- 6
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/27(木) 23:43:52.89 ID:jTJpLVsOO
紅い飛沫が宙に舞った。
突然のジョルジュの行動に皆ついてゆけなかった。
神風のようなスピードで振り下ろすされた大剣が、しぃの首もとに突き刺さっていた。
ジョルジュが身に纏う鉄の鎧に必死に掴みかかろうとしていたモララーの目が、光を失う。
不測の事態ではない。
ある程度は、何か裏があると予想はしていた。
しかし解っていても、彼の人間離れした動きを前に、体は少しも反応できなかった。
紅い飛沫はしぃの首元から吹き上がると、大気と混じり合って消えていく。
茫然自失とした顔でドクオはその光景を見つめていた。
- 7
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/27(木) 23:44:38.72 ID:jTJpLVsOO
('A`)は地図に無い島へ行くようです・第17話
- 9
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/27(木) 23:46:27.40 ID:jTJpLVsOO
―日本―
大部屋の壁面に掛けられた、真っ白なスクリーン。
それに映った悲惨な光景を見て、男がほくそ笑みながら呟いた。
(,,゚Д゚)「ほぅ、アッチは面白い事になっているようじゃないか」
(,,゚Д゚)「……まぁ、こっちはこっちで盛り上がっているがな」
男は呟くと、コートの袖口から銃口を突き出した。
- 11
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/27(木) 23:50:40.83 ID:jTJpLVsOO
(,,゚Д゚)「まぁ、今はいい。
それより、早くアイツを出して貰おうか」
男はそう言って、怪我を負い目の前にひれ伏していた少年の頭に、鉄筒を突き立てた。
( <●><●>)「……ギコさん、何度も言わせないで下さい。
あなたのような人に『女神』の居場所は教えられません」
広々とした空間の中に、血の匂いが充満している。
数々の機材が置かれた部屋のあちこちに、白衣を真っ赤に染めた無数の死体が横たわっていた。
(,,゚Д゚)「……餓鬼のクセに、この状況でそんな事ヌかせるたぁ大したもんだ」
脅しに顔色一つ変えない少年を見て、ギコは笑った。
- 12
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/27(木) 23:52:56.11 ID:jTJpLVsOO
(,,゚Д゚)「……フフ。この小汚い床の上に転がってるヤツらも、誰も口を割らなかったよ。
全く、手前のつまらん命賭けてまで守る事なのかね」
ギコは少年の頭から銃口を離した。
(,,゚Д゚)「……先日、荒巻会長に『彼』を島に送った後、事後報告をしていた時に今回の件に気づいたワケだ」
ギコは右腕に構えた銃身を長い袖の中に引っ込める。
彼はなんとなしに、血の海と化した研究所の床を歩き出した。
- 13
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/27(木) 23:55:15.32 ID:jTJpLVsOO
(,,゚Д゚)「会長の話によれば、しぃに『彼』が来る事を伝える役目は、本来なら俺がする事だったようだ」
( <●><●>)「……」
ギコが呟きながら部屋の中を歩く様を、怪我をした少年はひざまずきながらジッと見つめていた。
(,,゚Д゚)「……そして『彼』が最初に日本を発つ直前、誰かがしぃにその旨を伝えたわけだ」
ギコはそう言うと、顔をしかめながら舌打ちをした。
(,,゚Д゚)「お前達の言う、『女神』、だ」
ギコは床に横たわっていた亡骸を思い切り蹴飛ばした。
- 17
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/27(木) 23:58:35.21 ID:jTJpLVsOO
(,,゚Д゚)「会長から下されたはずのその任務は俺には伝わっていなかった。
……それは何故か?」
ギコは自分が蹴飛ばした死体の頭部が彼方へ飛んでゆくのを見届けると、ふと顔を俯けた。
(,, Д )「何故かって……
そりゃあな……」
ギコが小さく呟く。
(#゚Д゚)「『女神』があそこにいた間、俺はずっとココにいたんだからな!!」
そして、両手の袖口から無数の銃身を繰り出した。
- 18
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:01:11.83 ID:sWhfDihuO
(#゚Д゚)「いきなり取り引きを持ちかけて来たと思えば……
外部との接触を断って、数日の間こんな汚い施設に留まらせていたいたのはお前の陰謀か、高岡!!」
ギコが大声で叫ぶと、元来た道へと振り返り、怪我でうずくまる少年のいる方へと銃を乱射し始めた。
(;<●><●>)「くっ……!」
(#゚Д゚)「ほれほれ、どうした高岡ぁ!!
