3 名前: ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 11:50:08.83 ID:8Mx01AeYO
 真っ暗な夜の海の上を、静かに小舟が進んでいく。

「……まだつかないんですか?」

「座標軸的にはそろそろ着く頃なんだがね」

 やがて、海面を覆っていたもやが晴れてくると、水平線の遥か彼方に小さな光が見えた。

('A`)「っ!あれは!!」



4 名前:第1話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 11:51:03.55 ID:8Mx01AeYO


('A`)が地図に無い島に行くようです・第1話




5 名前:第1話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 11:52:25.58 ID:8Mx01AeYO
〜ドクオが船に乗る数日前〜

 人々で溢れ何かと騒々しい都会とは裏腹に、木々に囲まれ清く澄み渡った空気に満たされた夜の公園。
 そこに、1人の男がさまよっていた。

('A`)「………」

 彼の名はドクオ。
 都会に憧れ、地方から上京し大学に通うことになった彼。
 しかし、馴れない1人暮らし、大学とバイトの両立、ホームシック等鬱症状に苛まれた。挙げ句には授業をすっぽかして単位も落とし、それが教育熱心な親に知れて勘当を受けてしまった。
 大学も通えなくなり、やる気無い態度からバイト先の店長にクビを告げられ、借りてたアパートも大家に追い出された。

 ドクオはおもむろに財布を開いてみるが、既に中身はもぬけの殻であった。
8 名前:第1話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 11:54:49.46 ID:8Mx01AeYO
 昼間から覆っていたどんよりした雲が、星の光を遮っている。
 ドクオの頬を撫でる風もどこか肌寒い。
 ふと、ドクオの脳裏に「死」の文字が浮かんだ。

('A`)「ウツダシノウ……」
 帰る宛も無いドクオは、しばらく園内をふらふらとさまよっていた。
 するとドクオの目に、人間の身長より半身分くらいの高さにある太い枝を生やした大木が映った。

('A`)「……首吊るのにちょうどいい高さだな」

 ドクオは木の方へ歩いていくと、カバンから長いロープを取り出した。

('A`)「終いにするか……」

 ドクオはそう言って枝と自身の首にロープを巻いた。


9 名前: ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 11:56:39.62 ID:8Mx01AeYO
?「テメェコラ! 金出せや!!」

 と、突然ドクオがいる場所の近くの茂みから、誰かの怒声がした。

('A`)「ちっ、人がこれから死のうとしてる時に……」

 あと一歩のところで邪魔が入ったドクオは、機嫌悪そうに舌打ちした。

('A`)「……」

 なんとなく誰かの声が気になったドクオは、するりと首からロープ外して草木を掻き分けながら音がした方を覗き込んでみた。


10 名前:第1話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 11:57:33.45 ID:8Mx01AeYO
DQN1「おう、じじぃ! 出すモノ出せや!」

/ ,'3「……出すモノってなんじゃ?」

DQN2「何とぼけとんじゃ! いかにも金持ちそうなカッコしやがって。金じゃ金!!」

DQN3「しらばっくれてると痛い目にあうぜ?」

wwwA`)「…この御時世にオヤジ狩りか。全く、困ったもんだ」

 草木に隠れながら、ドクオはかけてもない眼鏡をずらし上げる仕草をした。


11 名前:第1話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 11:58:18.59 ID:8Mx01AeYO
/ ,'3「貴様らのような他人様に迷惑かける鼻垂れ小僧に出してやる金など無い!」

DQN1「てめぇ! 逆らう気か!?」

DQN2「俺らチーム小鳩丸に喧嘩売るとは大したじじぃだぜ! やっちまえ!」

DQN3「ブッ殺!」

 やがて不良達に囲まれた男性は袋叩きに合った。

wwwA`)「……」

 ドクオは、当初ずっと眺めているだけだった。
 もはや氏ぬしかない自分にとって関係の無い話だ。
 誰かも知らない人をわざわざ助けに行くなんて、相当のお人好しか、ただの偽善者だ。


12 名前:第1話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 12:00:57.32 ID:8Mx01AeYO
 そう思ってはいたドクオであったが、徐々に心情に揺れが起きてきた。

DQN1「このじじぃ手間かけさせやがって!最初から素直に財布渡せりゃ良かったのによ!」

DQN2「けっ、血ぃ吐いてうずくまってらぁ!痛くて助けを呼ぶ声も出ないってか?どんなもんじゃーいwwwww」

14 名前:第1話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 12:02:04.80 ID:8Mx01AeYO
DQN3「見ろよ!こいつ財布に札束入ってるぜ!これで当分遊んで暮らせるな!!」


www( A )「おぃ、てめぇら」
 いつの間にか、体が茂みから飛び出していた。


15 名前:第1話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 12:02:42.57 ID:8Mx01AeYO
('A`)「1人に対して他人数で襲いかかって、恥ずかしく無いのか」

