- 36 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:02:50.19 ID:y2dK9qia0
- ……熱い……
#02 ラック
- 37 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:03:18.89 ID:y2dK9qia0
- 怪物に噛まれた傷痕が焼けるように熱い。動脈が、静脈が、心臓を駆け巡る血が焼けるように熱い。
そして、痛い。身体中に針を通したであろうような痛みだ。
( ゚ω゚)「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙…あ?」
しかし、あっさりと痛みはなくなる。それはまるで、風邪をひいた時の腹痛のように、自然と引いてゆき、数分の後にはほとんど、痛みが解らなくなる。
( ^ω^)「……僕、生きてるお?」
見ると、怪物は全て倒れていた。何があったのかはわからないが、ぴくりとも動かない。
僕はその怪物を改めてまじまじ見てみる。……人間の死体みたいだな、コイツら。
( ^ω^)「ゾンビみたいだお……と、とりあえず、復活する前に燃やしてしまうお」
そうして、死体の一匹を外へ運び出そうとした、その時だった。
置いて……いかないで……
( ^ω^)「ツン?」
確かにツンの声が聞こえる。
- 38 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:03:46.34 ID:y2dK9qia0
- そして、その声に返事をした直後、
助けて……
助けて……
助けて……
死体の山からも無数の声が溢れている。ツンの声を聞こえた僕に、つまり死体の声が聞けると気付いたのか、まるで今までとは態度を真逆にしたように媚びた声だ。
僕はそれに躊躇ったが、
( ^ω^)「……わかった! みんなを助けてやるお!」
そう言って死体の山を一気に外へ担ぎ出した。なんというか、なんだか悪気はなさそうなのだ。僕達を襲ったのも、全て。
そんなことより、こういうのをなんとも思わなくなったのは何故だろうか。さっきの痛みで、ドキドキする時とかに使う血液が流れきったのかも知れない。
あと、こんな量の死体を運ぶ力があったかなぁ……
- 39 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:04:59.50 ID:y2dK9qia0
- ξ゚听)ξ ……置いていかないでって言ってるでしょっ!!
( ^ω^)「ツンはまだ元気そうだから、待っててくれお」
何故ツン達と会話が出来ているのか不思議ではあったが、なんだか心は変に安らかだった。
ツンの死体を一端放置して、死体達を背負った時、みんな泣いていた気がした。僕はすぐに庭まで死体達を運び終え、それを燃やして、ツンを迎えに戻る。
(;^ω^)「グロいお」
改めてツンを見る。これは精神的ブラクラってレベルじゃ(ry
ξ゚听)ξ ……ひどいじゃない……私だってこんなの嫌よ……
( ^ω^)「ツン、とりあえずどうにかしてやるお!」
ξ゚听)ξ ……どうにかって……?
( ^ω^)「とりあえず、頭を借りるお」
- 40 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:05:34.71 ID:y2dK9qia0
- ツンの死体から外れた頭を手に取る。なんかの漫画で読んだぞ、こういう場合は魂が成仏出来ずにいるんだって。
ξ;゚听)ξ わ、私の頭をどうするっていうのよ
( ^ω^)「やはり! 魂は頭に宿ってるのかお!」
だいたいセオリーである。流石に、足の指とか肋骨とかに宿るワケはないみたいだ。
ξ゚听)ξ あ、成る程…って、このまま持ち歩くつもりじゃないでしょうね? それは嫌よ
( ^ω^)「頭蓋骨で何か作れば、調った形のまま持ち歩けるお! …ツン自体には戻れないけれど」
ツンの魂が宿っている頭蓋骨で何かを作れば、それで持ち歩けるかもしれない。上手く行くかはどうかとして、そう考えた。
僕は、街中でも不自然ではないものならば、なんだっていいと考えていたが、
ξ゚听)ξ まぁ、こんなぐちゃぐちゃよりはマシよね……さっさと指輪なりなんなりにしちゃいなさい
( ^ω^)「……指輪がいいのかお」
ξ*゚听)ξ い、いま、贅沢な奴め、とか思ったでしょっ!
