5 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:17:43.62 ID:W4pec6EnO
前回のあらすじ&登場人物紹介

・('A`) ドクオ 20歳
主人公。偶然出会った老人に誘われ、島の外からやってきた。しぃを追って、村からブーンらと共に旅立つ

・(*゚ー゚) しぃ 17歳
女神からお告げを賜り、ドクオと屋敷に住み始めたメイド少女。ドクオと喧嘩して神経衰弱になった為、タイジュで療養中

・( ^ω^) ブーン 19歳
偶然ドクオに命を助けられた、少し太り気味の傭兵。ツンの彼氏

・ξ゚听)ξ ツン 17歳
はじまりの村にて、1人で鍛冶屋を営む金髪の少女。少しSっ気がある

・川 ゚ -゚) クー 20歳
はじまりの村にて八百屋を営んでいるクールビューティー。ドクオ・しぃの仕事のお得意様。

・( ´_ゝ`) 兄者 24歳
しぃがモララー一家にいた時の元同僚。モララーと険悪なムードになったドクオ達の喧嘩の仲裁に入り、彼らと共に旅に出る
7 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:20:28.43 ID:W4pec6EnO

 冬が近づいている島の風は、どこかひんやりとしている。

 その透き通った空気が撫でていく山肌は、すっかり紅葉も落ちきった、丸裸の木々が淋しげに連なっている。




ξ#゚听)ξ「この位でヘタレてんじゃねーよ! この不能が!!」

 ピシィン

(;゚_ゝ゚)「はうあっ!」

((*゚ω゚)) ビクンビクン



 ドクオ達を乗せた荷車は、そんな色褪せた景色の中を、風をきって走り抜けていった。
10 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:21:40.44 ID:W4pec6EnO



('A`)は地図に無い島へ行くようです・第13話


13 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:23:57.21 ID:W4pec6EnO

('A`)「……もう、4日か」

 ドクオは景色を眺めながら、ボソリと呟いた。


 ドクオ達が村を出てから、4日が経過した。

 村から坂道を登り、タイジュの国へと続く街道に入れば、後はひたすら真っ直ぐ進み続けるだけだ。
 本来、この位の距離を移動する場合は、馬などの交通手段を用いる。
 街道の所々に置かれた休憩所で疲れた馬を休ませる。急ぎの場合はそこで馬を交換する。

 それらを考えると、偶に休憩を挟むとは言え、ここまで走ってきたブーンと兄者、尚且つ馬なみの速度走る2人の身体能力は尋常ではなかった。



川 ゚г゚)「ま、流石は片や傭兵、片やモララー親方の一番弟子、といったところか」

(;'A`)「クー、口からお茶垂れてるぞ」

川つ-゚)「……む、すまない」

 食事をとりながら喋っていたクーが、ドクオの指摘を受けて口元を拭った。


14 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:25:52.31 ID:W4pec6EnO

ξ゚听)ξ「ドクオ、この峠を越えたら、タイジュに着くわよ」

 登り坂が段々と平坦になってきたのを見て、ツンがドクオに話した。


('A`)「……やっとか」

( ´_ゝ`)「やっぱり、1日遅れじゃあ流石に追いつけなかったな」

 ツンが言ったのを聞いて、走りながらに兄者が呟く。

川 ゚ -゚)「無理もない。向こうは馬車で移動してるんだ、人力車の私達が追いつけるわけないだろう」
17 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:28:45.47 ID:W4pec6EnO

