6 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 20:56:29.75 ID:FfdTIlmpO
(^o^)「ふぃ〜、今日は雨か。なんか鬱だねぇ」

 絶え間なく降り注ぐ雨の中、オワタはいつも通り牛馬を連れてドクオ達の屋敷へと続く坂道を登っていた。
 と、オワタの前方で何かが動いた。

(^o^)「ん? 誰かいるのかな?」

( - )「……」

 雨で視界の悪い中、オワタが目を凝らすと、茫然自失で傘もささずにフラフラと歩いているしぃがいた。

(;^o^)「な!? しぃちゃん、こんなところでどうしたんだい!?」

( ゚ -゚)「あ、…オワタさん」

 しぃはそう呟くと、その場にバタリと倒れこんだ。

(;^o^)「しぃちゃん!?……うわ、凄い熱だ!
 こうしちゃいられない、早く医者に見せないと!!」

 オワタはしぃを抱え上げると、率いてた馬にまたがり、果敢にぬかるんだ坂道を下っていった。
8 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 20:57:48.41 ID:FfdTIlmpO


('A`)は地図に無い島へ行くようです・第9話




9 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 21:01:27.47 ID:FfdTIlmpO


〜翌日〜

J(ヽ'ー`)し「ダメじゃ。薬草のお陰で熱は下がったが、精神的ショックが大きいみたいじゃな」

川 ゚ -゚)「そうですか……」

 しぃは倒れてから、オワタに急いで村長の家に運ばれ、村長につきっきりで看護されていたが、今だ布団の上で寝込んでいるという。

 クーは持っていた土産の果物籠を村長の前に置いた。

川 ゚ -゚)「今日はそっとしておくとします」

J(ヽ'ー`)し「……うむ、その方がいいじゃろ。とりあえず、しぃの事はアタシに任せておきなさい」

 はぃ、と一言だけ呟いて、クーは村長の家を出ていった。

12 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 21:04:28.91 ID:FfdTIlmpO



(´・ω・`)「やぁ、クーじゃないか。
 こんな時間からどうしたんだい?」

 クーはバーボンハウスに入ると、ショボンの前のカウンターの席に座った。

川 ゚ -゚)「ドクオもしぃもあの状態で、商品が入ってこないんだから店を開きようがないだろう」

(´・ω・`)「そりゃそうか」

 ショボンはカウンターの下から、名札の付いたボトルを2つ取り出した。

(´・ω・`)「そこのお父さんも、あんまりはお酒ばっか飲んでないで、仕事したらどうだい?」
14 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 21:08:47.76 ID:FfdTIlmpO

 ショボンの視線の先に、モララーが1人でやけ酒を飲んでいた。

(#・∀・)「うるせー。さっさと黙って酒持って来い!!」

 やれやれ、といった表情をしながら、ショボンがモララーとクーの前にボトルを置く。

(#・∀・)「あぁ? なんだ、誰かと思ったらクーじゃねえか。
 てめぇ、しぃがあんな事されといてよくもそんな涼しい顔できるな!?」

 モララーが絡んできても、クーは表情を崩さない。

川 ゚ -゚)「今、見舞いに行って来たところですよ。
 それより親方、お酒は控えめにしておいた方が」

(#・∀・)「うるせーバカ!!」

川 ゚ -゚)「バカとはなんですか」

(´・ω・`)「やめないか2人とも。
 いい大人がそんな幼稚な喧嘩をするんじゃない」

 カウンター上で喧嘩を始めた2人を見かねて、ショボンが仲裁に入った。

16 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 21:14:32.47 ID:FfdTIlmpO


 薄暗い店の中で、カラン、と氷がグラスに擦れる音が響き渡る。

川 ゚ -゚)「村長の話では、しぃは今回の件について『ドクオに屋敷から追い出された』と言っているようです」

 クーはそう言って、グラスに手を差し伸ばす。

(´・ω・`)「うん、それはモララーからも聞いたよ。
 原因は話さないんだけど、しきりに自分自身を責め立てているようだね」

 ショボンが話すのを聞きながら、クーはグラスに入った酒を口に含む。

(#・∀・)「ふざけんな。あのしぃが何をしてそんな事されなきゃいけねーんだ。
 それに何で雨ん中ほっぽり出す必要があるんだよ?」

川 ゚ -゚)「……確かに、後者は私も同意です」

 モララーの呟きに、クーが呼応する。
19 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 21:17:46.59 ID:FfdTIlmpO