いつまでも隠れてると、そこの餓鬼が蜂の巣になんぞぉ!!」
高速で飛来する無数の弾丸をやり過ごそうと、少年は必死になって床に設置してある機材の裏へと隠れ込む。
その光景を見たギコは、ほくそ笑みながら更に弾幕を強めた。
- 19
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:03:44.14 ID:sWhfDihuO
(#゚Д゚)「ゴルァ! 出て来い高岡ァ!!」
怒涛の勢いで発射される無数の鉛弾に、鉄でできた機材の床との結合部分が徐々に捲れていく。
(;<●><●>)(マズい……!)
(#゚Д゚)「オラオラオラオラオラオラァ!!」
容赦なく降り注ぐ弾の雨が、薄い機材の身をどんどん床から引き剥がしていく。
やがて、弾痕で一杯になった鉄の塊は無常にも暗い部屋の宙へと舞っていった。
- 21
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:08:00.13 ID:sWhfDihuO
( < >< >)「……」
死を覚悟した少年が目を瞑った。
しかし、銃弾の雨は止んでいた。
(,,゚Д゚)「……やっと出てきたか、所長の高岡さんよぉ」
从 ゚∀从「……その名前で呼んでくれるなよ」
広い部屋の隅に、物陰に隠れていたのか、長髪の若い女性が姿を晒しだしていた。
- 23
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:09:16.27 ID:sWhfDihuO
(;<●><●>)「……! ハイン所長!!
出てきちゃ駄目です! せっかく他の研究員が体を張ってくれたんです、逃げて下さい!!」
从 ゚∀从「……わりぃ、ビロード。
これ以上仲間が死んでいくのは、万年引きこもりで友人のいない私にゃあちょっと寂しすぎるんだわ」
ハインは困惑するビロードを見ると、彼へ向かって優しく微笑みかける。
(,,゚Д゚)「……茶番はその位にしとこうぜ、『ハイン』所長さんよぉ」
無言で見つめ合っている2人を見て、ギコがぼそりと呟いた。
- 25
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:11:26.19 ID:sWhfDihuO
从 ゚∀从「……ったく、所員は皆殺しにしてくれるわ、研究所ムチャクチャにしてくれるわ、派手にやってくれたもんだよ。
見ろ、モニターも壊れて止まっちまったじゃねぇか」
ギコの言葉を聞いて、ハインは溜め息をつく。
ハインの視線の先には、悲惨な状況を目の当たりにして呆然と立ちすくむ、ドクオやモララー達が映し出されたスクリーン。
ついさっきまで彼らは動いていたが、ギコがところ構わず銃を乱射したおかげで、白地に彼らを映し出していた映写機が壊れてしまったようだった。
- 27
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:15:42.08 ID:sWhfDihuO
(,,゚Д゚)「んなこたぁどうでもいい。
女神の件の主導者は、お前だな?」
ギコは強張った表情でハインを睨みつける。
从 ゚∀从「あぁ、そうだ」
(;<●><●>)「所長!!」
ハインがあっさりと返答したのを見て、ビロードが思わず声を上げた。
从 ゚∀从「ビロード。ちょっと静かにしててくれ。
……そしてオレを信じろ」
声に反応して振り返ったハインが、強い目でビロードを見据えた。
- 9
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:18:19.49 ID:sWhfDihuO
静まりかえった部屋の中に、だるそうなギコの呟き声が響き渡る。
(,,゚Д゚)「……ハァ、もぅいいか?」
从 ゚∀从「あぁ、スマン。お前案外優しいのな」
ハインがニヤリと笑うのを、ギコは見て見ぬフリをする。
(,,゚Д゚)「……どうやって荒巻会長の命令を知った?」
从 ゚∀从「……そんなの言わなくても解るだろ、『そっち』にスパイを送ってたんだよ」
ギコとハインは対峙すると、互いに淡々と語り合い始めた。
- 30
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:20:42.24 ID:sWhfDihuO
(,,゚Д゚)「なる程な……。
まぁそれはいいが、何故俺にあんな取り引きを持ちかけて足止めさせ、わざわざ『女神』なんかを送り出した?」
从 ゚∀从「そいつは言えんなぁ」
ハインの戯れ言を耳にして、ギコが素早く彼女に銃口を向けた。
从 ゚∀从「……おぅおぅ、おっかねぇことで」
ハインはギコを見て、わざとらしい笑みを浮かべて両手を挙げた。
- 32
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:23:41.69 ID:sWhfDihuO
从 ゚∀从「……何故かって?