( ^ω^)「みんな、話はその位にしておくお!
 そろそろ下り坂に入るから、しっかり掴まっておくお!」

 荷台の方で話し合っているドクオ達にブーンが忠告を入れると、急に目の前の景色が開けてきた。


川 ゚ -゚)「うむ、そろそろ世界樹も見えてくる頃合だな」

('A`)「せかいじゅ?」

 クーが呟いた言葉に、ドクオが反応する。

ξ゚听)ξ「あ、そっか。ドクオは見たこと無いんだっけ」

(;'A`)「?」

 少しずつ揺れが強くなってきた荷車にしがみつきながら、ドクオは不思議そうな顔をした。

川 ゚ ー゚)「なぁに、直にわかるさ」

 クーが不適に微笑んだと同時に、荷車が前のめりに傾いた。



 見渡す限り広がっていた山々が一気に視界から消え、目の前に広大な青い空が飛び込んできた。

(;'A`)「――んなっ!? 何だアレは!?」

21 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:30:59.11 ID:W4pec6EnO





 ドクオ達は荷車から降りると、舗装された道を皆で歩き始めた。

ξ゚听)ξ「タイジュに来るのって、何年振りかしら?」

( ^ω^)「前にツンと旅行に来た時以来だから、3年振りなんだお」

( ´_ゝ`)「……俺も大分、ご無沙汰だなぁ」

 ドクオ達は道行く人の邪魔にならないように、2列になって歩いている。


(;'A`)「……」

川 ゚ -゚)「……どうしたドクオ、まだ信じられないのか?」
23 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:32:43.52 ID:W4pec6EnO

 道中をチラチラと挙動不審に脇見しているドクオを見て、クーが話しかけた。

(;'A`)「……いや、だってね……」


 ドクオの視界に映っているのは、見渡す限りの森。

 程良い日光が差し込んでくるその場所で、沢山の人達が道を行き来している。
 地面の上はともかく、木の太い幹の上にまで数多の家屋が連なっており、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだような風景であった。

(;'A`)(ただで信じられないのに、その極めつけが……)

 ドクオは、ふと視線を上にあげた。

24 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:35:26.01 ID:W4pec6EnO

川 ゚ -゚)「……まぁ、いつ見ても立派な木だな」

 クーがドクオと一緒になって見上げる。


 そこにあるのは、一本の木。

 しかし、その根元から上を見上げても、どこが頂上かわからない程に、高い。

 その極太の幅を持つ幹の中を、所々空いた風穴から沢山の人が登り降りしているのが望めるが、まるで人間が蟻のように忙しなく巣に餌を運んでいるようにさえ見える。


(;'A`)(テリワンかよ……)
26 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:37:31.81 ID:W4pec6EnO


ξ゚听)ξ「それなのよねぇ……とりあえず地図があるから病院の場所はわかるけど……」

川 ゚ -゚)「流石に1つ1つ当たっていくのは、骨が折れるな」

 クーはそう言うと、腕を組んで黙り込む。


('A`)「誰かしぃを見かけた人に聞けばいいんじゃね?」

(;^ω^)「この人混みを見てよくそんな事言えるお……
 第一、この国の住人でも無いしぃの顔を、すれ違っただけで覚えている人なんて普通いないお」

(;'A`)「そりゃそうだが……
 んじゃあ、どうしろってるんだよ?」




 話の進まない議論を黙って眺めていた兄者が、ふと声を発した。
28 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:40:37.13 ID:W4pec6EnO

( ´_ゝ`)「……大丈夫。しぃの行った所はわかってるさ」

 兄者はそう言うと、突然あらぬ方角へ歩き始めた。


ξ;゚听)ξ「ちょ、兄者!? ドコ行くのよ!?」

( ´_ゝ`)「……ついてこい。俺が道案内してやる」

 追いすがってきたツンを気にも止めず、相変わらず兄者は前に向かって歩き続けている。

川 ゚ -゚)「……兄者、何か心当たりがあるのか?」

 兄者とツンを追いかけるように、クー達も後をついて行く。

( ´_ゝ`)「……ま、行けばわかるさ」

(;'A`)「?」

 今までの陽気な態度とは違って、どこか哀愁の篭もったような顔をしていた兄者を見てドクオは不思議に思った。

31 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:42:38.58 ID:W4pec6EnO



 しばらく兄者の後をついて行くと、そこは世界樹の木から少し離れた、見晴らしの良い丘の上に着いた。

(;-ω-)「兄者さん、どこまで行くんだお?」

 少し歩き疲れたのか、ブーンがダルそうな口調で訴えかける。

( ´_ゝ`)「……」

 ブーンに言葉を返すでもなく、少しうつむき加減に兄者は歩き続けている。



 と、兄者の足が突然止まった。


ξ;-听)ξ「キャア! ちょっと、いきなり止まらないでよ!?」

 兄者の後ろを歩いていたツンが、彼の背中に頭をぶつけた。
35 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:45:22.41 ID:W4pec6EnO

