88 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 13:35:16.54 ID:8Mx01AeYO
(;'A`)「な……な……」

 ドクオが目の前に立っている人物を見て、激しく戸惑う。

(;゚ー゚)「どうかなさいましたか?」

 何故かガクブルしているドクオを心配するしぃ。
 ――だが、ドクオが驚くのも無理はない。

J(、'ー`)し「アタシの顔に何かついてるかぇ?」

――そこに何故か、いるはずの無い母親が立っていたのだから。


89 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 13:35:56.74 ID:8Mx01AeYO


('A`)が地図に無い島へ行くようです・第4話




90 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 13:38:05.26 ID:8Mx01AeYO

 カコン、と鹿おどしの音が響き渡る。
 西洋の片田舎風だった村の様子とは一変、小さな家の庭は純和風の風景が広がる。

J(、'ー`)し
(;'A`)「……結構なお手前で」

 差し出されたお茶を飲み終えると、ドクオは茶碗を手元に置いた。

J(、'ー`)し「これで一通りの儀式は終えた。皆の者、姿勢を崩してよいぞよ」

(*´_ゝ`)「ぷはー、やっと終わったか」

(*><)「ずっと正座してると痺れてくるんです」

 儀式を進行していた老婆の一言で、ドクオの後ろに座っていた立会人達はどっと騒ぎ出す。

(;'A`)「あ、あの……」

 相変わらず、訳がわからないでオドオドしているドクオを見て、老婆は話しかけた。

J(、'ー`)し「おぉ、申しおくれた。あたしゃこの村の村長じゃ」
92 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 13:41:56.89 ID:8Mx01AeYO

J(、'ー`)し「……そなた、アタシの顔に見覚えがあるのか?」

 村長の言葉に、ドクオはドキリとする。
 改めて考えると、いくら普通より老け込んでいたとはいえ、流石にドクオの母親はここまで老け込んでいない。似ていると言えば似ているのだが……
 多分、ドクオの母親が年をとったらこんな感じになるのだろう。

('A`)「……いぇ、他人の空似ってやつです」

 ドクオは無表情に回答する。

J(、'ー`)し「ふむ? ……まぁ良い。あぁ、そう言えば、そなたが浜に流れついた時の「三日月の船」、今ここで返そうぞ」

Σ(;'A`)(あれは俺のバナナボート!)


93 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 13:43:53.90 ID:8Mx01AeYO

 村長が従者に持たせていたバナナボートをドクオに渡した。

(*'A`)「おぉ、愛しき俺の相棒よ」

( ・∀・)「この土地には存在しない、見たことの無い素材だな。
 さすが、神の国からいらっしゃっただけある」

 ドクオがボートに頬ずりしていると、先程御輿を担いでいた男がドクオに話しかけてきた。

('A`)「あ、あんたはさっきの」

( ・∀・)「モララーだ。この島で運送屋をやっている、これからしぃが世話になるが、宜しくな」

 男は名を名乗り、ドクオにお辞儀した。

(*゚ー゚)「モララー親方は、私がお金が無くて困っていた時に仕事を紹介してくれた恩人なんです」



94 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 13:44:32.12 ID:8Mx01AeYO

 しぃがモララーに続いてドクオに話しかける。

(;'A`)「え、てゆうか、しぃが世話になるってなんだ?」

 ドクオの言葉に、村長が反応した。

J(、'ー`)し「なんじゃ? しぃはまだことの次第を話していないのか?」

(;゚ー゚)「す、すいません。色々と急な話しでしたので」

 村長の言葉にしぃが少し慌てる。

(*゚ー゚)「――では、ドクオさん、これからあなたがやって貰うことを知って頂く為にも、私が女神から伝えられたお告げをお聞き下さい」

 しぃはそう言うと、静かに語り始めた。


95 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 13:46:50.81 ID:8Mx01AeYO



 1ヶ月後、南の浜に神の使いが三日月に乗りやってくる。

 それまでに、トウハト草原に屋敷を作り、神の使いをそこに住まわせ、しぃが従者となり共に暮らすこと

 生活の為に屋敷の周りに農園を開き、採れた野菜で暮らしを切り盛りしていくこと

 そうすれば、神の使いは村へ来た時にきっと幸をもたらすだろう



('A`)「ようするに、俺としぃがあの屋敷に住んで、農園を営め、と」

 ドクオは2杯目の茶をすすりながら呟いた。

(*゚ー゚)「短縮すればそうですね。
 この島の人口もここ数年増えてきて、少しでも生産量を増やしたかったのでちょうど良かったです」

 まさか、その為だけに老人にここへ送りこまれたのでは、とドクオは想像したが、キリが無いので考えるのをやめた。


96 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 13:47:26.55 ID:8Mx01AeYO

