- 55 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:24:00.01 ID:y2dK9qia0
- #03 イディオット
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
(;^ω^)「おっ!?」
一陣の風が吹いたようだった。猛スピードで僕に襲いかかるそいつは、紛れもなく数時間前に見た姿。
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
ゾンビだ。しかし、僕が見た物とは違い、動きは速く、姿形も妙に変形していた。
(;^ω^)「体勢が…」
両腕でツンの頭を守ったが、奴の襲撃で完全に身体ごと吹っ飛ばされた。そして、さらに追撃が迫る。
宙に舞っている身体は避ける事も防ぐ事も叶わず。
(;゚ω゚)「ぉヴぇぇぇ」
ツンを守るので精一杯、反撃なんてとてもじゃないが出来ない。そう思っていた。現に、ピラニアのような勢いで肩に噛み付かれたのだが、
( ^ω^)「…身体が軽い!」
おや?
ステップを踏めば、僕の姿形がゾンビの目の前から消える。
そして、相手が気付く頃にはもう背後を取った後、無数の打撃が死体の身体に捩込まれる。なんだか、妙に身体がすんなり動くんです。
- 56 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:27:33.54 ID:y2dK9qia0
- ( ^ω^)「オラオラオラオラオラオラ!!!!!!!!!1111」
敵は動きのわりに脆い身体をしているため、拳を打ち込めば身体は簡単にちぎれ飛ぶ。
両腕には、確かに肉を刔るような感覚が伝わる。腹を乱雑にブチ破り、頭部を砕き、ついでに股間にタッチ。
そして、あっという間に相手の動きは止まってしまった。最後の一撃が、あまりにも情け深過ぎたか否か。
……ってアレ?
ξ;゚听)ξ ブーン! 無茶苦茶しないで! 骨に響いたわよ!
そうだ、ツンを抱えていたのを忘れてた。
両腕使えると思ったら、ツンの頭を落としてしまっていた。
泥だらけになった髑髏を拾い、申し訳程度に服の切れ端で拭いてあげると、ツンは機嫌のよさそうな声で笑った。
(;^ω^)「正直すまんかった」
ξ゚听)ξ 何があったのかわからないけれど…今、何かに襲われたでしょう?
( ^ω^)「見えない?」
ξ゚听)ξ 目がないもの、当たり前でしょう?
では何故、敵の姿を確認出来たのか。
そこんとこ、説明お願いします。
- 57 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:28:44.30 ID:y2dK9qia0
- ξ゚听)ξ 波動、って知ってるわよね?
( ^ω^)「あぁ、あのゾロリみたいなポケモ…」
ξ゚听)ξ 勉強してこい
波動、つまるところの「波」である。波は液体の表面に見えるだけではない、音や光なんかも波で出来ている。真空であろうと伝わる、波動がない物はないであろう。
ξ゚听)ξ 私には視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚がないけれど……それ以外はあるのよ
ツンは五感全て失ったせいで、それ以外がとてつもなく敏感になった、とでも言えようか、なんだかエスパー的な能力が備わった…存在はゴースト的な物だが。
( ^ω^)「あ、僕も死んでいるんじゃないかお。さっきから僕、ゾンビのような行動が目立つお……なんちゃって」
ξ゚听)ξ えぇ、わかるわ
(;^ω^)「え……」
ξ゚听)ξ だってブーン、さっきから私の頭を抱いてたのに、鼓動が一切伝わってこないわ
そうか。
目覚めた時に心臓のようすが妙に安らかだったのはそういうことだったのか。
慌てて胸に手を当てる。…ツンの言う通り、確かに心拍はない。
ξ゚听)ξ なんというかな…確かにブーンはゾンビなのだけれど
骸自体に何の変化はないが、僕の身体には何かが流れている。
僕は今更、僕やツンが恐ろしくなってきた。何で死んでるのに生きているんだ。
- 58 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:29:42.08 ID:y2dK9qia0
- (;^ω^)「僕はまさか幽霊なのかお! 催眠術と夢喰いが使えないと言うのに!」
ξ゚听)ξ ……ブーンは…モンスターに近いわね。死んではいるけれど、身体自体は意思で動かせるでしょう?