(;^ω^)「ツン、死んだってのに元気過ぎるくらいだお…」
…ツンの意見も、多少は尊重することにしよう。
とりあえずゾンビ達の死体の魂が天に昇っているのを見送りながら、ツンの頭を持ち、僕は廃屋をあとにした。
- 41 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:06:19.84 ID:y2dK9qia0
- ―――――とりあえず、遺骨を加工してくれる商売は、現代にも少なからず存在する。
ちなみにヌソックにはないが、隣街にいけばあるハズだ。隣街まで、徒歩でおよそ一時間はかかる。その間、僕はツンの頭と話をしていた。
( ^ω^)「調子はどうだお?」
ξ゚听)ξ 頗る爽快よ。なんだかとっても頭が軽いの
(;^ω^)「まぁ、肉だとか一切ないしね」
ξ゚听)ξ あー…悪いわね、綺麗にしてもらって
( ^ω^)「気にすんなお。多少グロかろうが、たいして苦ではなかったお」
ξ゚听)ξ 綺麗っても、頭蓋骨だから…多少はグロいかもしれないけれど
( ^ω^)「そういや、脳を抜いても大丈夫な物なんだおね…」
ξ゚听)ξ そうみたい…それと私ね、あのゾンビみたいな奴らに襲われた時に、彼らの考えてる事、思っている事なんかがわかったの
- 42 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:06:40.35 ID:y2dK9qia0
- 生前、一緒に寝ていた丘に差し掛かる。まだ綺麗なまま、緑いっぱいで清々しい。そして、若草に一人分の足跡がつけられる。
( ^ω^)「へぇ…何かわかったのかお?」
ξ゚听)ξ えぇ、彼らが何故そうなったのか、よくわかったわ
( ^ω^)「ま、街までまだあるし、詳しく聞かせてもらうお」
ブーン達は立ち止まらず、段々と、木々が闇を創る森に入ってゆく。そして、揺らめく葉の音に二人の声は消されてゆく。
- 43 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:07:17.15 ID:y2dK9qia0
- ―――――そこはなんだか薬品臭いロッカールーム、ドクオはヨレヨレのシャツから、黒シャツに着替えていた。
「彼ら」と同じ物である。
('A`)「…サイズ大きいなぁ」
なんだかんだいいながらも、とりあえずネクタイも締め終え…
締め終え…
締め…
('A`)「ツケカタワカンネ」
ちゃんとした服を来たのはいつ以来だろうか。ブーン達と遊ぶようになってからかな、服の事に関してはあんまり言われないから、これでいいかと、そう思っていたのかもしれない。
…もしかして、ツンはいつも何か言いたそうだったが、服の事だったのかもしれない。
( ゚∀゚)「よう、どうだ?」
('A`)「僕にピッタリなサイズってないんですか?」
頃合いを見てジョルジュが部屋に入ってくる。やはり黒シャツ。
( ゚∀゚)「もう少し牛乳でも飲むこったな」
これは完全な厭味である。が、ドクオには全く効果はない。彼はたいてい、mndksで済ますようなタイプの人間だから、厭味に一々反論するのが馬鹿馬鹿しいのだ。
('A`)「mndks」
ドクオはネクタイを適当に結び、なんだかぱっと見、気持ち悪い風な格好になる。結び方のせいで、ネクタイが変に短く、方向も滑稽だった。
- 44 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:07:47.43 ID:y2dK9qia0
- (´・ω・`)「お待たせ」
しばらくしてショボンも姿を見せる。またとんでもない量の紙が挟んであるファイルを脇に挟み、大変お疲れな様子。
( ゚∀゚)「じゃあ、回収に行きますか」
('A`)「…ちょっと不謹慎」
(´・ω・`)「女の子の死体は、こちらでしばらく預かる。サンプルとして、重要な研究結果が得られそうなんだ」
('A`)「…あー、ゾンビのウィルスが残ってる動かない死体だからですか…」
(´・ω・`)「そうそう…他のゾンビ達は何故か燃やされちゃってたからね」
ドクオはなんだか違和感に気付いた。
ゾンビを燃やされた、つまり燃やした奴がいた。そして、それが出来るのは、意識がある人間だ。だが、自分達の他に生きている奴がいた。
('A`)「…あの…」
(´・ω・`)「なんだい」
