4 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/10(土) 23:58:39.19 ID:8V9x1agmO



 病室のドアがゆっくり開かれる。


(´<_`ノ )「しぃちゃん、お客さんだよ」


 風通しのよくなったその部屋の中を、一筋のそよ風が通り抜けた。


(*゚ー゚)「あ、弟者さ……」

 しぃは言いかけたところで、弟者の後に部屋へ入ってきたそれを見て顔色を変えた。




 窓に置かれていた紫色の小さな花が、風になびいて密かに揺れていた。


5 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:00:16.06 ID:1FJQke2GO


('A`)は地図に無い島へ行くようです・第14話




6 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:02:44.86 ID:1FJQke2GO



('A`)「……」


(*゚ -゚)「……」



 麗らかな陽気が満ちていた病室に、急に重い沈黙の時が訪れる。


l从・∀・ノ!リ人「おろ? どうしたのじゃ、ちっちゃい兄者?」

 しぃとドクオの間に流れる不穏な空気に気づく訳でもなく、無邪気な妹者は白衣を着た兄に向かって飛びついた。


(´<_`ノ )「……妹者、そろそろおやつの時間にしようか」

l从・∀・ノ!リ人「なんでじゃ? まだ時間になってないのじゃ」

(´<_`ノ )「今日はお前の好きなプリンなんだが、もう1個しか残ってない。それを兄者が食べたいと言っていてな」

l从#・∀・ノ!リ人「なんじゃと!? あの馬鹿になんて絶対やらんのじゃ!!」
9 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:05:38.28 ID:1FJQke2GO

 怒気を振りまきながら颯爽と病室から出ていった妹者の後を、弟者がついて行く。

(´<_`ノ )「……それじゃ、2人でゆっくり話しなさい」

 扉を閉める前に、弟者が2人に向かって視線をやる。


 それを見て、ドクオとしぃは無言のままに弟者に向かって小さく頭を下げた。




 パタン、と扉が閉められたのを見てから、ドクオはしぃに向かって振り向いた。


('A`)「……」


10 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:08:27.04 ID:1FJQke2GO


 数週間ぶりに見た少女は、少し痩せているように見えた。

 前は肩にかかるか否かぐらいであったハーフロングの赤みがかった銀髪も、少し切ったのか、耳が少し隠れる程度に短くなっていた。


('A`)「髪……切ったのか?」


 ドクオのまず第一声、しぃを見て思った事を素直に口にした。


(*゚ー゚)「……うん、ちょっと、気分転換に、ね」

 寝間着を着たしぃが、ベッドから半身を上げながら、ドクオの表現をじっと見つめていた。

(*゚ー゚)「てゆうか、いつまでもそんなところに立ってないで、そこの椅子に座りなよ?」


(;'A`)「……あぁ、スマン」


 しぃに言われて、ドクオはベッドの横にある小さな机に備えられた椅子に、ゆっくりと腰を降ろした。


11 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:10:37.18 ID:1FJQke2GO


('A`)(さて……)

 ドクオは椅子に座ると、とりあえず自身を落ち着かせる為に辺りを見渡した。



 薄汚れた病室の壁面は、この小さな病院の入り口と同様に、所々ひび割れていて、黒いすす汚れが点在している。

 それでも床や天井は綺麗に掃除されていて、蜘蛛の巣どころかチリ1つ見当たらない、かなり清潔な部屋である。





(;'A`)(……い、いざ面と向かうと、やっぱり何から話さなきゃいけないか、わからん……)