 どうせ氏ぬんだから、いいか。

('A`)「てめぇらみたいな奴がいるから世の中駄目になるんだ」
 氏ぬ前にとりあえずムカつく奴ぶっ飛ばしたい気分だし

DQN2「何だテメェwwwテメェもボコられたいのか」

 何せ今の俺なら負ける気がしねぇ

('A`)「フルボッコにしてやんよ」

17 名前:第1話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 12:03:44.87 ID:8Mx01AeYO


 _、_
( _ノ`)「…っ! 貴様ら何やってんだ!?」

DQN1「ぐっ、やべぇ、ポリ公だ!」

DQN2「お前ら逃げるぞ!」

DQN3「畜生、覚えてろよ!」

 駆け寄ってきた警官を見て不良達がその場から逃げていった。

(#)A`)「ハァ……ハァ……」

 戦い終わって精根尽きたドクオはその場にへたり込んだ。
 _、_
( _ノ`)「貴様!このご老人に何をした!?」

/ ,'3「いや、彼はワシを不良達から庇ってくれたんじゃよ」

 突然、ずっとうずくまっていた男性がすくっと立ち上がった。
 _、_
( _ノ`)「えっ、そうだったんですか! ちょっとキミ、大丈夫か!?」

 渋い面持ちの警官がドクオに駆け寄ると、ドクオは目を回して気絶していた。


18 名前:第1話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 12:06:43.09 ID:8Mx01AeYO
 _、_
( _ノ`)「あぁ、可哀想に、集団でこんなに痛めつけられて……。直ぐに病院に連れて行かなくては!」
/ ,'3「いや、その必要は無い。大した怪我じゃなさそうだし、ウチで引き取ろう。」

 _、_
( _ノ`)「え、彼はあなたとお知り合いなのですか?」

/ ,'3「あぁ、わしの孫じゃよ」

 老人はそう言うと、ドクオの体を軽々と持ち上げて去っていった。



 _、_
(; _ノ`)「……なんだったんだ?」

 虐げられていた筈の老人の予想外の行動に、警官はその場でしばし呆然としていた。


 _、_
( _ノ`)「……」シユボッ
 _、_
( _ノ`)y-・~~~~~
「おぉ、新作のピース8ミリはなかなかウマいな」

警官の持つ煙草の先から、紫煙が夜空に立ち昇っていった。

20 名前: ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 12:09:11.95 ID:8Mx01AeYO
('A`)「ん? ……ここはどこだ?」

 ドクオが目が覚めると、見覚えの無い広い寝室のふかふかベッドの上に寝かされていた。

/ ,'3「おや、気がついたかね」

 ドクオの側に、昨日公園で会った老人が座っていた。

(;'A`)「なっ、あんたは昨日の…! ここは一体どこだ!?」


21 名前:第1話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 12:09:42.99 ID:8Mx01AeYO
/ ,'3「そう気を荒げるでない。
 ワシを庇ってくれたキミが傷ついていたから家まで持って帰って介抱してあげたんじゃよ」

 老人はそう言うと紅茶をすすった。
('A`;)「あぁ……そうなの。
 てゆうかあんだけフルボッコにされてて俺はこんなんなのに何であんたは無傷なの?」

/ ,'3「いやいや、うずくまってた「フリ」をしてただけじゃよ。 
 そこそこ痛い演技でもしとれば相手の攻撃もゆるむじゃろうて」

23 名前:第1話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 12:10:44.23 ID:8Mx01AeYO
 先程から辺りを見回していたが、何かやたら大きな絵画や高級そうな絨毯、キラキラした装飾品で部屋が飾られていて落ち着かない。
 しかもこの飄々とした老人ときた。やはり、何か普通じゃない気がする。

(;'A`)「……まぁいいや。
 とりあえずじいさんありがとな。俺はもう大丈夫だから、そろそろ帰るわ」

 とりあえずいつまでも世話になる訳にもいかないので、おいとましようとした。

24 名前: ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 12:12:52.15 ID:8Mx01AeYO
/ ,'3「あぁ、ちょっと待ちたまえ」

 ふと、老人がドクオに話しかけた。

('A`)「は?」

/ ,'3「あんな時間に公園をほっつき歩いて、何か訳ありかな?」

('A`;)(ギクッ)