(#・∀・)「あ? なんだよ後者って。
 テメェ、しぃがドクオに何したか知ってんのかよ?」

 クーの言葉を聞いたモララーが声を荒げる。

川 ゚ -゚)「いや、理由は知らないです。
……けれども、どうせ大した事じゃ無いでしょう」

 顔の赤いモララーを見ても、クーは素っ気なく返す。

(´・ω・`)「……大した事無い?」

 黙って2人の会話を聞いていたショボンが、不思議そうな顔をした。
22 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 21:21:46.85 ID:FfdTIlmpO

川 ゚ -゚)「はい。
……私は恐らく、しぃに次いでドクオの事を知っている人間でしょう」

 クーは語りながら、じっとグラスの中の氷を見つめている。

川 ゚ -゚)「毎日あんな必死になって荷物を運んできて、あまつさえ、しぃに言われたからと土下座してまで私に商品の値上げ交渉してた男だ。
 しぃとの暮らしを必死になって送っていた彼が、本気でそんな事するとは思えない」

 クーが見つめる氷に、大きなショボンの顔が浮かんだ。

(´・ω・`)「……確かにね。2人は仲が良かったようだし、単なる痴話喧嘩だったのかもしれない。
 まぁ、ドクオくんはちょっとやり過ぎな気もするけど」
24 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 21:24:03.91 ID:FfdTIlmpO

 ショボンとクーの話を聞いていたモララーが、耐えきれずに叫んだ。

(#・∀・)「ふざけんな!! 例え何らかの理由があったとしても、アイツがしぃにこんな仕打ちする権利なんかねぇ!!」

(´・ω・`)「ちょっと落ち着け」

(#・∀・)「うるせぇ!!」

 ショボンの制止も聞かずに、モララーはグラスの中身を一気に飲み干した。

(#・∀・)「俺はアイツに、可愛いしぃを託したんだ。それをこんな形で裏切りやがって。
 誠実で真面目なしぃにこんな仕打ちするなんて、俺はゼッテェ、許せねぇ……」
27 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 21:27:28.01 ID:FfdTIlmpO

 酒を飲みすぎたのか、虚ろな目をしながらモララーは徐々に声量を弱める。

(´・ω・`)「……やれやれ、困ったお父さんだ」

 やがてカウンターの上に突っ伏したモララーの肩に、ショボンが毛布をかける。

(´・ω・`)「さっきも、あのビロードくんが、怒りを露わにしてみんなの静止を振り切ってドクオくんとこに殴りこみに行ったらしい」

 ショボンは苦笑いしながら言った。

川 ゚ ー゚)「……全く、ここの一家は困った人ばかりだな」

 寝息をたてるモララーの顔を見て、クーは微笑んだ。
29 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 21:33:53.91 ID:FfdTIlmpO

(´・ω・`)「……ツンちゃんなんかも、大分怒ってたよ。
 相手の気持ちも考えないで、ドクオは何をやってるんだ――って」

川 ゚ -゚)「……ツンのそれは、半分主観も入ってるようだな」



 クーはショボンと会話しながら、どこか遠くを見ていた。

川 ゚ -゚)「……ブーンがいなくなってから、何ヶ月経っただろうか」

 モララーの空になったグラスを取ると、ショボンは水洗いし始めた。
31 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 21:36:46.67 ID:FfdTIlmpO

川 ゚ -゚)「本当は不安で堪らないんだろう。最近ツンは、強がるのも疲れて段々すさんできているからな。
 全く、他人様の心配している場合じゃなかろうに」

 ショボンは洗い終えたグラスをまじまじと見た。

(´・ω・`)「……うん、ツンちゃんの為にも、一刻も早くブーンくんの消息を調べなきゃいけないね。それが僕に与えられた使命だ」

 ショボンとクーがカウンター越しに会話をしていると、突然店の扉が開いた。

32 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 21:38:43.61 ID:FfdTIlmpO


( ><)「……」

 振り向いた2人の視線の先に、呆然とした様子でビロードが立っていた。

川 ゚ -゚)「なんだ、ビロードか。いきなりドア開いて驚かせてくれるなよ」

(´・ω・`)「やぁ、ビロードくん。
……見たところ無傷のようだし、さてはドクオくんをフルボッコにしちゃったのかな?」

 冗談混じりにショボンが話しかけるが、ビロードの顔色は変わらない。

35 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 21:41:32.29 ID:FfdTIlmpO