 日本を出る前、あんなに熱望していたしぃとの再会。

 しかし、窓際のベッドの上で静かにこちらを眺めている彼女の態度に、ドクオは今更ながら恐怖心が芽生え始めていた。


12 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:12:14.55 ID:1FJQke2GO


(*゚ー゚)「……ねぇ、ドクオ」


(;'A`)「……えっ?」


 言葉を発せずにうろたえていたドクオを見て、しぃが静かに話しかけた。

(*゚ー゚)「ここの窓から見える景色、綺麗だと思わない?」

 しぃはそう言うと、窓の方へ目をやった。


(;'A`)「……?」

 ドクオもつられて、なんとなしに窓の方へと目をやった。

16 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:15:44.85 ID:1FJQke2GO



 よく晴れ渡った、青く澄み渡った空の上には、燦々と大地を照らす太陽が浮かんでいる。

 丘の上にあるこの病院からは、鬱蒼と生い茂ったタイジュの森の街並みが延々と広がるのを見渡せられる。



 そして、その中心に立つ一本の巨木。

(*゚ー゚)「……もう知ってると思うけど、あの大きな木は『世界樹』って言ってね、このタイジュの国では神木として崇められているの」

 ドクオと一緒に景色を眺めながら、しぃは静かに語り始めた。


(*゚ー゚)「あの木は、植物の育ちが良い島の中でも特別でね。
 なんでも、この島の植物の育成を手助けする成分ってのは、あの木が全て、島の地下に張り巡らせた根から発した物らしいの」



(;'A`)「……」

 ドクオはしぃが語りだした意図がわからず戸惑いながらも、静かに話に聞き入っている。
18 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:17:34.89 ID:1FJQke2GO

(*゚ー゚)「それって、凄い事だよね。だって、こんな遠く離れた場所から、私達の住んでた屋敷までそれが届いてたって事だよね?
 やっぱ、自然の力って偉大なんだなぁ……」

 しぃはそう言うと、なんとなしに苦笑した。

(*゚ー゚)「それと比べて、私は小さなことですぐに落ち込んじゃうからね。
 今回の事だって私が悪いのに、被害者みたいにとことん精神的に弱っちゃった。本当、私ってちっちゃい人間だよね」





(;'A`)「……んなこたぁない!!」

 ドクオはしぃが自虐的な口調で淡々と語るのを見て、思わず声を出した。


(*゚ -゚)「……え?」

 キョトンとしているしぃの横で、ドクオが必死の形相で訴えかけた。
21 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:21:41.09 ID:1FJQke2GO


(;'A`)「元は俺の軽い嫉妬だったんだよ。
 しぃが村に遊びに行った日からなんか様子がおかしいってか、村を懐かしんでるってか……
 とにかく、ちょっとそれが個人的に気に喰わなかっただけなんだ」


 ドクオの必死な表情とは裏腹に、窓の外では穏やかな日和が続いている。


(;'A`)「それで、自分でも無意識のうちに、衝動的にあんな事やっちまった。
 正直、スマンと思っている……」



(*゚ -゚)「……何で屋敷からいなくなっちゃったの?」

 ドクオがうなだれるのを見て、しぃが顔を強ばらせながら口を挟んだ。


(;'A`)「あぁ……それはちょっと用事が出来て、島から出ていかなくなっちまったんだ」

(*゚ -゚)「……だから嘘ついて、私を屋敷から追い出したの?」


(;'A`)「……スマン。
 でも、次はいつ帰れるかわからんが、それでも向こうでの生活を放棄してお前に謝る為に会いに来たんだ!
 その気持ちだけは本当だ、信じてくれ!!」


