412 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:02:30.63 ID:JmivrX160
第43話( ^ω^)樹海の糸だお!


3人は、休むことなく飛び続けた。
そのため、翌日の昼には森の遺跡のすぐそばにまでたどり着いた。


(*゚ー゚)「あ!! あれ、ツンちゃんよ!!」

( ^ω^)「!!」


しぃの指差す先には、グライダーで森の遺跡の上空へ進んでいくツンの姿が見えた。


413 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:03:47.70 ID:JmivrX160
('A`)「まずいぞ!
  このままじゃ、俺たちが追いつく前に森の遺跡にツンが着くぞ!」

(*゚ー゚)「任せて!」


そう言うと、しぃはブーンの後ろに回りこんで、魔法で突風を起こした。


(;^ω^)「ひゃうーーーーーーーん!!!!!!」

(*゚ー゚)ノ('A`)ノ「いってらっしゃ〜い。」


ブーンのグライダーは、とんでもない速さでツンに向かって飛んでいった。


414 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:05:16.90 ID:JmivrX160
(;^ω^)「ツン!! 待つお!! いったい何をするつもりだお!?」

ξ゚听)ξ「・・・・・・。」


ツンは森の遺跡に降下した。
ツンを追う形で、ブーンも森の遺跡に降下した。


着陸したブーンはグライダーを乗り捨て、ツンのあとを追った。
ツンは魔方陣のある神殿に向かって走っていく。

そしてついに、神殿の階段を上りきったところで、ブーンはツンの手を捕まえた。


415 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:06:21.27 ID:JmivrX160
(;^ω^)「ツン!! こんなところまで1人で来て、何をするつもりだお!?」

ξ゚听)ξ「・・・・・・何って、ひろゆきに行く以外、ここにくる理由はないでしょ?」

(;^ω^)「だから何で一人でなんだお!? 
     クーたちに助けを求めに行くなら、僕たちも一緒に行くお!」

ξ゚听)ξ「・・・・・・・・・実はね。」

(;^ω^)「・・・・・・・・・・・。」


(;゚ω゚)「・・・・・・・・・・・!!」


ツンは、ひろゆきでクーとちんぽっぽに言われたことをすべて話した。


416 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:07:07.21 ID:JmivrX160
ξ゚听)ξ「だからあたし、行かなきゃ。」

(;゚ω゚)「・・・・・・・・・・・・。」

ξ゚听)ξ「・・・・・・それじゃあね。」

(;゚ω゚)「ま、待つお!!」


ブーンはツンの手を握り締めた。


ξ゚听)ξ「・・・・・・痛いよ。 離して。」

(;^ω^)「イヤだお!! なんで・・・・・・なんでツンが行かなければならないんだお!?」


417 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:08:44.45 ID:JmivrX160
ξ゚听)ξ「・・・・・・言ったでしょ? 
   ひろゆきの魔力を維持できるのはあたししかいないの。
   あたしがスケープゴートとして眠れば、世界も魔法も救われるのよ。」


(;^ω^)「ツンが眠る必要なんて、どこにも無いお!!
    FOXは、クーとちんちんぽがやっつけるんだお? 
    
    それなら2人に任せておけばいいお!! 
    ツンがスケープゴートになる必要なんて無いんだお!!」


ξ゚听)ξ「・・・・・・・・・ダメだよ。
   あたしが眠らなければ、2人がFOXを沈めたとしても
   今度は魔力を失ったひろゆきが大地に落ちてきちゃうのよ?」


(;^ω^)「なら、ひろゆきを大地に落としちゃえばいいお!!
     魔法なんか無くても、僕たちは生きていけるお!!」


418 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:10:43.90 ID:JmivrX160
ξ゚听)ξ「でも、ひろゆきが大地に落ちれば、そのせいで多くの人が犠牲になるわ。
   ・・・・・・・それにね、あたしは魔法も守りたいの。」

(;^ω^)「・・・・・・・。」

ξ゚听)ξ「この前ケンカしたとき、ブーンがあたしに言ったじゃない?
   『あたしの魔法は用なしだ』って。
   
   ・・・・・・あたし、すごく悲しかった。
   だってあたし、魔法を使える以外に何のとりえも無いんだもん。」

(;^ω^)「違うお、僕はそんな意味で言ったんじゃ・・・」

ξ゚ー゚)ξ「いいのよ。 気にしないで。
   ブーンはバカだけどとっても優しいし、夢をかなえるために一生懸命だわ。
   
   毒男はキモくてアホだけど飛行機を操縦できるし、いざというとき頼りになるわ。
   しぃはみんなから人望があって、次の長になるため頑張っている。
   
   ショボン大佐や荒巻さん、ジョルジュ、モナーさんやギコ、流石兄弟。
   みんな何かとりえがあって、一生懸命で、夢がある。」
419 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:12:22.88 ID:JmivrX160
ξ゚听)ξ「だけどあたしには魔法以外、何にも無い。
   