('A`)「……?」

 ドクオがふと見ると、兄者が一件の小さな病院の前で立ちすくんでいる。

川 ゚ -゚)「ここなのか、兄者?」

( ´_ゝ`)「……そうだ」

 先ほどから少し元気が無い兄者に向かって、クーが静かに話しかけた。


(;^ω^)「やっと着いたかお! さぁ、早く中に入って飯でも喰うお!!」

ξ゚听)ξ「あんたは少し空気を読みなさい」

 ツンがコツンとブーンの頭を叩くと、突然建物の扉が開いた。

38 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:47:09.18 ID:W4pec6EnO


l从#・∀・ノ!リ人「コラ――!! 病院の前で騒ぐな――!!」

 ドクオ達の元へ、小さな少女が飛び込んできた。

(;^ω^)「な、なんだお?」

ξ*゚听)ξ「あら、可愛いコね」

 小さな体をしている、まだ年もそんないってない少女が、ブーンの体をポカポカと叩き始めた。


l从#・∀・ノ!リ人「可愛いコじゃないんじゃ! おまぃら、病院の前で騒ぐんじゃ……」


 顔を赤くして怒っていた妹者が、ふと、兄者の方へ視線を移した。

40 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:49:29.30 ID:W4pec6EnO


l从・∀・ノ!リ人「……」

( ´_ゝ`)「……よう、久しぶり」

 急に黙りこんだ少女に向かって、兄者が話しかけた。


川 ゚ -゚)「何だ、知り合いか?」

 無言で見つめ合っている兄者と少女を見て、クーが話しかける。

l从・∀・ノ!リ人「……久しぶりに来たと思ったら、今日は何の用じゃ?」

 クーの問い掛けにも気にもせずに、少女は兄者に向かって冷たい口調で言った。

( ´_ゝ`)「……アイツと話がある。通せ」


(;'A`)(……なんだ、このトゲトゲとした雰囲気は?)



l从・∀・ノ!リ人「……通るんじゃ」

 ドクオが冷や汗を垂らしていると、扉の前で立ちふさがっていた少女が道を開けた。
42 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:52:42.14 ID:W4pec6EnO



 建物に入ると、所々ひび割れて薄汚れた灰色の壁に迎えられた。

l从・∀・ノ!リ人「……ちょっと待ってるんじゃ、今からちっちゃい兄者を呼んでくるんじゃ」

 皆が入るのを見計らってから扉を閉めた少女が、部屋の奥の方へと消えていった。


( ´_ゝ`)「……ま、とりあえず、そこら辺にくつろいでろよ」

 兄者はそう言うと、ドサリと壁にもたれかかって座りこんだ。

ξ;゚听)ξ「ちょ、どういうことよ?」

川 ゚ -゚)「そうだ。説明しろ、兄者」


 訳も分からずに立ち往生していたツンとクーが、兄者に向かって話しかけた。
44 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:54:32.31 ID:W4pec6EnO

( ´_ゝ`)「何って……
 別に、ただの俺の実家だよ」

(;^ω^)「ええっ!? 兄者さんちって、お医者さんだったのかお!?」

 ブーンが兄者の放った言葉に驚愕する。

( ´_ゝ`)「……悪かったな、そう見えそうになくて」

 兄者は溜め息をつくと、しかめっ面をした。

(;^ω^)「あ、いや、別にそういう意味じゃ無いんだお」


ξ;゚听)ξ「そうよ! てか、アンタがタイジュ出身だなんて初めて聞いたわよ!?」

 ツンは焦りながら、皆と一緒になって兄者を問いただす。


45 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:56:00.63 ID:W4pec6EnO

川 ゚ -゚)「という事は、さっきの娘はお前の妹か?」

( ´_ゝ`)「あぁ、妹者ってんだ。可愛い盛りだろ?」


(;'A`)(話について行けねぇ……)