22 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:24:13.03 ID:1FJQke2GO




(*-ー-)「……そっか、そういう事だったんだね」


 しぃはそう言うと、顔を元に戻して溜め息をついた。


(;'A`)「……許してくれるのか?」


 ドクオは穏やかな表情になったしぃを見て、怪訝な顔をしながら聞いてみた。

(*゚ー゚)「やっとドクオが何で私を追い出した理由がわかったからね。まぁ今回は、お互い様って感じだから。
 ただ……」

(;'A`)「……ただ?」
 ドクオは緊張した面もちで問いかける。


(#^ー^)「心配したんだから、2、3発は殴らせてくれないと気が済まないかな?」

25 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:26:43.60 ID:1FJQke2GO

(;'A`)「……まぁ、それで気が済むならそうしてくれ。
 島に帰ってきた時からその覚悟はできてたからな」

 割とあっさりとした幕引きにきょとんとにしながらも、ドクオは冷静になってそう呟いた。


(*゚ー゚)「それは結構なことで。
 じゃ、早くこっちきてよ」

 しぃに促され、ドクオがしぃの座っているベッドの横へとやってきた。

(*゚ー゚)「はい、じゃあベッドの上に上がって正座しなさい」

(;'A`)「……ハイ」

 ドクオはしぃの言われるままになって、しぃのすぐ側で正座した。


(*゚ー゚)「はい、じゃあ目ぇ瞑って〜」

(;-A-)「……」



 パシン、と大きな音が部屋の中に響いた。


26 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:29:54.91 ID:1FJQke2GO

(;'A`(#)「いって! おま、もうちょっと手加減しろよ……」

(*^ー^)「ハイハイ、右の頬を打たれたら左の頬も出しなさい」


(;-A-)「――ったよ……」

 にこやかな笑顔のしぃを見て、ドクオは諦めた顔をしてしぃに向かって顔の左側を差し向けた。


(*゚ー゚)「はい」



(* ー )「じゃあいくよ……」



 再び、部屋の中に乾いた音がこだまする。

28 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:32:34.37 ID:1FJQke2GO






(*;ー;)「……」


 ドクオに目を瞑らせた側で、しぃは瞳から涙を落としながら彼を見つめていた。



 元はと言えば、自分の不注意で遠ざかってしまった彼との縁。
 しかし、ドクオは彼の意志で、再び自分の所に帰ってきた。


 ドクオは次は何時故郷に帰れるかわからないというのに、それを蹴ってまで自分に会いに来てくれたのが、本当に嬉しかった。


(*;ー;)「……はい、じゃあラスト一発いくよ。ちゃんと目は瞑っててよ?」

(;-A-)「……」



 ビクビクとしながら必死になって目を瞑るドクオの顔が、どことなくいじらしく思えた。


29 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:36:00.63 ID:1FJQke2GO


 しぃはここ数日、ドクオの事ばかり考えて悩んでいた。

 しかし、現に彼を目の前にして湧き上がってきたその感情に、自分でこっ恥ずかしくなっていた。

 泣いている自分を見られるのも嫌だし、こんな感情を抱いている事への照れ隠しでこんな事をしているが、ドクオの必死になっている顔を見ていると、何故かどうでもよくなってきた。



(* - )「最後はおっきいのいくよ……」

 しぃはそう言うと、両手をドクオに向かって振り上げた。

(;-A-)(……ひいっ!)

 ドクオが来るべき衝撃に耐えようと、とっさに身構える。



(* ー )「もう、ドクオは本当に可愛いなぁ」

 しぃはそう小さく呟くと、ドクオの頬に両手を添えた。





 太陽が雲に隠れ、日差しが遮られ暗くなった部屋の中に、一瞬、静寂が訪れた。

30 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:39:31.96 ID:1FJQke2GO




(;-A-)「……あれ?」

 予想していたものとは大分違った頬の感触に、ドクオは戸惑った。


(;'A`)「しぃ、今何したんだ?
……なんか、頬だけじゃなくて口にもなんか感触があったんだが」

(*゚ー゚)「こら、勝手に目を開けちゃだめでしょ」


 ドクオの目と鼻の先で彼の表情を見つめていたしぃが小さな声で囁いた。

(;'A`)「うわっ!? おま、顔ちけーよ!!
……あれ、てか、目が潤んで……?」


(*^ー^)「ドクオ、お帰りなさい!!」


 ドクオの言葉を遮って、しぃはその体に抱きついた。
34 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:42:01.83 ID:1FJQke2GO