   人とはうまくしゃべれないし、わがままだし、
   すぐに殴るし、ひどいこと言って人を傷つけちゃう。
   
   世界の裂け目を超えたのも、ひろゆきに行ったのも、
   ブーンと毒男の夢に付いていっただけ。
 
   あたしには、自分の夢なんて無かった。」


(;゚ω゚)「・・・・・・・・・・。」


ξ゚ー゚)ξ「だけどね、今ならあたし、みんなの役に立てる。
    あたしがスケープゴートとして眠ることで、世界が助かる。
    あたしが大好きな人たちも、その人たちの夢も、守ることが出来るんだよ!」


420 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:13:23.98 ID:JmivrX160
(;゚ω゚)「・・・・・・・・・・。」


違う。
ツンにはいいところがいっぱいある。
魔法が使えなくても、ツンはツンだ。
何一つ、変わることなんて無い。
だから、魔法なんていらないじゃないか。

それに、ツンのいない世界で夢をかなえることに、何の意味も無い。


そう言おうとしたとき、ツンがブーンに抱きついてきた。


ブーンはツンの行動に動転し、結局その言葉が言えなかった。


421 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:14:20.96 ID:JmivrX160



ξ;凵G)ξ「ブーン・・・・・・。
    お願い。 最後に一度だけ、あたしを抱きしめて・・・・・・・。」

(;゚ω゚)「あうあう・・・・・・・・。」




422 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:15:18.58 ID:JmivrX160
ツンは、強くブーンを抱きしめてくる。

そんなツンの体はとても小さく、ガタガタ震えている。
ブーンは、そんなツンを抱きしめたかった。

だけど、ここでツンを抱きしめてしまえば、ツンが永遠に自分のもとから離れていってしまう気がした。

だからブーンは、ツンを抱きしめることが出来なかった。


423 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:15:55.48 ID:JmivrX160
ξ;凵G)ξ「・・・・・・・・・・・・。」


ツンはブーンを抱きしめる手を離すと、その場にしゃがみこんだ。
それと同時にブーンの体に衝撃が走り、ブーンは階段から転げ落ちた。


(;^ω^)「・・・・・・・・・・・痛いお。」


ブーンは痛む体引きずりながら、上半身を起こした。


424 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:16:20.25 ID:JmivrX160
(;゚ω゚)「!!」


神殿を見上げると、階段を上ったところ、
さっきまで自分がいたところは数本の樹木によって埋め尽くされていた。

ツンの姿は、樹木に隔てられていてもう見えない。


425 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:17:05.64 ID:JmivrX160
(;゚ω゚)「ツーーーーーーーーーーーン!!」


ブーンは体の痛みなど忘れ、階段を駆け上った。


上りきって、樹木に取り付いて何とか神殿の中に入ろうとしたが
樹木の隙間は、ブーンの腕が通るほどの大きさしかなかった。


426 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:18:07.76 ID:JmivrX160
樹木の隙間から覗き込んだ先には、ツンのうしろ姿があった。


(;゚ω゚)「ツン! 行くなお! 行っちゃダメだお!!」

ξ;ー;)ξ「・・・・・・・・・・・・・・・。」


その声に振り向いたツンは、泣きながら笑っている。


ξ;ー;)ξ「永遠を願うなら、一度だけ抱きしめて
    ・・・・・・・・・・その手から、離せばいい。」

( ;ω;)「・・・・・・・・・・。」

ξ;ー;)ξ「私さえいなければ、その夢を守れるわ。」

( ;ω;)「ツン・・・・・・・・・・。」

ξ;ー;)ξ「さようなら、ブーン。 あなたの夢を、空から見守っているわ。」


ツンは振り返ると、神殿の奥へと進んでいった。


427 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:18:50.00 ID:JmivrX160
( ;ω;)「ツン・・・・・・ツーーーーーーーーーーン!!」


ブーンは樹木の隙間から手を伸ばし、必死に叫んだ。


だけど、その手も、その声も、ツンに届くことは無かった。


428 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:19:33.96 ID:JmivrX160
必死の思いで樹木を越えたブーンは、神殿の奥まで走った。