 ドクオ達はソファーに座って、兄者の話を聞き続けていた。


( ´_ゝ`)「……色々あってな、俺は出稼ぎに行ってるんだ」

('A`)「出稼ぎ?」

 ドクオは兄者の発した言葉をオウム返しする。

48 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 21:57:38.24 ID:W4pec6EnO

( ´_ゝ`)「あぁ。……あの妹者がまだ小さい頃に、両親が事故で死んじまってな。弟もその時に巻き込まれて、病になっちまったんだ」

ξ;゚听)ξ「弟さんもいるの!? てゆ―か、今まで何で黙ってたのよ!?」

( ´_ゝ`)「いいだろ、別にペラペラ話すような事じゃない」

 兄者の語る彼の事情に、ツン達は戸惑いながら聞き入っていた。

( ´_ゝ`)「……そんで、元々デキが悪かった俺は、病気の弟にこの病院を押しつけて勝手に家から出ていったんだ」




「そうゆう言い方は止めろって、いつも言ってるだろ」
53 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:01:33.18 ID:W4pec6EnO


川 ゚ -゚)「誰だ?」

 兄者が話すのを遮るように、何者かが部屋の奥から口を挟んできた。



(´<_`ノ )「……はじめまして、兄者の弟の弟者です」

 奥からフラフラと出てきた男が、ドクオ達の前で一礼した。

ξ゚听)ξ「あ、はじめまして……」

 頬の痩けた弟者に向かって、皆の視線が集まる。


 痩せ細ったその体にボロ切れのようになった白衣を着て、杖をつきながら立っているそれは、とてもモララーの元で逞しく生きている兄者の弟とは思えなかった。

(;'A`)(……トキ?)

(´<_`ノ )「……は?」

(;'A`)「あ、いや何でも」

55 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:03:30.71 ID:W4pec6EnO


(´<_`ノ )「……それにしても兄者、兄者には毎月仕送りしてもらってるんだから、そんな風に自虐して言うのはいい加減止めろ。
 これでも兄者には随分と助けて貰ってるんだ」

 改まった弟者が、兄者に向かって話しかける。

( ´_ゝ`)「お前こそ、医者の不養生なんかしてないで、ちっとは休んだらどうなんだ?
……でもまぁ、何だかんだ言って」


( ´_ゝ`)「流石だよな、俺ら」(´<_`ノ )


川 ゚ -゚)「はいはい、お前らの仲がいいのはわかったから」

 2人で盛り上がっていた兄者達をクーが止めに入った。
57 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:05:10.79 ID:W4pec6EnO

( ^ω^)「兄者さんから話は聞いて大体の事情は把握したんだお。
 でも、兄者さんは弟者さんと仲が良い割には、妹者さんとはあまり仲良くないみたいだけど、どうしてだお?」

(;'A`)(コイツ……、良く平気な顔してそんな事を躊躇いも無しに聞けるな……)

 唐突に切り出したブーンを見て、ドクオが溜め息を吐く。

( ´_ゝ`)「ん……まぁな、見ての通り嫌われてるんだよ。昔色々あってな」

ξ゚听)ξ「……へぇ、訳アリって事なのね」




(´<_`ノ;)「と、とりあえず、今日は何しに来たんだ?」

 ツンが興味を持ったのか、急に真剣な眼差しになって兄者を見つめ始めたのを見て、弟者が話を逸らしにきた。


58 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:08:09.30 ID:W4pec6EnO

(;'A`)「……そ、そうそう、何で兄者さんは弟者さん所に来たんですか?」

 ドクオは焦りながら、弟者に助け舟を渡した。


( ´_ゝ`)「んー、多分しぃがここに来るだろうなって思ったからなんだな、これが」

川 ゚ -゚)「……何でしぃがここに来たと思ったんだ?」

 兄者の発した言葉に、怪訝な顔をしながらクーが問いただす。

( ´_ゝ`)「うん。てゆうのも、俺の実家が病院で、そこにいる弟者がタイジュの中で屈指の医者だと言う事を、しぃは知っていたからだ」



ξ;゚听)ξ
(;^ω^) 「な、なんだって――!?」
川;゚ -゚)
61 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:10:10.56 ID:W4pec6EnO