(´・ω・`)「? どうかしたかい?」

 黙り続けるビロードを不思議に思い、ショボンが問いかける。

( ><)「……んです」

 ビロードが何か呟いた。

川 ゚ -゚)「なんだ? 声が小さくて聞こえないが」

 クーに促され、ビロードは今度は声を大にして言った。



( ><)「――ドクオさんが屋敷のどこにも居ないんです」

37 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 21:45:32.48 ID:FfdTIlmpO



 しぃは村長宅の縁側に座って、庭を眺めていた。

(*゚ -゚)「……あ」

 しぃの視線の先に、紫の花弁を風に揺らしている花が映った。

(*゚ -゚)「……お母さんが好きだった花だ……」

 しぃはゆっくり立ち上がると、庭の片隅に咲く一輪の花の前で座りこんだ。

(*゚ -゚)「確かアネモネだっけ……」

 優しい手つきでしぃが花を撫でる。
39 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 21:48:40.39 ID:FfdTIlmpO


〜〜〜〜〜
(*゚ー゚)「おかーさん、なんでいつもその花飾ってるの?」


――フフ、お父さんが仕事でいつも帰ってこないからよ。


(*゚ー゚)「なんでおと―さんが帰ってこないとその花を飾るの?」


――それは、お母さんがお父さんを愛しているからよ。これはその私の思いの証。


(*゚ー゚)「? しぃ、よくわかんないや」


――しぃは女の子のクセに花言葉も知らねぇのか?


(*゚ー゚)「花言葉? おに―ちゃんはこの花のこと知ってるの?」


――ふふ、お兄ちゃんは物知りね。そう、この花の花言葉は、私のお父さんへの思いが込められてるの。それはね―――

〜〜〜〜〜

41 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 21:53:15.70 ID:FfdTIlmpO


(*゚ -゚)「……花言葉、なんだったっけ? 思い出せないや」

 しぃは庭の地面に咲いている花を見ながら呟いた。

(*゚ -゚)「そういえば、お母さんはお父さんが仕事で帰ってこなくて、いつも寂しそうにしていたな……」

 遠い昔の事を思い出すと、しぃは少し苦笑いする。

(*-ー-)「……ねぇお母さん、私は自分の大切な人を傷つけてしまったみたい」
43 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 21:56:16.28 ID:FfdTIlmpO

 しぃは溜め息をついて、ふと空の方へ目をやった。

(*゚ -゚)「いつもは温厚で気弱なドクオがあんなに怒ってたんだから、私は相当なことしたんだよね」

 しぃの呟きに答えるわけでもなく、空の上に浮かんだ綿雲はゆっくりと流れている。

(*゚ -゚)「……ドクオ、今何してるのかな。ご飯とか、掃除とかちゃんとやってるのかな」

 風に揺られ、アネモネの花びらが微かに揺らいだ。
45 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 22:01:34.51 ID:FfdTIlmpO

(*-ー-)「……ふふ、そうだね。
 ドクオに勘当くらった私なんかが、彼の心配をするなんてお門違いだよね」

 強くなった風が、花弁を一層激しく揺らす。

(*゚ -゚)「わかってるよ、もうドクオのことは言わない。あんまりしつこい女は駄目だって言ってたもんね」

(*゚ー゚)「ね、ギコにぃ?」

 しぃが呟いている側で、花びらは彼女に何かを訴えるように、絶えず震えていた。
47 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/24(水) 22:04:49.32 ID:FfdTIlmpO



 バババババババ……

('A`)「……」

 空の上に積雲が浮かんでいる。
 その下で、爆音を鳴らして海の上をモーターボートが勢いよく進行している。

「どうした、ボートの上でボーっとちゃって」

 船の先頭で黄昏ていたドクオを見て、舵をとっていた男が声をかける。

('A`)「……いぇ、別に」

 男の洒落を気にもとめず、ドクオは空を流れて行く雲の行方を、ただずっと眺めていた。

(,,゚Д゚)「……ったく、この先長いんだからもちっと元気良く行こうぜ?」

 舵をとっていた男はドクオの様子を見て溜め息をつくと、船を更に加速させた。


〜第10話へ続く〜

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