(;^ω^)「モンスターでゴースト!? でも催眠術と夢喰い使えないお! 絶対これは夢だお! 今朝尻からビーム撃った夢の続きだお!」
ξ;゚听)ξ だ、大丈夫よ…ゾンビになる条件に何かあって、それにたいしてブーンの身体が抵抗しているだけよ…
( ^ω^)「kwsk」
ξ゚听)ξ つうか心臓止まってんのにピンピンしてんじゃない…まぁ、完全には死んでないのよ
( ^ω^)「半死、把握した」
医学上では心停止、つまり死んでいるけれど、血液流れてないのに何故か思考も運動も出来る、つまり以前となんら変わりない。むしろ、身体能力はアップしているので結果オーライと考えるようにした。そうじゃなきゃ、結構キツイもんがある。
( ^ω^)「…つうか心臓がドクンとかならないからイマイチ緊張感出ないお」
ξ゚听)ξ さ、早く次の街に行きましょ
( ^ω^)「…いやいや、まずは水を飲ませて欲しいお」
先程貯めた雨水を少し飲む。ついでに、少し汚れが取れてなかったツンの頭にもかけて、汚れを取ってあげた。
ξ゚听)ξ もう贅沢言わないから、早く骸骨をやめたいわ
( ^ω^)「じゃ、行くかお……」
恐らく、これからの人生の生命維持(生きてはないけど)には、水分が欠かせないであろう。そして、他にもリミットがかかるかもしれない。行動には気を配らねば…こういう所が不便だなぁ。
- 60 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:30:47.96 ID:y2dK9qia0
- ――――――――――
????「…で、どうかね? 抗体は見付かったかね」
『これ、危ないです。触ると、ドカン、です。』
汚い字でこう書かれた箱が幾つも積み重なって、まるで要塞のようになっている部屋の中に彼はいた。しっかりした白衣を来ていて、隣にはまるでふざけているとは思えない口調で坦々とふざけた言葉を吐き出す女。
ノパ听)「すみませんっっっ!!私、頑張ったんですが」
????「言い訳はよしてくれ……私はそれを何回聞いたらいいんだい?」
ノパ听)「しかしですねぇ、私だって…」
????「だから言い訳はやめないか? ……で、彼の様子はどうだい?」
ノパ听)「そちらならご安心をぉぉぉぉぉっ!!!……着々と完成が近付いておりますからぁぁぁっ!!!」
????「そうでなければ困るね……これは政府のためでもあるんだから」
ノパ听)「…私としては、仕事を一生懸命熟しているだけですぅぅぅぅっ!!」
????「うるさいよ!」
ノパ听)「私を誰だと思ってんだぁぁぁぁっ!?ヒートだぞぉぉぉぉっ!」
- 61 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:31:51.21 ID:y2dK9qia0
- 男はおどおどした様子でヒートを見る。しかし、彼女の解釈では、その目は単なる不安の眼差しには見えなかった。
ノハ*゚听)「もしかして私、やりすぎてしまったんですかぁぁぁぁぁっ!照れるじゃないですかぁぁぁぁwwwwwww」
????「…そ、その調子で頑張って…」
ノパ听)「しゃあぁぁこらああぁぁぁぁ!!頑張るぜぇぇぇぇっ!!!」
照れるのは軽く期待以上の働きをしたとの勘違いからだが、まず普通には有り得ない。素直なんか通り越して、馬鹿がつくくらいだ。
彼女の性格上、仕方ない事であるが、それにしても心の中で思った事をそのまま口にするのも控えたほうがよいと、男は思った。…つまり、彼女は反面教師でもある。
ここが何処なのか、世間一般では誰もしらない。
- 62 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:32:57.95 ID:y2dK9qia0
- ―――――雨の街をあとに、僕らはふらふらと歩いていた。…しかし、目的地はまだない。何故?聞くまでもないだろうが、道が一つじゃないからさ。
( ^ω^)「何処に行こうかお…」
ξ゚听)ξ とりあえずベリャシに行ったほうがいいんじゃないかしら?
( ^ω^)「ベリャシに?」
ツンの言うベリャシは都邑の真ん中に作られた村で、ほとんどが山の中。僕が好きなハズである自然が広がる場所だと聞いた。しかし、実際に行く機会はなかったので、詳しくはわからない。
ξ゚听)ξ でも、マグニアにも行けるのよね
一方マグニアは大都市。排気ガスなんかのせいで実際の空気まで濁って見えるらしいが、その分色んな店もあり、ツンをどうにかするのには適している。だが、もうそんな汚い空気はうんざりだった。
( ^ω^)「普通ならマグニアに行くのが当たり前か…」
ξ゚听)ξ 別にベリャシでも構わないわよ? ベリャシには心霊スポットもあって、それらしき職業の人もいるかもしれないし
心霊スポット、と聞いてたじろんだが、なんてことはない、心臓がないの同然だから、きっと平気だろう。
- 63 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:33:35.43 ID:y2dK9qia0
- ( ^ω^)「じゃあやっぱベリャシだお」
ξ゚听)ξ じゃあこの先を左ね!
( ^ω^)「…やけに詳しいお。来た事あるのかお?」
ξ゚听)ξ ベリャシにはいった事はないわよ。そこの彼に聞いたのよ
( ^ω^)「彼?」
はて……今、人影は見えたかな?だんだんとぬかるんだ泥道になってゆく僕らの足元、振り返れど何も見えないくらいまで来た。
ξ゚听)ξ あぁ、見えないのね…あそこで首にロープ巻き付けてる彼……
(;^ω^)「早速現れたおwwwwww」
ドキドキはしないものの、なんだか嫌な感じはしなくはない。むしろ、嫌な感じはする。
…やっぱりマグニアにしときゃよかったと後悔した時には、調度雲を割って太陽が顔を見せ始めた時だった。
・・・帰りたいけど帰れない。
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