('A`)「僕が警察を呼びに行く間、僕ら三人の他に、誰か入ったんですか?」
(´・ω・`)「いや、そのような事実は一切ないが」
- 45 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:08:15.08 ID:y2dK9qia0
- ショボンはそう、はっきりと言い切った。警察を疑れば、完全にミスであろう。だが、警察には負い目のような物がないとすれば…
( ゚∀゚)「…もう一人のお友達には、まだ意識がある…だろ?」
('A`)「ビンゴ!」
ジョルジュもそれには気付いていた。だが、
(´・ω・`)「…しかし、男の子のほうは、失血死してもいいくらいの血液が流れ出ているんだよ…」
( ゚∀゚)「血液が人の十倍もあったとか」
(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」
('A`)「…でも、死体を燃やしたのはブーンかもしれない」
(´・ω・`)「あぁ…庭にも血痕が発見されたそうだ」
生きているとは考えないほうが利口だ。そう言いたそうな顔で、ショボンはファイルから一枚の紙を取り出す。
(´・ω・`)「彼にはウィルス感染後にも、意識はハッキリしていた。これは間違いない、見てくれ」
- 46 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:08:36.00 ID:y2dK9qia0
- 紙には「抗体」について様々な事が書かれていた。強力なウィルス故、今までにも多数の犠牲者は確認されて来たが、ZVに対する抗体を持つ人物が、発見されている。しかし、その抗体は他人の体内では効果を発揮しないという、かなり複雑な物らしい。
ブーンにも、ないとは限らない。
(´・ω・`)「ちなみに抗体があるとされた人は皆、死んだけどね…ゾンビ化しないけど、不死身ではないんだ」
('A`)「じゃあ、ブーンは死んでるんですか? そんなのあんまりですよ」
( ゚∀゚)「真相は、そいつを捕まえて調べるまでわからないぜ? とりあえず行こうか」
ジョルジュはロッカーの中に入っていた小瓶を取ると、すぐに部屋から出て行った。
それからショボンも紙をファイルに戻し、同じく手には小瓶を一つ、扉を開ける。
(´・ω・`)「ということだね。データがなけりゃ僕は無力だから、今は彼の言う通りにしとこう」
('A`)「それは…なんですか?」
(´・ω・`)「酒だよ、酒…飲むか?」
('A`)「…結構です」
彼らの言う仕事が、未だによくわからない。それ以上でも以下でもない。
ドクオはとりあえず、ショボンの後ろを追うようにして小走りを始めた。
- 47 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:10:23.58 ID:y2dK9qia0
森を抜けると、そこには山に囲まれた街が広がっている。
視界全体に広がる霧が濃く、遠くまではよく見えない。
( ^ω^)「ツン、ムスロについたお」
ξ゚听)ξ …寝てはないわよ
( ^ω^)「永眠じゃなかったお?」
ξ゚听)ξ …頭突きするわよ?
ムスロの街には、以前よく来ていた。ただ、この街は少し奇妙な感じがして、心地いい場所ではない。さらに、霧が絶えずかかっており、決して晴れないとまでいわれる。だから、この街はあまり好きではなかった。
( ^ω^)「商店街か…」
ヌソックよりムスロのが小さいが、すぐ近くに海や森がある。そのため、生鮮品が街の特産。あまり見られない食材もあり、他の街からも度々珍しい食材を求め来る人もいて、商店街は活気に溢れている。
…いや、今日は商店街に様はないのだが。
(;^ω^)「裏道に入るのは怖いお」
ξ゚听)ξ やっぱDQNに絡まれる可能性もあるかしら
これから行く店は、骨で物を作る事を仕事にしている店。その仕事内容から、商店街では忌み嫌われている。
しかし、やけに静かだ。確か、二ヶ月くらい前に来た街とはまるで別物、軒と軒の間から間歇的に聞こえるハズの街の喧騒が一切ない。
- 48 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:10:51.54 ID:y2dK9qia0
- ( ^ω^)「…そういえば、この街…さっきから人がいないお」
ξ゚听)ξ あら、全員で旅行かしら?