(*'A`)「ちょ、ちょ!? い、いきなりナンデスカ!?」

(*^ー^)「えへへー」


 顔を赤く染めているドクオをよそに、しぃは機嫌良さそうに笑顔でくっついている。


(*^ー^)「久々に会ったんだから、ちょっとくらいいーじゃん?」

(*'A`)「い、色々な意味で駄目だってば!! 離れろって!!」

(*-ー-)「いーじゃ〜ん。
 あ、もしかしてドクオ、女の子にくっつくのって初めてなんでしょ〜?」

(*'A`)「ど、童貞ちゃうわ!!」


 と、ドクオの胸元に固い物が当たった。

35 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:44:52.35 ID:1FJQke2GO

('A`)「ん?」

 不思議に思ったドクオがしぃの体を離した。


(*゚ー゚)「どうかしたの?」

('A`)「いや、お前、なんか胸元にアクセサリーとか付けてんの?」


(*゚ー゚)「……あぁ、それね」

 ドクオに言われて、しぃが服の中からある物を取り出した。

(;'A`)「あ、それって……」



 ドクオの目に映ったのは、シルバーが鈍く輝くペンダント。
38 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:49:34.20 ID:1FJQke2GO

(*゚ー゚)「そ、いつぞやにドクオから貰ったやつ。
 ここに来る前に一旦屋敷に戻って、自分の部屋から持ってきたの」


 しぃはペンダントを見つめると、静かに語りながら微笑んだ。


(*゚ー゚)「……ドクオとあんな事あって、嫌われちゃったかなって思ってたんだけど、なんかコレの事が忘れられなくてね。
 コレを持っていたらもしかしたらドクオが帰ってくるかなって思ってたら、本当に帰ってきてビックリしちゃった」


('A`)「……そっか」

(*^ー^)「うん、本当にドクオに会えて良かったよ」

 プラチナ色をした鈍い光を放つペンダントを見て、2人は何気ない会話を続ける。


('A`)「……あ、そういえば」

 ペンダントを眺めていたドクオが、突然何を思ったのか、持ってきたバックの中をゴソゴソと漁りだした。


39 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:51:57.91 ID:1FJQke2GO

(*゚ -゚)「どしたの?」

('A`)「あぁ、あったあった」


 不思議そうな顔をしているしぃの横で、ドクオがバックから何かを取り出した。

('A`)「ほい、これ、プレゼント」

 ドクオがしぃに小包を手渡した。

(*゚ー゚)「何コレ?」

('A`)「まぁ、開けてみろ」

 ドクオに言われて、しぃはおもむろに袋を開封する。


(*゚ー゚)「……これは!」



中から出てきたのは、小さな一対のイヤリングであった。

41 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:55:39.89 ID:1FJQke2GO


('A`)「それは俺の国で売っていた物だ。まぁ、小遣い少なかったから、安物なんだけど。
 そのペンダントも、元はといえばツンの物だったしな。人から貰ったやつより、俺自身がお前の為にちゃんと買った物の方がお前も喜ぶだろうってな」


(*゚ー゚)「ふむふむ。つまり、私のご機嫌を物でとろうって魂胆だったのね」

(;'A`)「……まぁ、否定はできないがな」


 悪戯な笑みを浮かべながら、しぃが小さなイヤリングを手にとって眺めている。


(*゚ -゚)「あ、てか私、穴開けてないからイヤリングつけられないや」


('A`)「……あぁ、それなら大丈夫……」


 しぃの言葉を聞いたドクオが、しぃからイヤリングを取りあげると、彼女の耳元へと手を伸ばした。
43 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 00:59:24.20 ID:1FJQke2GO

(*////)「あ……」

 体を乗り出して自身の頬に顔を近づけてきたたドクオの気配を感じ、しぃは思わず顔を赤らめた。


('A`)「ほらよっと。最近のイヤリングは穴開けなくてもつけられるようになってるからな」

 ドクオはしぃの耳たぶにイヤリングを取り付けると、彼女の様子を気に止めるでもなく、机の上に置いてあった鏡をおもむろに持ってきて、しぃに手渡した。


('A`)「どうだ?」


(*゚ー゚)「……わぁ、凄く綺麗!」


 ドクオに促され鏡に目をやったしぃは、耳元に映った美しい宝石を象ったイヤリングに何度も見入っていた。


44 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 01:00:58.43 ID:1FJQke2GO