/ ,'3「どうやら図星のようじゃな」

 ドクオの反応を見て老人がニヤリ笑う。

/ ,'3「どうじゃ、一発やらないか?」

('A`)「アッ-」

 ドクオが拍子抜けした声を出した。

/ ,'3「? ……まぁいい、ゆっくり説明しよう……」

 老人は椅子に腰を掛けると、静かに語りだした。


25 名前:第1話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 12:13:50.10 ID:8Mx01AeYO
〜時は戻って冒頭〜

('A`)「あれがあんたの言う島か?」

/ ,'3「そうじゃ! あれが我が社が総力を上げて管理してきた島じゃ」

 2人は激しく揺れる甲板の上で声を荒げていた。

/ ,'3「あの島は我々の世界から隔離された島じゃ!
 島周辺には特別な装置により、島の半径5キロ以内に入らないと視認できんようになっとる。勿論レーダーなどにも映らん」

('A`)「……いまだにじぃさんの言ってることがよくわからないんだが、俺がするべきことを3行で頼む」

/ ,'3「キミが
  あの島に行って
  暮らす」

('A`)「はしょり杉www
 てか、あそこで生活するだけでいいのか?」

/ ,'3「左様。キミはこのプロジェクトの命運を握っている」

27 名前: ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 12:16:41.39 ID:8Mx01AeYO
 船が島に近づくにつれ、だんだん波が荒くなってきた。

('A`)「……なぁじいさん」

/ ,'3「なんじゃ?」

('A`)「そんな大それた計画に、なんで俺なんか選んだ?」

 地図に無い島を誰からも見つからずに保管する……、この老人は「ロストアイランド計画」と言っていたか。それの主要メンバーに何故かドクオが選ばれた。
 それはそうとこの老人、日本で数百年を誇る老舗企業の名誉会長らしい。通りであの屋敷、この風格といったわけだ。

/ ,'3「何回言わせるんじゃ。キミはワシを助けてくれたじゃろ? とっさにあんな行動がてきる人間、近頃の若いモンにはなかなかおらんぞぃ」

 それはただ単に自暴自棄になっていたからだ、とドクオは言おうとするが、まくしたてる老人に遮られた。

/ ,'3「それにキミはちょっと困った事になってるようじゃし、ちょうどいいじゃろう」

('A`)「しかし……」

/ ,'3「勿論助けるだけじゃない。君には少しやってもらいたいこともあるし、要はギブアンドテイク、じゃよ」

('A`)「…………」


28 名前: ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 12:18:05.85 ID:8Mx01AeYO
 何故か成り行きでこんな事になってしまったが、とりあえず元は氏ぬ気だったんだからまぁいいか。
 ドクオが細く溜め息をつくと、すぐそこに揺らめく灯りが近づいていた。

/ ,'3「じゃあ、わしらはここまでじゃ」

('A`)「え?まだ島についてないじゃん」

 ドクオの言う通り、島から2キロほど離れた位置で船は停泊していた。

/ ,'3「わしら外の世界の者がこの島に干渉するのは禁じられておる。すまないがここからはボートで行っとくれ」

('A`)「てゆうか、ただ単に暮らすって言ったって、俺は具体的に何をすればいいんだよ?」

/ ,'3「大丈夫じゃ、向こうに迎えがおる。そやつから聞けばわかるじゃろう」

('A`)「迎えって……あんたらのプロジェクトの人かなんかの?」

/ ,'3「いや、生まれも育ちも島の人間じゃ。ただ、間者を通してキミが今日この時間に来る事を知らせておる」

('A`)「はぁ…」

 実際あまり理解はしてなかったが、とりあえず相づちをうつと、ドクオはボートに乗り込んだ。
30 名前:第1話 ◆ZB7B4XJvSk :2007/10/22(月) 12:20:16.64 ID:8Mx01AeYO
(;'A`)「……ってこれ、バナナボートじゃねぇか!」

/ ,'3「色々あってそれしか用意できんかった。すまない」

(;'A`)「どんだけー」

 老人はこんなボートで2キロ先の海岸まで辿り着けという。骨が折れるってレベルじゃねーぞ!

/ ,'3「じゃ、そゆことで」

(;'A`)「ちょ、おま!」

 老人が短く別れを告げると、エンジンのついた船はボートからあっという間にに遠ざかっていった。 

ドクオは海上にポツンと取り残された。

(;'A`)「畜生、何でこんな事に……」

 荒れ狂う海の上で、ドクオは細長いボートに必死にしがみついていた。

(;'A`)「……糞ったれ!
 やあぁってやるよ!!」

 無我夢中にそう叫ぶと、ドクオは荒波の中に消えていった。

〜第2話へ続く〜

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