(;^ω^)「ねぇよwwwwwww」
やっと店に辿り着く。しかし、やはり誰もいない。僕は喉が渇いたので、無断で蛇口から水を拝借する。
(;^ω^)「ん?」
しかし、いくら捻れど水は出ない。
ξ゚听)ξ …人はもう住んでないのね
(;^ω^)「困ったお…喉が渇いて死にそうだお」
そう、喉の渇きようが異様なのだ。湿度は嫌というほどある街なのに、唾液も完全に渇いて口の中がぱさぱさして、苦い。
(;^ω^)「水…水…」
- 49 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:11:26.49 ID:y2dK9qia0
- おかしい。これは喉が渇いているなんてレベルじゃあない。口ずからする味は、確かに消化酵素類の苦み。だがなんだ、この渇きは。
ξ゚听)ξ どうしたの?
(;^ω^)「水が…水…」
とりあえず飲める物を探す。しかし、水道は通っていない。
それは何かに取り憑かれたのよう、僕は外に飛び出し、水を求めて走り出す。手元にツンの髑髏を抱えているのも忘れ、乱暴に走った。しかし、走れば走るほど喉の渇きは進行する。
(;^ω^)「ア゙ア゙…ア゙…」
屋根に滴る雫。僕はそれに飛び掛かった。しかし、それっぽっちでは満足は出来ない。
ξ;゚听)ξ ブーン!
(;^ω^)「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
……畜生。生き物さえいれば、そいつから血液をたらふくいただけるのに……
…あれ?僕、何を考えて…
(;^ω^)「ア゙ア゙…」
- 50 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:13:01.22 ID:y2dK9qia0
- その時だった。
雲っていた空からぽつぽつと雨が降り出した。
僕はそれを全身に浴び、身体も舐め、水滴を出来る限り体内に取り入れようとした。全く、調度いい所に振って来てくれた
。
…しばらくして喉が潤い、少し落ち着いた。
(;^ω^)「…ハァ…」
ξ゚听)ξ どうしたのよ
( ^ω^)「…ゾンビが人を襲う理由が分かったお…」
ξ゚听)ξ 何故?
( ^ω^)「さっき、僕もゾンビになったんだお」
ξ゚听)ξ ……?
( ^ω^)「血液を欲してたんだお…だから、人を襲ったんだお」
ツンが森で話してくれたのだが、噛まれた瞬間、彼らの意思なんかがツンの中に伝わってきたそうだ。泣きながら、それでも身体は言う事を聞かない。
しかし、まだきっとそれだけではない。ゾンビが廃屋にこぞって集まるのには何か意味があるのだろう。そう、きっと、出られない理由が。
ξ゚听)ξ 私にはもう感覚なんかほとんどないわよ
- 51 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:14:07.17 ID:y2dK9qia0
- ( ^ω^)「感覚はあるけど…僕はゾンビになってるのかお?」
ξ゚听)ξ だったら、もうブーンは死んでいるわね
( ^ω^)「動く屍…なんだかカッコイイお!」
ξ゚听)ξ それはない
そのあとツンの提案で、僕は水を集めた。
落ちていたペットボトルに、ありったけの水を詰めた。
もし喉が渇けば、さっきのように我を失うかもしれないからだ。
( ^ω^)「…ツンを加工してもらう店…なかったお…」
ξ゚听)ξ 仕方ないわよ…帰りましょう?
( ^ω^)「いや、帰らないお」
ξ゚听)ξ どうして?
( ^ω^)「ゾンビ達が廃屋から出られなかった…つまり、戻ったら僕らは廃屋生活だお? ゾンビはきっと、日光に弱かったりするんだと思うお」
ξ゚听)ξ …勉強にその思考力が使えたらね
- 52 : ◆B.D.T.Zvzc :2007/02/12(月)
12:15:55.57 ID:y2dK9qia0
- (;^ω^)「おっおっおっ」
雨足は強くなる。
それは、僕以外にも恵みの雨であって、
それは、つまり僕と同じような存在にも活力を与えるワケで。
ξ゚听)ξ …ブーン!後ろから何か来る!
僕の中へ、ツンが叫ぶ。
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