(*゚ー゚)「気にいった! ドクオにしては趣味いいじゃん♪」


('∀`)「まぁ、気にいってくれたなら良かったよ。
 苦労して選んだ甲斐があったもんだ」


 ドクオはしぃの満面の笑顔を見て、思わず顔が綻んだ。


(*^ー^)「えへへ、ドクオありがとう!! これからも宜しくね♪」


(*'A`)「わ、わかったからくっつくなっての!!」





 ベッドの上でいちゃつく2人を、窓の外から世界樹の木が静かに見守っていた。


45 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 01:04:22.69 ID:1FJQke2GO




川 - )「……」


 病室の扉の影で、その人物は静かに中の様子を伺っていた。


( ´_ゝ`)「……こら」

川;゚ -゚)「うわぁ!?」

 扉の隙間からこっそりと中を覗いていたクーが、突然現れた兄者に驚いて声をあげた。


川;゚ -゚)「なんだ、兄者か……全く、驚かせてくれるなよ」

( ´_ゝ`)「トイレに行ったっきり帰ってこないと思ってたら、やっぱりここにいたか。
 盗み聞きってのは、あんまり関心しないぞ」


川 ゚ -゚)「いや、それは兄者には言われたくは無いがな」

46 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 01:07:28.31 ID:1FJQke2GO

(;´_ゝ`)「俺は盗聴なんかしたこと無いが……まぁ、いいや。
 で、2人の様子はどうだったんだ?」


 白けた様子のクーを見て、兄者が問いかける。

川 ゚ -゚)「……どうやら、ただの痴話喧嘩だったようだ。もう2人とも仲直りして、中でイチャついてるよ」


(;´_ゝ`)「……まぁ、ある程度予想はしていたが……
 全く人騒がせな奴らだな」

 クーの言葉を聞いた兄者が思わず溜め息をつく。


川 ゚ -゚)「全くだ。村の者や私たちを巻き込んでおいてこんな結末だとは。
 正直残念で仕方ない」



( ´_ゝ`)「ほほぅ……、『残念』、とな?」

48 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 01:10:14.37 ID:1FJQke2GO

 クーの言葉にピクリと反応した兄者が、不適な笑みをみせた。

川 ゚ -゚)「……何だ、その気持ち悪い微笑みは?」


(*´_ゝ`)「もぅクーにゃんったら! 照れ隠ししちゃって!」


川#゚ -゚)「貴様、もう一度私をそう呼んでみろ。
 次に言ったら、大根おろしでその体すり身にしてくれようぞ」


(*´_ゝ`)「まぁクーにゃんったら! 恐ろしいコ!!」


川#゚ -゚)「殺す」


 ぬーん

 ガシッ


(;´_ゝ`)「あ、ちょ」


 シュバババババ

49 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 01:12:30.62 ID:1FJQke2GO



(;'A`)「なんだ、部屋の外が騒がしいと思ったら、お前らか。
……あれ? クー、お前の着てる服の背中に天なんて書いてあったっけ?」


川;゚ -゚)「しまった、ドクオか」

 床に転がった兄者の屍の横で仁王立ちしていたクーが、しぃの病室から出てきたドクオを見て冷や汗を垂らした。


(;'A`)「……もしかしてお前ら、盗み聞きしてたのか?」

(メ´_ゝ`)「そう、クーにゃんったら、ドックンとしi」


川#゚ -゚)「禊!」

 兄者が言いかけたところで、彼の顔面にクーが渾身のチョップを叩き入れた。
51 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 01:15:23.79 ID:1FJQke2GO