( ´_ゝ`)「ま、厳密に言うと、村で知っていたのは親方としぃだけだ。
 どうせ入院するなら、普通知り合いがいる所に行くだろ」

(;'A`)「……仕事先の上司のモララーさんならともかく、何でしぃが兄者さんの所の事情を知ってるんですか?」

 兄者の言葉にドクオが突っ込みを入れる。

( ´_ゝ`)「それを話し始めたら、また長くなっちまう。
 それよりまずドックンは、やらなきゃいけないことがあるだろ?」

(;'A`)「……!」

 兄者に言われて、ドクオはハッとした。





( ´_ゝ`)「なぁ弟者。しぃ、来てるんだろ?」


62 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:13:59.64 ID:W4pec6EnO





(´<_`ノ )「……あぁ、来てるよ」

(;'A`)「……!!」


 弟者の発した言葉で、ドクオの体が緊張して固まった。

(´<_`ノ )「……話は大体、しぃちゃんを送ってきたオワタさんから聞いてるよ。
 ドクオくんとやらは背が小さいって聞いてるから、そこの彼では無さそうだね」

( ^ω^)「お?」

 弟者が一瞬、ブーンの方に目をやると、ドクオの方へ向き直った。


(;'A`)「……はい、俺がドクオです」

 少し震えた声で、ドクオが自己申告した。
64 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:16:42.18 ID:W4pec6EnO

(´<_`ノ )「……しぃちゃんは奥の部屋で寝ているよ。
 でも、今は精神的に大分弱っているからそっとしておいた方が良いかもしれないね」


ξ;゚听)ξ「ちょ、せっかくここまで来たのよ? どうにかならないの!?」

 弟者の宣告を聞いて、ツンが必死に食い下がる。

(´<_`ノ )「気持ちは解るが、しかしね……」


( ´_ゝ`)「俺からも頼む。ドックンもかなりの覚悟でここに来たんだ、なぁドックン?」

 渋っている弟者を見て、兄者がツンと一緒になって頼みこんだ。
67 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:20:52.02 ID:W4pec6EnO

川 ゚ -゚)「私からもお願いします。彼は自分のした過ちを十分に反省しています。
 今からでも遅くありません、会わせてやって下さい」

( ^ω^)「ドクオは僕の命の恩人なんだお! ドクオが良い人なのは僕が保障するんだお!」


(;'A`)「お前ら……」

 兄者に続いて他の物達が次々と頭を下げていくのを見て、ドクオは唇を噛み締めた。

(´<_`ノ )「……」




 自分らの為に兄者達が必死になって頼みこんでくれている。
 兄者達の、仲間の為に自分達の出来る事をやってろうという気持ちの現れ。いつの間にか出来ていた仲間意識。



 自分の為に皆で頭を下げてくれている兄者達を見て、ドクオは目頭が熱くなった。
69 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:23:13.30 ID:W4pec6EnO


( A )「お願いします。俺を、しぃに会わせて下さい!」

 ドクオは深く頭を下げた。





(´<_`ノ )「……しょうがないな。キミ達の熱意に負けたよ」

 弟者が溜め息を小さく溜め息をついた。


(*^ω^)「本当かお!?」

(´<_`ノ )「あぁ。但し、会うのはドクオ君1人だけだ」

 目を輝かせたブーンに向かって、弟者が忠告した。

72 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:25:40.88 ID:W4pec6EnO

ξ゚ー゚)ξ「それで十分よ。
……良かったわね、ドックン!」

 ツンがはにかみながら、ドクオの背中をポンと叩いた。


(;´_ゝ`)「全く、ツンに虐げられながら走ってきたのがやっと報われたよ」

(;^ω^)「激しく同意なんだお」

ξ゚听)ξ「あら、まだそんな口聞けるの? まだまだ調教しなきゃいけないようね」



(;´_ゝ`)
      「勘弁してくれ」
(;^ω^)
75 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:27:59.56 ID:W4pec6EnO