そりゃあ、お前達の糞みてえな計画を阻止する為さ」
ハインは語りながら、顔の正面にかかった髪を撫でる。
(,,゚Д゚)「会長の計画が下らねぇだと?」
ギコは銃を構えながら、ハインを睨みつけた。
从 ゚∀从「あぁ、下らねぇな。『ロストアイランド計画』なんて」
ハインは呟くと、両腕で天井を仰いだ。
- 35
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:25:49.74 ID:sWhfDihuO
从 ゚∀从「――ロストアイランド計画。
先の世界戦争よりもっと早く、200年も前から続いてる計画だ」
ハインは溜め息をつくと、部屋の通路をコツコツと靴音を立てながらゆっくり歩き始めた。
从 ゚∀从「その計画の目的は、第二の人類の誕生」
ゆっくりと歩み続けるハインを、ギコの銃口が追いかける。
从 ゚∀从「我々の世界から隔離した、『地図に無い島』。
そこに我々と同じ人類を置き、その行く末を見届けいくのが当初の計画内容だった」
- 37
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:27:55.90 ID:sWhfDihuO
( <●><●>)「……」
ハインが語り続けるのを、ビロードは黙して聞き入っている。
从 ゚∀从「計画の中には、我々人類が医療の発達の為に進化を止めてしまった為、
我々の文化から遮断したあの島に住む彼らが何らかの進化の糸口を掴むのではないかという期待も込められていたそうだ」
(,,゚Д゚)「……しかし」
从 ゚∀从「そう! 進化したのは人類じゃなかった!」
ギコが呟いたのを聞いて、ハインがパッと振り返った。
- 40
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:30:27.55 ID:sWhfDihuO
从 ゚∀从「進化したのは人間じゃない。
――『自然』の方だったんだよ」
ハインは、側にあった壊れた映写機をスクリーンの向きから反らすと、その横にある予備の映写機にテープを入れ、スイッチを入れた。
映写機はカタカタと音を立てながら、大きなスクリーンに島の様子を映し出した。
从 ゚∀从「あの島には農業をする時に使う科学肥料は無い。
我々のように森林伐採したり、空の上に煙たいCO2を出したりはしない」
ハインはスクリーンに移った木々が生い茂る島を見て、溜め息をつく。
从 ゚∀从「そんな我々の世界とは違う、まっさらな自然環境の中でそれは生まれた」
スクリーンに映る光景が、島の森の中へと移った。
- 41
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:32:11.30 ID:sWhfDihuO
ハインは懐からレイザーポインタを取り出すと、スクリーンに向かって照射する。
从 ゚∀从「……野菜等の植物の成長を推進する、島の土に含まれる『β成分』だ」
ハインは赤い光を、木々の根元へでぐるぐると回した。
从 ゚∀从「タイジュの世界樹で作り出されたと思われるβ成分は、島の地面を通じて各地に広がっていった。
今じゃどの地方でも季節の野菜がたった一晩で熟れるときたもんだ」
(,,゚Д゚)「……それと会長の計画が何の関係があるんだ」
从 ゚∀从「……ホントは解ってるクセに。随分とオマセなコト」
ギコの怪訝な面もちを見て、ハインが高笑いする。
- 3
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:34:55.28 ID:sWhfDihuO
从 ゚∀从「……最初は我々はただ見てるだけだった。
しかしβ成分の出現によってよからぬ事を思惑する者が出てきた」
( <●><●>)「……それが、荒巻会長なわけですか」
ビロードの呟きを聞き、ハインがゆっくりと頷く。
(,,゚Д゚)「ふざけるな。あの人はそんな事する人じゃない――」
从 ゚∀从「無駄だよギコ。
『そっち』にはスパイだけじゃなく盗聴器もつけてある。全部まるっとお見通しさ」
(,, Д )「……」
ハインの追及に、思わずギコが顔を俯ける。
しかし、しばらくしてから彼は静かに笑い出した。
- 48
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:39:08.99 ID:sWhfDihuO
(,,゚Д゚)「……ハハ、流石だなハイン。
確かにお前の言う通り、会長はβ成分を使ってある事をしようとしているよ」
从 ゚∀从「……」
ギコがハインに向かって、満面の笑みを見せる。
それを見てハインは少し表情を強ばらせた。
(,,゚Д゚)「……言えよ。しぃに会わせた『女神』ってのは誰なんだ?