川 ゚ -゚)「まぁ、偶々通りかかったところに、ちょうどしぃの病室があったので、つい、な。
 ワザとではないんだ、すまない」

 クーが服についたほこりをはたきながら、ドクオに向かって話しかける。


(#)_ゝ(#)「よく言うよ。本当は気になって仕方なかったくせに」

川#゚ -゚)「滅殺……」


(;'A`)「OK、クー。時に落ち着け」

 兄者に向かって殺気を放つクーを、ドクオが止めに入る。



川 ゚ -゚)「ふん……まぁいい。
 ところでドクオ、しぃの様子はどうなんだ?」

52 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 01:18:40.86 ID:1FJQke2GO


('A`)「あぁ、疲れてたらしいから、今さっき眠らせたよ。
 それより明日、すぐに帰る準備するぞ」


 ドクオはクーと兄者と一緒に廊下を歩きながら、淡々と語る。

川 ゚ -゚)「……しぃはもう大丈夫なのか?」

('A`)「あぁ、今日俺に会って、悩みも吹っ切れたらしい。
 今すぐにも、村のみんなに自分の元気な姿を見せたいって言っていたよ」


( ´_ゝ`)「……そうか、そいつは良かったな。
 それじゃあ今日はここに一泊して、明日の朝に発つとしよう」

 ぎこちない表情のクーを眺めながら、ドクオの話に兄者が呼応した。

53 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 01:20:02.95 ID:1FJQke2GO


( ´_ゝ`)「弟者には俺が言っておくよ。
 アイツは頑固だからな、いきなり退院させろとか言ったら絶対反対されるだろうから、なんとか説得してみる」


('A`)「……ありがとうございます」

 頼もしい兄者の言葉を聞いて、ドクオが深々と頭を下げた。


( ´_ゝ`)「……クーもそれでいいな?」

川;゚ -゚)「あ、あぁ、わかったよ」

 何やらぼーっとしていたクーを見て、兄者がさり気なく話しかける。


('A`)「クーも、ここまで面倒見てくれてありがとうな。お陰でしぃと仲直りできたよ」


54 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 01:21:17.34 ID:1FJQke2GO

川 ゚ -゚)「……当たり前だ。この私が仲介してやったんだ、これで駄目ならどうしようもない」


 クーはそっぽを向いて、無表情のままにぼそりと呟いた。


('∀`)「あぁ。
……それじゃ、客間で待ってるブーンとツンにも報告してくるわ」


 クーにも兄者と同じように頭を下げると、ドクオは嬉しそいにしながらその場から足早に去っていった。




( ´_ゝ`)「……ったく、いつもは素直なお前も、ドクオの前ではこのザマなのか」

59 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 01:38:15.97 ID:1FJQke2GO

 ドクオが去った廊下にポツンと取り残された兄者が、どこか上の空なクーを見て話しかける。


川 ゚ -゚)「……いきなり何を言い出すかと思ったら……」

 クーは兄者の言葉に対して、小さな声で素っ気なく返した。


( ´_ゝ`)「……まぁ、また殴られるのも嫌だからあまり言わんが。
 けど、そんなに遠慮してないで、自分の気持ちにもっと正直になってもいいんじゃないか?」


川 ゚ -゚)「何を言ってるか意味がわからん。
 しぃとドクオが仲直りして、万々歳だろうが」


 飄々としている兄者の表情を見たクーが、少し顔を赤くして反論した。

60 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 01:41:16.51 ID:1FJQke2GO



( ´_ゝ`)「……ま、頑張んな」


 兄者は顔を強ばらすクーの肩をポンと叩くと、その場から静かに立ち去っていった。


川 ゚ -゚)「……」


 去っていく兄者の背中を見送りながら、クーは1人、廊下に取り残された。



 窓が無い為、光が届かない廊下の中は、薄暗くてジメジメとしている。





川 ゚ -゚)「これで良かったんだよ……」



 ボロボロになった絨毯の上で立ち竦みながら、クーは何度も同じ台詞を繰り返し呟いていた。

62 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 01:43:26.47 ID:1FJQke2GO