川 ゚ ー゚)「……ほら、行ってこい」

 クーがドクオに優しく語りかけた。

( ´_ゝ`)「俺らはここで待ってるよ」

ξ゚听)ξ「ホラ、早くしなさいよ。いつまでも女の子待たせてるんじゃないの!!」

 クーに続いて、兄者とツンもドクオを励ます。

( ^ω^)「ドクオ! 早く行くんだお! お前なら大丈夫だお!」

 ブーンはそう言うと、ドクオを背中から前に向かって押し出した。
77 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:30:35.06 ID:W4pec6EnO

 ブーンに押されてよろよろとしていたドクオは、立ち直ると、もう一度振り返った。


('A`)「……スマン、ここまで付き合わしちまって。
 お前らには本当に感謝してる。ありがとう」

 そう言って、ドクオは深々と頭を下げた。

(´<_`ノ )「……じゃあ、案内するよ」

 そう言うと弟者は、杖をつきながら部屋の奥へと消えていった。


川 ゚ -゚)゚听)ξ^ω^)´_ゝ`)
    「頑張れよ(お)!!」

 背中を向けたドクオに向かって、仲間達の声が後押しをする。

 ドクオは小さく腕を上げて答えると、ゆっくりとした足取りど部屋の暗がりへと消えていった。


78 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:31:49.65 ID:W4pec6EnO






 晴れ渡った空に浮かぶ眩い太陽から、暖かな光が部屋に差し込んでくる。

 窓から見える景色の向こうには、庇をも突き抜ける巨大な世界樹の木が望められる。



(*゚ー゚)「いい眺めだな……」


 しぃは窓際のベッドの上に横たわりながら、ぼんやりと景色を眺めていた。

81 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:34:14.89 ID:W4pec6EnO


l从・∀・ノ!リ人「おぃ、しぃ! 氷枕の取り替えにきたぞよ!!」


 しぃが外を眺めていると、妹者が威勢の良い声を出しながら病室に入ってきた。

(*^ー^)「妹者ちゃん、今日も元気だね」

l从・∀・ノ!リ人「妹者じゃはいつだって元気なのじゃ! 元気の無いしぃに分けてあげたいくらいなのじゃ!!」

(*゚ー゚)「ふふ、ありがとう」

 大きな氷枕を小さな腕に抱えてきた妹者を見て、しぃが優しく微笑んだ。
84 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:36:25.31 ID:W4pec6EnO