会長の計画を邪魔になるなら、そいつはほっとけねぇな」
ギコはハインに笑いかけながら、もう片方の腕からも銃を取り出し、彼女に向けた。
从 ゚∀从「……今は『女神』より、実の妹の心配をした方がいいんじゃねぇか?」
ハインは溜め息をつくと、回っていたものを止め、元の壊れた映写機をスクリーンの方へ向けた。
スクリーンには、ラウンジ城内でジョルジュによる凶行の瞬間が、時が止まったままに映し出されていた。
- 50
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:40:36.18 ID:sWhfDihuO
从 ゚∀从「可哀想になぁ、『しぃ』ちゃん。
こんなに首から血ぃ噴き出しちゃって、もう駄目かもしれんね」
(,,゚Д゚)「……なぁに、アイツはこのくらいで死ぬタマじゃねぇよ」
从 ゚∀从「何を根拠に言ってるんだ、お前は」
ギコが話しを流そうとするが、ハインは語るのを止めようとしない。
从 ゚∀从「……3年前、あの島のとある田舎で、島の科学者の家で惨殺事件が起きた」
(,,゚Д゚)「……」
ギコは何を思ったのか、ハインから銃口を外すと、彼女に背を向けた。
- 52
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:42:09.00 ID:sWhfDihuO
从 ゚∀从「なんでも、凄惨な光景だったらしい。
仲の良い4人家族だったらしいが、妹を除き両親とそこの長男が見るも無惨な姿で発見された」
( <●><●>)「……?」
ビロードはハインの意図が解らず、ポカンとしながら彼女を見つめていた。
そんな少年の不思議そうな視線に気づき、ハインがビロードに向かって言いやった。
从 ゚∀从「……ビロード、お前にゃまだ昔の資料は見せてなかったな。
いいだろう、聞かせてやるよ。
……この鬼畜について、とことんな」
- 55
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:46:56.04 ID:sWhfDihuO
(,,゚Д゚)「……餓鬼、俺はあの島出身だ」
(;<●><●>)「……!」
突然口を開いたギコの言葉に、ビロードが驚きの顔色をみせる。
(,,゚Д゚)「……金もなければゆとりもねぇ。
島の研究とかいったバカげた親父の趣味のせいで、俺らの家は貧乏だった」
从 ゚∀从「……」
ハインはギコが語り出したのを見ると、再び紅く染まった通路の上を歩いていった。
(,,゚Д゚)「一家で親父以外唯一の男手だった俺は、辺境の村へ出稼ぎに行っていた。
全く糞詰まらねぇ毎日だったよ」
ギコはそう言うと、何かを思い出したのか、苦笑いした。
(,,゚Д゚)「そして家族の集まりで俺が実家に戻ったある日。
皆が寝静まった夜中に、俺の目の前に荒巻会長が現れた」
- 56
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:48:22.87 ID:sWhfDihuO
(,,゚Д゚)「荒巻会長は言ったんだ。
『外の世界に出て来ないか?』、ってな」
(;<●><●>)「……荒巻会長がそんな事を!?」
ギコの告白を聞いていたビロードの顔が、みるみるうちに強張っていく。
ハインは相変わらず無言で、部屋の壁際にあるスクリーンの元へと歩いていっていた。
(,,゚Д゚)「そして俺は会長の言う通り、この手で両親を殺した」
苦笑していたギコの口元が、大きく歪んだ。
- 59
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:52:38.04 ID:sWhfDihuO
(,,゚Д゚)「ハハ! 元々アイツら嫌いだったからな!!
