらい朝飯前なのだ。
……きっと。

ξ゚听)ξ 気をつけて、上に何かいる!

僕が活動出来るって事は、奴らも活動出来る状態に置かれているという事だ。
そう、ゾンビの襲来。
壁伝い、獲物を待ち伏せていたであろう、鉤爪のように曲がった指をブロックとブロックの間に食い込ませている。
そして重力に身体を委ねた奴らは、上から僕に覆いかぶさる。
襲いくるゾンビを薙ぎ払い、奴らの頭をピンポイントで潰してゆく。すると、簡単に機能は停止する。
重力に従い落下する以外は鈍い動きの奴らだ、これ以上ないくらい簡単に処理出来た。

ξ゚听)ξ 次はそのまま真っ直ぐだけど、何かいるわ!

( ^ω^)「……突っ切るお!」

ツンの言う通り、真っ直ぐ道を行く。すると、ランタンか何かの光がぼんやり見えてきた。
僕はそれが何か確認する前に、今まで通り殴りかかる。早く、早く迷路を脱出せねば、そう焦っていたからこそ、僕に迷う暇はなかったのかもしれない。
しかし、ゾンビだろうと思って殴ったそれは、


66 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 13:03:53.24 ID:KvOOzdyR0
ξ゚听)ξ 待っ……

……完全なるミス。
生きた人間であった。
拳があたった瞬間、ハッキリ生きた温もりを感じた。

(;^ω^)「やっちまったお……すいません」

しかし、気付く頃には、とうに頭は潰れた状態だった。ランタンに照らされた、そのもげた首から吹き出した血は、いっこうに止まる様子を見せない。
手には生暖かい、まだ新鮮な血がこびりついていた。

刹那、フラッシュバック―――ゾンビに襲われた過去が、僕の中に流れ込む。目の前が赤黒くなって―――

痛イ……痛イ………痛イ…………

ハッとして、倒れた人間の開いた瞳孔を見た途端、僕の中にはまた別の感情が入ってくる。これは、フラッシュバックのそれとは違い、僕自身ではなかった。

血ダ……血ヲ………血ヲヨコセ…………私ニ血ヲヨコセ……………

(;゚ω゚)「うわあ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙」


67 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 13:10:14.19 ID:KvOOzdyR0
黙れよ――――お前は誰なんだ――――

(;゚ω゚)「ブーンは、ブーンだお!」

お前はもう死んでいるんだ――――ブーンは死んだ――――

(;゚ω゚)「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい」

ξ;゚听)ξ ブーン!?

僕はどうしてしまった?
中では何か別の感情が僕を追い出そうとしている。そいつは、僕の足場が崩壊をしてゆく中、こちらを見て冷笑を浮かべている。
――――まさか、これが本来のゾンビって奴なのか?

( ゚ω゚)「……そうだ」

あぁ、参った、完全に乗っとられてしまったようだ。
……僕は走り続けた。そして、喉の渇きに気をつかわなかった。それがいけなかったのか。
どうであれ、自分を自分で眺める感覚、これは気持ちいい物ではない。

( ゚ω゚)「……素晴らしい、思い通りに身体が動くではないか」

そいつは僕の―――己の血のこびりついた掌を覗き込み、そう呟いた。
僕は困惑し、何度も声を出そうとしたが、それとは違う声ばかりが紡がれる。


68 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 13:12:31.27 ID:KvOOzdyR0
( ゚ω゚)「私はブーン……内藤ホライゾン、だったか?」

―――違う!お前なんか知らない!

( ゚ω゚)「知らない? そんなワケないじゃないか」

―――お前は僕じゃない!

( ゚ω゚)「お前は私だ……これから変わってゆくんだ……だが、まだ血が足りない……」

―――だけど、お前は僕じゃない!

( ゚ω゚)「では、別の名前に変えてやろう―――外藤ブレイゾンなんかどうだい?」

ξ゚听)ξ ……ブーン?

突然変わったストリームin僕、ツンは恐る恐るその僕の身体に話しかける。


69 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 13:13:51.81 ID:KvOOzdyR0
( ゚ω゚)「ツンといったか」

いつもと違う顔の僕に、ツンは慎重になる。知らない相手に下手な真似がタブーなのは、だいたいどんな時も暗黙のルール。

( ゚ω゚)「……お前は今まで役に立った、だから感謝している」

―――まさか……お前……

( ゚ω゚)「……だが、これからお前は必要ではない」

鈍い打撃音。そいつはツンの頭を壁に叩きつける。ただひたすらに、打ち付けられる音とツンの悲痛な叫びだけが聞こえてくる。

ξ;;)ξ ブーン!?やめて!

( ゚ω゚)「はやく天国行ったほうが楽だぞ? さあ、さっさと砕けてしまえ……」

ξ;;)ξ ああああぁぁぁぁ………

そいつはコンクリートの壁に穴を開けて見せ、そこへ皹割れたツンを固定する。

……壁に穴とか……ジンか、こいつは。

妖しい笑みを浮かべ、その拳を振り上げた。
……まさにその時だった。

70 名前: ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/19(月) 13:14:10.53 ID:KvOOzdyR0
(`・ω・´)「せいっ!」

(;^ω^)「へぷぉぉぉぉっ!?」

―――あれ?戻った?
闇から湧いて出たように、足音一つもたてず忍び寄ったシャキンが、僕の脇腹へ跳び蹴りを入れた瞬間だった。今までいたはずの顔は消え、僕は再び僕の視界を手に入れた。
そのキックは脇腹へモロにヒットし、僕はあまりの痛みにもんどりうって倒れる。

(`・ω・´)「さぁ、捕まえたぞ!」

(;^ω^)「……お……あ……」

助かったんだろうか。いや、一難去ってまた一難、ぶっちゃけありえない。
ゾンビの身体はめちゃめちゃタフだし大丈夫かと思ったが、どっと疲れてしまった気がした。
上手く動かないや。

(`・ω・´)「……店に戻ってもらおうか」

すぐさまシャキンは水筒の蓋を開け、僕の口に水を流し込んだ。喉が潤い、段々と感覚がハッキリしてきても、身体が軋んで全く動けない。

そのままシャキンは、ツンを抱えて動かなくなった僕の身体を引きずり、また店までの道を歩き出す。
冷たく、強い風が迷路を駆け抜ける。ランタンはとうに消え、辺りはまた暗闇に支配された。

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