( ・∀・)「それはそうと、神の使いが村へやってきたんだ。
 すぐに幸をもたらせとは言わんから、なんか力でも見せてくれよ」

(;'A`)「ちょ、それなんて無茶振り」

 話しを聞いていたモララーがドクオ達に囁いた。

( ><)「……そうなんです! 本当に神の使いなら、その証拠を見せて欲しいんです!」

 モララーに続いて、その場に居合わせた人物が騒ぎ出した。

(;'A`)「いや、だから、何回も言うけど俺は神の使いでもなんでもねぇ!」

 とっさにドクオが叫ぶと、その場にいた物達が静まり返った。


97 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 13:50:08.20 ID:8Mx01AeYO

J(、'ー`)し「……ということは、しぃは嘘をついたのか?」

 ドクオがはっとしてしぃに振り返る。

(;゚ー゚)「……」

Ω<ざわ……ざわ……

 黙ったままのしぃを見て、他の者達がざわつきはじめる。


(;'A`)「あぁ、えぇと……」

 ドクオ、冷静になれ。
 このままではしぃが嘘つき呼ばわりされてしまう。
 ……いや、実際嘘なのだが、しかし場の空気的にここはなんとか乗り越えなくてはいけない気がする……

 ドクオは冷静さを装い、部屋を見渡す。
 日当たりが悪いため、ろうそくが灯る薄暗い部屋。壁には鉄板にメモ書きが磁石で止められている。
 縁側からは、村とは場違いな純和風な日本庭園。
 部屋の奥にある釜どでは、棒串に刺された魚がいい具合に焼かれている。

98 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 13:50:57.13 ID:8Mx01AeYO

    |
  \ _ /
 _ (m) _
    目  ピコーン
  / `′ \
   ('A`)

('A`)「なぁ、この部屋暗くないか? 電気つかないの?」

 何か閃いたのか、ドクオはその場にいた者達に話しかた。

( ・∀・)「デンキ? なんじゃそりゃ、おいしいの?」

 その場にいた者達は皆、モララーと同じようなリアクションをとった。

('A`)(しめた!)

 ドクオはその光景を見ると、心の中でガッツポーズし、しぃに振り返って軽くウインクしてみせた。

(;゚ー゚)「?」

 ドクオの意図を汲み取れずに戸惑うしぃを尻目に、ドクオが村長に話しかけた。

('A`)「なぁ、ちょっとこれらを集めてくれないか?」


99 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 13:55:41.60 ID:8Mx01AeYO

 (;゚ー゚)「あの……何やってるんですか?」

 先程から1人でごそごそ何かをしているドクオを見て、しぃが話しかける。

('A`)「あぁ、ちょっと下準備をね。……これ位でいいか。」

 ドクオはそう言うと、村長の庭からとってきた竹を、竹ひご状にしてその場に置いた。

 竹ひご、磁石、銅線、小瓶。それらがドクオの前に置かれる。

(;´_ゝ`)「一体、これらで何をしようと言うのだ……?」

Ω<ざわ……ざわ……

 現代人ならほとんどの人が何をするのかわかるような物だが、ここにいるドクオ以外の全ては本気でわからないようだ。

('A`)(この島の文明レベルどんだけ――)

 ドクオはそう思いながら、作業に取りかかり始めた。
103 名前:さるった ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 14:09:21.17 ID:8Mx01AeYO

 ドクオが庭にある小枝をポキリと折ると、枝の先に切れ目を入れた。

 J(;、'ー`)し「あっ、アタシの盆栽」

 (;'A`)「あ、ごめん」

 村長の自慢の盆栽がぽっきりと折れてしまったが、まぁしぃを助ける為だ、とドクオは勝手に脳内補完した。
 ドクオは枝の先にほぐした竹ひごをひっかけると、釜の中に枝を刺した。