家族をほっぽらかして趣味に走るオヤジも、そんなアイツを盲目的に信じてたお袋にも反吐が出るってもんだ!」
ギコの笑い声が部屋に響き渡る。
(;<●><●>)「……外道」
(,,゚Д゚)「なんとでも言え。
そして俺は島から離れる為、両親を殺した。
証拠隠滅の為、家の前の道を偶々通り過ぎた俺と似た体型の男を殺し、顔をグチャグチャにしてバカ親達の側へ置いてきたってな」
ビロードの罵りなど気にもしないかのように、ギコがわざとらしく肩をすくめてみせる。
- 61
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:55:42.13 ID:sWhfDihuO
コツコツと靴音を立てていたハインの足が、スクリーンの前で止まった。
从 ゚∀从「だが、妹は殺さなかった」
ハインが白地の上に映し出された少女を眺める。
ドクオやモララー、ブーンといった面々に囲まれて、少女が今にも倒れそうになって視線を宙に泳がしていた。
(,,゚Д゚)「……しぃにはやって貰う事があるからな。
ま、これは会長の入れ知恵だが、可愛い妹だし殺す事も無いだろうって思ってな」
- 63
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 00:59:29.00 ID:sWhfDihuO
(;<●><●>)「……その割には、しぃさんはその事を覚えてないようですが」
ギコが語った矛盾をビロードが冷静に指摘する。
ビロードが見たここ数ヶ月の彼女の身辺の記録映像では、彼女は自分の兄が死んでいると思っている様だった。
从 ゚∀从「……ま、簡単な記憶操作みたいなもんさ。
お前にはまだ言ってなかったが、『女神』が『しぃ』ちゃんにお告げをしている間ギコをココにおびき寄せた時は、
ギコの犯行現場の記録映像を消去する時の立会人って餌で釣ってたんだよ」
(;<●><●>)「……!」
- 64
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 01:01:20.75 ID:sWhfDihuO
(,,゚Д゚)「俺も見事に釣られたもんだ。
……マザーテープはちゃんと消去してるんだろうな?」
ギコはハインに鋭い視線をに向けた。
从 ゚∀从「あぁ、約束だからな。マザーは消したよ、もうあの時の映像は誰も見る事はできん。
よって、お前が妹さんを生かした理由を知ってるのは、あんたらと私だけだ」
(,,゚Д゚)「それならいい……」
ギコはフッと微笑む。
そして再び、銃口をハインに向けた。
- 67
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 01:04:38.02 ID:sWhfDihuO
(,,゚Д゚)「言え。対俺達への交渉の切り札を使うくらいだ。
『女神』ってのは誰だ。今どこにいる?」
从 ゚∀从「……バカか? 言える訳無いだろう、常識的に考えて。」
ギコの強張った顔を見て、ハインがそれを嘲笑うかのように言い放った。
(,,゚Д゚)「……お前、今の状況が解ってないみたいだな」
そう言うとギコは、ハインに向かってコートを脱ぎ捨てた。
从;゚∀从「!?」
大きなコートに、ハインの視界が遮られる。
(;<●><●>)「所長!!」
ビロードの叫び声と共に、乾いた銃声が1つ、部屋に鳴り響いた。
- 69
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 01:07:40.21 ID:sWhfDihuO
( <●><●>)「あ……」
ビロードの額に、風穴が空いた。
从;゚∀从「……!?」
ハインの視界を遮っていたコートが、地に落ちる。
身構えていたハインの目に映ったのは、血の海へと倒れゆくビロードの姿であった。
(,,゚Д゚)「……ただの一般職員が、要らぬ事を知りすぎたな」
从#゚∀从「……テンメエエェェェエェ!!」
コートを脱ぎ、左手に短銃を構えていたギコを見て、ハインは怒声を浴びせた。
- 71
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 01:09:30.79 ID:sWhfDihuO
(,,゚Д゚)「ケッ、お前を庇って死んでいく職員達を見殺しにしておいて、何を今更」
頬を紅潮させたハインを見て、ギコが嘲笑う。