だけどその奥、魔方陣の部屋には、ツンの姿はもう無かった。


( ;ω;)「魔方陣!! 僕をひろゆきに連れて行くお!!」


ブーンは魔方陣を叩き続けた。手から血が出ても叩き続けた。
しかし、魔方陣はうんともすんとも言わなかった。

ブーンはその場に崩れ落ちた。


429 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:20:00.77 ID:JmivrX160
(*゚ー゚) ('A`)「・・・・・・・・・・・・。」


気がつくと、毒男としぃが後ろに立っていた。


('A`)「話は聞いていた。 ツンは行っちまったようだな。」

( ;ω;)「・・・・・・・・・・・・・。」

('A`)「で、これからお前はどうするんだ?」


430 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:21:01.51 ID:JmivrX160
ブーンは魔方陣の上に座り込んで、毒男としぃを見上げた。


( ;ω;)「ツンは・・・・・・行っちゃったお。」

('A`)「だから、これからどうするんだって聞いている!」

( ;ω;)「・・・・・・どうする?」


ブーンは立ち上がると、毒男の胸倉をつかんだ。


( ;ω;)「どうするって、どうすればいいんだお!!
     ツンはここにいないお! 魔方陣は起動しないお!!
     どうやってひろゆきまで行くって言うんだお!!!!」


431 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:22:49.07 ID:JmivrX160
毒男がブーンの胸倉をつかみ返す。


('A`)「なら他の方法を考えろ!!
  方法が無いからって、あきらめるのがお前なのか!?
  
  違  う  だ  ろ  !  ?
  
  出来るわけが無いといわれ続けた世界の裂け目を超えたのは誰だ!?」


( ;ω;)「世界の裂け目と一緒にするなお!!
     ひろゆきは空よりも高いところにあるんだお!!
     そんなところまで、どうやって行くんだお!!
     
     グライダーなんかじゃ無理だお!!
     もすかうはボロボロで飛べないお!!
     飛べても、空よりも高いところなんて行けっこないお!!」


('A`)「・・・・・・・・。」


( ;ω;)「仮に空より高く飛べたとして、
     この広大の空から、どうやってひろゆきを探すお!?
     
     そんなの不可能だお!!

     いい加減なこと言うんじゃないお!!!」


432 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:24:28.35 ID:JmivrX160
毒男はブーンの胸倉から手を離すと、ブーンに背を向けた。


('A`)「お前には愛想が尽きた。」

(;*゚ー゚)「毒男君!!」

('A`)「しぃさん、こいつはもうダメだ。 放っておきましょう。」

(;*゚ー゚)「・・・・・・・・・。」

( ;ω;)「・・・・・・どこに行くんだお?」


('A`)「決まっている。 ツンを助けに行くんだよ。
  あの女は、人の顔を見るたびバカだのキモイだの言うむかつく女だが
  一緒に世界の裂け目を超えた、かけがえの無い仲間だ。」


( ;ω;)「・・・・・・・・。」

('A`)「じゃあな。 お前のそんな顔、2度と見たくない。」



毒男は部屋から出て行った。



433 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:25:32.85 ID:JmivrX160
(*゚ー゚)「ブーン君。」

( ;ω;)「・・・・・・・なんだお?」


(*゚ー゚)「ツンちゃんが『あたしには何も無い』って言ったとき
   どうして『そんなこと無い』って言わなかったの?

   ツンちゃんがブーン君を抱きしめたとき、
   どうしてブーン君は抱きしめ返さなかったの?」


( ;ω;)「・・・・・・・。」


(*゚ー゚)「きっと、ツンちゃんはブーン君にそう言ってほしかったんだと思う。
   きっと、ツンちゃんはブーン君に抱きしめ返してほしかったんだと思うよ。」


Σ( ;ω;)「!!」


ブーンはしぃの顔を見上げた。
しぃは悲しそうにブーンの顔を一瞥したあと、背を向けて部屋から出て行った。


434 :78 ◆pP.8LqKfPo :2006/07/19(水) 18:27:16.38 ID:JmivrX160
1人残されたブーンは、魔方陣の上に仰向けになり、天井を見上げた。


( ;ω;)「・・・・・・・・・・・・。」


ツンに置いていかれた。
しぃに見放された。

ずっと夢をともにしてきた、かけがえのない親友である毒男にも見捨てられた。


ブーンは天井に向かって手を伸ばした。
そうすれば、自分のもとを去っていた人たちの背中をつかめるような気がした。

だけど、つかめるものは虚無感以外、何も無かった。


( ;ω;)「・・・・・・・・・・独りになっちゃったお。」


ブーンは泣き続けた。
その涙は、いつまでもいつまでも、途切れることなく流れ続けた。


第43話 完             推奨BGM 樹海の糸/Cocco
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