(*゚ー゚)「妹者ちゃん、ここの景色は最高だね。やっぱりタイジュに療養に来て良かったよ」

 ベッドから半身を上げてるしぃが、枕元でいそいそと枕シーツを取り替えている妹者に向かって語りかけた。

l从*・∀・ノ!リ人「そうなのじゃ! 妹者も、ちっちゃい兄者も、死んじゃった父者も母者も大好きなのじゃ!!」

 しぃに言われて、妹者が明るい笑顔で喋った。


(*゚ー゚)「……そっか、妹者ちゃんのご両親は、もういなかったんだっけね」


85 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:38:40.32 ID:W4pec6EnO


 しぃは静かに語りながら、窓の外を見た。

(*゚ー゚)「私もね、お父さんとお母さんが死んじゃったから、妹者ちゃん達の大変さはよく解るよ」


l从・∀・ノ!リ人「……」

 静かに語り続けるしぃの話を、妹者は何も喋らずに聞いている。


(*゚ー゚)「お父さん達が死んじゃってから大変だったけど、色々な人にお世話になりながら、今まで頑張って生きてきた」



 1人で語り続けるしぃの目には、青空に浮かぶ、ひとちぎれの雲。

(*゚ー゚)「その間、仲のいい友達もできたし、新しい家族もできた。それでもやっぱり、どこかで不安だったの」

87 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:39:56.21 ID:W4pec6EnO



――しぃは語りながら思っていた


(*゚ー゚)「そんなある日、女神様の気まぐれで、私はある人に会ったの」


――この景色の中に在る、大地に広がる森の緑、猛々しい大木の茶色い幹、どこまでも広がる青空、そしてそれに浮かぶ白い雲


(*゚ー゚)「面白くて、とても私に優しくしてくれたその人に、どこか心の奥でくすぶっていた私は、少しずつ彼に惹かれていった」



――それらを混ぜると、どんな色になるのだろうか
91 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:43:15.84 ID:W4pec6EnO

(*゚ー゚)「でもね、私は自分の不手際で、彼を傷つけてしまったの」


 静かに聞き入ってる妹者の側で、しぃは自分に言い聞かせるように淡々と語り続ける。

(*゚ー゚)「傷ついた彼は、私から去っていった。……私のせいで」


――絵の具なら真っ黒になってしまう。しかし、光はその中に虹色を秘めている。それらを混ぜ合わせたら、一体どんな色になるのだろうか


(* ー )「私のせいで、せっかくできた、私の事を理解してくれる大事な人が、またいなくなっちゃった。私がいると、みんな不幸になっちゃうの」

 しぃの口から放たれる言葉が、徐々に途切れ途切れになってゆく。

(*;ー;)「もう疲れちゃった。いつまでたってもまた同じ事の繰り返し。私なんか、生きてても仕方ないんだよ」




 しかし、しぃの潤んだ目に映ったその色は、互いに混じり合う訳でもなく、ただぐちゃぐちゃに入り乱れているだけだった。

94 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:46:00.83 ID:W4pec6EnO



l从;・∀・ノ!リ人「おろろ……
 だ、大丈夫なのじゃ!! しぃの父上達が亡くなったのは、しぃのせいじゃないんじゃ!!」

 涙を流しながら顔をうつむけるしぃに向かって、妹者が必死に励ましを入れる。

l从;・∀・ノ!リ人「大丈夫なのじゃ! 今回は偶々運が悪かっただけで、また次に頑張ればいいのじゃ!!」

(*; -;)「……そうかなぁ?」

l从;・∀・ノ!リ人「きっとそうなのじゃ!…しぃなら大丈夫なのじゃ!!」



 ベッドの横で、必死になって小さな妹者が自分を励ましてくれる。

(*つー;)「……うん、ありがとう」

 しぃはそんな彼女が、えらく愛おしく思えた。


95 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:47:59.11 ID:W4pec6EnO

l从*・∀・ノ!リ人「そうなのじゃ!! しぃはその笑顔が一番なのじゃ!!」

 涙を拭い去ったしぃの笑顔を見て、妹者が満面の笑みを浮かべた。


(*^ー^)「うん、ありがとう、妹者ちゃん。
 まだ少しツラいけど、私、頑張ってみるよ」

l从*・∀・ノ!リ人「その意気なのじゃ!」


 可愛い髪止めを上下に揺らして、妹者は子供らしく体全体で喜びを表現する。
99 : ◆ZB7B4XJvSk :2007/11/04(日) 22:50:37.33 ID:W4pec6EnO



 正直、強がりは言ってみたものの、未だに味わったショックは全ては拭えてはいない。

 ドクオに冷たく突き放されたのを、何度も夢で思い出しては眠れない毎日である。


 しかし、こうやって、自分を必死に励ましてくれている妹者がいる。
 それだけでも十二分に有難い事だ。

(*゚ー゚)「……それにここは、景色も綺麗だしね」

 しぃは再び窓の外に目を向ける。

 そこには相変わらず、つきぬける青い空と、天高くそびえる大木が静かに佇んでいた。





 コンコン

(*゚ー゚)「はぁい?」

 突然に響いたドアのノックする音に、しぃは体を起こして振り返った。


〜第14話へ続く〜

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