(,,゚Д゚)「……俺はな、荒巻会長には感謝してんだ。
島の外の世界に連れてきてくれて、こんな素晴らしい任務に俺を任命してくれた」
ギコは顔に付いた返り血を銃を持ったまま左手で拭う。
そしてゆっくりと右腕をハインに向けた。
(,,゚Д゚)「それに、俺にこんな素晴らしい体もくれた。
なぁハイン、俺の右腕、イカすと思わねぇか?」
彼はそう言うと、鉄の塊と化した右腕をハインの方へと突き出した。
- 72
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 01:11:25.00 ID:sWhfDihuO
何丁もの銃が連なっている。
彼の肩の皮膚には釘が打ち込まれ、ライフルやミサイルといった数々の銃身と体を繋ぎ合わせられていた。
かつて人間の腕であった面影は、もうそこには残ってはいなかった。
(,,゚Д゚)「サイボーグだとな、どうしても目立つから、いつもはそのコートで腕を隠してんだよ」
从#゚∀从「……」
ギコが話しかけるも、ハインは微動だにせずに彼を睨み続ける。
(,,゚Д゚)「……なんだよ、リアクション無しかよ」
ギコは舌打ちすると、右腕に繋がれた神経に脳から信号を送った。
- 73
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 01:14:41.16 ID:sWhfDihuO
ヒュン、と音を立て、ハインの頬を弾丸がかすめた。
(,,゚Д゚)「ちっ、外したか」
ハインの傷口から飛んだ赤い血液が、彼女の背後の白いスクリーンに染み付く。
(,,゚Д゚)「『女神』の居場所も言わないのなら、お前ももう用済みだ」
从# ∀从「……」
俯くハインを見て、ギコが嘲笑する。
そして、ギコは機械音を立てながら右腕を改変させ、マシンガンを繰り出した。
(,,゚Д゚)「じゃ、あばよ」
ギコが呟く。
それと同時に、ハインの体に無数の鉛弾の雨が降り注いだ。
- 76
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 01:17:50.78 ID:sWhfDihuO
ハインのいた場所にガトリング弾が着弾し、スクリーンにかかっていたほこりが彼女を包んだ。
(,,゚Д゚)「……よっこらせっと」
映写機に照らされて明るい光を放ちながら舞う煙。
ギコはそれを見届けて、腕に仕込まれたガトリング砲を閉まった。
(,,゚Д゚)「普通の人間じゃあ流石に生きとらんだろうな。
……さっさとこの血生ぐせぇ部屋からずらかるか」
辺りに広がる地獄絵図を見届けて、ギコは呟いた。
宙に舞う煙を背にして、彼がその場から立ち去ろうとした時。
「待てよ」
彼の背後から声がした。
- 80
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 01:20:11.66 ID:sWhfDihuO
(;゚Д゚)「……んなっ!?」
笑みを浮かべていたギコの表情が、途端に氷つく。
彼は冷や汗を垂らして、勢いよく後ろに振り返った。
从#゚∀从「……てめぇ、生かしちゃおけねぇ」
彼の眼前に、全くの無傷でハインが佇んでいた。
(;゚Д゚)「バカな!? あの銃撃から逃れただと!?」
驚きの声を上げたギコは、急いでハインに向かって右腕を構えた。
- 82
名前: ◆ZB7B4XJvSk
:2007/12/28(金) 01:24:38.75 ID:sWhfDihuO
从#゚∀从「機械の腕か……。結構なこった」
額に青筋をたてながら、ハインはギコを睨みつける。
(;゚Д゚)「何をした!? どうして生きている!?」
困惑しているギコに向かって、ハインは声を荒げる。
从#゚∀从「好奇心で外の世界に出る、その身を機械に堕とす。大いに結構だ。
しかしな、お前らは火遊びが過ぎんだよ」
ハインはギコに語りかけながら、左手を顔の前へと持ってきた。
――その右腕が、紫色の大気を纏う――
从#゚∀从「他の事象に危害を加える事しかできない『機械』のお前に、『自然』の力を見せてやるよ」
振り上げたられたハインの腕。
それが、スクリーンに照らし出されたしぃに切りかかるジョルジュの姿に重なった。
〜第18話へ続く〜
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