〜日本〜



(,, Д )「ただいま戻りました」



/  3「うむ、ご苦労じゃった」



 薄暗い部屋の中で、2人の男が会話していた。
64 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 01:46:23.67 ID:1FJQke2GO



/  3「どうじゃった、久しぶりに島に帰ってみて?」


 まっ黒に染まった皮の回転椅子に座ったシワの深い老人が、広い机の前につっ立っている若い男に話しかけた。


(,, Д )「相変わらずですね。今になったら、あの島の文明の未発達具合は反吐がでるものです」

/  3「まぁ、仕方ないじゃろ。あそこは世間から隔離された『箱庭』じゃからな」


(,, Д )「……我々の計画的に言えば、『箱庭』でなくて『箱船』と言ったところじゃないでしょうか?」

/  3「ふむ、お主も旨いこと言うのう」

 老人は男の発した言葉を聞いて、思わずニヤリと微笑んだ。

65 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 01:48:45.40 ID:1FJQke2GO


/  3「……そういえば、お主の妹さんが何やら病気になってたようじゃの?」


 老人は椅子を回転させ、窓の方へと体を向けた。


(,, Д )「……そのようでしたね」

/  3「心配か?」

 言葉を濁した男に対して、即座に老人が質問をする。


(,, Д )「……いえ。例え心配したとしても、アイツは俺がこの世にもういないと思ってるから、見舞いに行く事はできません」

/  3「ふむ。確かに、お主に似た人物の死体を用意してまで、こっちに来たのじゃからな。
 どのみち、お主はもう後戻りできんよ」


 老人は窓に打ちつける雨粒を眺めながら、再度不敵に微笑んだ。
68 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 01:52:08.02 ID:1FJQke2GO



(,, Д )「……それより会長、聞きたい事があるんですが」


/  3「なんじゃ、藪から棒に?」

 男に話しかけられた老人が、再び振り向いた。


(,, Д )「アイツにお告げをした『女神』とは、一体誰なんですか?」



/  3「『女神』?」



 老人は不思議そうな顔をして、興味津々な様子で身を机の上から乗り出させた。


/  3「なんの事じゃ? お主が彼女にお告げをした後、麻酔銃で眠らせるという手配じゃったじゃろう?」
70 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 01:55:56.24 ID:1FJQke2GO


(; Д )「やっぱり……」


/  3「どういうことじゃ?」


 冷や汗をたらした男の様子を見て、老人の顔がみるみるうちに強ばってゆく。


(,, Д )「それが、俺は先月、ずっとハインのところに出張してたんですよ。
 伝達も何も来なかったので、さっきその任務が下っていたのを初めて知りました」

 男は戸惑いながら、老人の様子を恐る恐る伺った。



/  3「……ということは、我々の動きを事前に察知した何者かが、あの島に『女神』と称して潜伏しとるわけじゃな?」

 わらわらと震えていた老人の顔が、次第に赤みを増してゆく。
74 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/11(日) 02:00:42.93 ID:1FJQke2GO


(,, Д )「『女神』だけじゃなく、他にも数名いるかもしれません。
 それに計画が俺に伝わらなかったという事は、組織の人間の中の誰かに、我々の計画を邪魔しようとしている者います。
 それに、島に潜伏する者達に情報をリークしている者もいるはずです。早急に対処した方がよろしいかと」



/  3「うむ、わかった! とりあえず情報部の者に後程緊急召集をかける。
 お主はハインの元へ行け。お主がアイツの元へ呼ばれ、外の情報が一切入ってこなかったのならば、アイツは何か知ってる筈じゃ!
 死ぬ寸前まで拷問してもかまわん、兎に角情報を吐かせるんじゃ!」


(,, Д )「はっ」


 老人の命令を受けると、若い男は頭を深く下げて、暗い部屋から颯爽と出ていった。


〜第15話へ続く〜

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