('A`)「さて、焼きあがる前に……」

 ドクオは置いてある銅線を手に取ると、勢いよく腕に巻きつけ始めた。


104 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 14:10:39.69 ID:8Mx01AeYO

('A`)「ウォォォ!! ジャスティスハリケ――ン!!」

(;゚ー゚)
(;・∀・) 「……」
(;><)

 ドクオがボケをかましても、その場の者達は固唾を飲んで成り行きを見守っている。

 しばらくして、ドクオ巻きつけた銅線を腕から外すと、釜で焼きあがった竹ひごの炭を取りに行った。

('A`)「よし、準備オッケー」

 ドクオはそう言うと庭に出て、ギャラリーを縁側に呼んだ。


105 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 14:11:34.01 ID:8Mx01AeYO

 ('A`)「これでよしっと」

 小さな穴を2つあけたコルクに2本の銅線を通し、その先に竹ひごの炭を装着させる。

J(;、'ー`)し「あ、アタシの盆栽」

('A`)「あ、ごめん」

 ドクオは盆栽の枝を折ると、マッチで火をつけて小瓶の中に放り、銅線の通ったコルクで蓋をした。

(;´_ゝ`)(一体何やってるんだ……)

 やがて、小瓶の中で燃えていた小枝は、まだ少し燃えてない部分を残して火が消えてしまった。

('A`)「っし。じゃあ、お前らよくみてろよ?」


106 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 14:12:31.18 ID:8Mx01AeYO

(;゚ー゚)「あ、私の自転車」

 ドクオはギャラリーに告げると、しぃの乗ってた自転車を持ち出し、ぐるぐる巻きにした銅線を自転車にセットし、その中に真ん中に棒が通った磁石を設置した。
 バナナボートの表面のビニールをむしりとり、その上にビンを乗せるとドクオは言った。



 ('A`)「よくビンの中を見とけよ」

 ドクオはそう言うと、勢いよく自転車を空漕ぎし始めた。

('A`)「ウオリャアアァァ!! オンドレイシマツ――!!」


107 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 14:14:41.01 ID:8Mx01AeYO

 しかし、ビンの中は何も反応が無い。

(;・∀・)「なんだ? 何も起きね―ぞ?」

 ギャラリーは興味津々で見ていたが、ビンの中身は何の反応も無い。

(;'A`)(畜生……! 上手くいくと思ったんだが。このままではしぃが……くそ、光れ!!)

(;'A`)「ウォォォ!! 俺の自家発電は世界一ィィィィ!!」

 ドクオがそう叫びながら、自転車を激しく漕いだその時、歴史は動いた。




108 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 14:15:31.44 ID:8Mx01AeYO


  \ _ /
 _ (m) _
    ■  ピコーン
  / `′ \


ΣJ(、'ー`)し
Σ(;゚ー゚)
Σ(;・∀・)  「オオッ!!」
Σ(;><)
Σ(;´_ゝ`)

 ビンの中の竹ひご炭が明るく光った。

(;・∀・)「こ、これが神の力か……!? ただの炭が明るく光ったぞ!!」


110 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 14:16:56.74 ID:8Mx01AeYO

 ドクオの実験は成功であった。
 小さい頃に小学校の理科の実験で、白熱灯を発明したエジソンの作った電球を作る、というのをしたことをドクオは思い出していた。

 庭にあった竹をほぐして抵抗を無くすために薄い竹ひご状にして炭にし、ビンの中に空気があると、電気を通すとすぐに炭が焼け切ってしまうため、ビンの中で小枝を燃やして空気を消費した。
 また、丸裸の銅線はバナナボートのビニールで無駄な電気消費が無いよう、竹ひご以外に触れる場所は絶縁し、村の中で一番強い磁力を持つ永久磁石をコイルの中で回し続けて発電した。

(;'A`)(まぁ、あの時は電源は乾電池だったがな……)


111 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 14:20:12.93 ID:8Mx01AeYO

(*゚ー゚)「ドクオさん、凄いです!!」

(*´_ゝ`)「魔法か何かか!?」

(;'A`)「いや、何ていうか……」

 興奮するギャラリーを尻目に、疲れきった表情でドクオは自転車から降りた。

J(、'ー`)し「うむ、よくやった。これでしぃの言った事が証明されたな」

 村長の言葉に、ドクオはホッと胸をなでおろした。

(*・∀・)「おぉ、神の使い様、大変な無礼をしてしまい申し訳ありません」

 興奮したモララーが、ドクオにに向かってひれ伏している。


112 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 14:21:15.79 ID:8Mx01AeYO

('A`)「んぁ……別にいいけど……
 て言うか、別にしぃは嘘ついてないが、俺は本当にそんな大した奴じゃない。それなのに神だ、とかで敬ったりするのは止めてくれ」

 ドクオが困った顔をしながら言った。

J(、'ー`)し「うむ……確かに、まだそなたは神の使いとしてまだ本当の力を発しきれないようじゃな。
 端からみたらただの貧相な少年だし、ここは一つ望みを聞いてやろう」

('A`)「貧相は余計だ」

 村長が発した言葉に、ドクオは1人でツッコんだ。


113 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 14:22:10.88 ID:8Mx01AeYO

( ・∀・)「……まぁ確かに、俺よりも全然若い奴にペコペコするのも癪に触るな。 
まぁ一つ、これから頼むよ」

(;'A`)(なんだコイツ……)

 先程とはうって変わった態度のモララーに、ドクオは不快感を示した。

( ´_ゝ`)「あんたならこの村を益々発展させてくれそうだ!! これから宜しく頼むよ!」

( ><)「……宜しくなんです」

 ギャラリーの中から、数々の人がドクオに握手を求めてきた。

('∀`)「あ、あぁ。みんな、これから宜しくな」

 改めて、対等な人間として歓迎され、悪くない気分のドクオは小さく微笑んだ。


114 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 14:25:04.66 ID:8Mx01AeYO


 〜野辺が斜陽に霞む頃〜

( ・∀・)「じゃ、また今度な!」

Ω<バハハーイ!

 ドクオとしぃは、村の入り口でモララーや村人達に見送られて家路へついた。

('A`)「あ、俺が押してくよ」

(*゚ー゚)「あ、ドクオさんありがとうございます」

 動きにくそうなメイド服のしぃが、登り坂で自転車を押し歩いているのを見かねてドクオが助け船をだした。

('A`)「しぃ」

 ドクオが低い声で話しかけた。

121 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 15:08:16.98 ID:8Mx01AeYO
(*゚ー゚)「はい?」

 きょとんとした顔でしぃはドクオに向く。

('A`)「お前も敬語無しだ」

(;゚ー゚)「ええっ……? でも、私よりドクオさんの方が年上だし……」

 しぃは少し戸惑う('A`)「あのな、モララーさんくらいの年の差があるならまだしも、たかが2つ3つ離れてるだけで敬語使うなっつ―の」

 しぃとは目線を合わせず、ドクオは前を向きながら黙々と歩いている。

(*゚ー゚)「……呼び捨てで呼ばれたいんですか?」

 小さく呟いたしぃの言葉に、ドクオは盛大に噴き出した。


122 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 15:09:14.22 ID:8Mx01AeYO

(;'A`)「ば、馬鹿!! 俺はそんなこと……」

(*゚ー゚)「うん、わかったよ、ドクオ♪」

 しぃの明るい笑顔を見て、ドクオは顔を赤くしてうつむいた。

(*゚ー゚)「ふふ……。そういえば、今日はありがとう。私の為にあんな事してくれて」

 多分、村長の家で披露した実験の事だろう。
 一時は失敗かとヒヤヒヤしたが、結果的に成功して本当に良かった。

('A`)「……別に、大したことしてね―よ」

 顔を上げ、再び前を見ながら歩き出すドクオ。
 それを見てしぃも歩きだす。

(*゚ー゚)「まぁ、私はドクオが神の使いだなんて信じてないけど」

(;'A`)「ちょ、おまww 言い出しっぺはお前だろうが!」

(*゚ー゚)「だってこんな貧相な顔の人が神の使いなわけ無いもん」

('A`)「てめぇww」
124 名前:第4話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 15:10:31.59 ID:8Mx01AeYO

(*゚ー゚)「ふふ、冗談ですよ」

 あの師匠にしてこの弟子とはいったもの。
 ドクオはモララーを思い出し、ため息をつく。

('A`)「……ハァ」

 太陽はだいぶ傾き、夕焼け空のどこか遠くでカラスが鳴いている。

 ため息をつくものの、どこか朗らかな気持ちであったドクオ、夕日に顔を赤く染めながら家路を行くのであった。


〜第5話へ続く〜

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